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2019年9月14日土曜日

「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」の公表

1.第二次アンケートも含めた結果

今年の1月27日に「会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果についての感想」というブログを書きましたが、令和元年8月30日付で第2次調査の結果も含めた「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」が厚生労働省より各所轄庁に発出されました。
 このアンケート結果は、いろいろなサイトに掲載されていますが、ここでは大阪府のサイトをご紹介しておきます。大阪府のサイトはこちらです。

2.会計監査までの準備期間

(1)前回の決定時期

 アンケート結果には、自由記入欄の結果として各社会福祉法人のご意見も記載されています。
 前回の第1次アンケートにも自由記入欄の記載はありましたが、今回、私が取り上げるのは会計監査が開始されるまでの準備期間についてのご意見です。

 ご存知のように、平成29年4月1日から開始する事業年度より、サービス活動収益30億円超又は負債総額60億円超の法人は会計監査人の設置が義務付けられることになりました(社会福祉法(以下「法」)37条)。そのため、この会計監査人の設置が義務付けられた社会福祉法人(特定社会福祉法人)は、公認会計士又は監査法人による社会福祉法に基づく会計監査を受けることになりました(法45条の2①)。

 この社会福祉法に基づく監査の対象は前年の平成28年9月26日の社会保障審議会で決定したと記憶していますが(ちなみに、私も傍聴人として参加していました。)、このあたりから会計監査人候補の選定に入った法人が多かったのではないかと思います。もちろん、それ以前に、サービス活動収益が30億円を超えている法人の中には会計監査人設置の義務付けは確実ということですでに会計監査人予定者を決定していた法人もありました。

 そこで、平成28年10月以降に会計監査人候補の選定を行った法人が、概ねどのような経緯をもって社会福祉法に基づく会計監査に入っていったのかを簡単に記載します。

(2)会計監査に入るまで

 平成28年9月26日に会計監査人の設置が義務付けられる社会福祉法人の対象が決定して以降、対象となった社会福祉法人はプロポーザルを行い、会計監査人候補の選定に入りました。ここで「会計監査人候補」と記載しているのは、会計監査人は評議員会で決定されるため(法43条①)、定時評議員会が開催される以前においては、正式に会計監査人として選任されていないためです。
 プロポーザルは早いところでは平成28年10月~11月には行っていましたが、遅いところでは平成29年1月~2月という法人もありました。
 いずれにしろ、多くの法人では、平成28年10月から平成29年2月ぐらいまでには会計監査人候補が選定されていたのではないかと思います。
 会計監査人候補が選定されたら、次に行われるのは予備調査です。予備調査では、内部統制に依拠した会計監査が実施できるかの調査、会計及び内部統制に関する問題点の指摘、その他反社会的勢力との関わりの有無の調査などを行います。
 この予備調査とその報告は、遅くとも平成29年3月までには終わっていたのではないかと思います。というのは、4月に入ると期末決算の時期に入るので法人側も対応が難しくなるからです。
 総じて見て見ると、会計監査人の選定から予備調査の報告までの期間は、おおむね平成28年10月から平成29年3月までの約6ヶ月ということになります。
 そして、予備調査の報告が終わった後は、6月に開催される評議員会で会計監査人の選任が行われ、7月から会計監査が行われるという流れとなりました。

(3)会計監査までの準備期間

 予備調査については、通常、監査法人から予備調査報告書が提出され、会計及び内部統制の問題点が指摘されます。その後は、指摘された事項について改善を行うことになります。しかしながら、特に内部統制については改善といっても一朝一夕にできるとは限らず、時間を要するものもあります。
 これを踏まえると、平成28年10月から平成29年3月までの最長6ヶ月間であっても改善を行うには期間が短いといえます。4月からは期末決算に入るので3月までには改善を終了させる必要がありますが、法人によっては予備調査報告を受けてから3月末までの期間が、3ヶ月間あるいは2ヶ月間ぐらいしかなかったかもしれません。

(4)上場準備会社では?

 以前、このブログでは「会計監査人の設置基準の引下げ延期」というブログを書きましたが、この中で私は、

「私見ですが、平成29年度から実施した社会福祉法人の監査では、社会福祉法人側に十分な準備期間がなかったのでは、と感じました。
 ちなみに、上場会社の場合、上場準備期間があり最短で2年、状況によってはそれ以上の期間を経て上場に至るのですが、社会福祉法人の制度改革ではこのような期間がなかったと思います。
 そのため、多くの社会福祉法人は準備不十分なまま、いきなり法定監査に突入してしまったので、気の毒な感じがします。
 従って、今回、会計監査人の設置基準が延期となりましたが、監査の準備期間が設けられたという点ではよかったと個人的には思っています。」

 と記載しました。

 もう少し、実務の現状を記載すると、上場を目指す会社では上場準備監査のショート・レビューが行われる前にコンサルティング会社などが入って、会計及び内部統制の問題点を指摘し、あらかじめ改善しておくという実務が行われることが多いです。人によっては「プレ・ショート・レビュー」という言い方をする人もいます。
 このように、上場を目指す会社は、上場後の法定監査(金融商品取引法監査)が行われる前に任意監査である上場準備監査、さらには上場準備監査が行われる前の「プレ・ショート・レビュー」を経ています。この期間は最低2年間ですが、3年以上かかっている会社は多く見られます。
 これに比べると、社会福祉法人の場合は、いわゆる法定監査を受けるまでの期間が短すぎると思いました。

3.アンケート結果より

 アンケート結果にもこの点がいくつか記載されています。
 以下抜粋します。

「平成 28 年度から予備調査を実施したが、法人の事業規模から考えると、十分な準備期間であったとはいえない。特定社会福祉法人以外の法人でも、早期に予備調査を実施し、内部統制の不備や会計上の誤りについて修正すべきと考える。また、会計監査人の選任にあたっては、「医療・福祉業界」に精通した、専門性の高い監査法人の選定が重要である。この点を踏まえると、今回の会計監査人の設置基準引き下げが延期となり、会計監査の準備期間が設けられたという点では良かったと考える 。」

 会計監査人の設置基準引き下げが延期になり会計監査の準備期間が設けられた点ではよかったという点は、上記2(4)に記載したとおり私も同意見です。

「公認会計士の話によると、一般企業で上場する場合は、上場準備期間があり、それを経て会計監査を受けるための体制も整っていくとの事であり、 社福法人においても会計監査受ける場合は、同様の対応が必要なのではないか。」
 
 こちらも上記2(4)に記載したとおり、上場会社では上場するまでに上場準備期間があります。法定監査に入るまでには相応の期間が必要と個人的には考えていますが、少なくとも、社会福祉法人の場合は期間が短すぎると思います。もう少し、法定監査に入るまでの準備期間を長く設けるべきと思います。

4.まとめ

 正直申し上げて、多くの社会福祉法人では現状の内部統制や経理レベルでは、監査法人が行う本来のレベルの会計監査に対応するには難しいと思います。
 そのため、監査法人がまともに会計監査を行うと、現場にもかなりの混乱と負担がかかってしまいます。実際、アンケート結果にも監査対応を行う職員の負担や現場の混乱についても記載されていました。
従って、会計監査に対応するためには、早めに公認会計士などの専門家を入れて、予備調査が行われるまでに、できる限り十分な時間をとる必要があります。

2019年7月27日土曜日

契約書に係る監査上の論点~吉本興業の「契約書なし」をみて

1.吉本興業の「契約書なし」問題
 吉本興業の、いわゆる闇営業問題に関連して、吉本興業が所属タレントと契約書を作成していなかったという論点が出てきました。
 さらに、この「契約書なし」問題に関して公正取引委員会の山田昭典事務総長が「契約書面が存在しないということは、競争政策の観点から問題がある」と述べたというニュースも出てきました。(「契約書なし「競争政策上、問題」=公取事務総長、吉本興業に懸念」(時事通信)、「吉本興業の契約書なし、「問題がある」 公取委総長発言」(朝日新聞))
 私は、闇営業問題に関心はないのですが、この「契約書なし」問題を見て思い出したことがあったので、今回は、財務諸表監査における契約書にかかる論点を記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.「契約書なし」の会社
(1)契約書を作成する意義
 財務諸表監査を行うとき、内部統制のデザインの評価や運用評価、実証テストを行いますが、この過程で取引の契約についても、どのように行われているのかを見るために契約書の閲覧などを行います。
 当然のことながら、まずは取引の契約を締結した場合は契約書の作成が必要です。一応、民法上は口頭でも契約は成立するのですが、企業の内部統制上、契約書を作成することが必要です。そうしないと、金額や支払相手などが不明確になるため、例えば、架空取引や水増し請求による過大支払いなどが行われてしまい会社に損害が発生するリスクがあるからです。(「架空取引に係る内部統制」「経営者による内部統制の無効化とハコ企業」参照)

(2)地方でよく見られるケース
 上場会社では何らかの取引を行うときは、まず間違いなく契約書を交わしていますが、「経営者による内部統制の無効化とハコ企業」でも記載したように、資金繰りが逼迫した企業では内部統制の無視・無効化が横行し、契約書を取り交わさないで取引を行っていたケースも見られました。
 
 このように上場会社レベルでは「契約書なし」というのはイレギュラーなケースですが、非上場会社や非営利法人では「契約書なし」というケースが時々出てきます。特に、この「契約書なし」は地方でよく見られるという印象があります。
 何度か見たのは、地元の工務店と工事契約を締結するケースです。なぜかというと、地方では、地域の人は昔からの顔なじみで、お互いによく知っているため、わざわざ契約書を作成する必要はないという文化ができてしまっているからのようです。
 そのため、契約書を作成しなくても「まあ、別にいいじゃないか」というお互いの信頼関係で物事が進んでしまうというわけです。

 また、非上場会社あたりでは「収入印紙の節約をしたいから」という理由で契約書を作成しない会社も時々見られます。
 
 しかしながら、契約書を作成しないと上記のように、会社に損害が生じるリスクがあるので、契約書は作成する必要があります。

3.契約書の偽造
 立命館大学、早稲田大学の教授や公認会計士・監査審査会会長を務められた千代田邦夫教授は、公認会計士資格も保有されており、旧二次試験合格後は会計士補として監査業務にも携われていました。
 その千代田教授の著作「監査論の基礎」(税務経理協会)の前書きの中に、契約書の偽造を発見したときの話が記載されています。
 千代田氏が会計士補として、ある会社の監査に行ったとき、売上の監査を行うために売買契約書の提示を求めたそうです。しかし、会社は何かと理由をつけて提示してこなかったため、おかしいなと思い何とか粘ったところ、やっと出てきたのは契約書のコピーだったそうです。そこで、千代田氏が閲覧したところ、おかしなところに気づいたといいます。何かというと、契約書のコピーは何通もあったようですが、収入印紙の消印の位置がどの契約書も同じだったのだそうです。ますます怪しいと思い、問い詰めると、ついに担当者が白状したそうです。会社が何をしたのかというと、セロファン紙の間に収入印紙を挟み込み、その上から割印を行い、これを偽造した契約書においてコピーをしたということです。
 
 なお、監査の現場では契約書類や証憑類は必ず原本を確認するようにしています。そうしないと、この話のように不正が行われても看過してしまう可能性があるからです。そのうえで監査調書にするためにコピーをとることになります。
 ちなみに、私の場合は「原本確認の上、森がコピー」と記載して原本を確認したことを記すようにしています。このようにすれば、会社がコピーしてきたものをそのまま受け取っていないということがわかるからです。
 
4.監査法人の「契約書なし」問題
 以上は、会社等と取引先との契約に関してでしたが、最後に監査法人と契約している公認会計士との契約について触れたいと思います。これは吉本興業とタレントとの契約と同じケースとなります。
 監査法人も契約している非常勤の公認会計士とは非常勤契約に係る契約書を作成する必要があります。もちろん、常勤の公認会計士とは雇用契約を締結していますから雇用契約書の作成が必要です。
 日本公認会計士協会は、監査法人に対して品質管理レビューを行っていますが、この品質管理レビューのときは、非常勤会計士と交わした契約書の有無は必ずチェックしています。そのため、通常の監査法人であれば、非常勤会計士との契約書は作成しています。
 監査法人だったら当然であろう、と思われるかもしれませんが、どうもこの業界では長い間、それこそ吉本興業のように契約書が作成されず、契約関係があいまいになっていた時期が続いていたようです。おそらく、もともと、この業界は徒弟制度が長く続いていたため、「何でそんなもの作らないといけないんだ」という感覚があったのだと思います。
 しかしながら、日本公認会計士協会による品質管理レビューで、非常勤会計士との契約書の有無はチェックするようになったため、品質管理レビューを受ける監査法人では契約書を作成するようになりました。

2019年3月24日日曜日

平成を振り返って~iモードとブラックベリー

1.はじめに
 平成31年4月1日に新しい元号が発表され、5月1日からは新しい元号に変わります。
 新しい元号に変わるまでにあと約2ヶ月となりました。そのため、最近は「平成最後の・・・」というフレーズをよく耳にします。例えば、「平成最後の甲子園」、「平成最後の大相撲」といった具合です。
 平成が終わるといっても、時代が変わるような感覚が現時点では全くないのですが、一つの区切りということで、平成の時代を振り返ってみたいと思います。
 そこで、今回は平成の間に起こったイノベーションについて回想してみたいと思います。

2.iモードとブラックベリー
(1)初めてのアメリカ
 平成といっても、西暦でいうと1989年1月8日から2019年4月30日までなので約30年間あるのですが、イノベーションという点で私が強烈に印象に残っているのは、アメリカに初めて会計監査に行った平成19年12月から現時点までの約11年間です。
 初めて会計監査に行ったときは、同時にアメリカ合衆国にも初めて行ったときでもあるのですが、当時、日本とアメリカの携帯電話は現在とは全く違うものでした。

(2)iモード
 平成19年ごろは日本ではスマートフォンはまだ普及しておらず、今でいう「ガラケー」が主流でした。この「ガラケー」ですが、当時は「ケータイ」という呼び方をしていました。
 このケータイでは、通話ができることはもちろんですが、日本のケータイではメールやインターネットを使用することができました。今では当然のように思えますが、実は、これは画期的なことでした。
 これを牽引したのがNTTドコモのiモードでした。このiモードですが、コトバンクのブリタニカ国際大百科事典の解説によると、以下のように記載されています。

「エヌ・ティ・ティ・ドコモ (NTTドコモ) が 1999年2月から開始した携帯電話のインターネット接続サービス。携帯電話を使って情報サービス提供者が提供する各種サービスをオンラインで利用することができる。電子メールの送受信をはじめ,チケット予約やタウン情報など各種情報サービスのほか,銀行振り込みなどモバイル・バンキングの利用が可能である。(中略) 契約数の増加は著しく,2000年8月には 1000万を突破。 1999年4月以降,日本移動通信 IDOや第二電電 DDI系のセルラーなどほかの事業者も同様のサービスを開始した。」
 
 iモードによって、日本のケータイは飛躍的に便利になりました。
 そして、日本人のライフスタイルは大きく変わったといっても過言ではなかったと思います。
 ケータイでニュース、天気、交通案内も知ることができるようになり、場所を問わずリアルタイムで様々な情報を知ることができるようになりました。また、着信メロディ(着メロ)、デコレーションメール(デコメ)などが流行り、これを発信する会社も多数現れました。
 当時、日本のケータイは、他の先進国よりも進んでいたと思います。実際、iモードは他国の通信会社に技術を供与して「世界進出」を行おうとしていました。

(3)ブラックベリー
 一方、アメリカではどうだったかというと、日本のiモードのようなインターネット接続サービスは進んでおらず、ケータイは通話中心の使い方でした。
 そのような中、アメリカではブラックベリー(Black Berry)というスマートフォンがありました。これはビジネスマン中心に使用されていたものでした。
 ブラックベリーは、今のスマートフォンの原型のようなものです。私が見せてもらったのは黒色のもので、上3分の2ぐらいが画面で、下3分の1ぐらいにアルファベットのキーボードがついていたと記憶しています。
 いまのスマートフォンは全体が画面で、文字を入力するシーンのときに下の方にキーボードが出てくるというものですが、ブラックベリーはキーボードそのものがついていました。キーボードはパソコンと同様、アルファベットが並んでいるものでした。
 Webで画像検索すれば、いくつか出てくるのでご覧いただければよいかと思います。
 このブラックベリーであれば、通話はもちろん、メール送受信やWeb閲覧もできました。

 ちなみに、ブラックベリーをコトバンクのASCII.jpデジタル用語辞典でみてみると、以下のように記載されています。
 
「カナダのリサーチ・イン・モーション社が開発したスマートフォン。キーボードを搭載し、電子メール、Web閲覧、スケジュールやアドレス帳の管理、通話、インスタントメッセージ、オフィス文書の閲覧などが可能。会社メールを暗号化して安全に転送できることと、メールを即時着信するプッシュ型の電子メールを採用し、すぐに連絡が取れることから、ビジネス用のメール端末として人気が高い。日本では、NTTドコモが販売している。」

 上記のように、私はアメリカに行ったとき、初めてブラックベリーを見ましたが、日本ではiモードが浸透していたため、正直なところ、私自身はものすごく画期的な製品には見えませんでした。聞く限り、機能的にはそれほど変わらないと思ったからです。もちろん、アメリカ居住者ではないため、ブラックベリーを使ったことはなく、使っている人からの話と外観だけの判断ではありますが。
 しかし、私の印象とは裏腹に、アメリカやヨーロッパではブラックベリーの人気は高かったようで、市場シェアも高まっていったそうです。
 
3.平成を振り返って
 しかしながら、iモードもブラックベリーも当時の勢いは続かず、いまでは完全な下火となってしまいました。
 原因は、アップルのiPhoneとグーグルのAndroidがスマートフォン市場で圧倒的なシェアをとったからです。
 私が初めてアメリカに行ったのが平成19年(2007年)12月でしたが、ウィキペディアを見てみると、iPhoneは2007年1月に、Androidは2008年にそれぞれ発売されたということです。従って、私がブラックベリーを知った時期は、ブラックベリーの終わりの始まりだったといえそうです。
 このときから約10年で市場は一変しました。今の若い人はiモードといっても知らない人が多いと思います。私も、10年の間にこれほど激変するとは予測しませんでした。
 当時、日本のケータイのほうがアメリカよりも進んでいたはずなのですが、今では見る影もありません。
 アメリカは平成とは無関係ですが、それでも平成を振り返ってみると、強烈な印象として残っているのが、この携帯電話、スマートフォンのイノベーションです。
 「時代は繰り返す」とはいいますが、このイノベーションの歴史をリアルに知っているがゆえに、次の10年後、いや5年後や3年後かもしれませんが、また人間の生活をドラスティックに一変させるイノベーションが出てくるのだろうと思っています。
 未来を予測するのはなかなか難しいですが、少なくとも現在の技術は、今後間違いなく古いものになるということは間違いありません。そのため、現状に満足していると時代に取り残されます。
 従って、常に、いま起こっていることは古いものなんだ、という認識を持つことが大事だと思っています。

2019年3月17日日曜日

貸倒懸念債権の貸借対照表上での表示

1.はじめに
 債権は貸倒見積高の算定にあたっては①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債権等に区分されます(金融商品会計基準27項) 
 では、これらの債権は貸借対照表ではどの区分に表示すればよいのかというと、この点については制度上、明記がありません。
 そこで、今回は、債権の貸借対照表表示について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.貸借対照表での表示
 貸借対照表のでの表示ですが、①一般債権と③破産更生債権等については問題はないでしょう。
 ①一般債権は流動資産に計上されます。科目名でいうと、受取手形、売掛金、リース債権、完成工事未収入金といった科目となります。
 ③破産更生債権等は固定資産のうち投資その他の資産に計上されます。こちらの科目名は破産更生債権等となります(財務諸表規則32条1項10号)。
 ここまでは問題はないのですが、では②貸倒懸念債権についてはどの区分に表示すればよいのかが問題となります。

3.正常営業循環基準
(1)貸倒懸念債権の意義
 まず、貸倒懸念債権の意義について記載します。
 貸倒懸念債権とは「経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権」をいいます(金融商品会計基準27項(2))。
 イメージとしては、まだ経営破綻には至っていないので相手方も苦しいながらも経営は続けているため回収可能性は残されているものの、請求を行ってもなかなか入金がされないような債権というものです。

(2)流動資産と固定資産の区分法
 次に、貸借対照表の流動資産と固定資産の区分法について記載します。
 まず、流動資産と固定資産の区分は「正常営業循環基準」によります。
 次に、正常営業循環基準で区分できないものについては「1年基準」によります。
 正常営業循環基準とは、文字通り、正常な営業サイクル(例:販売業でいえば、仕入→販売→入金)に属する資産及び負債は流動項目とし、それ以外は固定項目とするというものです。
 一方、1年基準は、正常営業循環基準に該当しない科目について、決算日後1年以内に回収や支払が行われる資産及び負債を流動項目、1年を超える資産及び負債については固定項目とするものです。

 この流動・固定分類については結構誤解されがちですが、まず第1次的には「正常営業循環基準」が適用されます。1年基準で区分するようなイメージを持たれている方も多いのですが、1年基準はあくまで2次的な区分法です。

 正常営業循環基準によれば、1年で投資の回収ができないものも流動資産に計上されることがあります。例えば、長期請負工事における完成工事未収入金です。工事期間が1年を超える長期工事においては、請負工事に対する債権の回収も1年を超えてきます。しかしながら、この債権は長期工事という正常な営業サイクルに属するものなので、流動資産に計上されます。

(3)破産更生債権等が固定資産に区分される理由
 そのため、 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権である一般債権は当然のことながら流動資産に計上されます。正常な営業サイクルに属する債権だからです。
 では、破産更生債権等が固定資産に区分される理由ですが、これは破産更生債権等は、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権であることから、正常な営業サイクルから外れた債権であるためです。経営破綻に陥った場合、会社に対する売上債権については、こちらが請求を行っても支払ってはくれません。例えば、債権者集会を経た後、清算配当が払われる形となります。配当があればまだよいかもしれません。少なくとも全額の回収はまず無理です。すなわち、正常な営業サイクルからは外れてしまっています。
 そのため正常営業循環基準により、固定資産に区分されるとされているものと解されます。

4.貸倒懸念債権の表示
 これらを鑑みると、貸倒懸念債権は「経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権」であるため、貸倒懸念債権の状態では、まだ正常な営業サイクルに属している債権といえます。
 このような入金が滞っている場合は、通常は取引は停止しますが、請求は続けていきます。その請求により、金額や入金時期は不規則ですが、少しづつ入金はされていくケースもあります。そのため、投資の回収を行っている状況にあることから、依然として正常な営業サイクルに属する債権といえます。

 なお、参考ですが、「金融商品会計に関する実務指針」112項では、貸倒懸念債権の要件について具体的に記載しています。
「債務の弁済に重大な問題が生じているとは、現に債務の弁済がおおむね1年以上延滞している場合のほか、弁済期間の延長又は弁済の一時棚上げ及び元金又は利息の一部を免除するなど債務者に対し弁済条件の大幅な緩和を行っている場合が含まれる。」
「債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いとは、業況が低調ないし不安定、又は財務内容に問題があり、過去の経営成績又は経営改善計画の実現可能性を考慮しても債務の一部を条件どおりに弁済できない可能性の高いことをいう。」
「財務内容に問題があるとは、現に債務超過である場合のみならず、債務者が有する債権の回収可能性や資産の含み損を考慮すると実質的に債務超過の状態に陥っている状況を含む。 」

 従って、回収ペースは落ちているものの、債権の回収段階にある貸倒懸念債権は正常な営業サイクルに属しているといえますので、正常営業循環基準により流動資産に区分することが妥当といえます。

2019年3月11日月曜日

アメリカのキャッシュレス~クレジットカード社会

1.はじめに
 私は、前職では日本企業の米国子会社の監査のため、毎年アメリカ合衆国に行っていました。春と秋、それと年末の実査立会の年3回が基本でしたが、年によってはもう1回加わり、年4回という時もありました。
 最後に行ったのが平成23年でしたので、もう8年前になります。昨年、日本公認会計士協会京滋会の研修旅行でサンフランシスコなどを訪れましたが、これは7年ぶりのアメリカ訪問となりました。
 仕事で行く場合は、何度もアメリカに行くことになりますし、食事で入る店も一般庶民が利用する店に入ることが多いため、1回きりの旅行とは異なり、結構、市民の生活を体感できたのではないかと思います。
 今回は、アメリカに行っていたときに感じた、アメリカのクレジットカード払いについて記載したいと思います。

2.ひと昔前のアメリカ
 上述のように、最後に仕事でアメリカにいったのが8年前なので、アメリカに行っていたのは今から8~12年前の頃となります。
 アメリカはクレジット社会とは聞いていましたが、確かにこの時代でも、ほとんどの店でクレジットカードを使用することができました。
 どの店でもクレジットカードを使用できるのはとても便利です。メリットはいろいろとありますが、私の場合はアメリカの小銭がたまらないようにするために使用していました。
 ご存知の方も多いと思いますが、ドル紙幣は日本で日本円に換金できるのに対して、小銭は換金できません。そうなると、溜まったアメリカの小銭は日本で無用の長物と化してしまうのです。そのようなことを避けるため、私はアメリカではクレジットカードを使用していました。
 近年、日本でもキャッシュレス社会を目指して、いろいろな施策が講じられてきていますが、アメリカではひと昔前でも、すでにキャッシュレス社会が進んでいました。
 日本でもこのようになればよいのに、と思っていたのですが、最近の動きを見るにつれ「やっとか」という思いです。

3.アメリカでクレジットカードを使えた店など
 ここでは、当時からクレジットカードを使用できたアメリカの店などを紹介します。

(1)スターバックス
 当時のアメリカでも、スターバックスでクレジットカードを使用できました。
 調べると、最近、日本のスターバックスでもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 昔、スターバックスはアメリカの会社なので「もしかしたら日本でも使用できるのでは」と思い、クレジットカード払いができるのかを聞いたことがありましたが、当時はプリペイドのスターバックスカードであれば現金以外の支払いができます、という説明でした。私の記憶では3年前ぐらいでもそのような説明だったと記憶しています。

(2)マクドナルド
 マクドナルドでもクレジットカードを使用できました。
 最近、日本のマクドナルドもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 ちなみに、アメリカのマクドナルドは、セット購入すると、日本でいうドリンクバーがついてきて、ドリンクは何度でも何種類でも飲めるというシステムでした。

(3)サブウェイ
 サンドウィッチのサブウェイもクレジットカードを使用できました。
 日本ではなかなか人気が出ませんが、サブウェイは自分でいろいろな具材を自分でトッピングできるサンドウィッチ店です。
 余談ですが、あるフリーウェイ沿いのサブウェイで代金を支払おうとしたところ、"Show me ID!"(身分証明書を見せてください)と言われたことがあります。何で言われたのかは不明なのですが、カードを使用するときにこのようなこともありました。(アジア人は年齢より若く見られる傾向にはありますが・・・)

(4)空港の売店
 サンフランシスコ国際空港(SFO)など、いろいろな空港に行きましたが、どの空港の売店でもクレジットカードを使用できました。
 例えば、ペットボトルの水一本を購入する場合でもクレジットカードでOKです。
 日本でいうと、キオスクみたいな感じの店です。もちろん、お土産屋さんやDuty FreeでもクレジットカードはOKです。
 ちなみに、京都の竹田駅(近鉄と京都市営地下鉄の共同駅)のプラットフォームにあるキオスクで電子マネーを使用しようとしたら「現金しか使えません。」と言われました。あるコンビニチェーンの店だったので余計に「なぜ?」と思いました。

(5)券売機
 BART(Bay Area Rapid Transit:サンフランシスコの地下鉄)で、サンフランシスコ国際空港(SFO)からパウエルストリート(Powell St.)まで乗車したことがありましたが、きっぷを購入するための自動券売機でもクレジットカードを使用できました。
 なんだか古めかしい券売機だったので「こんなので大丈夫なのか」と不安に思ったことを記憶しています。
 このBARTの券売機でのきっぷの買い方ですが、日本とは異なり、一定額から引き算ボタンを押して減額して目的地までの金額を設定し、購入するという方法です。日本のように、いろいろな金額が選べるようにはなっていません。従って、とても使いにくいです。
 その点、日本は交通系ICカードと自動改札機が発達しているので、鉄道分野においては日本のほうが利便性とキャッシュレスがはるかに進んでいます。
 こういうのを体験するたびに、アメリカは発展しているのか発展していないのかよくわからない国だな、と思いました。

(6)自動販売機は?
 最後に、当時は自動販売機ではさすがにクレジットカード払いはできませんでしたが、最近はついに自動販売機でもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 ちなみに、アメリカでよく見た自動販売機は、青い色のペプシの飲料販売機です。日本ではコカ・コーラの赤い色の自動販売機が圧倒的に多いですが、アメリカではペプシコーラの自動販売機しか見かけませんでした。
 また、アメリカは犯罪率が非常に高いため、自動販売機は屋外では見かけません。私が見たのはいずれも室内でした。クライアントの社内の休憩室やホテルのVending Machine コーナーといったところです。外に置くと自動販売機は破壊されて中の現金が盗まれてしまうからです。

4.まとめ
 日本は、キャッシュレスが遅れているというよりは、安全社会であったためその必要性が少なかったという事情があります。そのため日本ではキャッシュレスが普及していませんが、アメリカのように数百円といった少額であっても、カードなどでキャッシュレス決済できると、とても便利な社会になると思います。
 約10年経って、やっとキャッシュレスが普及してきたか、という思いですが、日本の場合は一度進むと進化するのは早いので、いろいろなサービスを期待したいところです。

2019年1月27日日曜日

会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果についての感想

1.はじめに
 平成30年11月5日に「会計監査人の設置基準の引下げ延期」というタイトルでブログを書きましたが、このとき厚生労働省は同時に、会計監査人監査の対象となっている社会福祉法人に対してアンケートを実施しました。アンケートの詳細については日本公認会計士協会のページにも掲載されていますので御覧ください。
 このアンケートですが、会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果が大阪府のページに掲載されていました。こちらにつきましてはMMPG様よりお知らせいただきました。ありがとうございます。
 以下、感想を記載したいと思います。なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.「会計監査及び予備調査で発見に至った会計処理の誤り」
 P7では「会計監査及び予備調査で発見に至った会計処理の誤り」が記載されています。
 発生割合が大きい項目について上位3つを抜粋すると以下のとおりです。
  • 「賞与引当金、徴収不能引当金について」→35.2%
  • 「減価償却(国庫補助金等特別積立金取崩額を含む)の計算について」→24.2%
  • 「収益及び費用(人件費、事業費、事務費)への発生主義(実現主義)の適用について」→20.4%

 確かに、これらの科目についての誤りは多く見られました。
 簡単に主な誤りを記載すると、賞与引当金については①未計上であった場合や②計上していても法定福利費分を含めていなかった、というものが多く見られました。
 減価償却費については、減価償却費の計上というよりは減価償却累計額の期首残高の誤りが多く見られました。これは減価償却の計算方法の取扱が平成12年、平成23年、平成29年と3回にわたって改正されたため、この過程で固定資産管理ソフトへの入力誤りなどがあったためと推測されます。
 発生主義については、収益よりは費用の発生主義の適用不備が見られました。例えば、締日翌日から期末日までの期間に係る未払給与の計上漏れ、それに伴う法定福利費の計上漏れ、経費の未払計上漏れ、支払利息の未払費用計上漏れ、などです。
 なお、私の範囲内ですが、会計監査人監査の対象となる社会福祉法人では、月次決算で発生主義会計を適用している法人も多くみられました。こういった法人では重大なカットオフエラーは見受けられませんでした。
 逆に、月次決算を現金主義会計で行っていると、期末時に大きなカットオフエラーが生じやすい傾向がありました。やはり、常日頃から発生主義会計を行っていれば、期末に大きなエラーが生じるリスクは少なくなるといえます。
 この点は「月次決算と費用のカットオフエラー」にも記載しましたのでご参照いただけますと幸いです。

3.任意監査の効果
 平成28年度に任意監査を受けていた社会福祉法人は、上記2で示したものを含む会計処理の誤りが期末監査で生じることが非常に少なかったという結果も出ていました。
 厚労省の記載によると、以下のとおりです。

「平成28年度に任意で会計監査を受けている法人、受けていない法人で、誤りの発生割合と修正額を比較したところ、顕著な差がありました。平成28年度は任意になりますが、会計監査のアプローチが適正な財務報告に有効であることを示しています。」

 この点については、当ブログでも「会計監査人の設置基準の引下げ延期」においても「この点を踏まえると、社会福祉法人側では、設置基準の引き下げが決まってから予備調査を始めるのではなく、今の時点から予備調査を受け、任意監査契約を締結することが望まれます。この任意監査の期間に、内部統制の不備や会計上の誤りを修正していくわけです。そうすれば、法定監査に入ってから、監査法人に大きな指摘(金額の大きい会計上の誤りなど)を受ける可能性は低くなります。」と記載しましたが、そのとおりの結果となりました。

 なお、任意監査については「監査法人による任意監査」にも記載しましたが、監査法人の監査は、法定監査を受ける義務がない一定規模未満の会社や非営利法人等であっても、一定の要件を満たせば、任意監査契約を締結することで任意監査を受けることができます。

4.不正の抑止力
 会計監査による効果については、「カ.不正の発見可能性が高まり、不正の抑止力になった」の自由記載について、以下が紹介されていました。
  • 会計監査を通じて、実際に不正の発見はなかったが、不正の抑止力になっていると感じる。
  • ポイントとなるところについて改善することで、不正防止の環境が整いつつある。
  • 見られている感もあるので良いと思う。
 社会福祉法人については、経営者不正もありますが、従業員不正もよく発生しているという印象があります。
 従業員不正については、内部統制の運用上の不備よりは、そもそも、内部統制の仕組み(デザイン)自体が構築されていないという整備上の不備が多く見られます。
 従業員不正については、このブログでも上場企業も含めていろいろと事例を紹介してきましたが、まず仕組みそのものを構築する必要があります。そうしないと、管理者が不正の発生に気をつけていても、牽制が効いていないため、従業員不正の発生可能性が高くなってしまうからです。
 従業員不正の防止のための内部統制については、「平成30年度民間社会福祉施設長研修会で使用したレジュメについて」において、京都府の「平成30年度民間社会福祉施設長研修会」で使用したレジュメを紹介しています。京都府のページに資料が掲載されていますので、参考としていただけますと幸いです。
 

2018年12月9日日曜日

負ののれんとキャッシュ・フロー

1.はじめに
 ある上場企業で負ののれんを多額に計上していたことがマスコミに報じられていましたが、今回は負ののれんとキャッシュ・フローの関係についてお話したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.負ののれんとは
 通常、企業を子会社にするとき、時価評価後の純資産を上回る価額でその企業の株式を取得するので、のれんが発生します。
 しかしながら、種々の理由により逆に下回る価額でその企業の株式を取得すると、貸方に差額が生じます。この差額を負ののれんと呼んでいます。
 以下、設例を記載します。債務超過までには至っていないものの、業績が悪化している会社を100%子会社にしたというケースを想定しています。

【設例】
・被買収会社の資産180、負債150、資本50、利益剰余金△20 
・子会社株式の取得価額0円(100%取得)
・資産の時価はないものとする。
・この子会社は非上場会社とする。

 連結財務諸表では、仕訳は以下のようになります。

(借方)資本金 50 (貸方)子会社株式   0
               利益剰余金 20
               負ののれん 30

 子会社株式を純資産の額に相当する30を超える価額で購入すればのれんが発生しますが、30を下回る金額で購入したので、貸方に差額が発生したというわけです。
 この負ののれんは発生した事業年度の利益として計上します(企業結合会計基準33項)。
 この負ののれんは、全額が利益として計上されます。通常ののれんは「資産に計上し、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。」(企業結合会計基準32項)とされているため、毎期一定額が費用計上されるのれんとは対照的です。

 しかしながら、このような負ののれんが発生することはイレギュラーなケースといえます。場合によっては、その事業年度の利益を増加させたいために、取得価額を意図的に低くして、負ののれんを発生させるという会計操作が行われないとも限りません。
 そのため、制度会計では負ののれんの計上については、以下の手続きを行うことを要求しています(企業結合会計基準33項)。

 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。(中略) 
(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(第 30 項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分さ
れた純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利
益として処理する。 

 なお、監査を行う側としては、会社が上記(1)の手続きを適切に行っているかどうかの確認、及びその妥当性について検証する必要があります。

3.キャッシュ・フローとの関係
(1)負ののれんとキャッシュ・フローの関係
 しかしながら、負ののれんを計上して利益が増大したところで、負ののれんからはキャッシュの流入は行われていません。
 以前、「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(1)」で記載したように、利益が黒字だからといって会社が必ずしも資金繰りが順調とは限りません。いわゆる「黒字倒産」というケースもあります。まさに「勘定あって銭足らず」という状態です。
 従って、利益がプラスの場合でも、必ずキャッシュ・フロー計算書を確認し、特に営業キャッシュ・フローがどのような状態になっているのかを確認する必要があります。
 
(2)のれん償却費とキャッシュ・フローの関係
 逆に、営業損益がマイナスであっても、営業キャッシュ・フローはプラスというケースもあります。
 例えば、のれんの償却額が非常に大きい場合、それが原因で営業損失が計上されてしまうこともあります。このようなケースでキャッシュ・フロー計算書を作成してみると、実は、営業キャッシュ・フローはプラスというケースもあります。
 のれんの償却費はキャッシュアウトを伴わないので、営業損失が計上されていても、会社に営業損失に相当する資金流出が必ずしも発生しているとは言えないということです。 
 このような場合は、損益計算書では営業損失が計上されていて、一見、よくなさそうに見えるものの、資金繰りは順調というケースがあります。
 従って、同じく、損益計算書だけでなく、キャッシュ・フロー計算書もあわせて見ることが重要です。

2018年12月3日月曜日

大手電機メーカー元部長の不正発注

1.事件のあらまし
 平成30年11月27日なので少し前の話ですが、大手電機メーカーの開発部門の元部長が架空発注により4億4千万円を着服したとして逮捕されたというニュースがありました。
 もともと、平成29年に社内調査で不正が発覚し、元部長は懲戒解雇されていましたが、警視庁が捜査し逮捕に至ったものです。

 具体的な手口は、会社のページによると、この元部長が「取引先の当時取締役の協力を得て」、約8年間、「正規の取引を装って、試作品等の不正発注を繰り返し」たということです。これにより、元部長は「代金を自らに還流させ私的に流用した」ということです。
 会社のページでは「不正発注」と記載されており、マスコミでは「架空発注」と記載されています。こちらでは真実を知ることはできませんが、今回は「架空発注」ということで進めたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.架空取引を防止するための内部統制
 以前、「架空取引に係る内部統制」というタイトルで架空取引を防止するための内部統制を説明しました。
 このときも、同様に架空取引による事件が発生していました。
 大手電機メーカーなので、内部統制のデザイン(仕組み)はできていたのだと思いますが、このような架空取引の発生はよく発生します。ニュースにならない不正も世の中にはかなりあるのかもしれません。

 架空取引や水増し取引を防止するためには、

 ①発注者と発注担当者は別の人にする
 ②納品時の検収担当者は発注者とは別の人にする。
 ③支払いの担当者は、発注者や検収担当者とは別の人にする。
 ④支払い担当者は、発注書、納品書、請求書を照合する。
 
 という内部統制の仕組みを構築することが効果的ですが、大手電機メーカーであれば、このような仕組みは設けていると思います。
 今回、特徴的なのは「試供品等」を発注したという点です。色々なケースがあると思いますが、試供品となると、おそらく複数の会社の試供品を購入して、比較検討するでしょうから、相見積もりは行っていないと思います。そうなると、取引先が設定した価額で購入することになります。とはいえ、これはしょうがないと思います。
 
 ただ、それでも検収を発注依頼者とは別の人にして納品書に押印し、支払担当者は発注書、納品書、請求書を照合すれば、8年間という長期間の架空発注などの不正は防止できるのでは、と思うのですが、残念ながらそうはなりませんでした。
 今回は、開発部門ということのようなので、開発部門の中の内部統制に不備があったのかもしれません。

 架空取引の場合、相手先の協力があることが多く、実際、今回も取引先の取締役の協力があったということですが、考えられる可能性としては、このようなものかもしれません。

①取引先の取締役が、架空の納品書を元部長宛に送る。
②その納品書に元部長が、検収担当者の検収印を不正に使用し、押印する。
③開発部門から、発注書と納品書が支払担当者に送られる。
④取引先の取締役が架空の請求書を会社に送る。
⑤支払担当者は、照合するものの不正に気づかずに支払をしてしまう。

 仮に、上記の場合だと、検収印を不正に使用させないことが重要です。
 実際に、従業員の個人の印鑑が無断で使用され、不正に利用されたというケースがあります。従って、印鑑の管理は非常に重要です。
 
 他にももっと巧妙な手段もあるのだと思いますが、今回はここまでとします。



 
 


2018年11月25日日曜日

公認会計士試験・条文の表示方法~「項」や「号」の記載

1.「出題の趣旨」
 先日、平成30年公認会計士試験論文式試験の合格発表がありました。
 現在の試験制度では、「出題の趣旨」が公認会計士・監査審査会から公表されています。
 「出題の趣旨」は、問題を出題した試験委員が、出題の内容、出題の目的、答案記載上のポイントなどを記載したものです。
 どちらかというと、答案記載上のポイントはあまり書かれておらず、出題の内容、出題の目的に記載されたものが多くなっています。そのため、受験生はあまり「出題の趣旨」を読んでいないようなのですが、「出題の趣旨」は試験委員が記載したものであり、専門学校が介在していない直接的な情報なので、合格するためには、読んでおくことが望まれます。
 今回は、平成30年公認会計士試験論文式試験の「出題の趣旨」から個人的に気になったところをあげてみたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.条文の表示
(1)「項」、「号」の記載
 租税法のコーナーですが、「解答にあたっては、適用条文の正確な理解及び表示(必要に応じて「項」、「号」まで)が求められる。 」という記載がなされていました。

 これは非常に気になりました。試験委員がこのような記載をするということは、条文をしっかりと記載していない受験生がいる、ということです。
 この記載によれば「項」、「号」を記載していない受験生がいるのだと思います。「項」や「号」を示すことはとても大事です。同じ「○条」でも「項」や「号」によって内容は異なるからです。
 これは租税法だけでなく、会社法でも同様です。

(2)「項」や「号」を示さないとどうなるか
 例えば、会社法の場合ですが、監査役の取締役会への出席義務を記載するとき、

「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条1項)。」

 と書くべきですが、仮に、

「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条)」

 と書いてしまうと、どの条文を示しているのかが不明になってしまいます。というのは383条は1項から4項までありますが、1項には監査役の取締役会への出席義務が定められているのに対して、2項は、監査役の取締役会招集請求権について記載されています。3項は一定の場合における監査役による取締役会招集権、4項は特別取締役による取締役会の場合の不適用についての定めです。
 「383条」だけだと1項から4項までを含んでいることになり、どの項の条文であるのかがわかりません。従って、「383条1項」と明示する必要があるわけです。

 「号」についても同様です。
 例えば、株式会社の商号については、

「株式会社の商号は登記事項である(911条3項2号)。」

 と書くべきですが、仮に

「株式会社の商号は登記事項である(911条)。」あるいは「株式会社の商号は登記事項である(911条3項)。」と書いてしまうと、どの911条のどの部分を示しているのかがわからなくなります。

 このように、「項」や「号」が記載されていないと、どの条文を示しているのかが不明になります。従って、答案としては条文を示していない、すなわち法律要件を示していないということになってしまいます。そうなると、十分な点数がつかない、あるいは、全く点数がつかないということになります。(私見ですが、この場合、全く点数がつかない可能性が高いと思います。)
 このようなことになってしまっては、これまでの努力が水の泡となってしまうので、答案を書くときは普段の答案練習の時から慎重に行うことが重要です。

3.条文番号の表記
 それに加えて個人的に気になっているのが、条文番号の表記です。
 お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)や当ブログでは、例えば、

「理事長が欠席した場合でも、定足数を満たしていれば理事会は成立します(法45条の14④)。」
「この報告を行う趣旨は、理事会による理事長および業務執行理事に対する職務の執行の監督を機能させるためです(法45条の13②二)」
 
 といったように「項」は丸で囲った書き方で書いています。また、「号」は漢数字が多く、時々ローマ数字で書いています。

 しかしながら、本来は例えば「法45条の13第2項2号」といった書き方をすべきです。

 では、なぜ拙著や当ブログではこのような書き方になっているのかというと、理由は以下のとおりです。
 実は、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)を執筆しているとき、私のもともとの原稿では「法○条○項○号」といった記載をしていたのですが、1回目の校正のとき、中央経済社様から「項や号は、①にするなど、略して記載してください。」という要請があったためです。
 従って、このような記載をしているというわけです。

4.「第」はつける必要があるか
 次に、「第…項」といったように「第」までつける必要があるのかという点ですが、これは「出題の趣旨」の会社法のコーナーが参考になります。
 一部を引用してみます。

(イ)「本件債権の弁済期が到来していれば、現物出資財産の価額(会社法 199 条1項3号)は当該債権に係る負債の帳簿価額(券面額)と同額に定められているから、会社法 207条9項5号により、同条の手続は不要である。」

(ロ)「また、Aは当該出資の履行の仮装に関与した取締役に当たり、そのことについて職務を行うについて注意を怠らなかったとはいえないから、Aも甲会社に対して責任を負い(会社法 213 条の3第1項)、BとAの責任は連帯する。 」

 これらを見ると、基本的には「第」は不要ですが、一部で必要なときがあります。 
 それは、(ロ)のように、条の部分が「…条の…」となっている場合です。この場合、「第」をつけないと、「213条の3 1項」といったように数字が続いてしまい、わかりにくくなります。この場合だと「213条の31」と見えてしまうかもしれません。従って、このような場合は「第」をつけると読みやすくなります。

 なお、私の記憶では、会社法でこのような条文の書き方がされたのは、弥永真生教授の「リーガルマインド会社法」(有斐閣)ではなかったかと思います。勝手な推測ですが、このテキストを書くときも出版社から「条文は省略して書いてほしい」と言われたのではないかと思います。
 しかしながら、試験委員も務められた著名教授の本がこのような記載をしているといっても、条文の略書はしない方がよいと思います
 
5.まとめ
 条文は「○条○項○号」といった記載をして、法律要件をしっかりと示すことが重要です。そのためには、普段からテキスト・参考書よりは、条文を読むほうがよいです。
 以上、参考としていただけますと幸いです。

2018年11月5日月曜日

会計監査人の設置基準の引下げ延期

1.厚労省の事務連絡より
 平成30年11月2日付で、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課は、事務連絡として公益社団法人全国老人福祉施設協議会宛で「「社会福祉法人における会計監査人に係る調査と 平成 31 年4月の引下げ延期について(周知)」を送付しました。
 
 これによると、

「今般、平成 28 年社会福祉法改正による会計監査人の設置を円滑に進めていくため、会計監査の実施による効果や導入する場合の課題等について、
(1)平成 29 年度の会計監査を実施した全ての社会福祉法人(約 400 法人)を対象とした調査
(2)収益 10 億円を超える法人又は負債 20 億円を超える法人(約 1,700 法人)を対象とした調査

を、二段階で実施いたします。」

 とし、これに続けて

「このため、法人の準備期間等を考慮し、平成 31 年4月から会計監査人の設置基準を引下げることは行わないこととしましたので、貴団体の会員に周知をいただくようお願いいたします。」

 と記載しています。(文中のゴシックと色付けは筆者)

 そのため、当初は、サービス活動収益が20億円を超える社会福祉法人または負債の部の合計額が40億円を超える社会福祉法人は、平成31年度より会計監査人の設置が義務付けられる予定でしたが、延期となりました。
 従って、平成31年度も引き続き、会計監査人の設置が義務付けられる社会福祉法人は、サービス活動収益が30億円を超える社会福祉法人または負債の部の合計額が60億円を超える社会福祉法人となります。
 ちなみに、これは私が所属する総合経営グループが会員となっているMMPG様より、本日の昼過ぎに参考情報として連絡があり知ることになったものです。

2.監査の準備期間
 前回は、私も傍聴人として参加した平成28年9月26日の社会保障審議会 (福祉部会)で、会計監査人の設置基準が発表されたので、9月下旬には発表があるかなと思っていたのですが、なかなか出てこないので今回は少し遅いなと感じてはいました。
 あくまで推測ですが、いろいろな力が働いたのかもしれません。

 なお、もともと厚労省は福祉部会で、
「・ 平成29年度、平成30年度は、収益30億円を超える法人又は負債60億円を超える法人
・ 平成31年度、平成32年度は、収益20億円を超える法人又は負債40億円を超える法人
・ 平成33年度以降は、収益10億円を超える法人又は負債20億円を超える法人
と段階的に対象範囲を拡大。
 ただし、段階施行の具体的な時期及び基準については、平成29年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえ、必要に応じて見直しを検討する。」
 
 としていたので、平成29年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえるために何らかの調査を行うのだろうとは思っていましたが、これから行うとは想定していませんでした。

 ただ、私見ですが、平成29年度から実施した社会福祉法人の監査では、社会福祉法人側に十分な準備期間がなかったのでは、と感じました。
 ちなみに、上場会社の場合、上場準備期間があり最短で2年、状況によってはそれ以上の期間を経て上場に至るのですが、社会福祉法人の制度改革ではこのような期間がなかったと思います。
 そのため、多くの社会福祉法人は準備不十分なまま、いきなり法定監査に突入してしまったので、気の毒な感じがします。
 従って、今回、会計監査人の設置基準が延期となりましたが、監査の準備期間が設けられたという点ではよかったと個人的には思っています。

 この点を踏まえると、社会福祉法人側では、設置基準の引き下げが決まってから予備調査を始めるのではなく、今の時点から予備調査を受け、任意監査契約を締結することが望まれます。この任意監査の期間に、内部統制の不備や会計上の誤りを修正していくわけです。そうすれば、法定監査に入ってから、監査法人に大きな指摘(金額の大きい会計上の誤りなど)を受ける可能性は低くなります。
 従って、今回の延期を、監査の先延ばしでなく、監査を受けるための十分な準備期間の設置と捉えていただけますとよいかと思います。

2018年11月3日土曜日

建設仮勘定の留意点(2)

1.はじめに
 前回、建設仮勘定を使用する場面では、会計処理の誤りが多く見られる、という話をしました。
 今回は、その誤りの発生を防止するための対策をご紹介したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.費用処理してしまう誤りへの対策案
(1)概要
 よく見られるのは、建設に係る支出を、本来は建設仮勘定で処理すべきところを、費用処理してしまう誤りです。これは、社会福祉法人など非営利法人でよく見られます。
 原因の一つとしては、建物の建設は頻繁に行われるわけではないので、経理担当者が建設仮勘定による処理に慣れていないことがあげられます。
 本来であれば、内部統制のデザインの一つとして、例えば、経理担当者は日商簿記2級以上の資格を有する者にする、各種研修会の受講を義務付ける、経理雑誌の購読を行う、といったことも必要です。しかしながら、多くの公益法人、社会福祉法人、医療法人といった非営利法人では、まだそこまでの体制が整っていないのが現状です。
 もちろん、経理担当者がそれなりの知識を有していても、誤りやすい分野でもあります。
 そこで、この誤りを防止するための対策案をあげてみます。

(2)支出の範囲の把握
 まず、あらかじめ建設に係る支出の範囲と見積額を把握することがあげられます。
 建設を行うためには、設計から始まりますが、建設計画に基づいて設計から工事完了までに至るすべての作業と見積額を一覧にして把握します。
 そして、この一覧をもとに支払予定表を作成し、前もって支払時期や支払予定額を把握します。期中において、その時点の建設仮勘定の額と支払予定額を比較して大きな差異がないかどうかをチェックしていけば、建設仮勘定への集計漏れは防ぐことができます。
 監査において、よく見られたのは設計や測量など工事に入る前に発生する支出を費用処理する誤りでした。また、工事業者への前払金も建設仮勘定で処理しますが、時々この前払金も費用処理してしまう誤りも見られました。
 しかしながら、このようにすれば、建設仮勘定にすべきところを費用処理する誤りも防止できるでしょう。

(3)上長のチェック
 次に必要なのは、やはりというか上長のチェックです。
 振替伝票のチェックのときに、上長は建設に係る支出が建設仮勘定で会計処理されているかどうかをチェックすることが必要です。
 また、上に記載したように、建設仮勘定の額と支払予定額を比較して、建設仮勘定への計上漏れがないかどうかも上長が確かめる必要があります。

3.建設仮勘定の振替
 建設仮勘定は、当該建物等が完成した時点で建設仮勘定に振り返る必要がありますが、この振替を失念していたり、タイミングを誤ったりするというミスも時々見受けられます。
 建設仮勘定の振替を忘れてしまうと、減価償却の開始が遅れる可能性ができます。そうなると、費用の計上漏れが発生してしまいます。
 通常は建物が完成したら、ほぼ同時期に稼働するでしょうから、その月から減価償却を開始します。
 このあたりの対策となると、支払予定表に、工事が完了して建物等が完成したら本勘定に振り替えるということを明記しておいて、常に意識しておくということが一つの手段として考えられます。


 


2018年9月29日土曜日

平成30年度民間社会福祉施設長研修会で使用したレジュメについて

 平成30年8月7日にキャンパスプラザ京都で開催された「平成30年度民間社会福祉施設長研修会」で使用した資料が京都府の「平成30年度民間社会福祉施設長研修会 会議資料」というページに掲載されています。

 私のレジュメは「資料3」として掲載されています。
 京都府による指導監査の重点ポイントが記載された資料も掲載されています。

 「社会福祉法人会計でのチェックポイント」というタイトルですが、内容は内部統制です。もともと京都府がこのタイトルを「仮題」として設定されていたのですが、そのまま使用しました。 

 参考としていただけますと幸いです。 


2018年8月29日水曜日

社会福祉法人向けセミナー開催のお知らせ

 平成30年10月に社会福祉法人向けセミナーを開催することになりました。
 テーマは、会計監査でよく問題となる主要論点の解説です。

 会場は以下の3会場です。セミナー開始時刻はいずれも14時00分です。

 10月4日(木)   ハートピア京都
 10月9日(火)   阪急グランドビル
 10月11日(木) 神戸国際会館

 現在、平安監査法人HPへのアップロードを準備中ですが、先行して以下のページを印刷していただき、FAXでお申し込みいただいても結構です。
 FAX番号は 075-256-1231 です。

 今回はどの会場も席数数が少なくなっていますので、ぜひお早めにお申し込みください。
 
 皆様のご来場をお待ちしております。
 
 

2018年7月7日土曜日

キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(2)

1.「収入・支出」と「収益・費用」の違い
 キャッシュ・フロー計算を行うにあたっては、「収入・支出」と「収益・費用」の違いを知っておくことが重要です。
 一見すると「収入・支出」と「収益・費用」は何となく同じような感じがしますが、これらは異なります。例えば、前受金のように、収入(キャッシュイン・フロー)があったからといって収益になるとは限りませんし、有形固定資産の購入のように支出(キャッシュアウト・フロー)があったからといって費用になるとは限りません。
 このように、「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にはタイミングのズレが生じます。キャッシュ・フロー計算書はこのタイミングのズレを調整し、「収益・費用」を「収入・支出」の関係にする計算書です(間接法の場合)。

2.タイミングのズレが生じる理由
 「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にタイミングのズレが生じるのは、現行の会計が発生主義会計で行われているためです。
 例えば、100万円の売上があり、それを掛売上とした場合、

(借方)売掛金 100 (貸方)売上 100

 という仕訳をおこします(単位は万円)。
 これは発生主義会計による仕訳です。これが現金主義会計であれば、売上時点で100万円の収入はないので、売上の認識は行いません。

 もう一つ例を挙げると、100万円の現金払いで機械を購入した場合、

(借方)機械 100 (貸方)現金 100

 という仕訳をおこします(単位は万円)。
 現金主義会計であれば、100万円の支出があったため、機械の購入時点で100万円の費用を計上することになります。
 しかしながら、発生主義会計のもとでは、購入時点で全額を費用認識は行いません。費用は減価償却費という形で、耐用年数期間に渡って費用計上します。

 このように、現行の会計は発生主義で行われているため、「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にタイミングのズレが生じます。
 ただし、これはあくまでタイミングのズレであって、収益は必ず収入に結びつきますし、費用も必ず支出に結びつきます。
 実は、企業会計原則では、第二 一Aで「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」と定めています。
 発生主義会計を行っていると、「収入・支出」の概念を忘れがちですが、「収益・費用」は「収入・支出」と結びついているということを知っておく必要があります。

3.貸借対照表と損益計算書の関係
 我が国の会計基準は、利益計算において長らく収益費用アプローチと呼ばれる方法をとってきました。その下では、貸借対照表は損益計算の連結環と呼ばれます。
 詳細は割愛しますが、この場合、貸借対照表は「収入・支出」と「収益・費用」のズレをおさめているものというイメージでよいと思います。
 例えば、売掛金は収益として認識しているものの、収入はまだありませんので「収益・未収入」となります。機械などの有形固定資産は支出したものの費用にはなっていませんので「支出・未費用」です。このあたりはシュマーレンバッハの貸借対照表論が参考になります。

4.間接法の考え方
 前回、間接法に触れましたが、間接法は当期純利益に貸借対照表項目や非資金損益などを加算減算して営業活動によるキャッシュ・フローを算定する方法です。
 間接法では、当期純利益という損益計算書項目に、売掛金の増減額や買掛金の増減額の貸借対照表項目が加算減算されるので、初めての人だと「何で当期純利益に貸借対照表科目を足したり引いたりするのか」「売掛金が増加したとき何で当期純利益から減算するのか」と思われるかもしれません。
 しかしながら、これまでみてきたように、貸借対照表は「収入・支出」と「収益・費用」のズレをおさめているものと見ることができますので、貸借対照表科目の増減を当期純利益に加算減算することで、当期純利益から営業活動によるキャッシュ・フローを算出することができます。
 例えば、売掛金が期首から期末にかけて20万円増加したとします。売掛金は「収益・未収入項目」ですから、損益計算では収益として認識しているものの、キャッシュ・フロー計算では未収入なので、収益と収入に20万円のズレが生じているということを表しています。この場合だと、収益が収入よりも20万円多いので、収益の額を収入の額にするには、収益から20万円減算することが必要です。 
 従って、間接法では、売掛金が増加した場合、当期純利益から減算するというわけです。
 以下に、利益計算とキャッシュ・フロー計算の関係を図表で記載しました。
 参考としていただけますと幸いです。



 

2018年5月13日日曜日

平安監査法人バリューアップセミナーのお知らせ

 平成30年6月6日(水)13時30分より、平安監査法人バリューアップセミナーを開催いたします。場所は京都市です。
 テーマは、内部統制と事業承継です。

 申込みはWEB又はFAXとなっています。
 WEB申込みはこちらのページにアクセスをお願いいたします→http://www.sogokeiei.co.jp/seminar/s20180606_test.html

 FAX申込みの場合は、下記申込用紙を印刷の上、075-256-1231へお送りください。
 
 お問い合わせは、平安監査法人総務部で受け付けております。
 電話番号 075-211-7550 にご連絡ください。

 皆様のご参加をお待ちしております!



2018年5月6日日曜日

事業計画と資金繰表~継続企業の前提(2)

1.はじめに
 前回は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、継続企業の前提に関して経営者は評価を行い、対応策を策定する必要がある旨を記載しました。
 今回は、経営者による対応策の検討について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.重要な不確実性
 経営者が、貸借対照表日において、企業が将来にわたつて事業活動を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という。)に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であつて、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する注記をしなければなりません(財務諸表規則8条の27)。
 監査人側も、経営者の評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを確かめなければなりません(監査基準第三 三8)。
 言い方を変えると、経営者が策定した対応策によって重要な不確実性が解消できると認められれば、継続企業の前提に関する注記は不要ということです。

3.「重要な不確実性が認められる」とは
 この「重要な不確実性」という用語については、はっきりとした定義が見当たらず、諸説あるものと思われますが、私自身は、「経営者が策定した対応策における、ある前提がなくなれば、その対応策が実現できなくなり、企業の継続性が成り立たなくなる状態となる状況」と考えています。
 企業の継続性が成り立たなくなるとは、経営が破綻するということですが、より具体的に言うと、資金繰りがショートするということです。
 すなわち、1年間資金をもたすために、企業は様々な事業計画を立てて、それに基づいて資金繰り計画を作成しますが、これらの事業計画が全て順調に進むとは限りません。というのは、事業計画における様々な対応策は、相手があることが多いためです。例えば、途中で相手と破談になるなど、相手方の決定によって計画が頓挫するリスクがあります。
 言い換えると、企業が作成した資金繰表は、様々な事業計画が前提となって作成されていますが、その前提が崩れると資金がショートするような場合は、重要な不確実性が残っている状況といえると考えています。
 この前提は一つとは限りません。複数あることのほうが多いでしょう。この複数の前提のうち、一つでも成り立たなくなるなれば資金がショートするというのであれば、重要な不確実性が認められる対応策であると考えています。

 今回はここまでとします。続きは次回以降といたします。

2018年4月30日月曜日

事業計画と資金繰表~継続企業の前提(1)

1.継続企業の前提
 企業は、将来にわたって事業を継続することを前提としています。これを継続企業の前提といいます。企業が作成する財務諸表も、この継続企業の前提に基づいて作成されます。
 しかしながら、場合によっては、企業の継続性が危うくなる状況も出てくることもあります。これを、会計や監査の用語では「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」といいます。
 今回は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合において、企業がとるべき行動を監査人の視点から解説いたします。具体的には、事業計画と資金繰表の作成です。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.経営者の評価
 最初に、経営者の評価について簡単に記載します。
 まず、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。そして、経営者は、このような事象又は状況に対して対応策をとる必要があります。
 監査人は、経営者がこのような評価を行っているかどうか、またこのような評価についてその妥当性を検討します。

【表1】

3.重要な疑義を生じさせる事象又は状況
 上記の通り、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。
 これについては、監査基準委員会報告書(以下「監基報」)570「継続企業」のA1に例が列挙されています。
 A1では、「財務関係」、「営業関係」、「その他」の3つに分かれています。
 もうひとつ、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」(以下「74号」)の4では、「財務指標関係」、「財務活動関係」、「営業活動関係」、「その他」の4つに分かれています。
 これらは、例示列挙なので、これらが全てというわけではありません。
 実務で、よく判断基準として採用されるのは、おおむね2期連続で営業損失を計上した場合です。これは、74号で例示されている「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス」が根拠となっていると思われます。

4.対応策の策定
 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合、これを解消し、又は改善するための対応策を策定することになります。
 経営者の評価期間は、少なくとも期末日の翌日から12ヶ月間です。これはどういうことかというと、少なくとも期末日の翌日から1年間、企業が存続できるかどうかを評価する必要があるということです。もっとくだけた言い方をすると、企業が1年もつかどうかを評価してほしいということです。 
 このとき、実務上は、対応策しては事業計画と資金繰表を提示していただき、それを監査人が評価します。
 特に、資金繰表は大変重要です。企業が期末日の翌月から1年間もつかどうかということは、資金繰りが1年間もつかどうかということになるからです。
 当然、資金繰表は月別のものを作成することになります。企業には季節的変動もあるので、閑散期に資金が枯渇するという可能性も考えられるからです。また、売掛金や買掛金の締日・払日、手形の期間なども緻密に反映する必要があります。そうしないと、資金の出と入が適切に反映できないため、実現可能性の高い資金繰表を作成できないからです。
 監査人は、このあたりの精緻さもチェックします。

 今回はここまでとします。続きは次回以降といたします。

2018年4月24日火曜日

有形固定資産の除却について

1.概要
 使用されなくなった機械や備品などは処分を行うことになりますが、この処分について会計上は除却として処理することになります。
 今回は、除却に係る論点について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.除却に係る会計処理
(1)期中の減価償却費を計上する処理
 除却を行う場合でも、減価償却が進行中の有形固定資産であれば、原則として期首から除却時までの減価償却費を計上します。
 簿記の教科書に記載されている仕訳はこの方法です。公認会計士試験、税理士試験、簿記検定試験を受験するために勉強された方はこの方法をマスターされていると思います。
 例えば、工具器具備品を除却した場合の仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    減価償却費   ・・・
    固定資産除却損 ・・・

(2)期中の減価償却費を計上しない処理
 一方、実務上、減価償却費を計上しない会計処理を適用している会社もあります。この場合、期首帳簿価額が固定資産除却損となることになります。
 仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    固定資産除却損 ・・・

 結果として期中の減価償却費が固定資産除却損に含まれる形となります。
 財務諸表監査上も、この会計処理も概ね問題なしとして判断しています。ただし、継続適用することが前提です。ある年は、減価償却費を計上し、別の年は減価償却費を計上しないという処理は認められません。
  
3.除却漏れ
 有形固定資産が除却されたら、上記のように会計上にも反映することになりますが、ときどきこの除却の処理が行われていないときがあります。
 原因は、除却の情報が経理部に届いていないためです。そのため、固定資産の除却の仕訳がおこされず、固定資産台帳にも計上されたままということが生じてしまいます。
 これを防止するための一つの方法は、有形固定資産についても実査を行うことです。
 実査を行う場合は、前提として、全ての有形固定資産について、購入時に管理番号を付したシールを添付しておくことです。管理番号は固定資産台帳に付した番号がよいでしょう。そのほうが、照らし合わせやすいからです。
 また、下記4にも記載していますが、現場から除却の情報が経理部にもれなく届く組織作りも必要です。
 なお、私の経験上、支店や店舗に行くと、固定資産台帳に計上されている有形固定資産について、現場の管理者がどこにあるのかを全く把握されていなかったり、そもそも、固定資産台帳に計上されている有形固定資産そのものについて「こんなのあるのですか?」といったように、あるのかないのかも把握されていなかったりするケースがよくありました。
 従って、内部統制の一環として、現場の管理者も固定資産台帳の内容を把握する体制作りが必要です。

4.除却に係る内部統制
 除却については、確実に廃棄処分されることが必要です。廃棄予定のものを、従業員が持ち帰って、リサイクル業者に売却して、金銭を得るというリスクも想定されます。また、パソコンについては情報漏洩が発生しないように、データを確実に消去する必要があります。
 固定資産の除却については、廃棄にかかる稟議書により、廃棄の承認を得てから廃棄処理を行うという流れにする必要があります。
 また、廃棄の際は、廃棄業者によって確実に回収されたことを確かめるために、複数人で立ち会い、さらに廃棄証明を発行してもらうことが望まれます。写真を撮っておくことも有効です。
 そして、廃棄が終わったら、経理部や固定資産台帳の管理者にその旨の情報が届くよう、廃棄証明書など廃棄したことが分かる証憑一式を稟議書のコピーとともに経理部に届けるようにする体制とするとよいでしょう。

2018年4月5日木曜日

平安監査法人バリューアップセミナー開催のお知らせ

【お知らせ】
 平成30年6月6日(水)に、平安監査法人バリューアップセミナーを開催することになりましたのでお知らせいたします。先日4月の開催とお知らせしましたが変更となりました。ご了承ください。

 会場は、京都のヒロセビル1階(京都市中京区烏丸通二条下ル秋野々町529番地)です。地下鉄烏丸御池駅より北へ約5分です。マンガミュージアムより少し北側です。
 13時より受付開始です。

 私は第1部で「従業員不正を防止するために構築すべき内部統制」を担当します。
 第2部は「2018年税制改正後の事業承継成功のシナリオ」です。こちらは事業承継についてです。

 当日のセミナーでは、実際に起った不正事例をあげながら、その不正が起こった原因とそれを防止するための内部統制について具体的にお話したいと思います。
 
 皆様のご参加をお待ちしております。
 よろしくお願いいたします。



2018年4月3日火曜日

一般債権に係る貸倒実績率の算定

1.一般債権の貸倒見積高の算定
 金融商品会計基準(以下「基準」)27項では、貸倒見積高の算定にあたって、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債権等、の3つに区分しています
 このうち、一般債権とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいいます(基準27項)。
 この一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する、とされています(基準28項)。
 今回は、この「貸倒実績率等」とされているうちの「貸倒実績率」の算定方法について、留意点を記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.貸倒実績率法
 貸倒実績率は、ある期における債権残高を分母とし、翌期以降における貸倒損失額を分子として算定する、とされています(金融商品会計に関する実務指針(以下「実務指針」)110項)。
 すなわち、「翌期以降における貸倒損失額÷ある期における債権残高」となります。
 このように算定した貸倒実績率を債権金額に乗じ、貸倒見積高を算定します。
 
3.個別引当による貸倒引当金繰入額
 この分子の貸倒損失額の範囲ですが、まず実際に貸倒れた債権にかかる損失額が入ります。これは文字通りなので問題はないと思います。
 しかし、この分母の翌期以降における貸倒損失額に、貸倒懸念債権や破産更生債権等に係る個別貸倒引当金繰入額を含めて計算するのかどうかという問題があります。
 この点について、金融商品会計に関するQ&A(日本公認会計士協会会計制度委員会 以下「Q&A」)では、Q41で「貸倒実績率の算定において、分子の貸倒損失額に、個別引当による貸倒引当金繰入額を含めてもよいでしょうか。」というQが出ています。
 これについて、このQ&Aでは、まず、このような貸倒引当金繰入額は見積もりである以上、まだ損失として実現していないことなどの理由から実務指針上では、貸倒実績率の算定上分子に含めるかどうか明確ではない、としながらも、

「しかし、専門家による評価など十分に精度の高い担保及び保証の回収見込額に基づいて引き当てられているものや、損失として早々に実現する可能性が高いものについては、これを貸倒実績率の分子に含めて算定することは差し支えなく、また、それが実態をより反映することになるものと考えられます。 」

 という回答を記載しています。
 このQは「含めてよいか」という質問なので、一定のものについては「含めても差し支えはない」という回答になっています。

4.個別引当による貸倒引当金繰入額は含めなければならないのか
 気になるのは、それでは一定の個別引当による貸倒引当金繰入額は分子に含めなければならないのかどうか、という点です。
 この点については、上述のように「含めなければならない」とは記載していません。
 しかしながら、「それが実態をより反映することになるものと考えられます。」と記載されていることから、「含めなければならない」と記載はされていないものの、「含めることが望まれる」というニュアンスに読み取れます。
 では、実務上はどうかというと、私の経験上、そもそも、このQ&Aの存在を知っている会社は多くはないという印象です。そのため、会社の計算で、個別引当による貸倒引当金繰入額を分子の貸倒損失額に入れている会社は多くはないです。
 一方、財務諸表監査を行う経験豊富な公認会計士は、このQ&AのQ41を根拠に、分子の貸倒損失額に、この個別引当による貸倒引当金繰入額を入れる必要があるという主張をしてきます。
 その結果、会社側も概ね「確かにそうだ」ということで、最終的には、監査サイドの主張を受け入れ、分子の貸倒損失額に個別引当による貸倒引当金繰入額を含めて、貸倒実績額を計算するという流れになることが多いようです。
 だからというわけではありませんが、結論としては、一定の個別引当による貸倒引当金繰入額は、実態を適切に反映するために、分子の貸倒損失額に含める必要がある、というのが妥当ではないかと思います。