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2019年7月8日月曜日

「会計・監査ジャーナル」の電子版についての感想

1.はじめに
 近年のIT技術の進歩は著しいものがあります。電子書籍もその一つです。
 日本公認会計士協会も、数年前より機関紙である「会計・監査ジャーナル」について電子版も利用できるようにし、会員・準会員(日本公認会計士協会に登録をしている公認会計士や公認会計士試験合格者など)に電子版の利用を促しています。
 今回はこの電子書籍について思うことを述べたいと思います。

2.「会計・監査ジャーナル」の電子版
 日本公認会計士協会は、この「会計・監査ジャーナル」の電子版の機能向上を目的とした会員アンケートを行っていましたが、先日、そのアンケート結果が会員・準会員専用ページで公表されていました。
 会員・準会員専用なので、アンケート結果などその内容は記載することはできませんが、電子版を利用している会員・準会員(以下「会員等」)は徐々に増えてきているようです。
 しかしながら、使いやすさについては使いにくいと思っている会員等も結構いるようです。実は、正直申し上げて、私も「会計・監査ジャーナル」の電子版については使いにくいと思っている会員の一人です。
 それでは、なぜ私が使いにくいと思っているのか、電子書籍の種類に即して説明します。

3.Kindleの種類
(1)ハイライト機能などを使えるもの 
 私は、通常の電子書籍ではアマゾンのKindleを使用しています。
 このKindleによる電子書籍については、その方式について2種類あります。一つは、①「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能」(アマゾンの説明書きより)を使用できるもの、もう一つは②これらの機能がついていないもの、です。
 どちらが使いやすいかというと、まちがいなく①のほうです。

 ①の様式は、テキストデータによるものなので、普段、Webで検索するように、その本の中のある用語を検索することができます。また、読んでいて意味がわからない用語や漢字が読めない場合についても、その用語をタップすると、辞書やウィキペディアの説明が示されます。
 ハイライト機能は、気になった用語や文章にマーカーを引くように色をつけることができるものです。ハイライトした用語や文章は、一覧で見ることができます。そのため、後で読んだところを思い出して探すときに便利です。
 ブックマーク機能というものもあります。これは、気になったページに付箋を貼るような機能です。これも、ブックマークしたページを一覧で見ることができます。

 基本的には、電子書籍を利用する場合は、この方式で販売されている書籍のほうがよいです。
 アマゾンの場合は、これらの機能を使用できない場合、「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません」と記載されているので、この説明の有無を確かめる必要があります。

(2)ハイライト機能などが使えないもの
 これに対して、上記のように「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用でき」ない電子書籍もあります。
 これは、イメージとしては、書面をスキャンしてPDF化したようなイメージです。
 PDFを利用される方はおわかりだと思いますが、このように書面をスキャンしてPDFにした場合、検索機能を使用できません。
 ハイライト機能などが使えないタイプはこれに似た電子書籍です。
 このタイプの場合、文章中心の書籍はとても使いにくいです。次に記載しますが、Kindleでこのタイプは、たいてい固定レイアウト型という、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらないタイプです。
 このタイプは、どちらかというと写真や図が多く入った書籍によく見られます。このような書籍であれば、ハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でも、使えることは使えます。私の場合、例えば「地球の歩き方」を電子書籍で購入しましたが、Kindleではハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でした。しかしながら、「地球の歩き方」を現物で持つと荷物が多くなるし、重くなるので、電子書籍にしました。どちらかというとやむを得ないという気持ちが強かったです。

4.リフロー型と固定レイアウト型
 次に、リフロー型と固定レイアウト型について記載します。
 リフロー型とは、文字の大きさや行数などによって、ページレイアウトが変わる電子書籍です。Kindleの場合、ハイライト機能などを使える電子書籍はこちらになります。
 一方、固定レイアウト型とは、上記のように、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらない方式で、画面は拡大できますが、文字自体を大きくしたり、行数を変えることはできません。

5.「会計・監査ジャーナル」電子版の場合
 そこで本題ですが、会計・監査ジャーナルの電子版はKindleではなく、名称は伏せますが、別の電子書籍アプリを使用しています。
 このアプリにおいては、会計・監査ジャーナルは固定レイアウト型になっています。すなわち、文字自体を大きくしたり、行数を変えたりすることはできず、パソコンから見ても、iPadからみてもレイアウトは変わりません。
 一方で、検索機能やハイライト機能はついています。その他ペンによる書き込み機能もついています。
 しかしながら、Kindleのようにハイライトした用語や文章をあとで一覧で見ることはできません。また辞書機能もありません。
 それと、Kindleと比べると検索スピードが遅いです。テキストデータであれば、もっと早くなるのではないかと思います。
 
6.まとめ
 私個人の感想ですが、会計・監査ジャーナル電子版は、検索機能やハイライト機能などはついているものの、使いにくいという印象です。その原因は、会計・監査ジャーナル電子版が固定レイアウト型だからだと思います。
 確かに、雑誌については固定レイアウト型が向いているといわれていますが、会計・監査ジャーナルは後々においても仕事や勉強で使用するコンテンツが多いので、いろいろと事情があるのだとは思いますが、リフロー型によるテキストデータにして、Kindleのように、保存機能やメモ機能をつけた電子書籍化がよいのではないかと個人的には思います。

2019年5月19日日曜日

巨人がPwCコンサルティングと契約~デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて

1.はじめに
 プロ野球・読売巨人軍はPwCコンサルティング合同会社とオフィシャルサプライヤー契約を締結したと、令和元年5月17日付で発表しました(「「PwCコンサルティング」とオフィシャルサプライヤー契約 革新的・先進的な来場者サービス開発へ」)。

 内容は、PwCコンサルティング合同会社が「オフィシャル・デジタルトランスフォーメーション・アドバイザー」となるというものだということです。
 このデジタルトランスフォーメーションですが、球団公式ページでは「「デジタルトランスフォーメーション」(通称:DX)とは、テクノロジーを活用してビジネスモデル全体を改善し、変化するビジネス環境に適応させることで、最終消費者にとってより優れた価値を提供できる状態にすることを意味します。」と記載されています。

2.デジタルトランスフォーメーションが起こすイノベーション
 デジタルトランスフォーメーションは、行政庁においても、日本であらゆる分野で導入を進めるべく、様々な研究が進んでいます。
 例えば、総務省の情報通信白書平成30年版では、デジタルトランスフォーメーションは段階を経て社会に浸透し、影響を及ぼすと記載されています。
 同白書によれば、以下のような段階を経て社会が変革していくとされています。
①「まず、インフラ、制度、組織、生産方法など従来の社会・経済システムに、AI、IoTなどのICTが導入される。」
②「次に、社会・経済システムはそれらICTを活用できるように変革される。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生することになろう。」
③「その結果としては、例えば、製造業が製品(モノ)から収集したデータを活用した新たなサービスを展開したり、自動化技術を活用した異業種との連携や異業種への進出をしたり、シェアリングサービスが普及して、モノを所有する社会から必要な時だけ利用する社会へ移行し、産業構造そのものが大きく変化していくことが予想される。」

3.巨人は遅れている?
 いま、なぜ巨人がPwCコンサルティングとデジタルトランスフォーメーションに関する契約を締結した理由は、推測ですが観客動員、ファン獲得においてITの推進が遅れているという危機感があったのではないかと思います。というのは、現在のプロ野球球団にはソフトバンク、楽天といったIT系の企業が参入していますが、これらの球団は観客動員などにおいて自社のITテクノロジーを導入して様々な工夫をしているからです。
 例えば、ソフトバンクは「AIチケット」というものを発売しています。ソフトバンクホークスの公式ページの説明によれば、「過去の販売実績データに加えて、リーグ内の順位や対戦成績、試合日時、席種、席位置、チケットの売れ行きなど多様なデータから、試合ごとの需要をAI (機械学習) により予測し、需要に応じて価格が変動するチケット」ということです。
 また、楽天は、今年から球場での完全キャッシュレスを始めました。公式ページの説明によれば、「チケット・グッズ・飲食等をお買い求めの際、原則として現金がご利用いただけなくなります。」ということです。
 チケットレス化も進んでいます。BCN+Rというサイトの記事によれば、チケットの電子化によるチケットレスを導入しているのは、オリックス、埼玉西武、中日、阪神、福岡ソフトバンク、北海道日本ハム、横浜DeNAの7球団ということです。
 しかしながら、各球団でこういった取り組みが進む中、残念ながら盟主・巨人の名前が出てきません。
 なぜ、巨人がこのような取り組みを行っていないのかというと、これも推測ですが「やりたいと思っているし、やらないとまずいという意識はあるものの、導入するための人材や技術がそろっていない」からではないかと思います。
 このあたりについては長くなるので、次回「変わるプロ野球のビジネスモデル」というタイトルで記載したいと思います。

2019年3月24日日曜日

平成を振り返って~iモードとブラックベリー

1.はじめに
 平成31年4月1日に新しい元号が発表され、5月1日からは新しい元号に変わります。
 新しい元号に変わるまでにあと約2ヶ月となりました。そのため、最近は「平成最後の・・・」というフレーズをよく耳にします。例えば、「平成最後の甲子園」、「平成最後の大相撲」といった具合です。
 平成が終わるといっても、時代が変わるような感覚が現時点では全くないのですが、一つの区切りということで、平成の時代を振り返ってみたいと思います。
 そこで、今回は平成の間に起こったイノベーションについて回想してみたいと思います。

2.iモードとブラックベリー
(1)初めてのアメリカ
 平成といっても、西暦でいうと1989年1月8日から2019年4月30日までなので約30年間あるのですが、イノベーションという点で私が強烈に印象に残っているのは、アメリカに初めて会計監査に行った平成19年12月から現時点までの約11年間です。
 初めて会計監査に行ったときは、同時にアメリカ合衆国にも初めて行ったときでもあるのですが、当時、日本とアメリカの携帯電話は現在とは全く違うものでした。

(2)iモード
 平成19年ごろは日本ではスマートフォンはまだ普及しておらず、今でいう「ガラケー」が主流でした。この「ガラケー」ですが、当時は「ケータイ」という呼び方をしていました。
 このケータイでは、通話ができることはもちろんですが、日本のケータイではメールやインターネットを使用することができました。今では当然のように思えますが、実は、これは画期的なことでした。
 これを牽引したのがNTTドコモのiモードでした。このiモードですが、コトバンクのブリタニカ国際大百科事典の解説によると、以下のように記載されています。

「エヌ・ティ・ティ・ドコモ (NTTドコモ) が 1999年2月から開始した携帯電話のインターネット接続サービス。携帯電話を使って情報サービス提供者が提供する各種サービスをオンラインで利用することができる。電子メールの送受信をはじめ,チケット予約やタウン情報など各種情報サービスのほか,銀行振り込みなどモバイル・バンキングの利用が可能である。(中略) 契約数の増加は著しく,2000年8月には 1000万を突破。 1999年4月以降,日本移動通信 IDOや第二電電 DDI系のセルラーなどほかの事業者も同様のサービスを開始した。」
 
 iモードによって、日本のケータイは飛躍的に便利になりました。
 そして、日本人のライフスタイルは大きく変わったといっても過言ではなかったと思います。
 ケータイでニュース、天気、交通案内も知ることができるようになり、場所を問わずリアルタイムで様々な情報を知ることができるようになりました。また、着信メロディ(着メロ)、デコレーションメール(デコメ)などが流行り、これを発信する会社も多数現れました。
 当時、日本のケータイは、他の先進国よりも進んでいたと思います。実際、iモードは他国の通信会社に技術を供与して「世界進出」を行おうとしていました。

(3)ブラックベリー
 一方、アメリカではどうだったかというと、日本のiモードのようなインターネット接続サービスは進んでおらず、ケータイは通話中心の使い方でした。
 そのような中、アメリカではブラックベリー(Black Berry)というスマートフォンがありました。これはビジネスマン中心に使用されていたものでした。
 ブラックベリーは、今のスマートフォンの原型のようなものです。私が見せてもらったのは黒色のもので、上3分の2ぐらいが画面で、下3分の1ぐらいにアルファベットのキーボードがついていたと記憶しています。
 いまのスマートフォンは全体が画面で、文字を入力するシーンのときに下の方にキーボードが出てくるというものですが、ブラックベリーはキーボードそのものがついていました。キーボードはパソコンと同様、アルファベットが並んでいるものでした。
 Webで画像検索すれば、いくつか出てくるのでご覧いただければよいかと思います。
 このブラックベリーであれば、通話はもちろん、メール送受信やWeb閲覧もできました。

 ちなみに、ブラックベリーをコトバンクのASCII.jpデジタル用語辞典でみてみると、以下のように記載されています。
 
「カナダのリサーチ・イン・モーション社が開発したスマートフォン。キーボードを搭載し、電子メール、Web閲覧、スケジュールやアドレス帳の管理、通話、インスタントメッセージ、オフィス文書の閲覧などが可能。会社メールを暗号化して安全に転送できることと、メールを即時着信するプッシュ型の電子メールを採用し、すぐに連絡が取れることから、ビジネス用のメール端末として人気が高い。日本では、NTTドコモが販売している。」

 上記のように、私はアメリカに行ったとき、初めてブラックベリーを見ましたが、日本ではiモードが浸透していたため、正直なところ、私自身はものすごく画期的な製品には見えませんでした。聞く限り、機能的にはそれほど変わらないと思ったからです。もちろん、アメリカ居住者ではないため、ブラックベリーを使ったことはなく、使っている人からの話と外観だけの判断ではありますが。
 しかし、私の印象とは裏腹に、アメリカやヨーロッパではブラックベリーの人気は高かったようで、市場シェアも高まっていったそうです。
 
3.平成を振り返って
 しかしながら、iモードもブラックベリーも当時の勢いは続かず、いまでは完全な下火となってしまいました。
 原因は、アップルのiPhoneとグーグルのAndroidがスマートフォン市場で圧倒的なシェアをとったからです。
 私が初めてアメリカに行ったのが平成19年(2007年)12月でしたが、ウィキペディアを見てみると、iPhoneは2007年1月に、Androidは2008年にそれぞれ発売されたということです。従って、私がブラックベリーを知った時期は、ブラックベリーの終わりの始まりだったといえそうです。
 このときから約10年で市場は一変しました。今の若い人はiモードといっても知らない人が多いと思います。私も、10年の間にこれほど激変するとは予測しませんでした。
 当時、日本のケータイのほうがアメリカよりも進んでいたはずなのですが、今では見る影もありません。
 アメリカは平成とは無関係ですが、それでも平成を振り返ってみると、強烈な印象として残っているのが、この携帯電話、スマートフォンのイノベーションです。
 「時代は繰り返す」とはいいますが、このイノベーションの歴史をリアルに知っているがゆえに、次の10年後、いや5年後や3年後かもしれませんが、また人間の生活をドラスティックに一変させるイノベーションが出てくるのだろうと思っています。
 未来を予測するのはなかなか難しいですが、少なくとも現在の技術は、今後間違いなく古いものになるということは間違いありません。そのため、現状に満足していると時代に取り残されます。
 従って、常に、いま起こっていることは古いものなんだ、という認識を持つことが大事だと思っています。

2019年3月3日日曜日

キャッシュレスが及ぼす経営への効果

1.ロイヤルホールディングスによる完全キャッシュレス店
 TBS系列の放送局では毎週日曜日午前7時30分から「がっちりマンデー」という番組が放送されています。平成31年2月24日(日)の放送では「視察が殺到する会社!」というタイトルで、多数の同業他社などが視察に訪れる会社を特集していました。
 その中で、東京の馬喰町(ばくろちょう)にある「ギャザリングテーブルパントリー」というお店が紹介されていました。恥ずかしなら、私も今になって初めて知ったのですが、このお店は、ロイヤルホールディングスが行った実験店舗で、完全キャッシュレス化を行ったお店ということです。
 さらに、この馬喰町のお店は完全キャッシュレスのためレジや金庫がないことに加え、ガス台もないお店であるため、どのような運営を行っているのかということで、同業他社が視察に訪れているのだそうです。
 余談ですが、私が知っている馬喰町は繊維問屋の町で、夜になると人通りが全くなくなり、車しか通っていない寂しい町という印象がありますが、最近はお洒落な店も開店しているようで昔とは変わってきているようです。

2.キャッシュレスが及ぼす効果
(1)レジ締めの時間が大幅に短縮
 番組では、キャッシュレスがどのような効果をもたらしたのかという点を紹介していましたが、番組を見て「なるほど」と思いました。
 キャッシュレス化となると、普通は、(イ)客が現金を支払わなくてよいので、多額の現金を持ち歩かなくてもよい、(ロ)小銭が増えない、(ハ)財布からお金を出す手間が省けるので支払いが早くなる、といった「客視点」のメリットしか思い浮かばないのではないかと思います。
 しかしながら、このギャザリングテーブルパントリーでは、完全キャッシュレス化により、店長はじめ全従業員の労働時間が大幅に減少したそうです。
 なぜかというと、現金がまったくないため、いわゆる「レジ締め」が一瞬で終わるからです。現金を取り扱う店舗だと、閉店後にレジデータを集計し、レジ内の現金を数えて、レジデータに基いた残額と一致しているかどうか、といった作業を行いますが、このレジ締めには時間がかかります。このとき、現金残高がデータと一致していないと、その原因を探らないといけなくなり、さらに時間がかかります。
 しかし、完全キャッシュレスの店舗では、この作業が不要となるため、レジ締めにかかる時間がほとんどなくなりました。そのため、閉店後の労働時間の大幅な削減となったということです。
 ちなみに、学生時代、あるコンビニエンスストアでアルバイトをしていた友人によると、そのコンビニエンスストアでは、実際在高が過大の場合、その過大分は店舗のものとなるのに対して、過少の場合はレジを担当していた店員が補填しないといけなかったそうです。
 
(2)釣り銭の準備、現金の持ち運び作業の消滅
 また、完全キャッシュレス化となれば、当然のことながら釣り銭はいりません。従って、金融機関から釣り銭用の現金を持ってくる必要はありません。
 さらに、現金の場合、売上金は金融機関に入金するために金融機関まで持ち運びしなければなりませんが、この作業も不要になります。
 このような作業がなくなることで労働時間の短縮につながります。

(3)スペースの確保
 番組では完全キャッシュレス化により、レジや金庫を置く必要がなくなったので、スペースの確保につながった、と紹介していました。
 確かに、レジのスペースは結構取りますし、金庫も数百キロの大金庫を置くのが通常なので、こちらもスペースをとります。
 レジのスペースがなくなれば、その分、テーブルと椅子を増加できますので稼働率が上がれば売上の増加につながります。
 なお、支払いは、電子マネーやクレジットカードの場合、店員がテーブルまでやって来てそこで支払いを行うようです。

(4)注文はセルフサービス
 ギャザリングテーブルパントリーでは、客からのオーダーも各テーブルに置いてあるタブレットを使用してセルフサービスで注文します。
 ちなみに、このタブレットを使ったセルフオーダー方式は、ギャザリングテーブルパントリーだけではなく、例えば大戸屋でも導入されています。
 この方式であれば、店員がテーブルに行って注文を聞いて厨房に伝えるという作業がなくなります。このような作業は一日何回も行うので、これがなくなれば、他の作業に時間を回せますし、人手不足の中、少ない人数でも店をまわすことが可能となります。
 さらに、平成30年7月にはLINE Payを使った「セルフテーブル決済」を導入したということです。これは「注文用タブレット端末において、お支払い方法にLINE Payを選択すれば、お客様ご自身のスマートフォンひとつでスムーズに支払いを完了することができる」(ロイヤルホールディングスのHPより)という仕組みということです。
 上記のように、電子マネーやクレジットカードの場合は、店員がテーブルまで行く必要がありますが、セルフテーブル決済の場合は、それも不要ということになります。
 なお、最近では、平成31年2月1日にQRコードで決済できる「Alipay」と「WeChat Pay」が、12日には 「PayPay」が導入されました。これらもセルフテーブル決済に使用できます。

3.まとめ
 キャッシュレス化は、顧客にとってのメリットもありますが、労働者にとって労働時間の削減といった大きなメリットがあることがわかりました。また、いろいろとウェブサイトを見てみると、労働者にとっては労働時間の削減のみならず、現金を扱うことへのプレッシャーからの開放といった精神面の安定といったメリットもあるということです。
 また、人手不足が叫ばれる中、これまでよりも少ない人員で運営できるというメリットもあります。
 こういったメリットは、現在問題となっている「働き方改革」への一つの対応策となります。
 このギャザリングテーブルパントリーは実験店ということですが、こういった効果が明らかになったため、多数の同業他社が見学に来て、その効果を自社にももたらそうと考えているのだと思います。
 キャッシュレスの促進化は最近始まったばかりですが、外食産業を始め、小売店にとっては、働き方改革のための大きなツールとなるため、働き方改革とリンクして、今後短期間で一気に普及するものと予測します。

2019年2月24日日曜日

病院・診療所のIT化戦略の必要性

1.はじめに
 病院や診療所の収益は診療報酬が基本となります。しかしながら、診療報酬は国の財政状況の悪化により、抑制傾向にあります。
 診療報酬は保険から入ってくるものについては確実に入金されるため、滞留の心配はありませんが、診療報酬が下落傾向にあるということは、全体の売上が下がることにつながる可能性が高くなります。
 一方、費用面については、病院や診療所の規模や種類によって異なる面はありますが、人件費、地代家賃、減価償却費といった固定費が占める割合が多くなってきます。
 このような収益費用構造において利益を確保するには、やはり、一人でも多くの患者を確保して収益をあげていくことが必要になってきます。固定費は稼働率によって変動しない費用なので、収益の増大が利益の増大につながるためです。
 今回は、この患者数の確保という点において、IT化によって可能となる方策を考えてみたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.ITの活用事例
 患者数の確保のためにITを活用しているかどうかは、病院や診療所によってかなり異なります。極端に言えば、ITを活用している病院・診療所とITを活用していない病院・診療所に二分化されているともいえます。
 ここで、病院・診療所名は伏せますが、ある病院・診療所の例を紹介します。

 この病院・診療所では、予約をホームページから行うことができます。
 予約には時間予約と順番予約があります。時間予約とは、文字通り、希望する時間帯を指定して予約できるものです。例えば、午前10時から10時30分の間に予約を入れるといった具合です。

 次に順番予約とは、時間帯を指定するのではなく、予約順が決まるというものです。例えば、時間予約ができるのが午後の診療は15時から18時までの間で、18時以降は順番予約のみとします。この場合、18時以降に予約を入れる場合は、ホームページから申し込んだ順に、診察の順番が決まっていきます。ホームページにアクセスして順番予約をするときに、先に1番、2番の人の診察順が決まっていれば、自分は3番というわけです。順番なので何時何分になるのかは決まっていません。

 さらに、この病院・診療所では、順番予約の場合、診察の順番が近づいてきた場合、登録したメールアドレスにメールが届きます。さらに、ホームページ上でも、どの番号までの患者の診療が終了したのかがわかります。スマートフォンを使えば、手元で自分の順番がどこまで近づいてきているのかを、場所を問わずリアルタイムで把握することができます。

3.顧客満足の追求の必要性
 このシステムの最大のメリットは、待合室での待ち時間を大幅に削減できることです。
 病院・診療所に行ったとき、すでに多数の患者の受付が行われており、いまから1時間どころか2時間待ち、といった経験をされた方は少なくないと思います。
 病院・診療所に行くときは、何かしら体調不良の場合ですから、こんなときに2時間待ちなんて大変苦痛です。
 どの病院・診療所にも雑誌や新聞が置いてありますが、自分の読みたいものが置いてあるとは限らないし、体調不良のときに雑誌や新聞を1時間~2時間の間、読むのは疲れます。今の時代ならばスマートフォンがありますが、それでも体調不良のときにスマホを1~2時間見るのは疲れます。それに、最近はそうでもないようですが、医療機関内のスマートフォン禁止というところもあります。
 
 このように、病院・診療所にたどり着いたのはよいものの、長時間待たされるのは患者にとってはうんざりです。
 しかしながら、上記の予約システムならば、時間予約の場合はその時間帯に行けば、待ち時間はあるものの、長時間の待ち時間は生じません。また、順番予約の場合も、自分の順番が近づいてくるまで、例えば自宅にいるとか、会社員の場合であれば、オフィスで仕事を続ける、あるいは夜ご飯をすませる、といった時間の活用も可能です。

 これは、患者の待ち時間に係るストレスを軽減するという、いわば顧客満足を達成するためのシステムともいえます。
 もちろん、病院・診療所は最新の医療技術、最新の医療機器、ドクターの腕が必要です。しかしながら、こういった有形の資産において、他の病院・診療所とものすごく大きな差がなければ、ここで紹介した顧客満足を達成することができる無形の資産を持っている病院・診療所に患者は流れていきます。
 別の言い方をすると、「患者は待っていて当たり前」という上目線的な発想は、もう持ってはいけないということです。

 今回は、ITの活用による待ち時間の軽減というテーマを取り上げましたが、今後、病院・診療所の経営は、本業の医業だけではなく、いかに顧客満足を向上するようにするかといった、顧客(患者)視線の経営がますます必要になってきます。
 このようなことは以前から言われてきたことですが、意外にも実践しているところと実践していないところがはっきり別れてしまっています。しかしながら、診療報酬が今後、ますます抑制されることははっきりしていますので、ITを最大限に活用した顧客満足達成のための経営を行うことが望まれます。


2019年2月18日月曜日

日本発のイノベーションがなかなか出てこない理由

1.はじめに
 いま、NHKの朝の連続テレビ小説では「まんぷく」が放映されています。
 「まんぷく」は日本のイノベーションの一つでもある「インスタントラーメン」が生まれた物語を描いています。
 この「インスタントラーメン」とは安藤百福氏が発明した「チキンラーメン」です。
 「まんぷく」でも描かれていますが、研究室という名の小屋で、小麦粉に味付けや添加物を入れて麺にし、お湯でもどすという実験を試行錯誤しながら何度も繰り返します。ついに、ある日、天ぷらをヒントに、麺を油であげるという製法を開発します。これにより、油であげた麺にお湯をかければ2分で食べることができるという世界初のインスタントラーメンが生まれました。
 上記のように、このインスタントラーメンは日本が誇るイノベーションの一つです。
 
2.日本のイノベーションは少ないのか
 今日のタイトルは「日本発のイノベーションがなかなか出てこない理由」としましたが、では、日本からはイノベーションが本当に少ないのかというと、必ずしもそんなことはないと思います。
 昨年9月に日本公認会計士協会京滋会の研修旅行で、イノベーションを生み出す思考法の一つと言われるデザインシンキング(Design Thinking)の体験学習のため、アメリカ・カリフォルニア州のMenlo Collegeを訪れましたが、このとき担当されたBruce Paton教授は「日本はイノベーションがなかなか出てこないというが、かつて日本ではいろいろなイノベーションがあり、アメリカ人も日本のイノベーションを学んでいた。」という説明がありました。
 ちなみに、そのときに配られたレジュメでは、「ウォークマン」「新幹線」「マリオブラザーズ」「ピカチュウ」の写真が掲載されていました。
 実際に、かつての日本には日本発のイノベーションによる製品はいろいろなものがありました。
 自動改札機もそうですし、LEDもそうです。
 とはいえ、日本で開発されたものもガラパゴス化して世界には普及しないなど、世界に普及したイノベーションがあまり多くないのは事実かもしれません。

3.権威主義がイノベーションを阻害する
 LEDは東北大学名誉教授の故西澤潤一教授が開発したものですが、西澤教授は、その他にもPINダイオードや光ファイバーなど数々の発明を行います。
 しかしながら、その人生は苦闘の連続だったといいます。
 なぜかというと、西澤教授が発明した独創的な技術が日本ではなかなか認められなかったからです。
 PINダイオードを発明し、学会で発表したとき学会は「米国の誰も、そんなことはいっていないのだから、お前のいうようなことはあるはずはない。実験が間違っているのだろう」(「異才時代」竹村健一著(学研)P136より)という冷たい反応だったそうです。
 しかし、その後、アメリカで西澤教授と同じ内容の論文が次々と発表されると、あわてて日本のメーカーが米国のメーカーの特許を導入しようとしたそうです。
 この竹村健一氏の本では「こうしたいきさつは日本人がいかに「権威」に弱く、創造力を認めていく風土に欠けているかをよく示している。」と記載されていますが、確かに理科系の分野ではヒエラルキーが存在していて、下位の者が上位の者を追い抜こうとすることを認めない傾向があります。
 また、西澤教授がある実験で定説と異なる結果が得られたとき、所員に新しい理論としてまとめるよう指示したとき、その所員は「本にはこのように書いてあります。だから、この実験は間違いではないか」(同著P138より)と言ったそうです。
 これも権威主義の弊害といえます。「本に書いてあるから」としてしまっては、それ以上の発展は望めません。本の内容を信じてしまっていることが問題と言えます。もしかしたら本の内容が間違っているかもしれません。本に書かれたことはあくまで過去の情報です。過去情報なのですから、それに依存してしまっては未来情報は開拓できないといえるでしょう。
 この点で、デザインシンキングではニーズを探るとき、アンケートやインタビューは行わないそうです。なぜかというと、アンケートやインタビューから得られた回答は「常識的」な回答しか得られないからです。つまり大多数の人間が考えていることは過去情報といえます。過去情報から全く新しい未来情報は生まれにくいのです。
 そこで、デザインシンキングでは「観察」を重視します。人間の行動を観察して潜在的ニーズを発見するというわけです。なぜかというと、人間の行動が人間の欲求を表しているからです。
 このように、イノベーションを起こすには、権威主義からの脱却がひとつのカギになると思います。