2019年7月14日日曜日

京都に進出する地方私鉄

1.静鉄が京都にホテルをオープン

先日、京都の西洞院通(にしのとういんどおり)を歩いていたら、西洞院通錦小路下ルに「静鉄ホテルプレジオ京都四条」というホテルが建設されていました。
 「静鉄」とは静岡鉄道の略称で、もちろん文字通り静岡の鉄道会社です。
 京都と静岡は距離も離れていますし、京都で静岡の会社といっても馴染みがないので、最初は「静岡の会社が何故京都に?」と思いました。
 
西洞院通から見た静鉄ホテルプレジオ四条京都の外観です。


2.シナジー効果 

しかし、考えてみると、静鉄が自社の観光会社で京都ツアーを組んで、静岡の人に京都旅行に行っていただき、さらに静鉄ホテルに宿泊していただくことで収益を得ようという戦略も考えられるので、それを考慮すると、静鉄が京都にホテルをオープンさせることは変わったことではないと思います。静鉄ホテルプレジオはビジネスホテルという位置づけですが、ビジネスホテルであっても観光旅行にも利用できます。また、静鉄グループ内には「静鉄観光サービス株式会社」という観光会社があります。

 それと、もう一つ考えられるのは、日本では少子高齢化で人口減少が進んでいるため、自社のテリトリー以外の地域に進出して、需要を取り込もうという戦略です。
 静鉄は静岡を地盤としていますが、少子高齢化が進む中、おそらく静岡県内の活動だけでは需要が頭打ちになってくると思います。しかし、いま、京都への観光旅行はとても人気がありますので、京都にホテルをオープンさせれば、静岡県以外の地域でも収益を上げることができます。
 これは全社戦略レベルにおいて、事業領域や事業ポートフォリオをどのようにしていくか、という話になってきます。

 鉄道会社の中には、このように自社系列のホテルや観光会社を経営している会社があります。これは、自社系列の観光会社を利用する消費者に、同時に自社系列のホテルも利用していただければ、収益の相乗効果が得られるからです。
 さらに、静岡県外の人が静鉄ホテルプレジオを利用した場合、宿泊時の案内や宿泊後の案内で静岡県への観光旅行を提案することで、静鉄ホテルプレジオを利用した静岡旅行に来て頂ける可能性もあります。そのようになれば、静鉄グループの収益増加に繋がります。
 このように、複数の事業等の組み合わせによる相乗効果をシナジー効果といいます。

3.相鉄フレッサイン

地方私鉄ではなく、今は首都圏の大手私鉄という位置づけですが相鉄も「相鉄フレッサイン」というビジネスホテルを京都に開業しています。
 相鉄相模鉄道の略称で、神奈川県を地盤とする私鉄です。私が物心ついたときは地方の準大手私鉄という位置づけでしたが、平成2年に首都圏の大手私鉄という格付けとなりました。
 ちなみに「相鉄」は「そうてつ」と読みます。京都では馴染みがない鉄道であるため、「相鉄」を読めない人は多いようです。
 
綾小路通烏丸西入にある相鉄フレッサイン。

 私が見たのは綾小路通烏丸西入ルにある相鉄フレッサインです。初めて見たのは3年ほど前です。綾小路通は四条通の一つ南の通りですが、綾小路通を歩いていたら、「相鉄」の文字が目に入ってきたため、「京都に相鉄?」と驚いた記憶があります。
 調べると、現在、相鉄グループ内には観光会社はないようです。かつて相鉄観光という観光会社があったということですが、現在は近畿日本ツーリスト神奈川となっているということです。
 従って、相鉄の場合は観光会社を使ったシナジー効果を目的としているのではなく、神奈川県以外の地域での収益増加を目的としたものといえそうです。なお、相鉄フレッサインは首都圏以外にも長野、大阪、兵庫、広島、さらには韓国にもホテルを開業しています。
 また、相鉄は5年前にホテルサンルートを買収し、ホテル事業に力を入れています。

4.まとめ

私鉄は、鉄道事業を行う地域が限られているため、鉄道事業に限っては収益の機会もその地域に限られます。特に、中小私鉄の場合は、せいぜい地盤は一つの府県にとどまります。
 しかしながら、鉄道会社は阪急から始まったといわれる多角化戦略をとる会社が多いので、このように自分のテリトリー以外の地域にホテルを開業することで、他地域で収益をあげて、グループの収益増加につなげることも可能です。
 特に、ホテルに関していえば、京都では、外国からの観光客の急増のため、今ホテルをオープンすれば、間違いなく儲かります。そのため、京都は異常とも思えるホテルの開業ラッシュです。
 静鉄や相鉄の京都でのホテル開業は、地方私鉄の一つのビジネスモデルとして参考になるかもしれません。