2018年8月5日日曜日

監事監査のあり方~公益法人・社会福祉法人共通

1.概要
  公益認定を受けた公益社団法人は、理事会の設置が公益認定のための要件となっていますので(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)5条十四  ハ)、監事の設置が必要です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」61条)。また、一般財団法人は監事を設置しなければならないとされているので(一般法170条①)、公益認定を受けた公益財団法人も監事が設置されています。
  また、社会福祉法人では、社会福祉法で監事を置かなければならないと定められていますので(社会福祉法(以下「社福法」36条①)、社会福祉法人も必ず監事が設置されています。
  今回は、この監事による監事監査のあり方について記載していきたいと思います。
  なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 2.監事監査の内容
監事は、理事の職務の執行を監査するとされています(一般法99条、社福法45条の18①)。監事監査には会計監査業務監査が含まれます。会計監査については、計算関係書類の適正性について監査を行います。また業務監査は、理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実がないかどうかについて監査を行います。
 監事は監事監査を行うと、その内容を記載した監査報告書を発行します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則36条及び45条、社会福祉法施行規則2条の27及び2条の36)。

3.監事監査の現状
 このように監事は会計監査と業務監査を行う義務があります。従って、監事は会計監査と業務監査を行った上で、自ら結論を形成し、監査報告書を作成し、署名押印を行う必要があります。
 しかしながら、行政庁名は伏せますが、監査を行わないで監査報告書に署名押印のみを行っている監事がいるのではないか、ということで公益法人の立入検査では、本当に監事が会計監査と業務監査を行ったのかを確かめるようになってきています。
 具体的には、監事が監査を行ったことを示す証拠の提示が求められてきています。
 このとき提示するものとしては監事が行った監査手続とそれに対する結果や指摘事項などを示した書面が望ましいといえます。名称は「監事監査レポート」、「指摘事項一覧」など様々で、決まったものはありません。
 ちなみに、監査法人による株式会社の財務諸表監査では、監査役レポートの提示を求めています。内部統制を構成する要素で最も重要なのは統制環境ですが、統制環境が適切に機能しているかどうかは、ガバナンスが機能しているかどうかを見る必要があるからです。このガバナンスが機能しているかどうかの判定の手段の一つが監査役レポートです。すなわち、監査役レポートを見れば、監査役がどのようなレベルの監査を行っていて、ガバナンスがどのぐらい効いているのかといったことを知る上で一つの目安となるからです。

4.監事監査のあり方
 すでに決算期を過ぎた法人で、このような監事監査レポートが作成されていない法人は、今から監事に作成してもらうことはできませんので、このまま行くしかありません。しかしながら、今後は監事には監事監査レポートを作成してもらう必要があるといえます。見方を変えると、監事は自分が監査を行ったことを示すためにも監事監査レポートを作成する必要があります。もちろん、適切に監査を行うことが前提です。
 また、よく見られるのは、監事監査を行っている場合でも、決算時に設けられた監事監査の日にやって来て数時間で終わり、というものですが、期末後の日に数時間、決算書、残高証明書、元帳を見ても実効性のある監査は期待できません。従って、今後は期末決算時だけではなく、期中にも監事監査を行うことが望まれます。
 実際、中間時、期末時の少なくとも年2回、監事監査を行っている法人は存在します。また1~2時間で終えるのではなく、朝から夕方まで1日かけてしっかりと行っています。
 さらに、実効性のある監査を行うためには、年間の監査計画も作成する必要があります。
 上述のように、監事監査がしっかりと機能しているかどうかは、内部統制の最重要要素である統制環境に影響を与えます。統制環境は内部統制のすべての要素に影響を与えますから、監事がしっかりとその役割を果たしていないと、法人の内部統制全体に悪い影響を与えることになります。
 従って、法人運営を行うにあたっては、監査を適切に行うことができる監事を選任する必要があるといえます。