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2019年9月14日土曜日

「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」の公表

1.第二次アンケートも含めた結果

今年の1月27日に「会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果についての感想」というブログを書きましたが、令和元年8月30日付で第2次調査の結果も含めた「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」が厚生労働省より各所轄庁に発出されました。
 このアンケート結果は、いろいろなサイトに掲載されていますが、ここでは大阪府のサイトをご紹介しておきます。大阪府のサイトはこちらです。

2.会計監査までの準備期間

(1)前回の決定時期

 アンケート結果には、自由記入欄の結果として各社会福祉法人のご意見も記載されています。
 前回の第1次アンケートにも自由記入欄の記載はありましたが、今回、私が取り上げるのは会計監査が開始されるまでの準備期間についてのご意見です。

 ご存知のように、平成29年4月1日から開始する事業年度より、サービス活動収益30億円超又は負債総額60億円超の法人は会計監査人の設置が義務付けられることになりました(社会福祉法(以下「法」)37条)。そのため、この会計監査人の設置が義務付けられた社会福祉法人(特定社会福祉法人)は、公認会計士又は監査法人による社会福祉法に基づく会計監査を受けることになりました(法45条の2①)。

 この社会福祉法に基づく監査の対象は前年の平成28年9月26日の社会保障審議会で決定したと記憶していますが(ちなみに、私も傍聴人として参加していました。)、このあたりから会計監査人候補の選定に入った法人が多かったのではないかと思います。もちろん、それ以前に、サービス活動収益が30億円を超えている法人の中には会計監査人設置の義務付けは確実ということですでに会計監査人予定者を決定していた法人もありました。

 そこで、平成28年10月以降に会計監査人候補の選定を行った法人が、概ねどのような経緯をもって社会福祉法に基づく会計監査に入っていったのかを簡単に記載します。

(2)会計監査に入るまで

 平成28年9月26日に会計監査人の設置が義務付けられる社会福祉法人の対象が決定して以降、対象となった社会福祉法人はプロポーザルを行い、会計監査人候補の選定に入りました。ここで「会計監査人候補」と記載しているのは、会計監査人は評議員会で決定されるため(法43条①)、定時評議員会が開催される以前においては、正式に会計監査人として選任されていないためです。
 プロポーザルは早いところでは平成28年10月~11月には行っていましたが、遅いところでは平成29年1月~2月という法人もありました。
 いずれにしろ、多くの法人では、平成28年10月から平成29年2月ぐらいまでには会計監査人候補が選定されていたのではないかと思います。
 会計監査人候補が選定されたら、次に行われるのは予備調査です。予備調査では、内部統制に依拠した会計監査が実施できるかの調査、会計及び内部統制に関する問題点の指摘、その他反社会的勢力との関わりの有無の調査などを行います。
 この予備調査とその報告は、遅くとも平成29年3月までには終わっていたのではないかと思います。というのは、4月に入ると期末決算の時期に入るので法人側も対応が難しくなるからです。
 総じて見て見ると、会計監査人の選定から予備調査の報告までの期間は、おおむね平成28年10月から平成29年3月までの約6ヶ月ということになります。
 そして、予備調査の報告が終わった後は、6月に開催される評議員会で会計監査人の選任が行われ、7月から会計監査が行われるという流れとなりました。

(3)会計監査までの準備期間

 予備調査については、通常、監査法人から予備調査報告書が提出され、会計及び内部統制の問題点が指摘されます。その後は、指摘された事項について改善を行うことになります。しかしながら、特に内部統制については改善といっても一朝一夕にできるとは限らず、時間を要するものもあります。
 これを踏まえると、平成28年10月から平成29年3月までの最長6ヶ月間であっても改善を行うには期間が短いといえます。4月からは期末決算に入るので3月までには改善を終了させる必要がありますが、法人によっては予備調査報告を受けてから3月末までの期間が、3ヶ月間あるいは2ヶ月間ぐらいしかなかったかもしれません。

(4)上場準備会社では?

 以前、このブログでは「会計監査人の設置基準の引下げ延期」というブログを書きましたが、この中で私は、

「私見ですが、平成29年度から実施した社会福祉法人の監査では、社会福祉法人側に十分な準備期間がなかったのでは、と感じました。
 ちなみに、上場会社の場合、上場準備期間があり最短で2年、状況によってはそれ以上の期間を経て上場に至るのですが、社会福祉法人の制度改革ではこのような期間がなかったと思います。
 そのため、多くの社会福祉法人は準備不十分なまま、いきなり法定監査に突入してしまったので、気の毒な感じがします。
 従って、今回、会計監査人の設置基準が延期となりましたが、監査の準備期間が設けられたという点ではよかったと個人的には思っています。」

 と記載しました。

 もう少し、実務の現状を記載すると、上場を目指す会社では上場準備監査のショート・レビューが行われる前にコンサルティング会社などが入って、会計及び内部統制の問題点を指摘し、あらかじめ改善しておくという実務が行われることが多いです。人によっては「プレ・ショート・レビュー」という言い方をする人もいます。
 このように、上場を目指す会社は、上場後の法定監査(金融商品取引法監査)が行われる前に任意監査である上場準備監査、さらには上場準備監査が行われる前の「プレ・ショート・レビュー」を経ています。この期間は最低2年間ですが、3年以上かかっている会社は多く見られます。
 これに比べると、社会福祉法人の場合は、いわゆる法定監査を受けるまでの期間が短すぎると思いました。

3.アンケート結果より

 アンケート結果にもこの点がいくつか記載されています。
 以下抜粋します。

「平成 28 年度から予備調査を実施したが、法人の事業規模から考えると、十分な準備期間であったとはいえない。特定社会福祉法人以外の法人でも、早期に予備調査を実施し、内部統制の不備や会計上の誤りについて修正すべきと考える。また、会計監査人の選任にあたっては、「医療・福祉業界」に精通した、専門性の高い監査法人の選定が重要である。この点を踏まえると、今回の会計監査人の設置基準引き下げが延期となり、会計監査の準備期間が設けられたという点では良かったと考える 。」

 会計監査人の設置基準引き下げが延期になり会計監査の準備期間が設けられた点ではよかったという点は、上記2(4)に記載したとおり私も同意見です。

「公認会計士の話によると、一般企業で上場する場合は、上場準備期間があり、それを経て会計監査を受けるための体制も整っていくとの事であり、 社福法人においても会計監査受ける場合は、同様の対応が必要なのではないか。」
 
 こちらも上記2(4)に記載したとおり、上場会社では上場するまでに上場準備期間があります。法定監査に入るまでには相応の期間が必要と個人的には考えていますが、少なくとも、社会福祉法人の場合は期間が短すぎると思います。もう少し、法定監査に入るまでの準備期間を長く設けるべきと思います。

4.まとめ

 正直申し上げて、多くの社会福祉法人では現状の内部統制や経理レベルでは、監査法人が行う本来のレベルの会計監査に対応するには難しいと思います。
 そのため、監査法人がまともに会計監査を行うと、現場にもかなりの混乱と負担がかかってしまいます。実際、アンケート結果にも監査対応を行う職員の負担や現場の混乱についても記載されていました。
従って、会計監査に対応するためには、早めに公認会計士などの専門家を入れて、予備調査が行われるまでに、できる限り十分な時間をとる必要があります。

2019年8月3日土曜日

公認会計士試験が埼玉県で実施されない理由

1.令和元年公認会計士試験の会場

令和元年8月 23 日、24 日及び 25 日に令和元年公認会計士試験が実施されます。本日は令和元年8月3日なので、あと約3週間後となります。
 私も身近に論文式試験受験者がいるので、頑張って欲しいと思っています。
 
 さて、少し前になりますが、令和元年7月23日に、公認会計士試験の試験場が発表されました。試験場の一覧は金融庁の「令和元年公認会計士試験論文式試験の試験場について」に掲載されています。

 全国の会場のうち、関東と近畿の試験会場を抜粋すると以下のとおりです。

 関 東 財 務 局   
①目黒区駒場3丁目8番1号 東京大学(駒場キャンパス)
②葛飾区新宿6丁目3番1号 東京理科大学(葛飾キャンパス)

 近 畿 財 務 局  
茨木市岩倉町2番 150 号 立命館大学(大阪いばらきキャンパス)


2.埼玉県で実施されない理由

上記のように、関東では、東京都目黒区の東大駒場キャンパスと東京都葛飾区の東京理科大葛飾キャンパスが会場となっています。
 また、近畿では、大阪府茨木市の立命館大学いばらきキャンパスとなっています。
 このように、公認会計士試験では、毎年、関東財務局の管轄地では東京都、近畿財務局の管轄地では大阪府が試験会場となっています。
 
 それでは、公認会計士試験は、例えば埼玉県では実施されないのでしょうか。
 実は、税理士試験では東京都に加えて、埼玉県も試験地になっています。これを見ると、公認会計士試験も埼玉県で実施できそうな感じもします。ちなみに、関東財務局はさいたま市にあります。

 しかしながら、原則として公認会計士試験は埼玉県では実施されません。
 なぜかというと、公認会計士試験の試験実施地は公認会計士試験規則第2条で「公認会計士試験は、毎年一回以上、東京都、大阪府、北海道、宮城県、愛知県、石川県、広島県、香川県、熊本県、福岡県、沖縄県その他審査会の指定する場所において行う。」と定められていて、埼玉県は入っていないからです。
 
 一方、税理士試験の試験実施地については、税理士法第5条で「税理士試験は、北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県及び国税審議会の指定するその他の場所において行う」と定められています。こちらでは、埼玉県が明記されています。従って、税理士試験では埼玉県も試験会場になっているというわけです。

 もちろん、これは税理士試験は受験者数がとても多いので、一つの会場では収容しきれないという事情があるのだと思うのですが、試験実施地は実は法令で明確に定められているということがおわかりいただけると思います。
 
 ただし、税理士試験は、近畿では、大阪府に加えて京都府で実施されることもあります(令和元年度は京都会場はなし。)。しかし、税理士法第5条では「京都府」の地名は記載されていません。推測ですが、おそらく「国税審議会の指定するその他の場所において行う」という条文が根拠となっているのだと思います。
 その意味でいくと、公認会計士試験規則にも「その他審査会の指定する場所において行う。」と記載されているので、東京都や大阪府など明記されている都道府県以外の場所でも試験地になる可能性はあるかもしれません。
 可能性があるとすると、公認会計士試験の短答式受験者が激増し、一つの大学等で収容しきれなくなったときでしょうか。
 しかしながら、現時点では、受験者数から見ても、埼玉県や京都府、あるいは神奈川県や兵庫県といった他地域で公認会計士試験が実施されることはないといえます。

3.試験会場に関する注意点

最後に、試験会場に関する注意点を記載しておきます。受験生の方の参考となれば幸いです。

①下見はかならず行くこと
 乗車する電車、乗換駅、降車駅を確認するとともに、降車駅から会場までの道順、時間もつかんでおく必要があります。また、大学会場の場合、正門から校舎までの距離もかなりあるキャンパスもあるので、そのあたりも事前チェックしておく必要があります。

②試験会場に近いホテルに宿泊すること
 これは、交通機関の遅延リスクを低減することと疲労をためないことが理由です。
 当日は、人身事故などで鉄道が止まるリスクもあります。このような場合、試験会場に近いホテルであれば、バスやタクシーで試験会場に到着することができます。
 また、試験当日はとても疲れます。しかも真夏なのでとても暑く、さらに疲れます。できる限り、電車に乗る時間を減らしたほうが、体力の消耗を防ぐことができます。

③机が小さい場合も想定すること
 大学の会場によくありがちですが、机がとても小さいときがあります。机が小さい場合、机上における文房具が限られてくるので、最低限置くものをあらかじめ決めておくとよいです。
 ちなみに、試験会場が合同庁舎の場合、机は長机で広いことが多いようです。
 机のサイズが受験地によって違うのは不公平な感じがしますが、広い机を求めて合同庁舎が会場となる地域で受験して合格した公認会計士もいるということです。 

2019年7月27日土曜日

契約書に係る監査上の論点~吉本興業の「契約書なし」をみて

1.吉本興業の「契約書なし」問題
 吉本興業の、いわゆる闇営業問題に関連して、吉本興業が所属タレントと契約書を作成していなかったという論点が出てきました。
 さらに、この「契約書なし」問題に関して公正取引委員会の山田昭典事務総長が「契約書面が存在しないということは、競争政策の観点から問題がある」と述べたというニュースも出てきました。(「契約書なし「競争政策上、問題」=公取事務総長、吉本興業に懸念」(時事通信)、「吉本興業の契約書なし、「問題がある」 公取委総長発言」(朝日新聞))
 私は、闇営業問題に関心はないのですが、この「契約書なし」問題を見て思い出したことがあったので、今回は、財務諸表監査における契約書にかかる論点を記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.「契約書なし」の会社
(1)契約書を作成する意義
 財務諸表監査を行うとき、内部統制のデザインの評価や運用評価、実証テストを行いますが、この過程で取引の契約についても、どのように行われているのかを見るために契約書の閲覧などを行います。
 当然のことながら、まずは取引の契約を締結した場合は契約書の作成が必要です。一応、民法上は口頭でも契約は成立するのですが、企業の内部統制上、契約書を作成することが必要です。そうしないと、金額や支払相手などが不明確になるため、例えば、架空取引や水増し請求による過大支払いなどが行われてしまい会社に損害が発生するリスクがあるからです。(「架空取引に係る内部統制」「経営者による内部統制の無効化とハコ企業」参照)

(2)地方でよく見られるケース
 上場会社では何らかの取引を行うときは、まず間違いなく契約書を交わしていますが、「経営者による内部統制の無効化とハコ企業」でも記載したように、資金繰りが逼迫した企業では内部統制の無視・無効化が横行し、契約書を取り交わさないで取引を行っていたケースも見られました。
 
 このように上場会社レベルでは「契約書なし」というのはイレギュラーなケースですが、非上場会社や非営利法人では「契約書なし」というケースが時々出てきます。特に、この「契約書なし」は地方でよく見られるという印象があります。
 何度か見たのは、地元の工務店と工事契約を締結するケースです。なぜかというと、地方では、地域の人は昔からの顔なじみで、お互いによく知っているため、わざわざ契約書を作成する必要はないという文化ができてしまっているからのようです。
 そのため、契約書を作成しなくても「まあ、別にいいじゃないか」というお互いの信頼関係で物事が進んでしまうというわけです。

 また、非上場会社あたりでは「収入印紙の節約をしたいから」という理由で契約書を作成しない会社も時々見られます。
 
 しかしながら、契約書を作成しないと上記のように、会社に損害が生じるリスクがあるので、契約書は作成する必要があります。

3.契約書の偽造
 立命館大学、早稲田大学の教授や公認会計士・監査審査会会長を務められた千代田邦夫教授は、公認会計士資格も保有されており、旧二次試験合格後は会計士補として監査業務にも携われていました。
 その千代田教授の著作「監査論の基礎」(税務経理協会)の前書きの中に、契約書の偽造を発見したときの話が記載されています。
 千代田氏が会計士補として、ある会社の監査に行ったとき、売上の監査を行うために売買契約書の提示を求めたそうです。しかし、会社は何かと理由をつけて提示してこなかったため、おかしいなと思い何とか粘ったところ、やっと出てきたのは契約書のコピーだったそうです。そこで、千代田氏が閲覧したところ、おかしなところに気づいたといいます。何かというと、契約書のコピーは何通もあったようですが、収入印紙の消印の位置がどの契約書も同じだったのだそうです。ますます怪しいと思い、問い詰めると、ついに担当者が白状したそうです。会社が何をしたのかというと、セロファン紙の間に収入印紙を挟み込み、その上から割印を行い、これを偽造した契約書においてコピーをしたということです。
 
 なお、監査の現場では契約書類や証憑類は必ず原本を確認するようにしています。そうしないと、この話のように不正が行われても看過してしまう可能性があるからです。そのうえで監査調書にするためにコピーをとることになります。
 ちなみに、私の場合は「原本確認の上、森がコピー」と記載して原本を確認したことを記すようにしています。このようにすれば、会社がコピーしてきたものをそのまま受け取っていないということがわかるからです。
 
4.監査法人の「契約書なし」問題
 以上は、会社等と取引先との契約に関してでしたが、最後に監査法人と契約している公認会計士との契約について触れたいと思います。これは吉本興業とタレントとの契約と同じケースとなります。
 監査法人も契約している非常勤の公認会計士とは非常勤契約に係る契約書を作成する必要があります。もちろん、常勤の公認会計士とは雇用契約を締結していますから雇用契約書の作成が必要です。
 日本公認会計士協会は、監査法人に対して品質管理レビューを行っていますが、この品質管理レビューのときは、非常勤会計士と交わした契約書の有無は必ずチェックしています。そのため、通常の監査法人であれば、非常勤会計士との契約書は作成しています。
 監査法人だったら当然であろう、と思われるかもしれませんが、どうもこの業界では長い間、それこそ吉本興業のように契約書が作成されず、契約関係があいまいになっていた時期が続いていたようです。おそらく、もともと、この業界は徒弟制度が長く続いていたため、「何でそんなもの作らないといけないんだ」という感覚があったのだと思います。
 しかしながら、日本公認会計士協会による品質管理レビューで、非常勤会計士との契約書の有無はチェックするようになったため、品質管理レビューを受ける監査法人では契約書を作成するようになりました。

2019年6月30日日曜日

公益法人information~C(2)の計算式が壊れたら

1.はじめに

 平成31年2月11日のブログ「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」で公益法人informationのシステムが新しくなったというお話をしました。(注:このときのブログで「公益法人インフォメーション」という書き方をしてしまいましたが正確な表記は「公益法人information」でした。)
 今回は、この公益法人informationで導入された新システムの留意点について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。
(今回の内容は、一緒に業務を行っていただいた公認会計士のご協力によるものです。感謝申し上げます。)

2.C(2)の計算式が壊れたらどうすればよいのか

(1)行挿入の注意点

 「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」でも記載しましたが、新システムではエクセルでの作成となりました。そのため、自分のパソコン内で作成できるようになり、また、編集も行いやすくなったため、旧システムよりも便利になったと思います。
 しかしながら、注意点もあります。

 C(2)(控除対象財産を集計する表)など、いくつかのブックには行を追加するときの注意点が記載されています。
 手元に資料がないので記憶に頼りますが、行を追加するときは、①自分で行挿入をしてはならない、②1行目ではなく2行目以下の行をコピーして挿入しなければならない、という注意書きが記載されていたと思います。

 エクセルだとつい、自分で行挿入をしてしまいがちですが、これは必ず守らなければなりません。
 

(2)自分で行挿入をしてしまうとどうなるのか

 この注意書きは、もちろん理由があって記載されています。
 それでは、2行目以下をコピーしないで自分で行挿入をしてしまうとどうなるのでしょうか。
 結論を申し上げますと、この場合、1号財産や2号財産などの合計額があわなくなってしまいます。

 自分で行挿入しただけで何故合計がおかしくなるのか疑問に思われる方も多いと思います。実は、この現象が生じる理由は、1号財産や2号財産の集計表の末尾にある小計欄の計算式にあります。
 通常、エクセルでこのような簡単な表を作成したときの合計を求めるときはSUM関数を使用します。しかしながら、新システムで使用されているエクセルでは、小計欄にカーソルをあわせていただければわかるのですが、C(2)の小計欄ではSUMIF関数が使用されています。
 これが、自分で行挿入をしてしまうと合計額があわなくなる理由です。
 なお、この小計欄のセルは「保護」が行われているので、自分では計算式を触ることはできません。

(3)SUMIF関数とは

 SUM関数であれば、1行目だけ気をつければ、自分で行挿入をしても、その行が合計範囲に含まれるので、合計額の集計はもれなく行うことができます。
 しかしながら、SUMIF関数とは、マイクロソフトのページによれば「指定した条件を満たす範囲内の値を合計する」関数です。従って、指定した条件が含まれないと、その行の数字は集計されません。
 これが、自分で行挿入してしまうと合計額があわなくなる原因です。

(4)AZの列に注目

 具体的に申し上げますと、自分で行挿入してしまうと、その行に「指定した条件」が含まれなくなってしまうのです。

 私の記憶によれば、C(2)の1号財産のSUMIF関数は確か「(AZ:AZ,1,AL:AL)」だったと思います。
 SUMIF関数では、順番に「範囲」、「検索条件」、「合計範囲」が示されます。C(2)の1号財産の例でいうと、範囲がAZの列、検索条件が「1」、合計範囲がALの列ということになります。

 それでは、この検索条件の「1」とは何かというと、実はAZの列に「1」という数字が記載されていて、その数字の「1」が検索条件となっているという仕組みになっているのです。

 AZの列にカーソルをあわせると、エクセルの表では全く見えませんが、上のバーのところ(計算式などが示されるところ)に「1」と表示されます。「1」を白色にして見えなくしているのですが、まちがいなく「1」が入力されています。これがSUMIF関数の条件の正体です。

(5)合計があわなくなる理由

 そこで、合計があわなくなる理由ですが、自分で行挿入してしまうと、AZの列に「1」が入力されていない状況になってしまうからです。そのため、SUMIF関数では、その行に入力された数値を認識しないのです。
 従って、その行の数値が認識されないことから、SUMIF関数で集計した合計額があわなくなるという現象が生じてしまうというわけです。

(6)壊れた計算式を修復する方法

 それでは、誤って自分で行挿入してしまい、C(2)の計算式が壊れてしまったらどうすればよいのでしょうか。

 その解決策は、自分で行挿入してしまった行のAZの列に半角で「1」を入力することです。そうすれば、SUMIF関数がその行のALの列に入力した数値を認識してくれます。その結果、合計額もあうようになります。

 注意点は、この「1」を入力する列のセルを「結合」することです。セルを結合しないとSUMIF関数が条件を読み取ってくれません。
 

3.検算は必ず行う

 C(2)をはじめ、その他の別表においてもエクセルで集計した合計数値は、必ず電卓または算盤で検算する必要があります。
 エクセルなどのスプレッドシートは大変便利なツールですが、計算式や計算範囲に不備があると集計漏れなどの誤りが生じてしまいます。
 従って、面倒でも、必ず電卓または算盤を使って手作業で検算を行い、その集計が正しく行われているかどうかを確認する必要があります。
 今回の場合だと、C(2)の合計があわないということは、どこかの行の挿入にミスがあったということです。
 このようにして、計算合計の確認と誤りがあればエクセルの修正を行って、正しい数値を出す必要があります。

2019年5月19日日曜日

巨人がPwCコンサルティングと契約~デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて

1.はじめに
 プロ野球・読売巨人軍はPwCコンサルティング合同会社とオフィシャルサプライヤー契約を締結したと、令和元年5月17日付で発表しました(「「PwCコンサルティング」とオフィシャルサプライヤー契約 革新的・先進的な来場者サービス開発へ」)。

 内容は、PwCコンサルティング合同会社が「オフィシャル・デジタルトランスフォーメーション・アドバイザー」となるというものだということです。
 このデジタルトランスフォーメーションですが、球団公式ページでは「「デジタルトランスフォーメーション」(通称:DX)とは、テクノロジーを活用してビジネスモデル全体を改善し、変化するビジネス環境に適応させることで、最終消費者にとってより優れた価値を提供できる状態にすることを意味します。」と記載されています。

2.デジタルトランスフォーメーションが起こすイノベーション
 デジタルトランスフォーメーションは、行政庁においても、日本であらゆる分野で導入を進めるべく、様々な研究が進んでいます。
 例えば、総務省の情報通信白書平成30年版では、デジタルトランスフォーメーションは段階を経て社会に浸透し、影響を及ぼすと記載されています。
 同白書によれば、以下のような段階を経て社会が変革していくとされています。
①「まず、インフラ、制度、組織、生産方法など従来の社会・経済システムに、AI、IoTなどのICTが導入される。」
②「次に、社会・経済システムはそれらICTを活用できるように変革される。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生することになろう。」
③「その結果としては、例えば、製造業が製品(モノ)から収集したデータを活用した新たなサービスを展開したり、自動化技術を活用した異業種との連携や異業種への進出をしたり、シェアリングサービスが普及して、モノを所有する社会から必要な時だけ利用する社会へ移行し、産業構造そのものが大きく変化していくことが予想される。」

3.巨人は遅れている?
 いま、なぜ巨人がPwCコンサルティングとデジタルトランスフォーメーションに関する契約を締結した理由は、推測ですが観客動員、ファン獲得においてITの推進が遅れているという危機感があったのではないかと思います。というのは、現在のプロ野球球団にはソフトバンク、楽天といったIT系の企業が参入していますが、これらの球団は観客動員などにおいて自社のITテクノロジーを導入して様々な工夫をしているからです。
 例えば、ソフトバンクは「AIチケット」というものを発売しています。ソフトバンクホークスの公式ページの説明によれば、「過去の販売実績データに加えて、リーグ内の順位や対戦成績、試合日時、席種、席位置、チケットの売れ行きなど多様なデータから、試合ごとの需要をAI (機械学習) により予測し、需要に応じて価格が変動するチケット」ということです。
 また、楽天は、今年から球場での完全キャッシュレスを始めました。公式ページの説明によれば、「チケット・グッズ・飲食等をお買い求めの際、原則として現金がご利用いただけなくなります。」ということです。
 チケットレス化も進んでいます。BCN+Rというサイトの記事によれば、チケットの電子化によるチケットレスを導入しているのは、オリックス、埼玉西武、中日、阪神、福岡ソフトバンク、北海道日本ハム、横浜DeNAの7球団ということです。
 しかしながら、各球団でこういった取り組みが進む中、残念ながら盟主・巨人の名前が出てきません。
 なぜ、巨人がこのような取り組みを行っていないのかというと、これも推測ですが「やりたいと思っているし、やらないとまずいという意識はあるものの、導入するための人材や技術がそろっていない」からではないかと思います。
 このあたりについては長くなるので、次回「変わるプロ野球のビジネスモデル」というタイトルで記載したいと思います。

2019年4月28日日曜日

連結キャッシュ・フロー計算書~原則法と簡便法

1.連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法
 連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には原則法と簡便法があります。
 原則法とは、親会社及び連結子会社が作成した個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算し、相殺消去や科目の振替といった連結修正を行って、連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
 一方、簡便法とは、連結損益計算書並びに連結貸借対照表の期首残高と期末残高の増減額の分析及びその他の情報から作成する方法です(日本公認会計士協会・連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針(以下「実務指針」)47項)。

2.「作成基準」と「実務指針」
 現行制度において規定されている会計基準は、旧大蔵省時代の企業会計審議会が策定した「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(以下「作成基準」)です。
 実務指針47項にも記載がありますが、作成基準では第二の三で「連結キャッシュ・フロー計算書の作成に当たっては、連結会社相互間のキャッシュ・フローは相殺消去しなければならない。」と規定されています。この規定があるため、制度上は、原則法という言葉は使用していないものの、各連結会社の「キャッシュ・フロー計算書」を連結する方法(原則法)を原則としていると考えられています。
 しかしながら、実務指針では簡便法も認められるとしています。そのため、連結キャッシュ・フロー計算書の作成実務においては、原則法と簡便法の2つが認められているというわけです。
 整理すると、以下の関係になります。

・作成基準(企業会計審議会)  →原則法
・実務指針(日本公認会計士協会)→原則法の他、簡便法も認められる

 なお、多くの会計基準や実務指針は、企業会計基準委員会(ASBJ)に移り、企業会計基準や企業会計基準適用指針となったのですが、連結キャッシュ・フロー計算書については、会計基準や実務指針が、まだASBJに移っていない状態です。
 
3.「簡便法」が原則と思っている人が多い?
 以上のように、連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には原則法と簡便法があるのですが、結構、「簡便法」が原則的な方法と思われている方が多くいらっしゃいます。
 ときどき、公認会計士の中にもこのような思い違いをしている人がいます。
 しかしながら、あくまで、各連結会社が作成した個別キャッシュ・フロー計算書を連結する方法が原則です。

【図1】(C/S…Cash Flow Statement)


4.実務上は簡便法
 とはいえ、会計実務では原則法よりも簡便法が使用されることが圧倒的に多いです。
 理由は、簡便法のほうが作成しやすいですし、作成時間も原則法よりも短くてすむからです。
 原則法だと、まず、すべての連結会社が個別キャッシュ・フロー計算書を作成しなければなりません。親会社では当然、個別キャッシュ・フロー計算書を作成しますが、連結子会社のすべてが個別キャッシュ・フロー計算書を作成するとなると、結構面倒です。
 有価証券報告書の作成義務がある会社であれば、個別キャッシュ・フロー計算書を作成しますが、それ以外の会社になると、個別キャッシュ・フロー計算書の作成義務はありません。そのため、個別キャッシュ・フロー計算書の作成義務がない会社でもキャッシュ・フロー計算書を作成するとなると、時間と手間がかかりますし、精度も必ずしも高くはないかもしれません。会社によってはキャッシュ・フロー計算書の作成能力が乏しい会社もあります。
 このような理由から、まず、連結会社が個別キャッシュ・フロー計算書を作成するのに時間と手間がかかってしまいます。
 そして、次の段階では、個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算した後、相殺消去や科目振替といった修正仕訳を反映しなければなりません。これは直接法であっても間接法であっても同じです。従って、ここでも時間と手間がかかります。
 しかしながら、簡便法であれば、すでに作成した連結損益計算書、連結貸借対照表、連結株主資本等変動計算書を使って作成できますので、原則法と比較して時間と手間は大幅に削減できます。
 このような理由から、実務上は原則法よりも簡便法を適用する会社の方が多いというわけです。
 簡便法しか知らない、という方も多いかと思いますが、実は簡便法は容認規定であることを知っておく必要があります。

2019年4月22日月曜日

公益法人~事業報告等に係る提出書類作成における留意事項

1.はじめに
 3月決算の公益法人(公益認定を受けた一般社団法人又は一般社団法人をいいます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ))は、決算書を作成した後、事業報告等に係る提出書類の作成を行うことになります。
 今回は、別紙4における別表の作成上の留意点を記載します。
 ただし、留意点については、いろいろとあるため、誤りやすい点のうち重要なものについて記載したいと思います。

2.別表A
(1)A(1)~過去に生じた剰余金の加算
 別表A(1)での留意点は、過去に収支相償を満たさなかった場合に生じた剰余金がある場合、経常収益計の2欄に加算することを忘れないようにする点です。
 この剰余金は正味財産増減計算書には出てこないので、別途、計算シートを作成して管理しておく必要があります。過去の別表A(1)をひっくり返して、その場で電卓で計算すると、誤る可能性が高くなるので、ひとまとめにしておくほうがよいと思います。

(2)A(3)~利益の繰入額は1円未満端数切り上げ
 収益事業等から生じた利益の繰入額を計算するとき、通常、1円未満の端数が生じると思います。この1円未満の端数の扱いですが、これは切り上げになります。(内閣府の手引きP32参照)
 また、ここに至るまでの計算(管理費の按分、按分後の費用の控除)では、端数には手を付けず、そのまま計算します。その結果算出された収益事業等から生じた利益に50%を乗じた数値においてのみ1円未満の端数切り上げという処理を行います。
 この点は間違いが多いところです。ここを四捨五入、切り上げといった処理をしてしまうと、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額とA(3)で計算した結果に1円の差異が生じるなど、何かと具合が悪くなります。
 従って、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額を計算するときは、エクセルでワークシートを作成して計算過程をしっかりと残しておくことが望まれます。

3.別表B
(1)別表B(5)での特定費用準備資金積立額・取崩額の記載忘れ
 別表B(5)は公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の費用を計算し、公益目的事業比率を計算する計算シートですが、Ⅴ、Ⅵの特定費用準備資金の当期積立額、当期取崩額の記載漏れに注意する必要があります。また、取崩額の欄はマイナス額で記載する点にも注意する必要があります。

 なお、旧システムでは、別表B(1)がシステムに組み込まれていたのに対して、B(5)はエクセルだったため、計算結果がリンクしていませんでした。しかし、新システムではB(1)、B(5)どちらもエクセルになり、計算結果もリンクするようになったので、B(5)を作成すれば、B(1)も自動的に作成されるようになりました。

4.別表C
(1)別表C(2)~財産目録と一致させる
 別表C(2)では公益目的保有財産や特定費用準備資金の帳簿価額について記載するシートですが、名称、場所・物量、並び順は財産目録と一致させる必要があります。行政庁は財産目録との一致状況を必ず見ています。言い換えると、財産目録は、別表C(2)のためにあるといってもよいでしょう。従って、財産目録もC(2)を意識して、不整合が生じないように作成する必要があります。また、財産目録には、共用割合を明記しておく必要があります。
 なお、新システムでは、資産取得資金、特定費用準備資金は様式チェックにより自動反映する方式となりました。

(2)別表C(1)~対応負債の計算は有利選択
 別表C(4)では4に「対応負債の額の計算」という欄があります。
 この対応負債の計算方法には2種類ありますが、4のタイトルの横にはカッコ書きで「(次の2つの方法のうち、いずれかを選択し、○を記載してください)」と記載されていますので、どちらか有利な方を選ぶことになります。
 この選択は、特に会計に携わっている方だと「継続適用」しないといけないのでは、と思ってしまいがちですが、これは選択となります。
 ときどき、施行規則22条7項の計算式と22条8項の計算式を入れ替えると、従前では遊休財産額の保有上限額を超過してしまっていたものが、セーフになるケースがあります。

2019年4月15日月曜日

公益法人・公益目的事業比率~F(2)表の作成の実務

1.はじめに
 公益法人(公益認定を受けた公益社団法人又は公益財団法人をいいます。(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ)も3月決算の法人が多いため、4月に入ると決算の時期に入ります。
 決算が終わると、決算数値を前提に、定期提出書類を作成することになります。
 定期提出書類については、いろいろな書類がありますが、今回は経費の配賦にかかるF(2)表の作成にかかる留意点について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.公益目的事業比率
 公益法人では、財務3基準の一つである、公益目的事業比率をクリアしなければなりません。
 具体的には、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用について、①公益目的事業の費用÷(①公益目的事業の費用+②収益事業等の費用+③法人会計)という計算式で算出された割合が50%以上となることが必要となります(認定法15条)。
 なお、これらの費用は、必ずしも会計上の費用とは限らず、みなし費用(例:特定費用準備資金の積立額)なども含みます。
 公益法人は公益目的事業を行うことが目的にもかかわらず、収益事業等や管理費の割合のほうが大きいとなると、本来の目的を達していないことになるためです。そのため、公益目的事業をしっかりと行うようにするために、公益目的事業比率の基準が設けられています。

3.経費の配賦
 このように、公益法人の事業において発生した費用は、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用のいずれかの費用とする必要がありますが、必ずしも、①~③のそれぞれにおいて固有に発生する費用とは限りません。
 そこで、①~③において共通に発生する費用については配賦計算を行う必要があります。
 この配賦計算については、法令で絶対的に定められた基準というものはありません。内閣府から示されているのは、FAQ問Ⅴ-3-②の例示で示された配賦基準ぐらいです。
 FAQ問Ⅴ-3-②では、(イ)建物面積比、(ロ)職員数比、(ハ)従事割合、(ニ)使用割合が掲げられています。
 なお、FAQ問Ⅴ-3-②では「これ以外に適当と判断した基準があれば、それを採用していただいても構いません。」と記載されています。従って、(イ)~(二)は例示列挙ということになります。

4.決算の実務
 公益法人の経理などに携わっている方は、ここまではご存知の方が多いと思います。
 しかしながら、決算を終えて、いざF(2)表を作成する段階となると、時間がかかったり、どのように進めればよいのか迷ったりする方が結構多く見られます。また、F(2)の数値にミスが生じ、提出後、行政庁から補正提出を求められるケースもよく見られます。
 原因の一つは、F(2)表を作成するときに、基礎資料が存在しないためであることがあげられます。
 言い換えると、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、何らかの配賦割合で計算しているのですが、そのときの配賦割合を資料として残していないため、F(2)表を作成するときに、配賦基準はわかっているものの、配賦割合はどのように記載すればよいのかがわからなくなってしまうというものです。
 例えば、ある費用は職員数比で配賦することになっているのに、F(2)表で職員数比で配賦計算してみたら、正味財産増減計算書内訳表の数値とあわない、ということもあります。そうなると、正味財産増減計算書内訳表の数値とF(2)表の数値が整合しなくなり、どうすればよいのか困ってしまうことになります。
 従って、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、F(2)表の作成も意識して、配賦割合、計算過程、計算結果を資料として残しておくことが必要です。
 可能であるならば、正味財産増減計算書内訳表を作成するときに、一緒にF(2)表も作成しておくというのも一つの方法です。

5.直接対応は記載不要
 F(2)表の作成の実務として、知っておくべきは「直接対応」については記載はする必要はないというものです。
 F(2)表は、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計にまたがって発生する費用について、配賦基準と配賦割合を示す表なので、ある会計に直接的に発生し、配賦計算をする必要がない費用については記載はする必要はありません。
 この直接対応まで記載してしまうと、かなりの時間がかかります。逆に言えば、直接対応を記載しなければ、F(2)の作成時間はかなり短くなります。
 なお、この点は複数の行政庁と確認済みです。

6.端数処理
 F(2)表で困るのは、端数処理の関係で、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の各数値の合計と費用の合計額が1円あわないときがあることです。
 そのため、F(2)表を作成したあとは、計算チェックを行う必要があります。
 しかしながら、これらを電卓で検算していると時間がかかるし、非常に疲れます。
 そこで、おすすめの方法をご紹介します。それは、1の位の数値を足し算し、その数値と合計額の1の位の数値が一致しているかどうかをチェックするというものです。
 例えば、何らかの配賦割合により、公益5,122、収益2,569、法人658という結果になったとします。一方合計額は8,350円とします。
 それぞれを足すと5,122+2,569+658=8,349となり、1円不足します。
 この場合、法人会計あたりで1円を調整する必要がありますが、これをすべて計算しているととても疲れます。
 しかしながら、1の位のみを計算すれば、2+9+8=19となり1の位は9となります。これは合計額の8,350の1の位の0とは一致しません。そうすれば、この行は端数処理による不整合があることがすぐに分かります。
 このようにしていけば、時間の節約につながるのではないかと思います。
 
 以上、参考としていただけますと幸いです。

2019年4月7日日曜日

2018年度(平成30年度)修了考査~合格率急落の理由を推測すると・・・

1.対受験者数合格率56.1%
 平成31年4月5日(金)に、修了考査の合格発表がありました。
 修了考査とは、公認会計士試験に合格し、補習所を卒業した公認会計士試験合格者が受験する試験です。この修了考査に合格しないと公認会計士として登録できません(他に、登録の要件として実務要件があります。)
 今回の合格発表で驚いたのは合格率です。日本公認会計士協会のサイトによると対受験者数合格率が56.1%となっていました。(ちなみに、対受験願書提出者数合格率は51.8%)
 これは驚きました。なぜかというと、修了考査の対受験者数合格率は10年以上、70%前後で推移していたからです。
 ちなみに、平成29年度は69.3%だったので13.2ポイントの大幅な下落となりました。
 しかしながら、当然ではありますが、日本公認会計士協会からは合格率が大幅に下落した理由については一切コメントはありません。
 そこで、今回は合格率が急落した理由を推測してみようと思います。なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.税理士会へのアピール?
 完全な推測なので、保証はありませんが、この合格率の急落を見て、私が最初に思ったのは、税理士会へのアピールではないかというものです。すなわち、税法ができない人は合格させていませんよ、ということではないかということです。
 とはいっても、何のことか不明の方も多いと思いますので、まず、日本公認会計士協会と日本税理士会連合会との関係の歴史を簡単に書きます。

3.業際問題
 税理士になるには、まず税理士試験を合格する必要があります(税理士法3条1項1号)。
 しかしながら、公認会計士は、税理士試験に合格しなくても、税理士法3条1項4号により、自動的に税理士となる資格を有することになり、所定の手続きを経て税理士登録をすると、税理士として業務を行うことができます。すなわち、試験を受けなくても税理士になることができます。
 これに対して、6~7年前でしょうか、日本税理士会連合会が「公認会計士も税理士試験の税法科目に合格しなければ税理士登録できないようにすべき」と主張し始めました。これは、当時、公認会計士試験合格者数が大幅に増加していたため、公認会計士による税理士登録者が大幅に増加することによる警戒感があったものと思われます。
 この問題はそれ以前にも、昔から度々発生した論点なのですが、このときは税理士会がかなり強行だったため、お互いが新聞広告を出すなど、かなり泥沼化していました。
 しかし、最後は日本公認会計士協会による主張で手打ちになりました。

4.国税審議会における実務補習の指定
 このとき、日本公認会計士協会にとって大きかったのは、補習所で税法の講義を行っていることでした。公認会計士の場合は、公認会計士試験に合格してもすぐに会計士登録はできず、補習所の講義の受講と定期考査をパスして卒業する必要があります。これは我が国の公認会計士制度において長く行われてきた制度です。
 当時の業際問題では、この補習所の実績が評価されたと聞いています。そこで、最終的には、税理士法を改正することにより補習所の講義を国税審議会が指定する研修とすることなどにより決着しました。
 日本公認会計士協会のサイトから一部引用すると、以下のとおりです。

「平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者のうち税理士資格を取得できるのは、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち財務省令で定める税法に関する研修を修了した者とされるとともに、当該研修は、改正税理士法施行規則第1条の3第1項において国税審議会が指定する研修とされました。」

「 なお、実務補習規程等の関係規程の改正の主なポイントは、以下のとおりです。
・実務補習の充実策の一環として、監査科目だけではなく、税法科目も重要な科目と位置付け、考査の合格基準について従来の税法科目の考査2回で各回4割以上の取得に加え、税法科目全体で6割以上の取得を設ける。
・税法科目の考査2回については全国統一問題で同一日時に実施する。
・実務補習の考査及び修了考査の問題をウェブサイトで公表する。」

 なお、「平成29年11月1日以後に実務補習所に入所する補習生(再入所を含む。)から適用」するということです。

 一方、日本税理士会連合会のサイトでも同じ内容が記載されていますが、考査と修了考査については以下のことも記載されています。

「考査及び修了考査の試験問題の過去5年分が公開され、研修運営状況が国税審議会に定期的に報告されることともされており、税理士試験との同等性等について継続的に確認されていくことになります。」

5.税理士試験との同等性
 要するに、補習所の税法の考査と修了考査の税法試験については、税理士試験と同じレベルである必要がある、ということですが、今回の修了考査もこれが背景にあったのではないかと私は推測しています。
 平成30年度の修了考査を受験する公認会計士試験合格者は、主に平成27年合格の人になると思いますので、上記の税理士法改正の影響は受けてはいません。しかしながら、国税審議会における実務補習の指定制度が平成30年から本格的に始まっていますので、今回の修了考査も、制度開始元年の試験にあたるといえばあたります。
 修了考査の税法試験も税理士試験と同じレベルであるとするならば、合格する人も、税理士試験を合格するレベルの人とする必要があります。となると、必然的に採点も厳しくなると思います。
 もともと、修了考査の税法は問題量が無茶苦茶多く、とても制限時間内で完答できるレベルではないものです。試験時間は3時間ですが、4時間分の問題量があると言われています。
 従って、受験者の税法の点数はあまり高くないはずですが、最終的には総点数の60%を基準として修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率が合格基準となっていますので、必ずしも税法の点数が芳しくなくても、合格は可能です。また、おそらく総点数の60%を満たしている受験生も多くはないと思いますので、最終的には相対評価で合格を決めているものと推測されます。
 ただし、「満点の40%に満たない科目が1科目でもある場合は、不合格となることがあります。」とされています。いわゆる足切りです。
 修了考査も税理士試験と同じレベルという建前となった現在、前回までよりは、採点を厳しくした可能性があります。もしかしたら、これまでよりも足切りが多くなったのかもしれません。
 このように、今回の修了考査の合格率の大幅な下落は、税法科目の採点が厳しくなり、税理士試験に合格できないレベルの受験生は合格させていませんよ、という税理士会へのアピールではないかというのが私の推測ですが、もちろん、何があったのかは不明ですし、真相は闇の中です。
 いずれにしろ、税法科目は計算が多く、差がつきやすい科目なので受験される方は、しっかりと勉強する必要があります。

2019年3月24日日曜日

平成を振り返って~iモードとブラックベリー

1.はじめに
 平成31年4月1日に新しい元号が発表され、5月1日からは新しい元号に変わります。
 新しい元号に変わるまでにあと約2ヶ月となりました。そのため、最近は「平成最後の・・・」というフレーズをよく耳にします。例えば、「平成最後の甲子園」、「平成最後の大相撲」といった具合です。
 平成が終わるといっても、時代が変わるような感覚が現時点では全くないのですが、一つの区切りということで、平成の時代を振り返ってみたいと思います。
 そこで、今回は平成の間に起こったイノベーションについて回想してみたいと思います。

2.iモードとブラックベリー
(1)初めてのアメリカ
 平成といっても、西暦でいうと1989年1月8日から2019年4月30日までなので約30年間あるのですが、イノベーションという点で私が強烈に印象に残っているのは、アメリカに初めて会計監査に行った平成19年12月から現時点までの約11年間です。
 初めて会計監査に行ったときは、同時にアメリカ合衆国にも初めて行ったときでもあるのですが、当時、日本とアメリカの携帯電話は現在とは全く違うものでした。

(2)iモード
 平成19年ごろは日本ではスマートフォンはまだ普及しておらず、今でいう「ガラケー」が主流でした。この「ガラケー」ですが、当時は「ケータイ」という呼び方をしていました。
 このケータイでは、通話ができることはもちろんですが、日本のケータイではメールやインターネットを使用することができました。今では当然のように思えますが、実は、これは画期的なことでした。
 これを牽引したのがNTTドコモのiモードでした。このiモードですが、コトバンクのブリタニカ国際大百科事典の解説によると、以下のように記載されています。

「エヌ・ティ・ティ・ドコモ (NTTドコモ) が 1999年2月から開始した携帯電話のインターネット接続サービス。携帯電話を使って情報サービス提供者が提供する各種サービスをオンラインで利用することができる。電子メールの送受信をはじめ,チケット予約やタウン情報など各種情報サービスのほか,銀行振り込みなどモバイル・バンキングの利用が可能である。(中略) 契約数の増加は著しく,2000年8月には 1000万を突破。 1999年4月以降,日本移動通信 IDOや第二電電 DDI系のセルラーなどほかの事業者も同様のサービスを開始した。」
 
 iモードによって、日本のケータイは飛躍的に便利になりました。
 そして、日本人のライフスタイルは大きく変わったといっても過言ではなかったと思います。
 ケータイでニュース、天気、交通案内も知ることができるようになり、場所を問わずリアルタイムで様々な情報を知ることができるようになりました。また、着信メロディ(着メロ)、デコレーションメール(デコメ)などが流行り、これを発信する会社も多数現れました。
 当時、日本のケータイは、他の先進国よりも進んでいたと思います。実際、iモードは他国の通信会社に技術を供与して「世界進出」を行おうとしていました。

(3)ブラックベリー
 一方、アメリカではどうだったかというと、日本のiモードのようなインターネット接続サービスは進んでおらず、ケータイは通話中心の使い方でした。
 そのような中、アメリカではブラックベリー(Black Berry)というスマートフォンがありました。これはビジネスマン中心に使用されていたものでした。
 ブラックベリーは、今のスマートフォンの原型のようなものです。私が見せてもらったのは黒色のもので、上3分の2ぐらいが画面で、下3分の1ぐらいにアルファベットのキーボードがついていたと記憶しています。
 いまのスマートフォンは全体が画面で、文字を入力するシーンのときに下の方にキーボードが出てくるというものですが、ブラックベリーはキーボードそのものがついていました。キーボードはパソコンと同様、アルファベットが並んでいるものでした。
 Webで画像検索すれば、いくつか出てくるのでご覧いただければよいかと思います。
 このブラックベリーであれば、通話はもちろん、メール送受信やWeb閲覧もできました。

 ちなみに、ブラックベリーをコトバンクのASCII.jpデジタル用語辞典でみてみると、以下のように記載されています。
 
「カナダのリサーチ・イン・モーション社が開発したスマートフォン。キーボードを搭載し、電子メール、Web閲覧、スケジュールやアドレス帳の管理、通話、インスタントメッセージ、オフィス文書の閲覧などが可能。会社メールを暗号化して安全に転送できることと、メールを即時着信するプッシュ型の電子メールを採用し、すぐに連絡が取れることから、ビジネス用のメール端末として人気が高い。日本では、NTTドコモが販売している。」

 上記のように、私はアメリカに行ったとき、初めてブラックベリーを見ましたが、日本ではiモードが浸透していたため、正直なところ、私自身はものすごく画期的な製品には見えませんでした。聞く限り、機能的にはそれほど変わらないと思ったからです。もちろん、アメリカ居住者ではないため、ブラックベリーを使ったことはなく、使っている人からの話と外観だけの判断ではありますが。
 しかし、私の印象とは裏腹に、アメリカやヨーロッパではブラックベリーの人気は高かったようで、市場シェアも高まっていったそうです。
 
3.平成を振り返って
 しかしながら、iモードもブラックベリーも当時の勢いは続かず、いまでは完全な下火となってしまいました。
 原因は、アップルのiPhoneとグーグルのAndroidがスマートフォン市場で圧倒的なシェアをとったからです。
 私が初めてアメリカに行ったのが平成19年(2007年)12月でしたが、ウィキペディアを見てみると、iPhoneは2007年1月に、Androidは2008年にそれぞれ発売されたということです。従って、私がブラックベリーを知った時期は、ブラックベリーの終わりの始まりだったといえそうです。
 このときから約10年で市場は一変しました。今の若い人はiモードといっても知らない人が多いと思います。私も、10年の間にこれほど激変するとは予測しませんでした。
 当時、日本のケータイのほうがアメリカよりも進んでいたはずなのですが、今では見る影もありません。
 アメリカは平成とは無関係ですが、それでも平成を振り返ってみると、強烈な印象として残っているのが、この携帯電話、スマートフォンのイノベーションです。
 「時代は繰り返す」とはいいますが、このイノベーションの歴史をリアルに知っているがゆえに、次の10年後、いや5年後や3年後かもしれませんが、また人間の生活をドラスティックに一変させるイノベーションが出てくるのだろうと思っています。
 未来を予測するのはなかなか難しいですが、少なくとも現在の技術は、今後間違いなく古いものになるということは間違いありません。そのため、現状に満足していると時代に取り残されます。
 従って、常に、いま起こっていることは古いものなんだ、という認識を持つことが大事だと思っています。

2019年3月17日日曜日

貸倒懸念債権の貸借対照表上での表示

1.はじめに
 債権は貸倒見積高の算定にあたっては①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債権等に区分されます(金融商品会計基準27項) 
 では、これらの債権は貸借対照表ではどの区分に表示すればよいのかというと、この点については制度上、明記がありません。
 そこで、今回は、債権の貸借対照表表示について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.貸借対照表での表示
 貸借対照表のでの表示ですが、①一般債権と③破産更生債権等については問題はないでしょう。
 ①一般債権は流動資産に計上されます。科目名でいうと、受取手形、売掛金、リース債権、完成工事未収入金といった科目となります。
 ③破産更生債権等は固定資産のうち投資その他の資産に計上されます。こちらの科目名は破産更生債権等となります(財務諸表規則32条1項10号)。
 ここまでは問題はないのですが、では②貸倒懸念債権についてはどの区分に表示すればよいのかが問題となります。

3.正常営業循環基準
(1)貸倒懸念債権の意義
 まず、貸倒懸念債権の意義について記載します。
 貸倒懸念債権とは「経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権」をいいます(金融商品会計基準27項(2))。
 イメージとしては、まだ経営破綻には至っていないので相手方も苦しいながらも経営は続けているため回収可能性は残されているものの、請求を行ってもなかなか入金がされないような債権というものです。

(2)流動資産と固定資産の区分法
 次に、貸借対照表の流動資産と固定資産の区分法について記載します。
 まず、流動資産と固定資産の区分は「正常営業循環基準」によります。
 次に、正常営業循環基準で区分できないものについては「1年基準」によります。
 正常営業循環基準とは、文字通り、正常な営業サイクル(例:販売業でいえば、仕入→販売→入金)に属する資産及び負債は流動項目とし、それ以外は固定項目とするというものです。
 一方、1年基準は、正常営業循環基準に該当しない科目について、決算日後1年以内に回収や支払が行われる資産及び負債を流動項目、1年を超える資産及び負債については固定項目とするものです。

 この流動・固定分類については結構誤解されがちですが、まず第1次的には「正常営業循環基準」が適用されます。1年基準で区分するようなイメージを持たれている方も多いのですが、1年基準はあくまで2次的な区分法です。

 正常営業循環基準によれば、1年で投資の回収ができないものも流動資産に計上されることがあります。例えば、長期請負工事における完成工事未収入金です。工事期間が1年を超える長期工事においては、請負工事に対する債権の回収も1年を超えてきます。しかしながら、この債権は長期工事という正常な営業サイクルに属するものなので、流動資産に計上されます。

(3)破産更生債権等が固定資産に区分される理由
 そのため、 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権である一般債権は当然のことながら流動資産に計上されます。正常な営業サイクルに属する債権だからです。
 では、破産更生債権等が固定資産に区分される理由ですが、これは破産更生債権等は、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権であることから、正常な営業サイクルから外れた債権であるためです。経営破綻に陥った場合、会社に対する売上債権については、こちらが請求を行っても支払ってはくれません。例えば、債権者集会を経た後、清算配当が払われる形となります。配当があればまだよいかもしれません。少なくとも全額の回収はまず無理です。すなわち、正常な営業サイクルからは外れてしまっています。
 そのため正常営業循環基準により、固定資産に区分されるとされているものと解されます。

4.貸倒懸念債権の表示
 これらを鑑みると、貸倒懸念債権は「経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権」であるため、貸倒懸念債権の状態では、まだ正常な営業サイクルに属している債権といえます。
 このような入金が滞っている場合は、通常は取引は停止しますが、請求は続けていきます。その請求により、金額や入金時期は不規則ですが、少しづつ入金はされていくケースもあります。そのため、投資の回収を行っている状況にあることから、依然として正常な営業サイクルに属する債権といえます。

 なお、参考ですが、「金融商品会計に関する実務指針」112項では、貸倒懸念債権の要件について具体的に記載しています。
「債務の弁済に重大な問題が生じているとは、現に債務の弁済がおおむね1年以上延滞している場合のほか、弁済期間の延長又は弁済の一時棚上げ及び元金又は利息の一部を免除するなど債務者に対し弁済条件の大幅な緩和を行っている場合が含まれる。」
「債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いとは、業況が低調ないし不安定、又は財務内容に問題があり、過去の経営成績又は経営改善計画の実現可能性を考慮しても債務の一部を条件どおりに弁済できない可能性の高いことをいう。」
「財務内容に問題があるとは、現に債務超過である場合のみならず、債務者が有する債権の回収可能性や資産の含み損を考慮すると実質的に債務超過の状態に陥っている状況を含む。 」

 従って、回収ペースは落ちているものの、債権の回収段階にある貸倒懸念債権は正常な営業サイクルに属しているといえますので、正常営業循環基準により流動資産に区分することが妥当といえます。

2019年3月11日月曜日

アメリカのキャッシュレス~クレジットカード社会

1.はじめに
 私は、前職では日本企業の米国子会社の監査のため、毎年アメリカ合衆国に行っていました。春と秋、それと年末の実査立会の年3回が基本でしたが、年によってはもう1回加わり、年4回という時もありました。
 最後に行ったのが平成23年でしたので、もう8年前になります。昨年、日本公認会計士協会京滋会の研修旅行でサンフランシスコなどを訪れましたが、これは7年ぶりのアメリカ訪問となりました。
 仕事で行く場合は、何度もアメリカに行くことになりますし、食事で入る店も一般庶民が利用する店に入ることが多いため、1回きりの旅行とは異なり、結構、市民の生活を体感できたのではないかと思います。
 今回は、アメリカに行っていたときに感じた、アメリカのクレジットカード払いについて記載したいと思います。

2.ひと昔前のアメリカ
 上述のように、最後に仕事でアメリカにいったのが8年前なので、アメリカに行っていたのは今から8~12年前の頃となります。
 アメリカはクレジット社会とは聞いていましたが、確かにこの時代でも、ほとんどの店でクレジットカードを使用することができました。
 どの店でもクレジットカードを使用できるのはとても便利です。メリットはいろいろとありますが、私の場合はアメリカの小銭がたまらないようにするために使用していました。
 ご存知の方も多いと思いますが、ドル紙幣は日本で日本円に換金できるのに対して、小銭は換金できません。そうなると、溜まったアメリカの小銭は日本で無用の長物と化してしまうのです。そのようなことを避けるため、私はアメリカではクレジットカードを使用していました。
 近年、日本でもキャッシュレス社会を目指して、いろいろな施策が講じられてきていますが、アメリカではひと昔前でも、すでにキャッシュレス社会が進んでいました。
 日本でもこのようになればよいのに、と思っていたのですが、最近の動きを見るにつれ「やっとか」という思いです。

3.アメリカでクレジットカードを使えた店など
 ここでは、当時からクレジットカードを使用できたアメリカの店などを紹介します。

(1)スターバックス
 当時のアメリカでも、スターバックスでクレジットカードを使用できました。
 調べると、最近、日本のスターバックスでもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 昔、スターバックスはアメリカの会社なので「もしかしたら日本でも使用できるのでは」と思い、クレジットカード払いができるのかを聞いたことがありましたが、当時はプリペイドのスターバックスカードであれば現金以外の支払いができます、という説明でした。私の記憶では3年前ぐらいでもそのような説明だったと記憶しています。

(2)マクドナルド
 マクドナルドでもクレジットカードを使用できました。
 最近、日本のマクドナルドもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 ちなみに、アメリカのマクドナルドは、セット購入すると、日本でいうドリンクバーがついてきて、ドリンクは何度でも何種類でも飲めるというシステムでした。

(3)サブウェイ
 サンドウィッチのサブウェイもクレジットカードを使用できました。
 日本ではなかなか人気が出ませんが、サブウェイは自分でいろいろな具材を自分でトッピングできるサンドウィッチ店です。
 余談ですが、あるフリーウェイ沿いのサブウェイで代金を支払おうとしたところ、"Show me ID!"(身分証明書を見せてください)と言われたことがあります。何で言われたのかは不明なのですが、カードを使用するときにこのようなこともありました。(アジア人は年齢より若く見られる傾向にはありますが・・・)

(4)空港の売店
 サンフランシスコ国際空港(SFO)など、いろいろな空港に行きましたが、どの空港の売店でもクレジットカードを使用できました。
 例えば、ペットボトルの水一本を購入する場合でもクレジットカードでOKです。
 日本でいうと、キオスクみたいな感じの店です。もちろん、お土産屋さんやDuty FreeでもクレジットカードはOKです。
 ちなみに、京都の竹田駅(近鉄と京都市営地下鉄の共同駅)のプラットフォームにあるキオスクで電子マネーを使用しようとしたら「現金しか使えません。」と言われました。あるコンビニチェーンの店だったので余計に「なぜ?」と思いました。

(5)券売機
 BART(Bay Area Rapid Transit:サンフランシスコの地下鉄)で、サンフランシスコ国際空港(SFO)からパウエルストリート(Powell St.)まで乗車したことがありましたが、きっぷを購入するための自動券売機でもクレジットカードを使用できました。
 なんだか古めかしい券売機だったので「こんなので大丈夫なのか」と不安に思ったことを記憶しています。
 このBARTの券売機でのきっぷの買い方ですが、日本とは異なり、一定額から引き算ボタンを押して減額して目的地までの金額を設定し、購入するという方法です。日本のように、いろいろな金額が選べるようにはなっていません。従って、とても使いにくいです。
 その点、日本は交通系ICカードと自動改札機が発達しているので、鉄道分野においては日本のほうが利便性とキャッシュレスがはるかに進んでいます。
 こういうのを体験するたびに、アメリカは発展しているのか発展していないのかよくわからない国だな、と思いました。

(6)自動販売機は?
 最後に、当時は自動販売機ではさすがにクレジットカード払いはできませんでしたが、最近はついに自動販売機でもクレジットカードを使用できるようになったようです。
 ちなみに、アメリカでよく見た自動販売機は、青い色のペプシの飲料販売機です。日本ではコカ・コーラの赤い色の自動販売機が圧倒的に多いですが、アメリカではペプシコーラの自動販売機しか見かけませんでした。
 また、アメリカは犯罪率が非常に高いため、自動販売機は屋外では見かけません。私が見たのはいずれも室内でした。クライアントの社内の休憩室やホテルのVending Machine コーナーといったところです。外に置くと自動販売機は破壊されて中の現金が盗まれてしまうからです。

4.まとめ
 日本は、キャッシュレスが遅れているというよりは、安全社会であったためその必要性が少なかったという事情があります。そのため日本ではキャッシュレスが普及していませんが、アメリカのように数百円といった少額であっても、カードなどでキャッシュレス決済できると、とても便利な社会になると思います。
 約10年経って、やっとキャッシュレスが普及してきたか、という思いですが、日本の場合は一度進むと進化するのは早いので、いろいろなサービスを期待したいところです。

2019年2月11日月曜日

公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル

1.概要
 少し前になりますが、公益法人informationの電子申請システムが新しくなりました。
 以前のシステムは、何かと使いづらい面がありました。この点は、内閣府や行政庁も認識されていたようで、ある行政庁の説明会では「現状の公益法人インフォメーションは使いにくいので、新しいシステムに移行します。」という説明をしていたという話を公益法人関係者から聞いたことがあります。
 実際、私も、ある行政庁関係者とこんな会話がありました。

「今の公益法人インフォメーションはいかがですか?」
「う~ん・・・」
「ですよね・・・ いろいろと使いづらい点があり申し訳ございません。」

2.どのように使いづらかったのか
(1)保存が面倒
 では、どのように使いづらかったのかかというと、まず、とにかく注意しないと保存ができなかったという点です。
 実際に公益法人インフォメーションを使用された方はよくご記憶だと思いますが、まず各別紙、別表の作成を行ったときは、右下の「登録」ボタンとクリックする必要があります。
 普通の感覚では「登録」ボタンを押せば登録されて保存されたものと思うのですが、実はそれだけでは不十分で、その後に出てくる別紙や別表の一覧が出てくる画面の下の方にある「一時保存」というボタンをクリックする必要がありました。
 この2段階の操作を行って初めて、作成した別紙、別表が公益法人インフォメーションに保存されます。
 もちろん、手順を踏めば問題はないのですが、結構多くの人がトラップに陥って、せっかく作成した別表、別紙を保存できず、また一から作成するという悲劇を起こしてしまいました。
 なぜかというと、旧システムではパソコンを一定時間使用しないままだと、画面がクラッシュしてしまったからです。結構この時間が短くて、私の記憶だと5分位だったと思います。
 そうなると、登録ボタンはクリックしたものの、一時保存をクリックしていていなかったために、パソコンをしばらく動かさなかったことから画面がクラッシュし、時間をかけて作成した別表、別紙が保存されなかったという、泣くに泣けない悲劇が起こってしまったというわけです。

(2)「自動計算」の仕組みがまちまち
 別紙、別表はいろいろと数値を入力するとことがありますが、自分でクリックしないと計算結果が反映されないところもあれば、勝手に自動計算されるところもありました。このあたりがまちまちなので、計算ボタンのクリックを忘れてしまう人もよくいました。
 私の記憶では、別紙1の収支相償の欄で計算ボタンのクリックし忘れが多かった印象があります。ただ、これは旧システムの表記が紛らわしかったからだと思います。旧システムの手引きが削除されてしまったため、記憶に頼るしかないのですが、あたかも自動的に別表A(1)の計算結果が反映されるような表記だったと記憶しています。
 かと思えば、別紙1の遊休財産の計算結果や別表H(1)の計算結果は自動的に反映されていました。
 このように、画面によって、どれがボタンをクリックしないといけないのか、自動計算されるのかが分かりづらく、ミスが生じるということもありました。

(3)その他
 その他では、行の追加や削除に時間がかかり使いづらかったという記憶があります。
 役員名簿や社員総会・評議員会・理事会の議事内容を記載する欄がありますが、このあたりでは、行を追加したり削除することが多くなります。このとき、エクセルのようにサクサクと行かないので、時間がかかります。
 また、別表B(5)や別表F(1)(2)のように一部がエクセルになっているという謎の構造もありました。それだったらこれらもシステムにして、計算結果が自動反映されるようにすれば時間の短縮になるのに、と思ったこともあります。

3.新システムはエクセルで作成
 このような旧システムでしたが、新システムではエクセルで作成するという形式に変わりました。
 まだ、電子申請は行ったことはありませんが、まずエクセル一式が入った圧縮ファイルをダウンロードするところから始まります。
 このエクセルについては、事業報告等の提出の場合は「流用」ができます。このあたりは旧システムと同様です。しかしながら、事業計画等や届け出については流用はありませんでした。もっとも、流用しなくても大きな問題はない書類ではあります。
 なお、たまたまだったのかはわかりませんが、私がダウンロードしたときは妙に時間がかかりました。従って、早めにダウンロードしておくほうがよいかと思います。
 エクセルには計算式が組み込まれていますので、必要なところは自動計算されます。このあたりは旧システムよりも使いやくすくなったという印象です。
 また、エクセルなので行の追加や削除も行いやすくなりました。
 さらに、エクセルなので、旧システムのように画面がクラッシュして保存されないということもありません。エクセルの保存ボタンをクリックすればよいので使いやすくなりました。
 このエクセルを新システムにアップロードして提出するという流れです。

 ただし、旧システムと異なる点もあります。
 新システムでは、提出する前に「様式チェック」というものがあります。これをクリアしないと申請できません。
 これは形式的なチェックなので、数値の誤りまではチェックされません。
 試しに、この様式チェックを使ってみましたが、こちらも妙に時間がかかりました。このあたりは今後改善されるではないかと思いますが、今年の電子申請は早めに行うほうがよいと思います。

2019年1月27日日曜日

会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果についての感想

1.はじめに
 平成30年11月5日に「会計監査人の設置基準の引下げ延期」というタイトルでブログを書きましたが、このとき厚生労働省は同時に、会計監査人監査の対象となっている社会福祉法人に対してアンケートを実施しました。アンケートの詳細については日本公認会計士協会のページにも掲載されていますので御覧ください。
 このアンケートですが、会計監査実施法人に対するアンケート調査の第1次調査の結果が大阪府のページに掲載されていました。こちらにつきましてはMMPG様よりお知らせいただきました。ありがとうございます。
 以下、感想を記載したいと思います。なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.「会計監査及び予備調査で発見に至った会計処理の誤り」
 P7では「会計監査及び予備調査で発見に至った会計処理の誤り」が記載されています。
 発生割合が大きい項目について上位3つを抜粋すると以下のとおりです。
  • 「賞与引当金、徴収不能引当金について」→35.2%
  • 「減価償却(国庫補助金等特別積立金取崩額を含む)の計算について」→24.2%
  • 「収益及び費用(人件費、事業費、事務費)への発生主義(実現主義)の適用について」→20.4%

 確かに、これらの科目についての誤りは多く見られました。
 簡単に主な誤りを記載すると、賞与引当金については①未計上であった場合や②計上していても法定福利費分を含めていなかった、というものが多く見られました。
 減価償却費については、減価償却費の計上というよりは減価償却累計額の期首残高の誤りが多く見られました。これは減価償却の計算方法の取扱が平成12年、平成23年、平成29年と3回にわたって改正されたため、この過程で固定資産管理ソフトへの入力誤りなどがあったためと推測されます。
 発生主義については、収益よりは費用の発生主義の適用不備が見られました。例えば、締日翌日から期末日までの期間に係る未払給与の計上漏れ、それに伴う法定福利費の計上漏れ、経費の未払計上漏れ、支払利息の未払費用計上漏れ、などです。
 なお、私の範囲内ですが、会計監査人監査の対象となる社会福祉法人では、月次決算で発生主義会計を適用している法人も多くみられました。こういった法人では重大なカットオフエラーは見受けられませんでした。
 逆に、月次決算を現金主義会計で行っていると、期末時に大きなカットオフエラーが生じやすい傾向がありました。やはり、常日頃から発生主義会計を行っていれば、期末に大きなエラーが生じるリスクは少なくなるといえます。
 この点は「月次決算と費用のカットオフエラー」にも記載しましたのでご参照いただけますと幸いです。

3.任意監査の効果
 平成28年度に任意監査を受けていた社会福祉法人は、上記2で示したものを含む会計処理の誤りが期末監査で生じることが非常に少なかったという結果も出ていました。
 厚労省の記載によると、以下のとおりです。

「平成28年度に任意で会計監査を受けている法人、受けていない法人で、誤りの発生割合と修正額を比較したところ、顕著な差がありました。平成28年度は任意になりますが、会計監査のアプローチが適正な財務報告に有効であることを示しています。」

 この点については、当ブログでも「会計監査人の設置基準の引下げ延期」においても「この点を踏まえると、社会福祉法人側では、設置基準の引き下げが決まってから予備調査を始めるのではなく、今の時点から予備調査を受け、任意監査契約を締結することが望まれます。この任意監査の期間に、内部統制の不備や会計上の誤りを修正していくわけです。そうすれば、法定監査に入ってから、監査法人に大きな指摘(金額の大きい会計上の誤りなど)を受ける可能性は低くなります。」と記載しましたが、そのとおりの結果となりました。

 なお、任意監査については「監査法人による任意監査」にも記載しましたが、監査法人の監査は、法定監査を受ける義務がない一定規模未満の会社や非営利法人等であっても、一定の要件を満たせば、任意監査契約を締結することで任意監査を受けることができます。

4.不正の抑止力
 会計監査による効果については、「カ.不正の発見可能性が高まり、不正の抑止力になった」の自由記載について、以下が紹介されていました。
  • 会計監査を通じて、実際に不正の発見はなかったが、不正の抑止力になっていると感じる。
  • ポイントとなるところについて改善することで、不正防止の環境が整いつつある。
  • 見られている感もあるので良いと思う。
 社会福祉法人については、経営者不正もありますが、従業員不正もよく発生しているという印象があります。
 従業員不正については、内部統制の運用上の不備よりは、そもそも、内部統制の仕組み(デザイン)自体が構築されていないという整備上の不備が多く見られます。
 従業員不正については、このブログでも上場企業も含めていろいろと事例を紹介してきましたが、まず仕組みそのものを構築する必要があります。そうしないと、管理者が不正の発生に気をつけていても、牽制が効いていないため、従業員不正の発生可能性が高くなってしまうからです。
 従業員不正の防止のための内部統制については、「平成30年度民間社会福祉施設長研修会で使用したレジュメについて」において、京都府の「平成30年度民間社会福祉施設長研修会」で使用したレジュメを紹介しています。京都府のページに資料が掲載されていますので、参考としていただけますと幸いです。
 

2019年1月21日月曜日

社外監査役の効果

1.はじめに
 先日、日本経済新聞などで、一定の要件を満たす会社には社外取締役の設置を義務付けるという会社法の改正が行われるという記事が掲載されていました。
 現行法では、「事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。」(会社法327条の2)とされており、上場企業など一定の要件を満たす会社には、社外取締役の設置は法令上、義務付けられていませんが、実質的に設置を強制されているような体制となっています。
 次回の改正では、法令上、非上場の会社も含めて一定の要件を満たす会社には社外取締役の設置を義務付けるという方向のようです。

2.社外監査役の設置
 一方、監査役については、監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならないとされています(法335条③)。
 一定の要件を満たす株式会社において社外監査役の設置が義務付けられたのは旧商法時代です。このときの印象ですが、「社外監査役を設置してもガバナンスの強化にはつながらないのではないか」と当時は思いました。
 しかしながら、財務諸表監査を行うようになり、実務の世界に入ると、社外監査役はそれなりに効果があったのではないかと思うようになりました。

3.社外監査役の強み
 社外監査役には、当時は弁護士の方が多く就任していたという印象があります。近年では公認会計士も増えてきているようです。
 このように社外監査役は、本業を持っている人が就任するケースがほとんどだと思います。本業を持っている人の強みは、仮に社外監査役の地位を失っても、収入や生活に影響がないという点です。彼らは自分の事務所を持っていて、もともとそれなりの収入があります。そのため、たとえ会社に嫌われても監査役の職務を全うし、自分の意見もはっきり言いやすいというメリットがあります。従って、社外監査役の存在はガバナンスの強化につながっているのでは、と思っています。
 実際に、社外監査役として取締役にはっきりとモノを申していた方もいらっしゃいました。このような場合であれば、ガバナンスの強化につながっているといえます。

4.社内昇進による監査役の弱み
 一方、会社の従業員から出世して就任した監査役の場合は、取締役に意見を言える人はあまりいないという印象です。監査役はある意味「名誉職」であり、選んでくれた会社には恩義があります。また、それまで従業員だった人が取締役に対してモノをいうのはなかなか難しいと思います。さらに、上記の逆で、仮に監査役の地位を失ってしまうと、報酬がなくなってしまい生活の基盤となる収入がなくなってしまいます。そうなると大変なことになるので、取締役に対して反対意見を言うことはなく、無難に任期を過ごすということになる傾向になるようです。

5.監査法人との連携
 現在の監査制度では、監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」というものがあり、監査人は監査役等と双方に報告などを行うことが求められていますが、この監査基準委員会報告書が制定される前から、監査法人と監査役とは「監査役面談」という形で、監査役と情報交換を行っていました。
 ただ、当時、一部の監査法人は、このような監査役等とのコミュニケーションを行っていなかった法人もあったようです。
 私が以前所属していた監査法人では、監査役の取締役会への出席状況を必ずチェックしていたのですが、とある上場企業では、監査役の出席率が極めて低いという状況でした。この要な場合、監査法人からは監査役に対して、必ず取締役会に出席するように(強い口調で)求めていました。実は、この上場企業は、それまでは別の大手監査法人が担当していたのですが、この監査法人は、監査役に対して欠席の多さを指摘していなかったようです。そのため、各監査役も甘く見て、取締役会を欠席することに対して何も思わなかったようです。
 しかしながら、監査役がこのような状況ではガバナンスの強化につながりません。このような場合は、監査法人・公認会計士がしっかりと指摘すべきです。その意味で、監査法人・公認会計士の存在は、取締役会、監査役の機能強化につながる可能性が高くなるといえます。
 なお、現在では少ないかもしれませんが、社外監査役の中には、例えば普段は東京に住んでいて、関西の会社の監査役を務めているような場合、遠隔地なので、取締役会に毎回出席するのは難しい、という人もいるという話を聞いたことがあります。しかしながら、取締役会に出席できないようであれば、監査役を引き受けるべきでありません。

5.最後に
 実務での実感として、社外監査役の設置は、それなりの効果があったと感じました。一定の会社において社外取締役の設置が義務付けられるようになるようですが、こちらも時間を経ながら、一定の効果が出てくるのではないかと思っています。

2018年12月9日日曜日

負ののれんとキャッシュ・フロー

1.はじめに
 ある上場企業で負ののれんを多額に計上していたことがマスコミに報じられていましたが、今回は負ののれんとキャッシュ・フローの関係についてお話したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.負ののれんとは
 通常、企業を子会社にするとき、時価評価後の純資産を上回る価額でその企業の株式を取得するので、のれんが発生します。
 しかしながら、種々の理由により逆に下回る価額でその企業の株式を取得すると、貸方に差額が生じます。この差額を負ののれんと呼んでいます。
 以下、設例を記載します。債務超過までには至っていないものの、業績が悪化している会社を100%子会社にしたというケースを想定しています。

【設例】
・被買収会社の資産180、負債150、資本50、利益剰余金△20 
・子会社株式の取得価額0円(100%取得)
・資産の時価はないものとする。
・この子会社は非上場会社とする。

 連結財務諸表では、仕訳は以下のようになります。

(借方)資本金 50 (貸方)子会社株式   0
               利益剰余金 20
               負ののれん 30

 子会社株式を純資産の額に相当する30を超える価額で購入すればのれんが発生しますが、30を下回る金額で購入したので、貸方に差額が発生したというわけです。
 この負ののれんは発生した事業年度の利益として計上します(企業結合会計基準33項)。
 この負ののれんは、全額が利益として計上されます。通常ののれんは「資産に計上し、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。」(企業結合会計基準32項)とされているため、毎期一定額が費用計上されるのれんとは対照的です。

 しかしながら、このような負ののれんが発生することはイレギュラーなケースといえます。場合によっては、その事業年度の利益を増加させたいために、取得価額を意図的に低くして、負ののれんを発生させるという会計操作が行われないとも限りません。
 そのため、制度会計では負ののれんの計上については、以下の手続きを行うことを要求しています(企業結合会計基準33項)。

 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。(中略) 
(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(第 30 項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分さ
れた純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利
益として処理する。 

 なお、監査を行う側としては、会社が上記(1)の手続きを適切に行っているかどうかの確認、及びその妥当性について検証する必要があります。

3.キャッシュ・フローとの関係
(1)負ののれんとキャッシュ・フローの関係
 しかしながら、負ののれんを計上して利益が増大したところで、負ののれんからはキャッシュの流入は行われていません。
 以前、「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(1)」で記載したように、利益が黒字だからといって会社が必ずしも資金繰りが順調とは限りません。いわゆる「黒字倒産」というケースもあります。まさに「勘定あって銭足らず」という状態です。
 従って、利益がプラスの場合でも、必ずキャッシュ・フロー計算書を確認し、特に営業キャッシュ・フローがどのような状態になっているのかを確認する必要があります。
 
(2)のれん償却費とキャッシュ・フローの関係
 逆に、営業損益がマイナスであっても、営業キャッシュ・フローはプラスというケースもあります。
 例えば、のれんの償却額が非常に大きい場合、それが原因で営業損失が計上されてしまうこともあります。このようなケースでキャッシュ・フロー計算書を作成してみると、実は、営業キャッシュ・フローはプラスというケースもあります。
 のれんの償却費はキャッシュアウトを伴わないので、営業損失が計上されていても、会社に営業損失に相当する資金流出が必ずしも発生しているとは言えないということです。 
 このような場合は、損益計算書では営業損失が計上されていて、一見、よくなさそうに見えるものの、資金繰りは順調というケースがあります。
 従って、同じく、損益計算書だけでなく、キャッシュ・フロー計算書もあわせて見ることが重要です。

2018年11月25日日曜日

公認会計士試験・条文の表示方法~「項」や「号」の記載

1.「出題の趣旨」
 先日、平成30年公認会計士試験論文式試験の合格発表がありました。
 現在の試験制度では、「出題の趣旨」が公認会計士・監査審査会から公表されています。
 「出題の趣旨」は、問題を出題した試験委員が、出題の内容、出題の目的、答案記載上のポイントなどを記載したものです。
 どちらかというと、答案記載上のポイントはあまり書かれておらず、出題の内容、出題の目的に記載されたものが多くなっています。そのため、受験生はあまり「出題の趣旨」を読んでいないようなのですが、「出題の趣旨」は試験委員が記載したものであり、専門学校が介在していない直接的な情報なので、合格するためには、読んでおくことが望まれます。
 今回は、平成30年公認会計士試験論文式試験の「出題の趣旨」から個人的に気になったところをあげてみたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.条文の表示
(1)「項」、「号」の記載
 租税法のコーナーですが、「解答にあたっては、適用条文の正確な理解及び表示(必要に応じて「項」、「号」まで)が求められる。 」という記載がなされていました。

 これは非常に気になりました。試験委員がこのような記載をするということは、条文をしっかりと記載していない受験生がいる、ということです。
 この記載によれば「項」、「号」を記載していない受験生がいるのだと思います。「項」や「号」を示すことはとても大事です。同じ「○条」でも「項」や「号」によって内容は異なるからです。
 これは租税法だけでなく、会社法でも同様です。

(2)「項」や「号」を示さないとどうなるか
 例えば、会社法の場合ですが、監査役の取締役会への出席義務を記載するとき、

「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条1項)。」

 と書くべきですが、仮に、

「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条)」

 と書いてしまうと、どの条文を示しているのかが不明になってしまいます。というのは383条は1項から4項までありますが、1項には監査役の取締役会への出席義務が定められているのに対して、2項は、監査役の取締役会招集請求権について記載されています。3項は一定の場合における監査役による取締役会招集権、4項は特別取締役による取締役会の場合の不適用についての定めです。
 「383条」だけだと1項から4項までを含んでいることになり、どの項の条文であるのかがわかりません。従って、「383条1項」と明示する必要があるわけです。

 「号」についても同様です。
 例えば、株式会社の商号については、

「株式会社の商号は登記事項である(911条3項2号)。」

 と書くべきですが、仮に

「株式会社の商号は登記事項である(911条)。」あるいは「株式会社の商号は登記事項である(911条3項)。」と書いてしまうと、どの911条のどの部分を示しているのかがわからなくなります。

 このように、「項」や「号」が記載されていないと、どの条文を示しているのかが不明になります。従って、答案としては条文を示していない、すなわち法律要件を示していないということになってしまいます。そうなると、十分な点数がつかない、あるいは、全く点数がつかないということになります。(私見ですが、この場合、全く点数がつかない可能性が高いと思います。)
 このようなことになってしまっては、これまでの努力が水の泡となってしまうので、答案を書くときは普段の答案練習の時から慎重に行うことが重要です。

3.条文番号の表記
 それに加えて個人的に気になっているのが、条文番号の表記です。
 お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)や当ブログでは、例えば、

「理事長が欠席した場合でも、定足数を満たしていれば理事会は成立します(法45条の14④)。」
「この報告を行う趣旨は、理事会による理事長および業務執行理事に対する職務の執行の監督を機能させるためです(法45条の13②二)」
 
 といったように「項」は丸で囲った書き方で書いています。また、「号」は漢数字が多く、時々ローマ数字で書いています。

 しかしながら、本来は例えば「法45条の13第2項2号」といった書き方をすべきです。

 では、なぜ拙著や当ブログではこのような書き方になっているのかというと、理由は以下のとおりです。
 実は、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)を執筆しているとき、私のもともとの原稿では「法○条○項○号」といった記載をしていたのですが、1回目の校正のとき、中央経済社様から「項や号は、①にするなど、略して記載してください。」という要請があったためです。
 従って、このような記載をしているというわけです。

4.「第」はつける必要があるか
 次に、「第…項」といったように「第」までつける必要があるのかという点ですが、これは「出題の趣旨」の会社法のコーナーが参考になります。
 一部を引用してみます。

(イ)「本件債権の弁済期が到来していれば、現物出資財産の価額(会社法 199 条1項3号)は当該債権に係る負債の帳簿価額(券面額)と同額に定められているから、会社法 207条9項5号により、同条の手続は不要である。」

(ロ)「また、Aは当該出資の履行の仮装に関与した取締役に当たり、そのことについて職務を行うについて注意を怠らなかったとはいえないから、Aも甲会社に対して責任を負い(会社法 213 条の3第1項)、BとAの責任は連帯する。 」

 これらを見ると、基本的には「第」は不要ですが、一部で必要なときがあります。 
 それは、(ロ)のように、条の部分が「…条の…」となっている場合です。この場合、「第」をつけないと、「213条の3 1項」といったように数字が続いてしまい、わかりにくくなります。この場合だと「213条の31」と見えてしまうかもしれません。従って、このような場合は「第」をつけると読みやすくなります。

 なお、私の記憶では、会社法でこのような条文の書き方がされたのは、弥永真生教授の「リーガルマインド会社法」(有斐閣)ではなかったかと思います。勝手な推測ですが、このテキストを書くときも出版社から「条文は省略して書いてほしい」と言われたのではないかと思います。
 しかしながら、試験委員も務められた著名教授の本がこのような記載をしているといっても、条文の略書はしない方がよいと思います
 
5.まとめ
 条文は「○条○項○号」といった記載をして、法律要件をしっかりと示すことが重要です。そのためには、普段からテキスト・参考書よりは、条文を読むほうがよいです。
 以上、参考としていただけますと幸いです。

2018年11月5日月曜日

会計監査人の設置基準の引下げ延期

1.厚労省の事務連絡より
 平成30年11月2日付で、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課は、事務連絡として公益社団法人全国老人福祉施設協議会宛で「「社会福祉法人における会計監査人に係る調査と 平成 31 年4月の引下げ延期について(周知)」を送付しました。
 
 これによると、

「今般、平成 28 年社会福祉法改正による会計監査人の設置を円滑に進めていくため、会計監査の実施による効果や導入する場合の課題等について、
(1)平成 29 年度の会計監査を実施した全ての社会福祉法人(約 400 法人)を対象とした調査
(2)収益 10 億円を超える法人又は負債 20 億円を超える法人(約 1,700 法人)を対象とした調査

を、二段階で実施いたします。」

 とし、これに続けて

「このため、法人の準備期間等を考慮し、平成 31 年4月から会計監査人の設置基準を引下げることは行わないこととしましたので、貴団体の会員に周知をいただくようお願いいたします。」

 と記載しています。(文中のゴシックと色付けは筆者)

 そのため、当初は、サービス活動収益が20億円を超える社会福祉法人または負債の部の合計額が40億円を超える社会福祉法人は、平成31年度より会計監査人の設置が義務付けられる予定でしたが、延期となりました。
 従って、平成31年度も引き続き、会計監査人の設置が義務付けられる社会福祉法人は、サービス活動収益が30億円を超える社会福祉法人または負債の部の合計額が60億円を超える社会福祉法人となります。
 ちなみに、これは私が所属する総合経営グループが会員となっているMMPG様より、本日の昼過ぎに参考情報として連絡があり知ることになったものです。

2.監査の準備期間
 前回は、私も傍聴人として参加した平成28年9月26日の社会保障審議会 (福祉部会)で、会計監査人の設置基準が発表されたので、9月下旬には発表があるかなと思っていたのですが、なかなか出てこないので今回は少し遅いなと感じてはいました。
 あくまで推測ですが、いろいろな力が働いたのかもしれません。

 なお、もともと厚労省は福祉部会で、
「・ 平成29年度、平成30年度は、収益30億円を超える法人又は負債60億円を超える法人
・ 平成31年度、平成32年度は、収益20億円を超える法人又は負債40億円を超える法人
・ 平成33年度以降は、収益10億円を超える法人又は負債20億円を超える法人
と段階的に対象範囲を拡大。
 ただし、段階施行の具体的な時期及び基準については、平成29年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえ、必要に応じて見直しを検討する。」
 
 としていたので、平成29年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえるために何らかの調査を行うのだろうとは思っていましたが、これから行うとは想定していませんでした。

 ただ、私見ですが、平成29年度から実施した社会福祉法人の監査では、社会福祉法人側に十分な準備期間がなかったのでは、と感じました。
 ちなみに、上場会社の場合、上場準備期間があり最短で2年、状況によってはそれ以上の期間を経て上場に至るのですが、社会福祉法人の制度改革ではこのような期間がなかったと思います。
 そのため、多くの社会福祉法人は準備不十分なまま、いきなり法定監査に突入してしまったので、気の毒な感じがします。
 従って、今回、会計監査人の設置基準が延期となりましたが、監査の準備期間が設けられたという点ではよかったと個人的には思っています。

 この点を踏まえると、社会福祉法人側では、設置基準の引き下げが決まってから予備調査を始めるのではなく、今の時点から予備調査を受け、任意監査契約を締結することが望まれます。この任意監査の期間に、内部統制の不備や会計上の誤りを修正していくわけです。そうすれば、法定監査に入ってから、監査法人に大きな指摘(金額の大きい会計上の誤りなど)を受ける可能性は低くなります。
 従って、今回の延期を、監査の先延ばしでなく、監査を受けるための十分な準備期間の設置と捉えていただけますとよいかと思います。

2018年10月21日日曜日

消費税軽減税率制度のポイント(2)

1.コンビニのイートインコーナーは消滅する?
 先日、コンビニエンスストア業界が店内での飲食禁止を条件に、酒類を除く全ての飲食料品を軽減税率の対象とするということで財務省と調整しているというマスコミ報道がありました。この報道の発信源がどこで、また、どのような意図で報道されたのかは不明ですが、いったん、この報道を前提に記載します。

 「消費税軽減税率制度のポイント(1)」にも記載しましたが、店内飲食の場合は標準税率10%が適用され、テイクアウトのような持ち帰り販売の場合は軽減税率8%が適用となります。
 コンビニエンスストアのイートインコーナーは、店内飲食(食事の提供)に該当しますので、イートインコーナーで飲食することを前提に販売すれば、飲食料品であっても標準税率10%が適用されることになります。

 今回の報道が真実だとすれば、このようなコンビニエンスストア内での店内飲食は、平成31年10月1日以後は行うことができなくなるということになります。

2.抜け穴がある?
 産経新聞の平成30年10月3日付の記事「コンビニ業界が全食品を軽減税率対象で調整 消費増税で イートインは「休憩施設」」では、タイトル通りイートインコーナーを休息施設と位置づけるとしていますが、記事の中に

「購入した飲食料品がトレーに載せられて座席に運ばれたり、返却が必要な食器に盛られて提供されたりすると、外食と判断される。このため、そうしたサービスはできないようにして、全ての飲食料品を持ち帰りができる状態で販売するよう徹底する。コンビニ業界は、こうした施策で、取り扱う飲食料品は持ち帰りと定義でき、客がイートインで飲食したとしても税率は8%になるとみている。」
 
 という記載があります。
 しかし、「店内飲食禁止」としているのであれば、客がイートインで飲食することはできないはずです。見て見ぬふりをするということでしょうか。もし、そうであれば、記事にもあるように、外食業界からは強い批判が出るのは必至です。
 このあたりは、産経新聞が誰からどのような取材をしたのかが不明なのでなんとも言えませんが、いずれにしろ、抜け穴がないように調整をする必要があります。
 
3.店内飲食と持ち帰り販売の判定方法
(1)判定時は課税資産の譲渡等を行う時
 このように、店内飲食は標準税率、持ち帰り販売は軽減税率がそれぞれ適用ということになるので、この両方を行っている飲食店等は販売時のレジ打ちが大変となることが予想されます。
 上記1.のコンビニエンスストア業界の話も、レジ打ちの対策という目的もあるようです。
 
 この店内飲食と持ち帰り販売の判定は、「消費税軽減税率制度のポイント(1)」でも記載したように事業者が課税資産の譲渡等を行う時に判定することになります。

(2)具体的な判定方法
 それでは、その判定は具体的にはどのようにすればよいのかという問題がありますが、「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」(以下「軽減通達」)の11では、例示として顧客に意思確認を行うことが示されています。

 以下、軽減通達の該当条文を引用します。

(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
11 事業者が行う飲食料品の提供等に係る課税資産の譲渡等が、食事の提供(改正法附則第34条第1項第1号イ《31年軽減対象資産の譲渡等に係る税率等に関する経過措置》に規定する「食事の提供」をいう。以下この項において同じ。)に該当し標準税率の適用対象となるのか、又は持ち帰りのための容器に入れ、若しくは包装を施して行う飲食料品の譲渡に該当し軽減税率の適用対象となるのかは、当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。

 「適宜の方法」とされていますので、例えば、レジスペースで店員が「お持ち帰りですか、それとも店内で召し上がりますか?」と顧客にたずねるというものがあげられます。これは、ファーストフードなどでは、よく行われている方法です。
 
(3)張り紙も可
 もちろん、「適宜の方法」でよいので、これ以外の方法によっても可能です。
 先月、日本公認会計士協会京滋会で行われた研修では、大阪国税局課税第2課の担当者より、この判定方法としては、上記のほか、張り紙を掲示して申し出てもらう、という方法も考えられるという説明がありました。
 例えば、原則として持ち帰り販売とし、張り紙で「店内で飲食を希望される方は申し出てください。」と記載しておくという方法があります。その逆でもよいでしょう。

 その他にも、持ち帰りか店内飲食かを選択できるボタンをつけた端末をレジに置いて、顧客にボタンを押していただく、というのもよいかと思います。このような端末は見たことはありませんが、そのうちできるのではないかと個人的には予測しています。

2018年9月29日土曜日

平成30年度民間社会福祉施設長研修会で使用したレジュメについて

 平成30年8月7日にキャンパスプラザ京都で開催された「平成30年度民間社会福祉施設長研修会」で使用した資料が京都府の「平成30年度民間社会福祉施設長研修会 会議資料」というページに掲載されています。

 私のレジュメは「資料3」として掲載されています。
 京都府による指導監査の重点ポイントが記載された資料も掲載されています。

 「社会福祉法人会計でのチェックポイント」というタイトルですが、内容は内部統制です。もともと京都府がこのタイトルを「仮題」として設定されていたのですが、そのまま使用しました。 

 参考としていただけますと幸いです。