2019年4月28日日曜日

連結キャッシュ・フロー計算書~原則法と簡便法

1.連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法
 連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には原則法簡便法があります。
 原則法とは、親会社及び連結子会社が作成した個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算し、相殺消去や科目の振替といった連結修正を行って、連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
 一方、簡便法とは、連結損益計算書並びに連結貸借対照表の期首残高と期末残高の増減額の分析及びその他の情報から作成する方法です(日本公認会計士協会・連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針(以下「実務指針」)47項)。

2.「作成基準」と「実務指針」
 現行制度において規定されている会計基準は、旧大蔵省時代の企業会計審議会が策定した「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(以下「作成基準」)です。
 実務指針47項にも記載がありますが、作成基準では第二の三で「連結キャッシュ・フロー計算書の作成に当たっては、連結会社相互間のキャッシュ・フローは相殺消去しなければならない。」と規定されています。この規定があるため、制度上は、原則法という言葉は使用していないものの、各連結会社の「キャッシュ・フロー計算書」を連結する方法(原則法)を原則としていると考えられています。
 しかしながら、実務指針では簡便法も認められるとしています。そのため、連結キャッシュ・フロー計算書の作成実務においては、原則法と簡便法の2つが認められているというわけです。
 整理すると、以下の関係になります。

・作成基準(企業会計審議会)  →原則法
・実務指針(日本公認会計士協会)→原則法の他、簡便法も認められる

 なお、多くの会計基準や実務指針は、企業会計基準委員会(ASBJ)に移り、企業会計基準や企業会計基準適用指針となったのですが、連結キャッシュ・フロー計算書については、会計基準や実務指針が、まだASBJに移っていない状態です。
 
3.「簡便法」が原則と思っている人が多い?
 以上のように、連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には原則法と簡便法があるのですが、結構、「簡便法」が原則的な方法と思われている方が多くいらっしゃいます。
 ときどき、公認会計士の中にもこのような思い違いをしている人がいます。
 しかしながら、あくまで、各連結会社が作成した個別キャッシュ・フロー計算書を連結する方法が原則です。

【図1】(C/S…Cash Flow Statement)


4.実務上は簡便法
 とはいえ、会計実務では原則法よりも簡便法が使用されることが圧倒的に多いです。
 理由は、簡便法のほうが作成しやすいですし、作成時間も原則法よりも短くてすむからです。
 原則法だと、まず、すべての連結会社が個別キャッシュ・フロー計算書を作成しなければなりません。親会社では当然、個別キャッシュ・フロー計算書を作成しますが、連結子会社のすべてが個別キャッシュ・フロー計算書を作成するとなると、結構面倒です。
 有価証券報告書の作成義務がある会社であれば、個別キャッシュ・フロー計算書を作成しますが、それ以外の会社になると、個別キャッシュ・フロー計算書の作成義務はありません。そのため、個別キャッシュ・フロー計算書の作成義務がない会社でもキャッシュ・フロー計算書を作成するとなると、時間と手間がかかりますし、精度も必ずしも高くはないかもしれません。会社によってはキャッシュ・フロー計算書の作成能力が乏しい会社もあります。
 このような理由から、まず、連結会社が個別キャッシュ・フロー計算書を作成するのに時間と手間がかかってしまいます。
 そして、次の段階では、個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算した後、相殺消去や科目振替といった修正仕訳を反映しなければなりません。これは直接法であっても間接法であっても同じです。従って、ここでも時間と手間がかかります。
 しかしながら、簡便法であれば、すでに作成した連結損益計算書、連結貸借対照表、連結株主資本等変動計算書を使って作成できますので、原則法と比較して時間と手間は大幅に削減できます。
 このような理由から、実務上は原則法よりも簡便法を適用する会社の方が多いというわけです。
 簡便法しか知らない、という方も多いかと思いますが、実は簡便法は容認規定であることを知っておく必要があります。

2019年4月22日月曜日

公益法人~事業報告等に係る提出書類作成における留意事項

1.はじめに
 3月決算の公益法人(公益認定を受けた一般社団法人又は一般社団法人をいいます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ))は、決算書を作成した後、事業報告等に係る提出書類の作成を行うことになります。
 今回は、別紙4における別表の作成上の留意点を記載します。
 ただし、留意点については、いろいろとあるため、誤りやすい点のうち重要なものについて記載したいと思います。

2.別表A
(1)A(1)~過去に生じた剰余金の加算
 別表A(1)での留意点は、過去に収支相償を満たさなかった場合に生じた剰余金がある場合、経常収益計の2欄に加算することを忘れないようにする点です。
 この剰余金は正味財産増減計算書には出てこないので、別途、計算シートを作成して管理しておく必要があります。過去の別表A(1)をひっくり返して、その場で電卓で計算すると、誤る可能性が高くなるので、ひとまとめにしておくほうがよいと思います。

(2)A(3)~利益の繰入額は1円未満端数切り上げ
 収益事業等から生じた利益の繰入額を計算するとき、通常、1円未満の端数が生じると思います。この1円未満の端数の扱いですが、これは切り上げになります。(内閣府の手引きP32参照)
 また、ここに至るまでの計算(管理費の按分、按分後の費用の控除)では、端数には手を付けず、そのまま計算します。その結果算出された収益事業等から生じた利益に50%を乗じた数値においてのみ1円未満の端数切り上げという処理を行います。
 この点は間違いが多いところです。ここを四捨五入、切り上げといった処理をしてしまうと、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額とA(3)で計算した結果に1円の差異が生じるなど、何かと具合が悪くなります。
 従って、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額を計算するときは、エクセルでワークシートを作成して計算過程をしっかりと残しておくことが望まれます。

3.別表B
(1)別表B(5)での特定費用準備資金積立額・取崩額の記載忘れ
 別表B(5)は公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の費用を計算し、公益目的事業比率を計算する計算シートですが、Ⅴ、Ⅵの特定費用準備資金の当期積立額、当期取崩額の記載漏れに注意する必要があります。また、取崩額の欄はマイナス額で記載する点にも注意する必要があります。

 なお、旧システムでは、別表B(1)がシステムに組み込まれていたのに対して、B(5)はエクセルだったため、計算結果がリンクしていませんでした。しかし、新システムではB(1)、B(5)どちらもエクセルになり、計算結果もリンクするようになったので、B(5)を作成すれば、B(1)も自動的に作成されるようになりました。

4.別表C
(1)別表C(2)~財産目録と一致させる
 別表C(2)では公益目的保有財産や特定費用準備資金の帳簿価額について記載するシートですが、名称、場所・物量、並び順は財産目録と一致させる必要があります。行政庁は財産目録との一致状況を必ず見ています。言い換えると、財産目録は、別表C(2)のためにあるといってもよいでしょう。従って、財産目録もC(2)を意識して、不整合が生じないように作成する必要があります。また、財産目録には、共用割合を明記しておく必要があります。
 なお、新システムでは、資産取得資金、特定費用準備資金は様式チェックにより自動反映する方式となりました。

(2)別表C(1)~対応負債の計算は有利選択
 別表C(4)では4に「対応負債の額の計算」という欄があります。
 この対応負債の計算方法には2種類ありますが、4のタイトルの横にはカッコ書きで「(次の2つの方法のうち、いずれかを選択し、○を記載してください)」と記載されていますので、どちらか有利な方を選ぶことになります。
 この選択は、特に会計に携わっている方だと「継続適用」しないといけないのでは、と思ってしまいがちですが、これは選択となります。
 ときどき、施行規則22条7項の計算式と22条8項の計算式を入れ替えると、従前では遊休財産額の保有上限額を超過してしまっていたものが、セーフになるケースがあります。

2019年4月15日月曜日

公益法人・公益目的事業比率~F(2)表の作成の実務

1.はじめに
 公益法人(公益認定を受けた公益社団法人又は公益財団法人をいいます。(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ)も3月決算の法人が多いため、4月に入ると決算の時期に入ります。
 決算が終わると、決算数値を前提に、定期提出書類を作成することになります。
 定期提出書類については、いろいろな書類がありますが、今回は経費の配賦にかかるF(2)表の作成にかかる留意点について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.公益目的事業比率
 公益法人では、財務3基準の一つである、公益目的事業比率をクリアしなければなりません。
 具体的には、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用について、①公益目的事業の費用÷(①公益目的事業の費用+②収益事業等の費用+③法人会計)という計算式で算出された割合が50%以上となることが必要となります(認定法15条)。
 なお、これらの費用は、必ずしも会計上の費用とは限らず、みなし費用(例:特定費用準備資金の積立額)なども含みます。
 公益法人は公益目的事業を行うことが目的にもかかわらず、収益事業等や管理費の割合のほうが大きいとなると、本来の目的を達していないことになるためです。そのため、公益目的事業をしっかりと行うようにするために、公益目的事業比率の基準が設けられています。

3.経費の配賦
 このように、公益法人の事業において発生した費用は、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用のいずれかの費用とする必要がありますが、必ずしも、①~③のそれぞれにおいて固有に発生する費用とは限りません。
 そこで、①~③において共通に発生する費用については配賦計算を行う必要があります。
 この配賦計算については、法令で絶対的に定められた基準というものはありません。内閣府から示されているのは、FAQ問Ⅴ-3-②の例示で示された配賦基準ぐらいです。
 FAQ問Ⅴ-3-②では、(イ)建物面積比、(ロ)職員数比、(ハ)従事割合、(ニ)使用割合が掲げられています。
 なお、FAQ問Ⅴ-3-②では「これ以外に適当と判断した基準があれば、それを採用していただいても構いません。」と記載されています。従って、(イ)~(二)は例示列挙ということになります。

4.決算の実務
 公益法人の経理などに携わっている方は、ここまではご存知の方が多いと思います。
 しかしながら、決算を終えて、いざF(2)表を作成する段階となると、時間がかかったり、どのように進めればよいのか迷ったりする方が結構多く見られます。また、F(2)の数値にミスが生じ、提出後、行政庁から補正提出を求められるケースもよく見られます。
 原因の一つは、F(2)表を作成するときに、基礎資料が存在しないためであることがあげられます。
 言い換えると、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、何らかの配賦割合で計算しているのですが、そのときの配賦割合を資料として残していないため、F(2)表を作成するときに、配賦基準はわかっているものの、配賦割合はどのように記載すればよいのかがわからなくなってしまうというものです。
 例えば、ある費用は職員数比で配賦することになっているのに、F(2)表で職員数比で配賦計算してみたら、正味財産増減計算書内訳表の数値とあわない、ということもあります。そうなると、正味財産増減計算書内訳表の数値とF(2)表の数値が整合しなくなり、どうすればよいのか困ってしまうことになります。
 従って、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、F(2)表の作成も意識して、配賦割合、計算過程、計算結果を資料として残しておくことが必要です。
 可能であるならば、正味財産増減計算書内訳表を作成するときに、一緒にF(2)表も作成しておくというのも一つの方法です。

5.直接対応は記載不要
 F(2)表の作成の実務として、知っておくべきは「直接対応」については記載はする必要はないというものです。
 F(2)表は、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計にまたがって発生する費用について、配賦基準と配賦割合を示す表なので、ある会計に直接的に発生し、配賦計算をする必要がない費用については記載はする必要はありません。
 この直接対応まで記載してしまうと、かなりの時間がかかります。逆に言えば、直接対応を記載しなければ、F(2)の作成時間はかなり短くなります。
 なお、この点は複数の行政庁と確認済みです。

6.端数処理
 F(2)表で困るのは、端数処理の関係で、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の各数値の合計と費用の合計額が1円あわないときがあることです。
 そのため、F(2)表を作成したあとは、計算チェックを行う必要があります。
 しかしながら、これらを電卓で検算していると時間がかかるし、非常に疲れます。
 そこで、おすすめの方法をご紹介します。それは、1の位の数値を足し算し、その数値と合計額の1の位の数値が一致しているかどうかをチェックするというものです。
 例えば、何らかの配賦割合により、公益5,122、収益2,569、法人658という結果になったとします。一方合計額は8,350円とします。
 それぞれを足すと5,122+2,569+658=8,349となり、1円不足します。
 この場合、法人会計あたりで1円を調整する必要がありますが、これをすべて計算しているととても疲れます。
 しかしながら、1の位のみを計算すれば、2+9+8=19となり1の位は9となります。これは合計額の8,350の1の位の0とは一致しません。そうすれば、この行は端数処理による不整合があることがすぐに分かります。
 このようにしていけば、時間の節約につながるのではないかと思います。
 
 以上、参考としていただけますと幸いです。

2019年4月7日日曜日

2018年度(平成30年度)修了考査~合格率急落の理由を推測すると・・・

1.対受験者数合格率56.1%
 平成31年4月5日(金)に、修了考査の合格発表がありました。
 修了考査とは、公認会計士試験に合格し、補習所を卒業した公認会計士試験合格者が受験する試験です。この修了考査に合格しないと公認会計士として登録できません(他に、登録の要件として実務要件があります。)
 今回の合格発表で驚いたのは合格率です。日本公認会計士協会のサイトによると対受験者数合格率が56.1%となっていました。(ちなみに、対受験願書提出者数合格率は51.8%)
 これは驚きました。なぜかというと、修了考査の対受験者数合格率は10年以上、70%前後で推移していたからです。
 ちなみに、平成29年度は69.3%だったので13.2ポイントの大幅な下落となりました。
 しかしながら、当然ではありますが、日本公認会計士協会からは合格率が大幅に下落した理由については一切コメントはありません。
 そこで、今回は合格率が急落した理由を推測してみようと思います。なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.税理士会へのアピール?
 完全な推測なので、保証はありませんが、この合格率の急落を見て、私が最初に思ったのは、税理士会へのアピールではないかというものです。すなわち、税法ができない人は合格させていませんよ、ということではないかということです。
 とはいっても、何のことか不明の方も多いと思いますので、まず、日本公認会計士協会と日本税理士会連合会との関係の歴史を簡単に書きます。

3.業際問題
 税理士になるには、まず税理士試験を合格する必要があります(税理士法3条1項1号)。
 しかしながら、公認会計士は、税理士試験に合格しなくても、税理士法3条1項4号により、自動的に税理士となる資格を有することになり、所定の手続きを経て税理士登録をすると、税理士として業務を行うことができます。すなわち、試験を受けなくても税理士になることができます。
 これに対して、6~7年前でしょうか、日本税理士会連合会が「公認会計士も税理士試験の税法科目に合格しなければ税理士登録できないようにすべき」と主張し始めました。これは、当時、公認会計士試験合格者数が大幅に増加していたため、公認会計士による税理士登録者が大幅に増加することによる警戒感があったものと思われます。
 この問題はそれ以前にも、昔から度々発生した論点なのですが、このときは税理士会がかなり強行だったため、お互いが新聞広告を出すなど、かなり泥沼化していました。
 しかし、最後は日本公認会計士協会による主張で手打ちになりました。

4.国税審議会における実務補習の指定
 このとき、日本公認会計士協会にとって大きかったのは、補習所で税法の講義を行っていることでした。公認会計士の場合は、公認会計士試験に合格してもすぐに会計士登録はできず、補習所の講義の受講と定期考査をパスして卒業する必要があります。これは我が国の公認会計士制度において長く行われてきた制度です。
 当時の業際問題では、この補習所の実績が評価されたと聞いています。そこで、最終的には、税理士法を改正することにより補習所の講義を国税審議会が指定する研修とすることなどにより決着しました。
 日本公認会計士協会のサイトから一部引用すると、以下のとおりです。

「平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者のうち税理士資格を取得できるのは、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち財務省令で定める税法に関する研修を修了した者とされるとともに、当該研修は、改正税理士法施行規則第1条の3第1項において国税審議会が指定する研修とされました。」

「 なお、実務補習規程等の関係規程の改正の主なポイントは、以下のとおりです。
・実務補習の充実策の一環として、監査科目だけではなく、税法科目も重要な科目と位置付け、考査の合格基準について従来の税法科目の考査2回で各回4割以上の取得に加え、税法科目全体で6割以上の取得を設ける。
・税法科目の考査2回については全国統一問題で同一日時に実施する。
・実務補習の考査及び修了考査の問題をウェブサイトで公表する。」

 なお、「平成29年11月1日以後に実務補習所に入所する補習生(再入所を含む。)から適用」するということです。

 一方、日本税理士会連合会のサイトでも同じ内容が記載されていますが、考査と修了考査については以下のことも記載されています。

「考査及び修了考査の試験問題の過去5年分が公開され、研修運営状況が国税審議会に定期的に報告されることともされており、税理士試験との同等性等について継続的に確認されていくことになります。」

5.税理士試験との同等性
 要するに、補習所の税法の考査と修了考査の税法試験については、税理士試験と同じレベルである必要がある、ということですが、今回の修了考査もこれが背景にあったのではないかと私は推測しています。
 平成30年度の修了考査を受験する公認会計士試験合格者は、主に平成27年合格の人になると思いますので、上記の税理士法改正の影響は受けてはいません。しかしながら、国税審議会における実務補習の指定制度が平成30年から本格的に始まっていますので、今回の修了考査も、制度開始元年の試験にあたるといえばあたります。
 修了考査の税法試験も税理士試験と同じレベルであるとするならば、合格する人も、税理士試験を合格するレベルの人とする必要があります。となると、必然的に採点も厳しくなると思います。
 もともと、修了考査の税法は問題量が無茶苦茶多く、とても制限時間内で完答できるレベルではないものです。試験時間は3時間ですが、4時間分の問題量があると言われています。
 従って、受験者の税法の点数はあまり高くないはずですが、最終的には総点数の60%を基準として修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率が合格基準となっていますので、必ずしも税法の点数が芳しくなくても、合格は可能です。また、おそらく総点数の60%を満たしている受験生も多くはないと思いますので、最終的には相対評価で合格を決めているものと推測されます。
 ただし、「満点の40%に満たない科目が1科目でもある場合は、不合格となることがあります。」とされています。いわゆる足切りです。
 修了考査も税理士試験と同じレベルという建前となった現在、前回までよりは、採点を厳しくした可能性があります。もしかしたら、これまでよりも足切りが多くなったのかもしれません。
 このように、今回の修了考査の合格率の大幅な下落は、税法科目の採点が厳しくなり、税理士試験に合格できないレベルの受験生は合格させていませんよ、という税理士会へのアピールではないかというのが私の推測ですが、もちろん、何があったのかは不明ですし、真相は闇の中です。
 いずれにしろ、税法科目は計算が多く、差がつきやすい科目なので受験される方は、しっかりと勉強する必要があります。