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2019年5月12日日曜日

役員選任の決議方法の実務~個別決議と一括決議

1.はじめに
 平成29年(2017年)5月28日のブログ「機関運営の留意点~公益法人及び社会福祉法人共通」では、役員の選任方法として複数人を一括して決議する一括決議は不可であり、各役員等について個別に決議する個別決議を行う必要があることを記載しました。
 とはいえ、法人によっては改選時の役員候補者数が数十名というところもあり、まともに個別決議を行うと膨大な時間がかかってしまうという実務上の問題点もあります。
 そこで、今回は役員の選任決議の実務について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.平成29年5月28日のブログの再掲
 まず、平成29年5月28日のブログを再掲します。

  「役員(理事及び監事)は公益法人では社員総会又は評議員会で、社会福祉法人では評議員会で選任することになりますが、この選任は各役員について個別に決議を行う必要があると解されます。すなわち、一括決議は不可と解されます。

  趣旨は、役員の選任という重要な意思決定について、法は理事の選任議案の内容をすべての社員ないし評議員に通知すると規定するなど(一般法38条①Ⅴ、同法施行規則4条③イ、一般法181条①Ⅲ、同法施行規則58条①、社福法45条の9⑩、同法施行規則2条の12)、慎重に審議を行うことを要求していますが、これを個別決議ではなく、一括決議にしてしまうと、社員又は評議員の意思が反映されないことになり、法の趣旨が没却されてしまうからです。

  例えば、理事候補がA,B,C,D,E,F,Gの6名がいるとします。評議員のうちXはA~Gの6名につき選任案に賛成ですが、評議員YはA~Fの選任には賛成であるものの、Gについては選任に反対と考えているとします。
  このとき、一括決議により「評議員全員の賛成により理事候補全員の選任について異議なしとします」としてしまうと、評議員Yの意思が反映されない結果となってしまいます。そうなると、評議員会で慎重に審議を行い役員を選任するという法の目的が達成されなくなります。
  そのため、役員の選任決議は一括決議ではなく、個別決議で行う必要があります。」(引用終)

 3.内閣府「特に留意する事項について」
  この役員選任の決議方法は、実は法令で明記されているわけではありません。法の趣旨を鑑みると、一括決議はふさわしくないということです。

  ただし、全くどこにも記載されていないものなのかというとそうではなく、公益法人の場合は、平成20年10月10日に内閣府公益認定等委員会から出された「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について 」(以下「特に留意する事項について」)のP12~13にこの論点の記載がなされています。
  
  引用すると以下のとおりです。

 「法は、社員総会又は評議員会に理事の選任権を形式的に付与しているだけでなく、理事の選任過程の適正を確保するため、種々の方策を講じている。 
                  (中略)
  このように、法及び公益法人認定法は、あらゆる規律を通して、選任手続を可能な限り慎重ならしめ、社員総会(評議員会)における実質的な審議を経て適正に理事が選任されるための種々の方策を講じている。
                  (中略) 
  また、理事の選任議案を社員総会(評議員会)で決議する方法について、例えば、4人の理事の選任議案の決議(採決)を4人一括で決議(採決)することとした場合には、本来、1つ1つの議案(1人1人の理事の選任議案)ごとに賛成又は反対の意思を表明することができるはずの社員(評議員)に対して、全議案についてすべて賛成か又はすべて反対かという投票を強制することとなり、上記の法の趣旨が没却されることとなる。」

 とし、結論として、

 「このような法の趣旨及び考え方を踏まえ、
 ① 公益社団法人が、定款の定めにより、社員総会の普通決議の決議要件(定足数)を大幅に緩和し、あるいは撤廃することは許されない(問題の所在①)
 ② 社員総会又は評議員会で理事の選任議案を採決する場合には、各候補者ごとに決議する方法を採ることが望ましく 、特例民法法人の移行に際し、その定款(の変更の案)に、社員総会又は評議員会の議事の運営方法に関する定めの一つとして、「理事の選任議案の決議に際し候補者を一括して採決(決議)すること」を一般的に許容する旨の定めを設けることは許されない(問題の所在②)こととなる。 」

 と記載しています。
  公益法人の立入検査で、行政庁が一括決議が不可であることを指摘する場合、この「特に留意する事項について」が根拠となっています。

 4.実務上の対応策
  しかしながら、上述したように、役員候補者数が30名や40名といった数十名となる法人の場合、各候補者ごとに決議する方法を採ると相当な時間がかかってしまいます。
  また、それなりの法人になると、総会はホテルの会議場などを借りることが多いですが、1時間あたりの費用も大きいものがあります。
  ついでにいうと、多くの法人では、総会終了後は懇親会があります。そのため、懇親会が始まる時刻までには総会を終了させる必要がありますが、個別決議をまともにやると時間が読めなくなります。
  
  そこで、実務上は、以下の対応策が考えられます。
 
 ①まず、議長が、役員の選任については各候補者ごとに決議を行う方法が原則であることを説明する。
 ②ただし、時間と手数の関係上、一括して決議を行いたい旨を説明するが、一括決議に反対する人がいれば、申し出てほしいことをアナウンスする。
  あるいは、一括決議を行うことについて、社員または評議員に対して賛否を問う。
 ③反対する人がいなければ、全員が一括決議に賛成したということになる。また、賛否を問うた場合、賛成多数であれば、もちろん、一括決議に賛成したということになる。
 ④以上の手続を経た上で一括決議で進める。
 
  このような方法は、株式会社の株主総会の実務ではよく見られます。
  あくまで、私見ですが、参考としていただけますと幸いです。 

2019年1月13日日曜日

理事、監事の改選期における注意点~社会福祉法人

1.はじめに
 社会福祉法人では平成29年度から新制度が始まりました。そのため、平成31年度は理事、監事の改選期にあたります。
 そこで、理事、監事の改選期において、注意する点をあげたいと思います。

2.任期の確認
 役員の任期は「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。」(社会福祉法(「以下」法)45条)とされています。
 ほとんどの理事、監事は平成29年6月に選任されたと思われますので、その理事、監事は(元号は変わりますが)平成31年度が改選期になります。

 注意すべきは、この間に理事、監事の交代があった場合です。
 「役員の任期の計算方法~公益法人・社会福祉法人」の再掲になりますが、例えば、平成30年3月に理事に選任された場合、平成31年度の定時評議員会の終結の時までが任期となりますので注意する必要があります。多くの社会福祉法人は6月に定時評議員会を開催するので、この場合だと、平成30年3月に選任された理事は平成31年(2019年)6月までが任期となります。期間は約1年3ヶ月となります。旧制度と異なり、丸々2年間ではなくなったので、注意が必要です。



3.監事の選任
 「監事選任における留意点~公益法人及び一般社団法人等、社会福祉法人」でも記載さいましたが、評議員会を開催するときに監事の選任に関する議案を評議員会に提出するには、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)72条①、法43条③)。
 この趣旨は監事の地位の安定性を保つためですが、その手段として監事の同意書を書面でもらっておく必要があります。(就任承諾書とは異なります。)。

 再掲となりますが、埼玉県久喜市の公式ホームページ内の「社会福祉法人の運営について」という社会福祉法人向けのページに、Word版で監事の同意書のひな形が掲載されています。

4.就任承諾書
 今回、改選によって改めて選任されるので、就任承諾書も必要です。前回、記載したから今回は不要ということにはなりませんので注意が必要です。
 就任承諾書については、前回のものを使用すればよいですが、兵庫県の「社会福祉法人制度改革に関する資料について」にも掲載されていますので、ご紹介しておきます。
 
 その他、欠格事由などについても確認をしておく必要があります。

5.理事長の選定
 定時評議員会により、理事が選任されたら、その後に理事会を開催して理事長を選定する必要があります(法45条の13③)。
 理事長は理事であることが前提ですから、理事の任期が終了した時点で理事長の地位も消滅しています。従って、改選期においては改めて理事会で理事長を選定する必要がありますので失念しないようにする必要があります。
 
 なお、理事長選定のための理事会は、定時評議員会の直後に開催しても構いません。むしろ、日を空けてしまうとその間、理事長不在ということになってしまい、機関運営上好ましくありません。

 なお、この場合の開催方法ですが、「新理事による理事会の招集方法」にも記載したように、招集手続の省略によって開催すればよいでしょう(法45条の14⑨、一般法94条②)。
 招集手続の省略とは、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができるというものですが、全員の同意は、書面でなくても問題はありません。口頭でも可能です。

 その他の方法では、同じく「新理事による理事会の招集方法」にも記載したように、決議の省略による方法でも構いません。

2018年12月25日火曜日

公益財団法人を設立するときの注意点(2)

1.はじめに
 以前、「公益財団法人を設立するときの注意点(1)」では、親族規制について記載しました。
 今回は、公益財団法人を設立するまでの過程について記載します。

2.一般財団法人の設立
 公益財団法人を設立するには、まず、一般財団法人を設立する必要があります。いきなり、公益財団法人は設立できません。なぜかというと、公益財団法人とは、一般財団法人のうち、公益認定を受けた法人を指すからです(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下、認定法)4条2号)。すなわち、一般財団法人を設立し、その後、行政庁から公益認定を受けて公益財団法人に至るわけです。



3.一般財団法人の設立における留意点
 一般社団法人や一般財団法人の設立は簡単だ、という話をよく聞きます。しかしながら、これはケースによって異なります。もう少し具体的に言うと、財務会計がどの程度行われているかによって設立までの時間が異なってきます。
 確かに、一般財団法人の場合、定款を作成すれば、ほぼ手続きは終了といってもよいほど比較的簡単にできます。しかしながら、設立登記を行った後、2ヶ月以内に税務署などに設立時貸借対照表を届け出る必要があります。設立時貸借対照表を作成するには資産、負債の関係が明らかになっていなければなりません。これは登記手続きを行う前に終了させておきたいところですが、場合によっては意外に時間がかかります。

 以下、ケースに分けて説明します。

 まず、①全く活動実績がない新規設立の場合と②それまで任意団体として活動してきた場合の2つに分けます。

①全く活動実績がない新規設立の場合
 この場合は、比較的簡単に設立できます。
 財務会計については、これまで活動実績がないため、会計帳簿はありません。従って、設立時貸借対照表を作成すればよいことになります。ただし、どのような財産を法人の資産にするのか、その範囲と金額について定める必要があります。金額については、現金預金であればわかりやすいですが、固定資産の場合は価額のつけ方が難しい場合もあります(文化財など)。

②それまで任意団体として活動してきた場合
 この場合、どのような会計を行ってきたかによって異なります。具体的には、複式簿記による会計を行ってきたかどうかによります。

(イ)複式簿記を行ってきた場合
 それまで、複式簿記による会計を行ってきた場合は、比較的スムーズに設立できます。複式簿記によれば、資産、負債、正味財産の関係が明らかになっているためです。そのため、設立時貸借対照表の作成にはそれほど時間はかかりません。もちろん、資産の実在性など、会計上適正である必要があるので、そのチェックに多少時間がかかる場合もあります。

(ロ)複式簿記を行っていなかった場合
 複式簿記を行っていなかった場合は、いわゆる単式簿記の方式になっているため、資産、負債の関係を明らかにするまでに時間がかかりやすい傾向にあります。
 現金や預金の残高の把握には時間はかからないことが多いですが、例えば、所有する固定資産については減価償却を行っていないため、減価償却を行った後の帳簿価額の計算に時間がかかることもあります。具体的には、いつ取得して、何年経過しているのか、取得価額はいくらだったのかといった情報の把握に意外に時間がかかります。
 負債に関しても、未払金を計上したことがないので、債務がどこまであるのかの把握に結構時間がかかります。

 このように、設立時貸借対照表を作成することは、一見、簡単なように見えますが、ケースによって完成するまでの時間が変わってきます。こういったところで、一般財団法人の設立までのハードルは異なってきますので、設立する場合は、現状の把握を行うことが必要です。 

2018年8月26日日曜日

公益法人の立入検査のポイント(1)

1.概要
 8月も終わりに近づき、9月になろうとしています。9月になると行政庁による公益法人の立入検査が本格的に始まります。もちろん、8月に実施しているところもありますが、どちらかというと9月以降が多くなります。
 公益法人の制度改革以後、ほぼすべての公益法人(公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人をいいます。以下同じ。)には立入検査が入っていますが、近年設立された公益法人やこれから公益法人を設立しようとされる方もいらっしゃると思います。特に、事業承継や相続税対策のために今後、公益法人を設立したいという方は多くいらっしゃいます。
 そこで、今回は公益法人の立入検査のポイントについて記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.立入検査とは何か
 立入検査の根拠は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)の第27条①に求められます。
 認定法27条①では「行政庁は、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、内閣府令で定めるところにより、公益法人に対し、その運営組織及び事業活動の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該公益法人の事務所に立ち入り、その運営組織及び事業活動の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」と定められています。
 これを根拠に、行政庁が立入検査を行うわけです。
 立入検査は、条文のとおり、公益法人の事業について適正な運営ができているかどうかを調べるために行われます。
 具体的には、大きく分けて①機関運営や公益事業の実施といったガバナンス面と②内部統制を含む会計面について調べられます。

3.行政庁ごとの実施例
 立入検査のスタイルは行政庁によって異なります。
 私もこれまで数多くの立入検査に立ち会ってまいりました。
 ここでは、私の知っている範囲で各行政庁の立入検査の実施状況を記載してみます。ただし、私の記憶違いもあるかもしれませんので、あくまで参考でお願いいたします。

(1)内閣府
 日数:1日
 時刻:午前11時~午後4時頃
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね4年に1回
 特徴:内閣府はプロパー職員は少なく、大抵他の省庁から出向されている方です。
東京から出張されるので、関西あたりに来られるときは日帰りになります。

(2)京都府
 日数:1日
 時刻:午後1時~午後5時30分
 人数:3~4名 うち1名は公認会計士
 内容:ガバナンス面と会計面
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:①京都府は、ガバナンス面と会計面のそれぞれについて担当者がつき、同時並行で検査を行っていきます。会計面は公認会計士が行います。時間が午後のみと短い分、役割分担を行って効率的に行うということだと思います。そのため、担当者数も多めになります。
②事前に立入検査のチェックポイントが送られてきます。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。
③事業報告等については立入検査当日は見ないことになりました。

(3)滋賀県
 日数:1日
 時刻:午前10時(だったと思います)~午後5時30分
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:①滋賀県は前半をガバナンス面、後半を会計面といった感じで進めていました。役割分担はなく、ガバナンス面、会計面を二人で一緒に見ていました。
 ②滋賀県は滋賀県公益認定等委員会のHPで、立入検査実施計画を公表し、どの年度にどの公益法人に立入検査を行うのかというスケジュールを公表しています。また、立入検査チェックシートも公表しています。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。

(4)大阪府
 日数:1日
 時刻:午前10時~午後5時30分
 人数:3~4名 うち1名は公認会計士
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:4年に1回
 特徴:ガバナンス面と会計面についてそれぞれ担当者がつき、同時並行で行っていきます。京都府と同じスタイルですが、大阪府は終日実施します。
 頻度は4年に1回となったそうです。

(5)兵庫県
 日数:1日
 時刻:午前9時30分~午後5時30分
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:事業報告等の担当者、ガバナンス面・会計面の担当者がいて、同時並行で行っていきます。
 事前に準備していただきたい資料のリストが送られてきます。

 日数は、どの行政庁も通常は1日です。ただし、ごくまれに2日間にわたって行われるところもあるそうです。
 また、終了時刻ですが、予定よりも早い時刻に終わることもよくあります。

4.最後に
 今回は、立入検査の概要面について記載しました。
 公益法人であれば、立入検査は必ず実施されます。これから公益法人を設立することを考えられている方は、公益法人は設立したら終わりではなく、設立後もいろいろな規制が続くということを知っていただきますようお願いいたします。

2018年8月5日日曜日

監事監査のあり方~公益法人・社会福祉法人共通

1.概要
  公益認定を受けた公益社団法人は、理事会の設置が公益認定のための要件となっていますので(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)5条十四  ハ)、監事の設置が必要です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」61条)。また、一般財団法人は監事を設置しなければならないとされているので(一般法170条①)、公益認定を受けた公益財団法人も監事が設置されています。
  また、社会福祉法人では、社会福祉法で監事を置かなければならないと定められていますので(社会福祉法(以下「社福法」36条①)、社会福祉法人も必ず監事が設置されています。
  今回は、この監事による監事監査のあり方について記載していきたいと思います。
  なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 2.監事監査の内容
監事は、理事の職務の執行を監査するとされています(一般法99条、社福法45条の18①)。監事監査には会計監査と業務監査が含まれます。会計監査については、計算関係書類の適正性について監査を行います。また業務監査は、理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実がないかどうかについて監査を行います。
 監事は監事監査を行うと、その内容を記載した監査報告書を発行します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則36条及び45条、社会福祉法施行規則2条の27及び2条の36)。

3.監事監査の現状
 このように監事は会計監査と業務監査を行う義務があります。従って、監事は会計監査と業務監査を行った上で、自ら結論を形成し、監査報告書を作成し、署名押印を行う必要があります。
 しかしながら、行政庁名は伏せますが、監査を行わないで監査報告書に署名押印のみを行っている監事がいるのではないか、ということで公益法人の立入検査では、本当に監事が会計監査と業務監査を行ったのかを確かめるようになってきています。
 具体的には、監事が監査を行ったことを示す証拠の提示が求められてきています。
 このとき提示するものとしては監事が行った監査手続とそれに対する結果や指摘事項などを示した書面が望ましいといえます。名称は「監事監査レポート」、「指摘事項一覧」など様々で、決まったものはありません。
 ちなみに、監査法人による株式会社の財務諸表監査では、監査役レポートの提示を求めています。内部統制を構成する要素で最も重要なのは統制環境ですが、統制環境が適切に機能しているかどうかは、ガバナンスが機能しているかどうかを見る必要があるからです。このガバナンスが機能しているかどうかの判定の手段の一つが監査役レポートです。すなわち、監査役レポートを見れば、監査役がどのようなレベルの監査を行っていて、ガバナンスがどのぐらい効いているのかといったことを知る上で一つの目安となるからです。

4.監事監査のあり方
 すでに決算期を過ぎた法人で、このような監事監査レポートが作成されていない法人は、今から監事に作成してもらうことはできませんので、このまま行くしかありません。しかしながら、今後は監事には監事監査レポートを作成してもらう必要があるといえます。見方を変えると、監事は自分が監査を行ったことを示すためにも監事監査レポートを作成する必要があります。もちろん、適切に監査を行うことが前提です。
 また、よく見られるのは、監事監査を行っている場合でも、決算時に設けられた監事監査の日にやって来て数時間で終わり、というものですが、期末後の日に数時間、決算書、残高証明書、元帳を見ても実効性のある監査は期待できません。従って、今後は期末決算時だけではなく、期中にも監事監査を行うことが望まれます。
 実際、中間時、期末時の少なくとも年2回、監事監査を行っている法人は存在します。また1~2時間で終えるのではなく、朝から夕方まで1日かけてしっかりと行っています。
 さらに、実効性のある監査を行うためには、年間の監査計画も作成する必要があります。
 上述のように、監事監査がしっかりと機能しているかどうかは、内部統制の最重要要素である統制環境に影響を与えます。統制環境は内部統制のすべての要素に影響を与えますから、監事がしっかりとその役割を果たしていないと、法人の内部統制全体に悪い影響を与えることになります。
 従って、法人運営を行うにあたっては、監査を適切に行うことができる監事を選任する必要があるといえます。

2018年6月9日土曜日

役員の任期の計算方法~公益法人・社会福祉法人

1.概要
 6月になりましたが、公益法人及び一般社団法人等や社会福祉法人におかれましても理事会や社員総会、評議員会の開催準備が進んでいるものと思われます。
 今回は、平成29年6月12日に掲載した「理事及び監事の就任日~社会福祉法人」のうち役員の任期の計算方法について、補足する形で記載します。

2.役員の任期
(1)公益法人及び一般社団法人等
 役員の任期について、まず公益法人及び一般社団法人等ですが、法令では理事及び監事の任期についてそれぞれ、次のように規定されています。

(イ)理事の任期
「理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。」(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)66条)。

(ロ)監事の任期
「監事の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することを妨げない。」(一般法67条)。
 
 実務では、監事の任期については、ただし書きを適用している法人が多く見受けられます。理由は、これにより理事と監事の任期が同じになるため、手続を行いやすくなるからです。

(2)社会福祉法人
 社会福祉法人については、理事と監事に分けず、役員としての任期が定められています。

「役員の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。」(社会福祉法45条)

(3)留意点
 社会福祉法人では、以前は任期は「2年」という定め方がされていましたが、新社会福祉法になってからは上記のような規定となりましたので、必ずしも丸々2年とは限らないという点に留意する必要があります。

3.任期の計算方法
 任期の計算方法について、平成29年6月12日のブログでは図がなかったので、わかりにくい面もあったかと思います。
 そこで、今回は図を用いて説明します。

【図1】

 なお、【図1】は、公益・一般財団法人や社会福祉法人が評議員会を開催して役員を選任するケースです。公益・一般社団法人では「評議員会」が「社員総会」になります。

(1)(A)のケース
 (A)のケースは、期末日前の✕2年3月20日に臨時評議員会や臨時社員総会が開催されて役員が専任されるケースです。
 この場合、「選任後二年以内に終了する会計年度」とは✕2年3月31日に終了する会計年度と✕3年3月31日に終了する会計年度となります。
 次に、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のもの」は✕3年3月31日に終了する会計年度となります。
 従って、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで」とは、✕3年3月31日に終了する会計年度に関する定時評議員会や定時社員総会、すなわち、✕3年6月△日に開催される定時評議員会、定時社員総会の終結の時までとなります。
 このケースでは、就任期間は約1年3ヶ月となります。

(2)(B)のケース
 (B)のケースは、いわば通常のケースです。
 こちらも同様に、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のもの」とは✕3年3月31日に終了する会計年度となります。
 従って、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで」とは、✕3年6月△日に開催される定時評議員会、定時社員総会の終結の時までとなります。
 この場合、就任期間は2年間よりも数日短い、または数日長いということが多くなると思います。

(3)(C)のケース
 (C)のケースは期末日後、定時評議員会・定時社員総会の前である✕1年4月20日に就任したケースです。
 こちらも同様に、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のもの」とは✕3年3月31日に終了する会計年度となります。
 従って、「選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで」とは、✕3年6月△日に開催される定時評議員会、定時社員総会の終結の時までとなります。
 この場合、就任期間は約2年2ヶ月となります。

4.最後に
 (B)のケースは間違えることが少ないのですが、(A)や(C)のケースは失念されるケースが多いので注意が必要です。特に(A)のケースは間違えやすいので注意が必要です。
 (A)や(C)のケースで役員を選任した場合、【図1】のような時系列表を記載して、任期を確認するとよいでしょう。そのうえで、就任承諾書には就任期間として「○年度の評議員会(社員総会)の終結の時までとする。」と記載します。
 さらに、管理表を作成し、○年度の定時評議員会・定時社員総会ではどの役員の改選となるのかを記載しておくとよいと思います。
 


2018年3月25日日曜日

監事選任における留意点~公益法人及び一般社団法人等、社会福祉法人

1.監事の選任
 公益法人及び一般社団法人等も3月決算の法人が多く、多くは6月に社員総会や評議員会が開催されていますが、監事について、現監事の重任や新監事の選任を予定されている法人も多いかと思います。
 監事はこの社員総会又は評議員会の決議によって選任されます(一般社団法人及び一般財団に関する法律(以下「一般法」)63条、197条)。重任の場合も、当然のことながら、社員総会又は評議員会の決議によって選任されます。
 今回は、この監事の選任手続の留意点について記載します。
 この論点は、社会福祉法人についても同様なので、一緒に記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.監事の選任に関する監事の同意
 上記の通り、公益法人及び一般社団法人等では、社員総会又は評議員会で、社会福祉法人では評議員会で監事が選任されます。
 そのため、社員総会や評議員会を開催するときに監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出する必要がありますが、この監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出するには、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません(一般法72条①、197条、社会福祉法(以下「社福法」)43条③)。なお、社福法43条③は一般法72条を準用する旨の規定です。
 これは、監事の地位の安定性を保つためです。例えば、理事が現監事を煙たがり、自分にとって都合のよい監事を選任して監事の構成を変えてしまおうとすることも想定されます。そうなると、独立的な立場で理事の職務執行の監査を行うという監事の意義が失われる恐れがあります。すなわち、理事の暴走が助長され、ガバナンスが効かなくなる恐れがあるということです。
 そこで、法は監事の選任前に、現監事の同意により理事の恣意的な監事構成への介入を防ぎ、ガバナンスを保とうとしているというわけです。
 従って、この監事の同意については、監事の同意書を書面でもらっておく必要があります。これは、就任承諾書とは異なりますので注意が必要です。

3.監事の同意書
 この監事の同意書ですが、埼玉県久喜市の公式ホームページ内の「社会福祉法人の運営について」という社会福祉法人向けのページに、Word版でひな形が掲載されています。
 この久喜市のひな形をもとに、公益社団法人・一般社団法人、公益財団法人・一般財団法人のひな形を作成してみました。
 なお、久喜市のHPにも記載されているように、ひな形に記載されている内容が含まれていれば形式はどのようなものでも結構です。

(1)公益社団法人・一般社団法人の場合


(2)公益財団法人・一般財団法人の場合
    


 なお、社会福祉法人向けにつきましては、上記久喜市のHPを御覧ください。

4.同意書を入手するタイミング
 監事の同意書を入手するタイミングですが、久喜市のひな形では「同意書を得る時期は評議員会の前であればよいですが、理事会での審議をスムーズにするためにも可能であれば理事会前に事前に得ておくのも1つの方法です。理事会の場で終了後に徴しても構いません。」と記載されています。
 私見では、理事会前に同意書にサインしていただき、理事会で報告するのがよいのではないかと思います。

5.社員総会、評議員会での提示
 この同意書は、社員総会や評議員会で監事の選任に関する議案を提案するときに一緒に提示することになります。
 
6.同意を得ずに監事の選任決議を行った場合
 監事の選任について、監事の同意を得ずに社員総会や評議員会で選任決議を行った場合、「社員総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」に該当しますので、社員総会又は評議員会の決議の取消し事由となります(一般法266条①一、社福法45条の12)。
 仮に、決議の取消しとなった場合、遡及的に無効となります。すなわち、監事の選任決議は無効となります。従って、注意が必要です。

2017年6月12日月曜日

理事及び監事の就任日~社会福祉法人

 6月も半ばに入りましたが、社会福祉法人では、これから下旬にかけて、新制度では初めての定時評議員会が開催される法人が多いと思います。この定時評議員会では、新理事や新監事が選任されます。
 そこで、今回は理事及び監事の就任日などについて記載します。

1.理事及び監事の就任日
 理事及び監事の就任日は、理事及び監事が就任を承諾した日となります。
 一方、理事及び監事の任期の起算日は、選任時(選任決議をした時)となります(Q&A問132参照。なお社会福祉法(以下「法」)45条)。
 具体例をあげると、評議員会の開催日が平成29年6月23日、就任承諾をした日が同年7月1日であるとすると、任期の起算日は同年6月23日となり、就任日は同年7月1日となります。

 実務上、新しい理事及び監事が就任する場合、例えば、前職の任期が残っているため、就任日を遅らせる必要性が生じることも想定されます。このような場合、就任承諾の日を評議員会終結の時よりも遅らせることはできます。
 しかし、Q&A問132に記載されているように、就任日を遅らせることで任期の起算日を遅らせることはできません。

【参考 Q&A問132より】
 任期の起算点を「就任時」とすると、就任承諾は被選任者の意向に委ねられる結果、評議員会の選任決議と就任承諾との間に長期間の隔たりがある場合などにおいて、任期の終期が評議員会の意思に反する事態が生じかねないため、任期の起算点は、評議員会における「選任時」となる。

2.任期の計算方法
 任期の起算日とは、任期を計算する最初の第一日をいいます。
 理事及び監事の任期は、新制度においては、ちょうど2年間という数え方ではなくなりました。
 まず、条文を引用します。法45条では、

 「役員の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。」

 とされています。
 そうなると、必ずしも任期は2年間ちょうどとは限らず、2年間よりも長いケースや、2年間よりも短いケースもでてきます。
 例えば、平成29年6月23日に評議員会を開催した社会福祉法人が、平成31年6月26日に評議員会を開催するとします。(注:平成は平成30年で終了しますが便宜のため平成を使用します。)
 この場合、2年間よりも少し長い期間となりますが、問題はありません。その根拠を条文の要件に従ってみてみます。
 
 「選任後二年以内に終了する会計年度」ですから、この場合、平成29年6月23日から2年以内に終了する会計年度とは平成29年度と平成30年度となります。
 次に、これらの「会計年度のうち最終のもの」とは、平成30年度となります。
 そして、この平成30年度「に関する定時評議員会の終結の時まで」ですから、この場合の評議員会は平成31年6月26日の評議員会となります。
 逆に、平成31年6月21日に評議員会を開催した場合でも同じです。この場合は、2年間よりも少し短い期間となります。

 もう一つ見てみます。
 例えば、平成30年3月27日に評議員会が開催され、理事ないし監事が選任されたとします。この場合は、「選任後二年以内に終了する会計年度」とは、平成29年度と平成30年度となります。平成30年3月27日から2年以内に訪れる決算日は平成30年3月31日と平成31年3月31日です。平成32年3月31日だと2年を超えてしまうからです。
 この平成29年度と平成30年度のうち、「最終のもの」ですから、平成30年度となります。そのため、例えば平成31年6月24日に定時評議員会を開催する場合、任期はこの日までとなります。そうなると、任期の期間は約1年3ヶ月となります。

3.就任承諾書の記載方法
 理事及び監事は法人とは委任の関係にあたりますので(法38条)、就任にあたっては、本人の就任承諾が必要です。
 就任承諾にあたっては、通常、就任承諾書をいただくことになります。
 この就任承諾書において、就任期間を記載する場合ですが、任期の計算方法は上記2のようになりましたので、就任日はともかく、就任期間の終了日については具体的な日付を記載することは避けるほうがよいと考えられます。なぜならば、約2年後の定時評議員会の開催日を現時点で決定することは困難だからです。
 そのため、記載方法としては、「平成30年度定時評議員会の終結の時まで」といった書き方がよいでしょう。
 就任承諾書については、福岡市のページに雛形がありますので、参考とするとよいと思います。

2017年6月5日月曜日

理事長や監事が欠席した場合の理事会について~社会福祉法人

1.概要
 社会福祉法人においても、監事は理事会への出席が義務付けられました(社会福祉法(以下「法」)45条の18③、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)101条①)。
 また、理事会の議事録(書面で作成されている場合)の署名又は記名押印を行うのは、原則は、出席した理事全員と監事ですが、定款で定めることにより、出席した理事長と監事とすることができる旨が定められました(法45条の14⑥)。
 そこで、今回は、理事長や監事が欠席した場合の理事会成立の可否及び議事録への署名又は記名押印について説明します。

2.理事長が欠席した場合
 理事長が欠席した場合でも、定足数を満たしていれば理事会は成立します(法45条の14④)。

 次に、議事録への署名又は記名押印ですが、定款で、署名又は記名押印を行う者を出席した理事長及び監事としている場合、法令では、「定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあつては、当該理事長」(法45条の14⑥)と定められていることから、理事長が欠席した場合はこの要件を満たさないことになります。
 そのため、理事長が欠席した場合は、この容認規定は適用できないため、原則規定の適用となり、出席した理事全員と監事全員が署名又は記名押印を行うことになります。

3.監事が欠席した場合
 監事が欠席した場合でも、理事会は成立します。たとえ監事全員が欠席した場合でも理事会は成立します。

 次に、議事録への署名又は記名押印ですが、定款で、署名又は記名押印を行う者を出席した理事長及び監事としている場合について説明します。
 理事長が出席していれば、監事の一部が欠席していても、理事長と出席した監事が署名又は記名押印すれば問題はありません。
 また、監事全員が欠席した場合でも、理事長が出席していれば理事長のみの署名又は記名押印で問題はありません。

 なお、法令上の問題はなくとも、監事の欠席は、理事の職務の執行の監査を行うという監事の目的を達成するための手段を放棄していることになり、ガバナンス面で問題があります。従って、監事は全員が出席することが望まれます。
 なお、万が一、監事が欠席した場合は、理事会議事録にその旨、その理由を記載しておくとよいでしょう。記載する場所は、どこでも結構です。

 以上、参考としていただけますと幸いです。