1.はじめに
近年のIT技術の進歩は著しいものがあります。電子書籍もその一つです。
日本公認会計士協会も、数年前より機関紙である「会計・監査ジャーナル」について電子版も利用できるようにし、会員・準会員(日本公認会計士協会に登録をしている公認会計士や公認会計士試験合格者など)に電子版の利用を促しています。
今回はこの電子書籍について思うことを述べたいと思います。
2.「会計・監査ジャーナル」の電子版
日本公認会計士協会は、この「会計・監査ジャーナル」の電子版の機能向上を目的とした会員アンケートを行っていましたが、先日、そのアンケート結果が会員・準会員専用ページで公表されていました。
会員・準会員専用なので、アンケート結果などその内容は記載することはできませんが、電子版を利用している会員・準会員(以下「会員等」)は徐々に増えてきているようです。
しかしながら、使いやすさについては使いにくいと思っている会員等も結構いるようです。実は、正直申し上げて、私も「会計・監査ジャーナル」の電子版については使いにくいと思っている会員の一人です。
それでは、なぜ私が使いにくいと思っているのか、電子書籍の種類に即して説明します。
3.Kindleの種類
(1)ハイライト機能などを使えるもの
私は、通常の電子書籍ではアマゾンのKindleを使用しています。
このKindleによる電子書籍については、その方式について2種類あります。一つは、①「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能」(アマゾンの説明書きより)を使用できるもの、もう一つは②これらの機能がついていないもの、です。
どちらが使いやすいかというと、まちがいなく①のほうです。
①の様式は、テキストデータによるものなので、普段、Webで検索するように、その本の中のある用語を検索することができます。また、読んでいて意味がわからない用語や漢字が読めない場合についても、その用語をタップすると、辞書やウィキペディアの説明が示されます。
ハイライト機能は、気になった用語や文章にマーカーを引くように色をつけることができるものです。ハイライトした用語や文章は、一覧で見ることができます。そのため、後で読んだところを思い出して探すときに便利です。
ブックマーク機能というものもあります。これは、気になったページに付箋を貼るような機能です。これも、ブックマークしたページを一覧で見ることができます。
基本的には、電子書籍を利用する場合は、この方式で販売されている書籍のほうがよいです。
アマゾンの場合は、これらの機能を使用できない場合、「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません」と記載されているので、この説明の有無を確かめる必要があります。
(2)ハイライト機能などが使えないもの
これに対して、上記のように「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用でき」ない電子書籍もあります。
これは、イメージとしては、書面をスキャンしてPDF化したようなイメージです。
PDFを利用される方はおわかりだと思いますが、このように書面をスキャンしてPDFにした場合、検索機能を使用できません。
ハイライト機能などが使えないタイプはこれに似た電子書籍です。
このタイプの場合、文章中心の書籍はとても使いにくいです。次に記載しますが、Kindleでこのタイプは、たいてい固定レイアウト型という、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらないタイプです。
このタイプは、どちらかというと写真や図が多く入った書籍によく見られます。このような書籍であれば、ハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でも、使えることは使えます。私の場合、例えば「地球の歩き方」を電子書籍で購入しましたが、Kindleではハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でした。しかしながら、「地球の歩き方」を現物で持つと荷物が多くなるし、重くなるので、電子書籍にしました。どちらかというとやむを得ないという気持ちが強かったです。
4.リフロー型と固定レイアウト型
次に、リフロー型と固定レイアウト型について記載します。
リフロー型とは、文字の大きさや行数などによって、ページレイアウトが変わる電子書籍です。Kindleの場合、ハイライト機能などを使える電子書籍はこちらになります。
一方、固定レイアウト型とは、上記のように、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらない方式で、画面は拡大できますが、文字自体を大きくしたり、行数を変えることはできません。
5.「会計・監査ジャーナル」電子版の場合
そこで本題ですが、会計・監査ジャーナルの電子版はKindleではなく、名称は伏せますが、別の電子書籍アプリを使用しています。
このアプリにおいては、会計・監査ジャーナルは固定レイアウト型になっています。すなわち、文字自体を大きくしたり、行数を変えたりすることはできず、パソコンから見ても、iPadからみてもレイアウトは変わりません。
一方で、検索機能やハイライト機能はついています。その他ペンによる書き込み機能もついています。
しかしながら、Kindleのようにハイライトした用語や文章をあとで一覧で見ることはできません。また辞書機能もありません。
それと、Kindleと比べると検索スピードが遅いです。テキストデータであれば、もっと早くなるのではないかと思います。
6.まとめ
私個人の感想ですが、会計・監査ジャーナル電子版は、検索機能やハイライト機能などはついているものの、使いにくいという印象です。その原因は、会計・監査ジャーナル電子版が固定レイアウト型だからだと思います。
確かに、雑誌については固定レイアウト型が向いているといわれていますが、会計・監査ジャーナルは後々においても仕事や勉強で使用するコンテンツが多いので、いろいろと事情があるのだとは思いますが、リフロー型によるテキストデータにして、Kindleのように、保存機能やメモ機能をつけた電子書籍化がよいのではないかと個人的には思います。
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