2019年6月30日日曜日

公益法人information~C(2)の計算式が壊れたら

1.はじめに

 平成31年2月11日のブログ「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」で公益法人informationのシステムが新しくなったというお話をしました。(注:このときのブログで「公益法人インフォメーション」という書き方をしてしまいましたが正確な表記は「公益法人information」でした。)
 今回は、この公益法人informationで導入された新システムの留意点について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。
(今回の内容は、一緒に業務を行っていただいた公認会計士のご協力によるものです。感謝申し上げます。)

2.C(2)の計算式が壊れたらどうすればよいのか

(1)行挿入の注意点

 「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」でも記載しましたが、新システムではエクセルでの作成となりました。そのため、自分のパソコン内で作成できるようになり、また、編集も行いやすくなったため、旧システムよりも便利になったと思います。
 しかしながら、注意点もあります。

 C(2)(控除対象財産を集計する表)など、いくつかのブックには行を追加するときの注意点が記載されています。
 手元に資料がないので記憶に頼りますが、行を追加するときは、①自分で行挿入をしてはならない、②1行目ではなく2行目以下の行をコピーして挿入しなければならない、という注意書きが記載されていたと思います。

 エクセルだとつい、自分で行挿入をしてしまいがちですが、これは必ず守らなければなりません。
 

(2)自分で行挿入をしてしまうとどうなるのか

 この注意書きは、もちろん理由があって記載されています。
 それでは、2行目以下をコピーしないで自分で行挿入をしてしまうとどうなるのでしょうか。
 結論を申し上げますと、この場合、1号財産や2号財産などの合計額があわなくなってしまいます。

 自分で行挿入しただけで何故合計がおかしくなるのか疑問に思われる方も多いと思います。実は、この現象が生じる理由は、1号財産や2号財産の集計表の末尾にある小計欄の計算式にあります。
 通常、エクセルでこのような簡単な表を作成したときの合計を求めるときはSUM関数を使用します。しかしながら、新システムで使用されているエクセルでは、小計欄にカーソルをあわせていただければわかるのですが、C(2)の小計欄ではSUMIF関数が使用されています。
 これが、自分で行挿入をしてしまうと合計額があわなくなる理由です。
 なお、この小計欄のセルは「保護」が行われているので、自分では計算式を触ることはできません。

(3)SUMIF関数とは

 SUM関数であれば、1行目だけ気をつければ、自分で行挿入をしても、その行が合計範囲に含まれるので、合計額の集計はもれなく行うことができます。
 しかしながら、SUMIF関数とは、マイクロソフトのページによれば「指定した条件を満たす範囲内の値を合計する」関数です。従って、指定した条件が含まれないと、その行の数字は集計されません。
 これが、自分で行挿入してしまうと合計額があわなくなる原因です。

(4)AZの列に注目

 具体的に申し上げますと、自分で行挿入してしまうと、その行に「指定した条件」が含まれなくなってしまうのです。

 私の記憶によれば、C(2)の1号財産のSUMIF関数は確か「(AZ:AZ,1,AL:AL)」だったと思います。
 SUMIF関数では、順番に「範囲」、「検索条件」、「合計範囲」が示されます。C(2)の1号財産の例でいうと、範囲がAZの列、検索条件が「1」、合計範囲がALの列ということになります。

 それでは、この検索条件の「1」とは何かというと、実はAZの列に「1」という数字が記載されていて、その数字の「1」が検索条件となっているという仕組みになっているのです。

 AZの列にカーソルをあわせると、エクセルの表では全く見えませんが、上のバーのところ(計算式などが示されるところ)に「1」と表示されます。「1」を白色にして見えなくしているのですが、まちがいなく「1」が入力されています。これがSUMIF関数の条件の正体です。

(5)合計があわなくなる理由

 そこで、合計があわなくなる理由ですが、自分で行挿入してしまうと、AZの列に「1」が入力されていない状況になってしまうからです。そのため、SUMIF関数では、その行に入力された数値を認識しないのです。
 従って、その行の数値が認識されないことから、SUMIF関数で集計した合計額があわなくなるという現象が生じてしまうというわけです。

(6)壊れた計算式を修復する方法

 それでは、誤って自分で行挿入してしまい、C(2)の計算式が壊れてしまったらどうすればよいのでしょうか。

 その解決策は、自分で行挿入してしまった行のAZの列に半角で「1」を入力することです。そうすれば、SUMIF関数がその行のALの列に入力した数値を認識してくれます。その結果、合計額もあうようになります。

 注意点は、この「1」を入力する列のセルを「結合」することです。セルを結合しないとSUMIF関数が条件を読み取ってくれません。
 

3.検算は必ず行う

 C(2)をはじめ、その他の別表においてもエクセルで集計した合計数値は、必ず電卓または算盤で検算する必要があります。
 エクセルなどのスプレッドシートは大変便利なツールですが、計算式や計算範囲に不備があると集計漏れなどの誤りが生じてしまいます。
 従って、面倒でも、必ず電卓または算盤を使って手作業で検算を行い、その集計が正しく行われているかどうかを確認する必要があります。
 今回の場合だと、C(2)の合計があわないということは、どこかの行の挿入にミスがあったということです。
 このようにして、計算合計の確認と誤りがあればエクセルの修正を行って、正しい数値を出す必要があります。