2019年9月16日月曜日

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2019年9月14日土曜日

「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」の公表

1.第二次アンケートも含めた結果

今年の1月27日に「会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果についての感想」というブログを書きましたが、令和元年8月30日付で第2次調査の結果も含めた「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」が厚生労働省より各所轄庁に発出されました。
 このアンケート結果は、いろいろなサイトに掲載されていますが、ここでは大阪府のサイトをご紹介しておきます。大阪府のサイトはこちらです。

2.会計監査までの準備期間

(1)前回の決定時期

 アンケート結果には、自由記入欄の結果として各社会福祉法人のご意見も記載されています。
 前回の第1次アンケートにも自由記入欄の記載はありましたが、今回、私が取り上げるのは会計監査が開始されるまでの準備期間についてのご意見です。

 ご存知のように、平成29年4月1日から開始する事業年度より、サービス活動収益30億円超又は負債総額60億円超の法人は会計監査人の設置が義務付けられることになりました(社会福祉法(以下「法」)37条)。そのため、この会計監査人の設置が義務付けられた社会福祉法人(特定社会福祉法人)は、公認会計士又は監査法人による社会福祉法に基づく会計監査を受けることになりました(法45条の2①)。

 この社会福祉法に基づく監査の対象は前年の平成28年9月26日の社会保障審議会で決定したと記憶していますが(ちなみに、私も傍聴人として参加していました。)、このあたりから会計監査人候補の選定に入った法人が多かったのではないかと思います。もちろん、それ以前に、サービス活動収益が30億円を超えている法人の中には会計監査人設置の義務付けは確実ということですでに会計監査人予定者を決定していた法人もありました。

 そこで、平成28年10月以降に会計監査人候補の選定を行った法人が、概ねどのような経緯をもって社会福祉法に基づく会計監査に入っていったのかを簡単に記載します。

(2)会計監査に入るまで

 平成28年9月26日に会計監査人の設置が義務付けられる社会福祉法人の対象が決定して以降、対象となった社会福祉法人はプロポーザルを行い、会計監査人候補の選定に入りました。ここで「会計監査人候補」と記載しているのは、会計監査人は評議員会で決定されるため(法43条①)、定時評議員会が開催される以前においては、正式に会計監査人として選任されていないためです。
 プロポーザルは早いところでは平成28年10月~11月には行っていましたが、遅いところでは平成29年1月~2月という法人もありました。
 いずれにしろ、多くの法人では、平成28年10月から平成29年2月ぐらいまでには会計監査人候補が選定されていたのではないかと思います。
 会計監査人候補が選定されたら、次に行われるのは予備調査です。予備調査では、内部統制に依拠した会計監査が実施できるかの調査、会計及び内部統制に関する問題点の指摘、その他反社会的勢力との関わりの有無の調査などを行います。
 この予備調査とその報告は、遅くとも平成29年3月までには終わっていたのではないかと思います。というのは、4月に入ると期末決算の時期に入るので法人側も対応が難しくなるからです。
 総じて見て見ると、会計監査人の選定から予備調査の報告までの期間は、おおむね平成28年10月から平成29年3月までの約6ヶ月ということになります。
 そして、予備調査の報告が終わった後は、6月に開催される評議員会で会計監査人の選任が行われ、7月から会計監査が行われるという流れとなりました。

(3)会計監査までの準備期間

 予備調査については、通常、監査法人から予備調査報告書が提出され、会計及び内部統制の問題点が指摘されます。その後は、指摘された事項について改善を行うことになります。しかしながら、特に内部統制については改善といっても一朝一夕にできるとは限らず、時間を要するものもあります。
 これを踏まえると、平成28年10月から平成29年3月までの最長6ヶ月間であっても改善を行うには期間が短いといえます。4月からは期末決算に入るので3月までには改善を終了させる必要がありますが、法人によっては予備調査報告を受けてから3月末までの期間が、3ヶ月間あるいは2ヶ月間ぐらいしかなかったかもしれません。

(4)上場準備会社では?

 以前、このブログでは「会計監査人の設置基準の引下げ延期」というブログを書きましたが、この中で私は、

「私見ですが、平成29年度から実施した社会福祉法人の監査では、社会福祉法人側に十分な準備期間がなかったのでは、と感じました。
 ちなみに、上場会社の場合、上場準備期間があり最短で2年、状況によってはそれ以上の期間を経て上場に至るのですが、社会福祉法人の制度改革ではこのような期間がなかったと思います。
 そのため、多くの社会福祉法人は準備不十分なまま、いきなり法定監査に突入してしまったので、気の毒な感じがします。
 従って、今回、会計監査人の設置基準が延期となりましたが、監査の準備期間が設けられたという点ではよかったと個人的には思っています。」

 と記載しました。

 もう少し、実務の現状を記載すると、上場を目指す会社では上場準備監査のショート・レビューが行われる前にコンサルティング会社などが入って、会計及び内部統制の問題点を指摘し、あらかじめ改善しておくという実務が行われることが多いです。人によっては「プレ・ショート・レビュー」という言い方をする人もいます。
 このように、上場を目指す会社は、上場後の法定監査(金融商品取引法監査)が行われる前に任意監査である上場準備監査、さらには上場準備監査が行われる前の「プレ・ショート・レビュー」を経ています。この期間は最低2年間ですが、3年以上かかっている会社は多く見られます。
 これに比べると、社会福祉法人の場合は、いわゆる法定監査を受けるまでの期間が短すぎると思いました。

3.アンケート結果より

 アンケート結果にもこの点がいくつか記載されています。
 以下抜粋します。

「平成 28 年度から予備調査を実施したが、法人の事業規模から考えると、十分な準備期間であったとはいえない。特定社会福祉法人以外の法人でも、早期に予備調査を実施し、内部統制の不備や会計上の誤りについて修正すべきと考える。また、会計監査人の選任にあたっては、「医療・福祉業界」に精通した、専門性の高い監査法人の選定が重要である。この点を踏まえると、今回の会計監査人の設置基準引き下げが延期となり、会計監査の準備期間が設けられたという点では良かったと考える 。」

 会計監査人の設置基準引き下げが延期になり会計監査の準備期間が設けられた点ではよかったという点は、上記2(4)に記載したとおり私も同意見です。

「公認会計士の話によると、一般企業で上場する場合は、上場準備期間があり、それを経て会計監査を受けるための体制も整っていくとの事であり、 社福法人においても会計監査受ける場合は、同様の対応が必要なのではないか。」
 
 こちらも上記2(4)に記載したとおり、上場会社では上場するまでに上場準備期間があります。法定監査に入るまでには相応の期間が必要と個人的には考えていますが、少なくとも、社会福祉法人の場合は期間が短すぎると思います。もう少し、法定監査に入るまでの準備期間を長く設けるべきと思います。

4.まとめ

 正直申し上げて、多くの社会福祉法人では現状の内部統制や経理レベルでは、監査法人が行う本来のレベルの会計監査に対応するには難しいと思います。
 そのため、監査法人がまともに会計監査を行うと、現場にもかなりの混乱と負担がかかってしまいます。実際、アンケート結果にも監査対応を行う職員の負担や現場の混乱についても記載されていました。
従って、会計監査に対応するためには、早めに公認会計士などの専門家を入れて、予備調査が行われるまでに、できる限り十分な時間をとる必要があります。

2019年9月6日金曜日

独立開業のお知らせ

 令和元年8月末日をもって平安監査法人を退社し、同年9月1日より独立開業いたしました。
 名称は「森 智幸 公認会計士・税理士事務所」(英語表記:Tomoyuki Mori CPA Office)です。

 事務所のホームページはこちらです。

 もちろん、このブログは引き続き、連載してまいります。
 今後ともよろしくお願いいたします。