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2019年6月23日日曜日

キャッシュ・フロー計算書~消費税及び地方消費税の取扱い

1.はじめに

令和元年(2019年)6月19日の日本経済新聞に「企業投資、最高の52兆円 「ため込む」より「使う」 」という見出しの記事がありました。
 これによると、日本企業は、将来の企業の成長のために積極的に投資を行っているということです。日本経済新聞の調査では、その裏付けとして「投資キャッシュ・フロー」が「3年連続で最高」となり、「趨勢的に」増加しているということです。

 この記事に出てくる「投資キャッシュ・フロー」はキャッシュ・フロー計算書の「投資活動によるキャッシュ・フロー」のことと推測されますが、この「投資活動によるキャッシュ・フロー」には機械などの設備投資、有価証券の売買、貸付金の支出・回収などを記載する区分です。
 そのため、企業は、機械などを購入した場合、キャッシュ・フロー計算書にその支出額を反映する必要がありますが、今回は、キャッシュ・フロー計算書において、機械などを購入したときの消費税及び地方消費税の取扱いに関する留意点について記載したいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.キャッシュ・フロー計算書と消費税及び地方消費税

日本公認会計士協会が作成している「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」では、36項に、キャッシュ・フロー計算書における消費税及び地方消費税(以下「消費税等」)の処理が記載されています。
 
 それによれば、「消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の「キャッシュ・フロー計算書」上の表示」として3つの方法が記載されています。

① 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等込みの金額で表示する方法
② 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等抜きの金額で表示する方法
③ 消費税等抜きの資産・負債の増加額若しくは減少額に、又は収益若しくは費用の額に、これらに関連する消費税込みの債権・債務の期中増減額を調整して、各表示区分の主要な取引ごとのキャッシュ・フローを表示する方法

 このうち、実務で多く用いられているのは③の方法ではないかと思います。
 
 なお、消費税等の取扱いについては、
「消費税等の申告による納付又は還付に係るキャッシュ・フローは、課税取引に関連付けて区分することが実務的に困難なため、「法人税等の支払額」と同様に「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に消費税等支払額(還付額)又は未払(未収)消費税等の増減額として記載する。」
 とされています。
 実務では間接法の採用が多いので、間接法を前提とすると、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に「未払消費税等の増減額」または「未収還付消費税等の増減額」といった科目で表示されます。

3.投資活動によるキャッシュ・フローにおける消費税等の取扱い

(1)「投資」と「財務」は収入・支出ベースで記載

それでは、機械設備の購入などを行ったとき、投資活動によるキャッシュ・フローでは税抜金額で表示するのか、それとも税込金額で表示するのか、さてどちらでしょうか?
 
 以下、間接法を前提として記載しますが、間接法で作成するキャッシュ・フロー計算書においても、直接法と異なるのは「営業活動によるキャッシュ・フロー」のみであって、「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」の記載は直接法と同じです。すなわち、機械設備の購入であれば、その機械設備の購入に伴って支払った支出金額が「投資活動によるキャッシュ・フロー」に記載されます。
 すなわち、収入・支出ベースで記載することになります。

(2)機械設備の購入の仕訳

一例として機械設備の購入を取り上げます。
 例えば、機械設備を購入したときの仕訳は以下のとおりです。

【設例】
 R✕2年3月に機械設備を648千円(税込)で購入した。税率は8%とする。
 会計処理は税抜方式とする。
 決算期は3月とする。なお、機械の稼働月は4月であるため、減価償却は行わないものとする。

【仕訳】(単位:千円)
(借方)機械設備   600 (貸方)現金預金 648
    仮払消費税等 48

 簿記3級レベルの知識があれば、すぐにできる仕訳ではないかと思います。
 

(3)上記2③の方法の場合どうなるのか

次に、消費税等の取扱いについて記載します。
 上記2ではキャッシュ・フロー計算書における消費税等の取扱いについて、①~③の方法を記載しましたが、実務上多く用いられていると思われる「③消費税等抜きの資産・負債の増加額若しくは減少額に、又は収益若しくは費用の額に、これらに関連する消費税込みの債権・債務の期中増減額を調整して、各表示区分の主要な取引ごとのキャッシュ・フローを表示する方法」を前提に記載します。

 この場合、上記(2)の機械の稼働は購入にかかるキャッシュ・フローは600千円なのか、それとも648千円なのか、どちらになるのでしょうか。
 間接法であっても、投資活動によるキャッシュ・フローは収入・支出ベースで記載するので、一見、現金預金の支払額648千円のような感じもします。

 ちなみに、営業キャッシュ・フローの計算において、売上債権や仕入債務の増減額は税込金額を使用しています(上記2③参照)。

 そこで、以下、極端に簡単な設例を記載します。

【設例】
①決算期は3月とする。
②R✕1年度期首時点では、現金預金1,000千円、負債0円、純資産1,000千円であった。
③R✕2年3月に機械設備を648千円(税込)で購入した。税率は8%とする。なお、機械の稼働月は4月であるため、減価償却は行わないものとする。(上記3(2)の設例と同じ)
④税率は8%とする。
⑤会計処理は税抜方式とする。
⑥その他の取引はなかったものとする。

 その他の取引はなかったものとしますので、収益、費用は0となり、当期純利益も0とします。
 機械の購入の会計処理は上記3(2)の通りです。
 その結果、期末の貸借対照表は以下の構成になります。

 資産:現金預金352千円、未収還付消費税等48、機械設備600 資産合計1,000
 負債:0円
 純資産:1,000千円
 
 ここで、間接法でキャッシュ・フロー計算書を作成すると以下のようになります。(単位:千円)

【営業活動によるキャッシュ・フロー】
当期純利益0
未収還付消費税等の増減額△48
営業活動によるキャッシュ・フロー△48
【投資活動によるキャッシュ・フロー】
有形固定資産の購入による支出
投資活動によるキャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の増減額△648
現金及び現金同等物の期首残高1,000
現金及び現金同等物の期末残高352


 ?の部分には、600か648のどちらかが入ることになりますが、逆算していただければおわかりのように?には600が入ります。
 なぜかというと、消費税等の増減は、全額が営業キャッシュ・フローにおいて処理されているからです(上記2参照「「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に消費税等支払額(還付額)又は未払(未収)消費税等の増減額として記載する。」
 そのため、投資活動によるキャッシュ・フローは税抜金額となるわけです。
 従って、税抜方式の場合、投資活動によるキャッシュ・フローも税抜の金額が記載されることがわかりました。

4.まとめ

以上のように、間接法で税抜方式の場合、投資活動によるキャッシュ・フローで消費税法の課税仕入、課税売上に該当する取引は税抜処理で処理することになります。

 このように見てみると、特に難しくないように思えるのですが、債権債務は税込金額で増減額を算出していること、投資活動によるキャッシュ・フローは収入・支出ベースで記載することを思い浮かべると、結構迷う方はおられます。

 もっとも、キャッシュ・フロー計算書は精算表で作成されている会社が多いと思います。精算表では、貸借対照表に記載される有形固定資産の金額も税抜で記載されますし、増減の金額も税抜で記載された総勘定元帳、あるいは固定資産台帳の増加額、減少額を記載しますので、特に考えなくとも機械的に作成できます。

 精算表はかなり簡単にキャッシュ・フロー計算書を作成できるため、実務上、便利ですが、時々、キャッシュ・フロー計算書の構造も考えてみると意外な発見があり面白くなるかもしれません。

2019年2月3日日曜日

日EU・EPA発効~その効果とビジネスへの影響

1.はじめに
 2019年2月1日付で日EU・EPAが発効されました。(注:マスコミなどでは「日欧EPA」と呼んでいますが、政府、各省庁は「日EU経済連携協定(日EU・EPA協定)」と呼んでいます。ここでは「日EU・EPA」と記載することにします。)
 これにより、日本とEUとの間で巨大な自由貿易圏が誕生しました。日本からの輸出、日本からの輸入についても関税が引き下げられ、最終的にはゼロとなります。一部品目については、発効日の2019年2月1日付で即時撤廃、すなわち関税がゼロとなりました。

2.そもそもEPAとは何か
 2018年12月30日にはTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)が発効され、こちらもアジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏が誕生しました。
 ここで、EPAやTPPと、自由貿易圏を巡っていろいろな用語が出てきます。自由貿易圏についての言葉であるということはわかりますが、どのような違いがあるのでしょうか?

 自由貿易の促進については、もともと1995年に発足したWTO(World Trade Organization 世界貿易機関)が発端です。このWTOにより自由貿易を発展させていこうという動きが始まりました。しかしながら、原則として、現在加盟している全164の加盟国及び地域のすべての同意が必要であるため、先進国と発展途上国との対立もあり、全会一致は困難なものとなりました。

 そこで、2国間で協定を締結する動きが出てきました。2国間であれば、WTOよりも交渉などを進めやすいからです。このようにしてできたのがFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)です。このFTAは「特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定」です(外務省HPより)。

 このFTAは、関税などの削減・撤廃を目的としてものですが、こういった貿易面のみならず、「貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定」外務省HPより)がEPA(Economic Partnership Agreement 経済連携協定)です。簡単に言ってしまえば、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービス、種々の規制といった面についても自由化していこうというものといえます。

 さらに、2国間の協定から、さらに範囲を広げて地域で協定を締結しようという流れも出てきました。このようにすれば、各国とそれぞれに協定を締結するよりも、一度に複数の国と協定を締結できるので効率的です。そのような中で誕生したのがTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)です。
 今回の日EU・EPAも、日本とEUの間での協定ですが、地域間での協定といえます。
(参考:経済産業省「【60秒解説】TPP、EPA、FTA・・・何が違う?」

3.日EU・EPAとTPPの参加国
(1)日EU・EPA
 日EU・EPAは、日本とEUの協定となりますので、EU加盟国が参加国となります。
 
 日本・ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・ドイツ・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・フランス・クロアチア・イタリア・キプロス・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・英国

(2)TPP
 TPPの参加国は日本を含めて11カ国です。そのため「TPP11(イレブン)」という呼び方をすることもあります。
 
 日本・オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム

 TPPは米国が不参加を表明したことにより先行きが危ぶまれましたが、日本の安倍首相のリーダーシップによりTPPの実現に至りました。そのため、他国は日本にとても感謝をしているということです。

4.ビジネスへの影響
 今回の日EU・EPAでは、輸入ワインの関税が即時撤廃となり、小売業では値下げセールが行われるなど、輸入品に注目が集まっています。しかしながら、上記のように、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービスといった面でも自由化が進められていきます。
 ちなみに、FTAやEPAについては、日本はすでに多数の国と締結しています。外務省のHPによると、2018年8月現在で

 シンガポール,メキシコ,マレーシア,チリ,タイ,インドネシア,ブルネイ,ASEAN全体,フィリピン,スイス,ベトナム,インド,ペルー,オーストラリア,モンゴルが発行済で、これにEUが加わりましたので、16カ国及び地域と発行済ということになります。

 このEPAはヒトやサービス面の自由化も促していると書きましたが、現在、我が国ではインドネシア、ベトナム、フィリピンとのEPAにより介護人材の受け入れが進んでいます。このように、少子化が進む我が国において、ヒトの移動も行われています。ちなみに技能実習生制度はEPAとは異なる制度です。
 
 このように、貿易面だけでなく、さまざまな分野においてEPAの効果が徐々に出てきますので、どのような自由化が進んでいるのかを常にチェックすることが必要です。


2018年11月18日日曜日

消費税軽減税率制度のポイント(3)

1.Q&Aの改正
 平成30年11月、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」に追加を行いました。
 この中で、店内飲食についてもQ&Aが追加されました。

2.休息スペースでの飲食
 休息スペースでの飲食については、「消費税軽減税率制度のポイント(2)」でも記載しましたが、産経新聞の記事の一部について疑義が生じたので、この点についても記載しました。
 以下、再掲します。

 「購入した飲食料品がトレーに載せられて座席に運ばれたり、返却が必要な食器に盛られて提供されたりすると、外食と判断される。このため、そうしたサービスはできないようにして、全ての飲食料品を持ち帰りができる状態で販売するよう徹底する。コンビニ業界は、こうした施策で、取り扱う飲食料品は持ち帰りと定義でき、客がイートインで飲食したとしても税率は8%になるとみている。

 という記載があります。
 しかし、「店内飲食禁止」としているのであれば、客がイートインで飲食することはできないはずです。見て見ぬふりをするということでしょうか。もし、そうであれば、記事にもあるように、外食業界からは強い批判が出るのは必至です。
 このあたりは、産経新聞が誰からどのような取材をしたのかが不明なのでなんとも言えませんが、いずれにしろ、抜け穴がないように調整をする必要があります。

 疑義が生じたのは、ゴシックの部分の「客がイートインで飲食したとしても税率は8%になるとみている」という点です。

 この点については、今回のQ&Aの問46の(注)で明らかになりました。
 以下、引用します。

「(注) 「飲食はお控えください」といった掲示を行っている休憩スペース等であったとしても、実態としてその休憩スペース等で顧客に飲食料品を飲食させているような場合におけるその飲食料品の提供は「食事の提供」に当たり、軽減税率の適用対象となりません。したがって、店内飲食か持ち帰りかの意思確認を行うなどの方法で、軽減税率の適用対象となるかならないかを判定していただくこととなりますのでご留意ください。」 

 従って、店内飲食を禁止している場合、飲食料品の販売は軽減税率の対象となりますが、もし休息スペースで飲食した場合は、軽減税率の対象とはならず、消費税率は10%となります。
 すなわち、産経新聞の記事のように、税率は8%とはならないので注意する必要があります。

3.意思確認の方法
 なお、この問46は「大半の商品(飲食料品)が持ち帰りであることを前提として営業しているスーパーマーケットの場合」の意思確認を想定したものであり、Qでは「全ての顧客に店内飲食か持ち帰りかを質問することを必要とするものではなく、例えば、「休憩スペースを利用して飲食する場合はお申し出ください」等の掲示を行うなど、営業の実態に応じた方法で意思確認を行うこととして差し支えありません。」としたうえで、次に「なお書き」で、店内飲食を禁止した場合も記載しています。
 以下、引用します。

 「なお、「飲食はお控えください」といった掲示を行うなどして実態として顧客に飲食させていない休憩スペース等や、従業員専用のバックヤード、トイレ、サッカー台のように顧客により飲食に用いられないことが明らかな設備については、飲食設備に該当しません。そのため、ほかに飲食設備がない場合には、持ち帰り販売のみを行うこととなりますので、意思確認は不要となります。

 これは、先日の新聞報道にあったコンビニエンスストア業界の取り組みに相当するものです。
 
 しかしながら、導入当初は相当混乱することが予想されます。
 休息スペースがあるスーパーマーケットは、飲食禁止にするほうがレジでの店員の負担を減らすことができるのではないかと思いますが、休息スペースで飲食できることで、お客さんを呼び込めるという販売上のメリットもあるので、あちらを立てればこちらが立たずといったところでしょうか。

2018年10月21日日曜日

消費税軽減税率制度のポイント(2)

1.コンビニのイートインコーナーは消滅する?
 先日、コンビニエンスストア業界が店内での飲食禁止を条件に、酒類を除く全ての飲食料品を軽減税率の対象とするということで財務省と調整しているというマスコミ報道がありました。この報道の発信源がどこで、また、どのような意図で報道されたのかは不明ですが、いったん、この報道を前提に記載します。

 「消費税軽減税率制度のポイント(1)」にも記載しましたが、店内飲食の場合は標準税率10%が適用され、テイクアウトのような持ち帰り販売の場合は軽減税率8%が適用となります。
 コンビニエンスストアのイートインコーナーは、店内飲食(食事の提供)に該当しますので、イートインコーナーで飲食することを前提に販売すれば、飲食料品であっても標準税率10%が適用されることになります。

 今回の報道が真実だとすれば、このようなコンビニエンスストア内での店内飲食は、平成31年10月1日以後は行うことができなくなるということになります。

2.抜け穴がある?
 産経新聞の平成30年10月3日付の記事「コンビニ業界が全食品を軽減税率対象で調整 消費増税で イートインは「休憩施設」」では、タイトル通りイートインコーナーを休息施設と位置づけるとしていますが、記事の中に

「購入した飲食料品がトレーに載せられて座席に運ばれたり、返却が必要な食器に盛られて提供されたりすると、外食と判断される。このため、そうしたサービスはできないようにして、全ての飲食料品を持ち帰りができる状態で販売するよう徹底する。コンビニ業界は、こうした施策で、取り扱う飲食料品は持ち帰りと定義でき、客がイートインで飲食したとしても税率は8%になるとみている。
 
 という記載があります。
 しかし、「店内飲食禁止」としているのであれば、客がイートインで飲食することはできないはずです。見て見ぬふりをするということでしょうか。もし、そうであれば、記事にもあるように、外食業界からは強い批判が出るのは必至です。
 このあたりは、産経新聞が誰からどのような取材をしたのかが不明なのでなんとも言えませんが、いずれにしろ、抜け穴がないように調整をする必要があります。
 
3.店内飲食と持ち帰り販売の判定方法
(1)判定時は課税資産の譲渡等を行う時
 このように、店内飲食は標準税率、持ち帰り販売は軽減税率がそれぞれ適用ということになるので、この両方を行っている飲食店等は販売時のレジ打ちが大変となることが予想されます。
 上記1.のコンビニエンスストア業界の話も、レジ打ちの対策という目的もあるようです。
 
 この店内飲食と持ち帰り販売の判定は、「消費税軽減税率制度のポイント(1)」でも記載したように事業者が課税資産の譲渡等を行う時に判定することになります。

(2)具体的な判定方法
 それでは、その判定は具体的にはどのようにすればよいのかという問題がありますが、「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」(以下「軽減通達」)の11では、例示として顧客に意思確認を行うことが示されています。

 以下、軽減通達の該当条文を引用します。

(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
11 事業者が行う飲食料品の提供等に係る課税資産の譲渡等が、食事の提供(改正法附則第34条第1項第1号イ《31年軽減対象資産の譲渡等に係る税率等に関する経過措置》に規定する「食事の提供」をいう。以下この項において同じ。)に該当し標準税率の適用対象となるのか、又は持ち帰りのための容器に入れ、若しくは包装を施して行う飲食料品の譲渡に該当し軽減税率の適用対象となるのかは、当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。

 「適宜の方法」とされていますので、例えば、レジスペースで店員が「お持ち帰りですか、それとも店内で召し上がりますか?」と顧客にたずねるというものがあげられます。これは、ファーストフードなどでは、よく行われている方法です。
 
(3)張り紙も可
 もちろん、「適宜の方法」でよいので、これ以外の方法によっても可能です。
 先月、日本公認会計士協会京滋会で行われた研修では、大阪国税局課税第2課の担当者より、この判定方法としては、上記のほか、張り紙を掲示して申し出てもらう、という方法も考えられるという説明がありました。
 例えば、原則として持ち帰り販売とし、張り紙で「店内で飲食を希望される方は申し出てください。」と記載しておくという方法があります。その逆でもよいでしょう。

 その他にも、持ち帰りか店内飲食かを選択できるボタンをつけた端末をレジに置いて、顧客にボタンを押していただく、というのもよいかと思います。このような端末は見たことはありませんが、そのうちできるのではないかと個人的には予測しています。

2018年10月8日月曜日

消費税軽減税率制度のポイント(1)

1.軽減税率制度の概要
 消費税及び地方消費税(以下「消費税等」)の税率は、平成31年10月1日より8%から10%に引き上げられる予定です。
 この一方で、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」は消費税の軽減税率制度が適用され、これらに係る消費税率は8%となります。ただし、現行(消費税率6.3%、地方消費税率1.7%)とは異なり、軽減税率のもとでは同じ8%でも消費税率は6.24%、地方消費税率は1.76%となります。

2.軽減税率制度の対象となる人
 軽減税率制度は、一見すると飲食料品の売上や仕入を行う、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、売店、飲食業といった業者のみが対象となるように思えますが、このような業者のみならず、その対象はもっと幅広いものとなります。
 例えば、課税事業者で、飲食料品の売上がない場合でも、飲食料品の仕入がある場合は軽減税率制度の対象となります。どのような場合かというと、例としては会議のときに、会議費としてお茶やお菓子を購入する場合です。また、交際費として取引先へのお菓子などの食料品をお土産として購入する場合も該当します。福利厚生費として、従業員のためにおやつや飲み物を購入する場合も該当します。
 従って、軽減税率の対象は、非常に幅広いものとなり、かなり多くの事業者が対象となると想定されるので注意が必要です。

3.テイクアウトと店内飲食
 テイクアウトの場合は、飲食料品の販売となるため軽減税率の対象となります。一方、店内飲食の場合は標準税率(10%)が適用されます。
 この点について、先日、「コンビニに行ったとき、家で食べるつもりで弁当を買ったが、店を出るとき気が変わって、イートインで弁当を食べたときはどうなるのか?」という質問がありました。この類の質問・疑問は多くの人が持っているのではないかと思います。
 この場合は、軽減税率の対象となり、標準税率の適用は一切ありません。
 なぜかというと、軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が課税資産の譲渡等を行う時で行うことになるためです。
 具体的には、この場合、弁当を販売する時点で軽減税率か標準税率の適用かが決まるということになります。家で食べるつもりということで販売すれば、この時点で軽減税率の適用が決定されます。
 従って、一度決まった税率は、その後変わることは絶対にありません。

2017年8月21日月曜日

公益法人の消費税(1)

 国内において事業者が行った資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供については消費税を課することとされています(消費税法(以下「法」)4条①)。
 事業者とは個人事業者および法人をいいますので(法2条①四)、公益法人であっても資産の譲渡等を行う場合は納税義務者となります。
 今回は、公益法人における消費税の留意点について記載します。なお、公益法人とは公益社団・財団法人、一般社団・財団法人を指すこととします。

1.不課税取引と非課税取引
(1)課税の要件
 これは公益法人に限らず、他の法人でも共通するのですが、非課税取引と不課税取引の区分が曖昧となっていることがよく見られます。
 まず、消費税の課税対象ですが、これは国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等となります。そのため、課税要件は①国内取引、②事業者が事業として行う、③対価を得て行う、④資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供、の4つとなります。この4つをすべて満たした取引が消費税の課税対象となります。

(2)不課税取引
 言い換えると、この4要件のうち1つでも満たさない取引は、課税要件を満たさないので消費税は課税されません。このような取引を不課税取引といいます。
 公益法人では収益において、以下の不課税取引がよく見られます。

(イ)受取補助金
(ロ)受取寄付金
(ハ)受取会費
 (ニ)受託金
 
  これらは、対価として支払われるものではないので、③の要件を満たしません。従って、課税の要件を満たしませんので、不課税取引となります。

 (3)非課税取引
  これに対して、非課税取引とは、上記の課税の要件4つを満たすものの、消費として課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課さない取引をいいます。
  例えば、土地の譲渡及び貸付けは、消費という性質という面で課税対象になじまないので原則として非課税取引となっています。
  また、社会保険医療の給付、介護保険サービスの提供に係る取引、社会福祉法に定める第1種社会福祉事業、第2種社会福祉事業などに係る社会福祉サービスの提供といった取引は社会政策的配慮から消費税を課さないこととしています。
  公益法人においては、非課税取引として特徴的なものはありませんが、以下の取引に注意する必要があります。

 (イ)受取利息
 (ロ)投資有価証券の売却

 (ロ)の投資有価証券の売却は、どちらかというと財団法人で発生しやすい取引です。
 
 2.不課税取引と非課税取引を分ける理由
  不課税取引も非課税取引も消費税が課されないのだから、どちらも一緒ではないか、区分する必要があるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
  しかしながら、この区分は重要です。なぜかというと、課税売上割合に影響が出てくるからです。
  課税売上割合は、分子を課税期間中の課税売上高、分母を課税期間中の総売上高として計算します(どちらも税抜)。
  分母の総売上高は国内の資産の譲渡等の対価の額の合計額となります。また、分子の課税売上高とは、国内の課税資産の譲渡等の対価の額の合計額となります。
  一見、同じように見えますが、分子には非課税売上が含まれないのに対して、分母には非課税売上が含まれるという違いがあります。
  一方、不課税取引はどうかというと、不課税取引は分母にも分子にも入りません。
  そのため、不課税取引と非課税取引を区分しておかないと、不課税取引にもかかわらず、課税売上割合の計算の分母や分子に混入してしまい、適正な課税売上割合を計算できなくなってしまいます。従って、この課税売上割合を適正に計算できないと、課税仕入に係る消費税額も適切に計算できなくなるため、結果として納付税額が正しく計算できなくなってしまうことになります。
  このように、消費税の納付税額を適正に計算するために、不課税取引と非課税取引の区分は特に売上の面で重要となります。

  続きは次回以降といたします。