1.はじめに
病院や診療所の収益は診療報酬が基本となります。しかしながら、診療報酬は国の財政状況の悪化により、抑制傾向にあります。
診療報酬は保険から入ってくるものについては確実に入金されるため、滞留の心配はありませんが、診療報酬が下落傾向にあるということは、全体の売上が下がることにつながる可能性が高くなります。
一方、費用面については、病院や診療所の規模や種類によって異なる面はありますが、人件費、地代家賃、減価償却費といった固定費が占める割合が多くなってきます。
このような収益費用構造において利益を確保するには、やはり、一人でも多くの患者を確保して収益をあげていくことが必要になってきます。固定費は稼働率によって変動しない費用なので、収益の増大が利益の増大につながるためです。
今回は、この患者数の確保という点において、IT化によって可能となる方策を考えてみたいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.ITの活用事例
患者数の確保のためにITを活用しているかどうかは、病院や診療所によってかなり異なります。極端に言えば、ITを活用している病院・診療所とITを活用していない病院・診療所に二分化されているともいえます。
ここで、病院・診療所名は伏せますが、ある病院・診療所の例を紹介します。
この病院・診療所では、予約をホームページから行うことができます。
予約には時間予約と順番予約があります。時間予約とは、文字通り、希望する時間帯を指定して予約できるものです。例えば、午前10時から10時30分の間に予約を入れるといった具合です。
次に順番予約とは、時間帯を指定するのではなく、予約順が決まるというものです。例えば、時間予約ができるのが午後の診療は15時から18時までの間で、18時以降は順番予約のみとします。この場合、18時以降に予約を入れる場合は、ホームページから申し込んだ順に、診察の順番が決まっていきます。ホームページにアクセスして順番予約をするときに、先に1番、2番の人の診察順が決まっていれば、自分は3番というわけです。順番なので何時何分になるのかは決まっていません。
さらに、この病院・診療所では、順番予約の場合、診察の順番が近づいてきた場合、登録したメールアドレスにメールが届きます。さらに、ホームページ上でも、どの番号までの患者の診療が終了したのかがわかります。スマートフォンを使えば、手元で自分の順番がどこまで近づいてきているのかを、場所を問わずリアルタイムで把握することができます。
3.顧客満足の追求の必要性
このシステムの最大のメリットは、待合室での待ち時間を大幅に削減できることです。
病院・診療所に行ったとき、すでに多数の患者の受付が行われており、いまから1時間どころか2時間待ち、といった経験をされた方は少なくないと思います。
病院・診療所に行くときは、何かしら体調不良の場合ですから、こんなときに2時間待ちなんて大変苦痛です。
どの病院・診療所にも雑誌や新聞が置いてありますが、自分の読みたいものが置いてあるとは限らないし、体調不良のときに雑誌や新聞を1時間~2時間の間、読むのは疲れます。今の時代ならばスマートフォンがありますが、それでも体調不良のときにスマホを1~2時間見るのは疲れます。それに、最近はそうでもないようですが、医療機関内のスマートフォン禁止というところもあります。
このように、病院・診療所にたどり着いたのはよいものの、長時間待たされるのは患者にとってはうんざりです。
しかしながら、上記の予約システムならば、時間予約の場合はその時間帯に行けば、待ち時間はあるものの、長時間の待ち時間は生じません。また、順番予約の場合も、自分の順番が近づいてくるまで、例えば自宅にいるとか、会社員の場合であれば、オフィスで仕事を続ける、あるいは夜ご飯をすませる、といった時間の活用も可能です。
これは、患者の待ち時間に係るストレスを軽減するという、いわば顧客満足を達成するためのシステムともいえます。
もちろん、病院・診療所は最新の医療技術、最新の医療機器、ドクターの腕が必要です。しかしながら、こういった有形の資産において、他の病院・診療所とものすごく大きな差がなければ、ここで紹介した顧客満足を達成することができる無形の資産を持っている病院・診療所に患者は流れていきます。
別の言い方をすると、「患者は待っていて当たり前」という上目線的な発想は、もう持ってはいけないということです。
今回は、ITの活用による待ち時間の軽減というテーマを取り上げましたが、今後、病院・診療所の経営は、本業の医業だけではなく、いかに顧客満足を向上するようにするかといった、顧客(患者)視線の経営がますます必要になってきます。
このようなことは以前から言われてきたことですが、意外にも実践しているところと実践していないところがはっきり別れてしまっています。しかしながら、診療報酬が今後、ますます抑制されることははっきりしていますので、ITを最大限に活用した顧客満足達成のための経営を行うことが望まれます。
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