2019年3月3日日曜日

キャッシュレスが及ぼす経営への効果

1.ロイヤルホールディングスによる完全キャッシュレス店
 TBS系列の放送局では毎週日曜日午前7時30分から「がっちりマンデー」という番組が放送されています。平成31年2月24日(日)の放送では「視察が殺到する会社!」というタイトルで、多数の同業他社などが視察に訪れる会社を特集していました。
 その中で、東京の馬喰町(ばくろちょう)にある「ギャザリングテーブルパントリー」というお店が紹介されていました。恥ずかしなら、私も今になって初めて知ったのですが、このお店は、ロイヤルホールディングスが行った実験店舗で、完全キャッシュレス化を行ったお店ということです。
 さらに、この馬喰町のお店は完全キャッシュレスのためレジや金庫がないことに加え、ガス台もないお店であるため、どのような運営を行っているのかということで、同業他社が視察に訪れているのだそうです。
 余談ですが、私が知っている馬喰町は繊維問屋の町で、夜になると人通りが全くなくなり、車しか通っていない寂しい町という印象がありますが、最近はお洒落な店も開店しているようで昔とは変わってきているようです。

2.キャッシュレスが及ぼす効果
(1)レジ締めの時間が大幅に短縮
 番組では、キャッシュレスがどのような効果をもたらしたのかという点を紹介していましたが、番組を見て「なるほど」と思いました。
 キャッシュレス化となると、普通は、(イ)客が現金を支払わなくてよいので、多額の現金を持ち歩かなくてもよい、(ロ)小銭が増えない、(ハ)財布からお金を出す手間が省けるので支払いが早くなる、といった「客視点」のメリットしか思い浮かばないのではないかと思います。
 しかしながら、このギャザリングテーブルパントリーでは、完全キャッシュレス化により、店長はじめ全従業員の労働時間が大幅に減少したそうです。
 なぜかというと、現金がまったくないため、いわゆる「レジ締め」が一瞬で終わるからです。現金を取り扱う店舗だと、閉店後にレジデータを集計し、レジ内の現金を数えて、レジデータに基いた残額と一致しているかどうか、といった作業を行いますが、このレジ締めには時間がかかります。このとき、現金残高がデータと一致していないと、その原因を探らないといけなくなり、さらに時間がかかります。
 しかし、完全キャッシュレスの店舗では、この作業が不要となるため、レジ締めにかかる時間がほとんどなくなりました。そのため、閉店後の労働時間の大幅な削減となったということです。
 ちなみに、学生時代、あるコンビニエンスストアでアルバイトをしていた友人によると、そのコンビニエンスストアでは、実際在高が過大の場合、その過大分は店舗のものとなるのに対して、過少の場合はレジを担当していた店員が補填しないといけなかったそうです。
 
(2)釣り銭の準備、現金の持ち運び作業の消滅
 また、完全キャッシュレス化となれば、当然のことながら釣り銭はいりません。従って、金融機関から釣り銭用の現金を持ってくる必要はありません。
 さらに、現金の場合、売上金は金融機関に入金するために金融機関まで持ち運びしなければなりませんが、この作業も不要になります。
 このような作業がなくなることで労働時間の短縮につながります。

(3)スペースの確保
 番組では完全キャッシュレス化により、レジや金庫を置く必要がなくなったので、スペースの確保につながった、と紹介していました。
 確かに、レジのスペースは結構取りますし、金庫も数百キロの大金庫を置くのが通常なので、こちらもスペースをとります。
 レジのスペースがなくなれば、その分、テーブルと椅子を増加できますので稼働率が上がれば売上の増加につながります。
 なお、支払いは、電子マネーやクレジットカードの場合、店員がテーブルまでやって来てそこで支払いを行うようです。

(4)注文はセルフサービス
 ギャザリングテーブルパントリーでは、客からのオーダーも各テーブルに置いてあるタブレットを使用してセルフサービスで注文します。
 ちなみに、このタブレットを使ったセルフオーダー方式は、ギャザリングテーブルパントリーだけではなく、例えば大戸屋でも導入されています。
 この方式であれば、店員がテーブルに行って注文を聞いて厨房に伝えるという作業がなくなります。このような作業は一日何回も行うので、これがなくなれば、他の作業に時間を回せますし、人手不足の中、少ない人数でも店をまわすことが可能となります。
 さらに、平成30年7月にはLINE Payを使った「セルフテーブル決済」を導入したということです。これは「注文用タブレット端末において、お支払い方法にLINE Payを選択すれば、お客様ご自身のスマートフォンひとつでスムーズに支払いを完了することができる」(ロイヤルホールディングスのHPより)という仕組みということです。
 上記のように、電子マネーやクレジットカードの場合は、店員がテーブルまで行く必要がありますが、セルフテーブル決済の場合は、それも不要ということになります。
 なお、最近では、平成31年2月1日にQRコードで決済できる「Alipay」と「WeChat Pay」が、12日には 「PayPay」が導入されました。これらもセルフテーブル決済に使用できます。

3.まとめ
 キャッシュレス化は、顧客にとってのメリットもありますが、労働者にとって労働時間の削減といった大きなメリットがあることがわかりました。また、いろいろとウェブサイトを見てみると、労働者にとっては労働時間の削減のみならず、現金を扱うことへのプレッシャーからの開放といった精神面の安定といったメリットもあるということです。
 また、人手不足が叫ばれる中、これまでよりも少ない人員で運営できるというメリットもあります。
 こういったメリットは、現在問題となっている「働き方改革」への一つの対応策となります。
 このギャザリングテーブルパントリーは実験店ということですが、こういった効果が明らかになったため、多数の同業他社が見学に来て、その効果を自社にももたらそうと考えているのだと思います。
 キャッシュレスの促進化は最近始まったばかりですが、外食産業を始め、小売店にとっては、働き方改革のための大きなツールとなるため、働き方改革とリンクして、今後短期間で一気に普及するものと予測します。