2017年5月21日日曜日

新理事による理事会の招集方法

 平成29年4月1日の新社会福祉法施行後に初めて行われる定時評議員会では、新理事及び新監事が選任されます。新理事が選任されると、理事会を開催して新理事長を選定する必要があります。
 今回はこの新理事を選定するための理事会の招集方法について説明します。

1.定時評議員会と同日に開催する方法
 決算承認の場合を除いて、評議員会と理事会は同日に開催することができます。
 同日開催の場合、定時評議員会終了後、すぐに新理事による理事会を開催することになります。

 ここで、理事会の招集の原則的な方法を記載します。
 理事会は原則として各理事が招集しますが、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その理事が招集します(社会福祉法(以下「法」)45条の14①)。
 理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければなりません(法45条の14⑨、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」第94条①)。

 以上が、理事会の招集方法の原則ですが、この方法だと、招集通知を原則として1週間前まで、又は定款で定めた場合はそれよりも短い期間前までに発しなければなりません。そうなると、定款で1週間よりも短い期間を定めた場合でも、最短で1日前までとなるでしょうから、同日開催は困難となります。

 そこで、実務上、同日開催を行うために使われるのが、招集手続の省略です(法45条の14⑨、一般法94条②)。
 この招集手続の省略とは、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができるというものです。
 この全員の同意は、書面でなくても問題はありません。口頭でも可能です。

 次に、株式会社や公益法人の実例に基づいた、実務での具体的な方法例を記載します。
 まず、定時評議員会には、新理事候補及び新監事候補が出席します。そして、この定時評議員会で、新理事と新監事が選任されます(法43条①)。
 定時評議員会が終了したら、新理事及び新監事に理事会を招集する旨を呼びかけて、集まってもらいます。評議員会が終了した会場に集合するという方法でもよいですし、別の部屋に移動するという方法もあります。このようにして新理事及び新監事が全員集合すれば完了です。これが、実務で見られる招集手続の省略です。

 このようにして、定時評議員会終了後、同日に理事会を開催し、理事長を選定します(法45条の13③)。
 
2.決議の省略による方法
 定時評議員会の日に新理事候補や新監事候補が集まることができないという場合もあるかと思います。また、理事会を開催すると、理事及び監事に報酬を支払わなければならないので、理事会の開催は極力やめたいと考えている法人もあるかと思います。

 このような場合、決議の省略により、理事長を選定することもできます。
 決議の省略とは、定款で定めることを要件に、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をし、さらに、監事が当該提案について異議を述べなければ、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす、というものです(法45条の14⑨、一般法96条)。
 ちなみに、この決議の省略による方法は、実務では「みなし決議」と呼ばれることもあります。

 この決議の省略により、理事全員が同意し、さらに監事が意義を述べなければ、理事や監事が実際に集まらなくても、書面又は電磁的記録(電子メールなど)により理事長を選定することができます。

 具体的な方法ですが、実務で使用するのは、①通知文、②議案書、③同意書及び確認書、④議事録です。
 このうち、①~③を書面にして郵送したり、電子メールで送信したりするなどして、理事及び監事全員に送ります。留意点としては監事に確認書を送るのを忘れないことです。
また、このうち、電子メールを使用する場合は、電子メールが実際に本人に届いているか、また、返信がなりすましでないかを確認するなどの注意が必要です。 
 ④議事録ですが、この場合、理事会の決議が省略されたのみであり、理事会は行われたのですから、当然必要となります。

 なお、この理事会の決議の省略を行うためには定款でその旨を定める必要があります。ただし、社会福祉法人においては、厚生労働省から公表された新定款の定款例にあらかじめ記載されていたので、定款への記載漏れはほとんどないと推測されます。 

3.定時評議員会終結の一定期間後に理事会を開催する方法
 これは、定時評議員会終結後、数日後に理事会を開催するというものです。 
 この場合は、通常の理事会の招集手続により、理事会が開催されることになるでしょう。
 もちろん、この方法でも問題はありませんが、前回記載したように、旧理事の任期が終了した時点で旧理事長の任期も終了することになります。そのため、定時評議員会開催日から新理事による理事会開催日までの間は、理事長が不在ということになります。従って、この方法の場合、なるべく日をあけないで速やかに理事会を開催する必要があります。