2019年1月21日月曜日

社外監査役の効果

1.はじめに
 先日、日本経済新聞などで、一定の要件を満たす会社には社外取締役の設置を義務付けるという会社法の改正が行われるという記事が掲載されていました。
 現行法では、「事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。」(会社法327条の2)とされており、上場企業など一定の要件を満たす会社には、社外取締役の設置は法令上、義務付けられていませんが、実質的に設置を強制されているような体制となっています。
 次回の改正では、法令上、非上場の会社も含めて一定の要件を満たす会社には社外取締役の設置を義務付けるという方向のようです。

2.社外監査役の設置
 一方、監査役については、監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならないとされています(法335条③)。
 一定の要件を満たす株式会社において社外監査役の設置が義務付けられたのは旧商法時代です。このときの印象ですが、「社外監査役を設置してもガバナンスの強化にはつながらないのではないか」と当時は思いました。
 しかしながら、財務諸表監査を行うようになり、実務の世界に入ると、社外監査役はそれなりに効果があったのではないかと思うようになりました。

3.社外監査役の強み
 社外監査役には、当時は弁護士の方が多く就任していたという印象があります。近年では公認会計士も増えてきているようです。
 このように社外監査役は、本業を持っている人が就任するケースがほとんどだと思います。本業を持っている人の強みは、仮に社外監査役の地位を失っても、収入や生活に影響がないという点です。彼らは自分の事務所を持っていて、もともとそれなりの収入があります。そのため、たとえ会社に嫌われても監査役の職務を全うし、自分の意見もはっきり言いやすいというメリットがあります。従って、社外監査役の存在はガバナンスの強化につながっているのでは、と思っています。
 実際に、社外監査役として取締役にはっきりとモノを申していた方もいらっしゃいました。このような場合であれば、ガバナンスの強化につながっているといえます。

4.社内昇進による監査役の弱み
 一方、会社の従業員から出世して就任した監査役の場合は、取締役に意見を言える人はあまりいないという印象です。監査役はある意味「名誉職」であり、選んでくれた会社には恩義があります。また、それまで従業員だった人が取締役に対してモノをいうのはなかなか難しいと思います。さらに、上記の逆で、仮に監査役の地位を失ってしまうと、報酬がなくなってしまい生活の基盤となる収入がなくなってしまいます。そうなると大変なことになるので、取締役に対して反対意見を言うことはなく、無難に任期を過ごすということになる傾向になるようです。

5.監査法人との連携
 現在の監査制度では、監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」というものがあり、監査人は監査役等と双方に報告などを行うことが求められていますが、この監査基準委員会報告書が制定される前から、監査法人と監査役とは「監査役面談」という形で、監査役と情報交換を行っていました。
 ただ、当時、一部の監査法人は、このような監査役等とのコミュニケーションを行っていなかった法人もあったようです。
 私が以前所属していた監査法人では、監査役の取締役会への出席状況を必ずチェックしていたのですが、とある上場企業では、監査役の出席率が極めて低いという状況でした。この要な場合、監査法人からは監査役に対して、必ず取締役会に出席するように(強い口調で)求めていました。実は、この上場企業は、それまでは別の大手監査法人が担当していたのですが、この監査法人は、監査役に対して欠席の多さを指摘していなかったようです。そのため、各監査役も甘く見て、取締役会を欠席することに対して何も思わなかったようです。
 しかしながら、監査役がこのような状況ではガバナンスの強化につながりません。このような場合は、監査法人・公認会計士がしっかりと指摘すべきです。その意味で、監査法人・公認会計士の存在は、取締役会、監査役の機能強化につながる可能性が高くなるといえます。
 なお、現在では少ないかもしれませんが、社外監査役の中には、例えば普段は東京に住んでいて、関西の会社の監査役を務めているような場合、遠隔地なので、取締役会に毎回出席するのは難しい、という人もいるという話を聞いたことがあります。しかしながら、取締役会に出席できないようであれば、監査役を引き受けるべきでありません。

5.最後に
 実務での実感として、社外監査役の設置は、それなりの効果があったと感じました。一定の会社において社外取締役の設置が義務付けられるようになるようですが、こちらも時間を経ながら、一定の効果が出てくるのではないかと思っています。