1.はじめに
公益法人(公益認定を受けた公益社団法人又は公益財団法人をいいます。(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ)も3月決算の法人が多いため、4月に入ると決算の時期に入ります。
決算が終わると、決算数値を前提に、定期提出書類を作成することになります。
定期提出書類については、いろいろな書類がありますが、今回は経費の配賦にかかるF(2)表の作成にかかる留意点について記載したいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.公益目的事業比率
公益法人では、財務3基準の一つである、公益目的事業比率をクリアしなければなりません。
具体的には、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用について、①公益目的事業の費用÷(①公益目的事業の費用+②収益事業等の費用+③法人会計)という計算式で算出された割合が50%以上となることが必要となります(認定法15条)。
なお、これらの費用は、必ずしも会計上の費用とは限らず、みなし費用(例:特定費用準備資金の積立額)なども含みます。
公益法人は公益目的事業を行うことが目的にもかかわらず、収益事業等や管理費の割合のほうが大きいとなると、本来の目的を達していないことになるためです。そのため、公益目的事業をしっかりと行うようにするために、公益目的事業比率の基準が設けられています。
3.経費の配賦
このように、公益法人の事業において発生した費用は、①公益目的事業の費用、②収益事業等の費用、③法人会計の費用のいずれかの費用とする必要がありますが、必ずしも、①~③のそれぞれにおいて固有に発生する費用とは限りません。
そこで、①~③において共通に発生する費用については配賦計算を行う必要があります。
この配賦計算については、法令で絶対的に定められた基準というものはありません。内閣府から示されているのは、FAQ問Ⅴ-3-②の例示で示された配賦基準ぐらいです。
FAQ問Ⅴ-3-②では、(イ)建物面積比、(ロ)職員数比、(ハ)従事割合、(ニ)使用割合が掲げられています。
なお、FAQ問Ⅴ-3-②では「これ以外に適当と判断した基準があれば、それを採用していただいても構いません。」と記載されています。従って、(イ)~(二)は例示列挙ということになります。
4.決算の実務
公益法人の経理などに携わっている方は、ここまではご存知の方が多いと思います。
しかしながら、決算を終えて、いざF(2)表を作成する段階となると、時間がかかったり、どのように進めればよいのか迷ったりする方が結構多く見られます。また、F(2)の数値にミスが生じ、提出後、行政庁から補正提出を求められるケースもよく見られます。
原因の一つは、F(2)表を作成するときに、基礎資料が存在しないためであることがあげられます。
言い換えると、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、何らかの配賦割合で計算しているのですが、そのときの配賦割合を資料として残していないため、F(2)表を作成するときに、配賦基準はわかっているものの、配賦割合はどのように記載すればよいのかがわからなくなってしまうというものです。
例えば、ある費用は職員数比で配賦することになっているのに、F(2)表で職員数比で配賦計算してみたら、正味財産増減計算書内訳表の数値とあわない、ということもあります。そうなると、正味財産増減計算書内訳表の数値とF(2)表の数値が整合しなくなり、どうすればよいのか困ってしまうことになります。
従って、正味財産増減計算書内訳表を作成するときには、F(2)表の作成も意識して、配賦割合、計算過程、計算結果を資料として残しておくことが必要です。
可能であるならば、正味財産増減計算書内訳表を作成するときに、一緒にF(2)表も作成しておくというのも一つの方法です。
5.直接対応は記載不要
F(2)表の作成の実務として、知っておくべきは「直接対応」については記載はする必要はないというものです。
F(2)表は、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計にまたがって発生する費用について、配賦基準と配賦割合を示す表なので、ある会計に直接的に発生し、配賦計算をする必要がない費用については記載はする必要はありません。
この直接対応まで記載してしまうと、かなりの時間がかかります。逆に言えば、直接対応を記載しなければ、F(2)の作成時間はかなり短くなります。
なお、この点は複数の行政庁と確認済みです。
6.端数処理
F(2)表で困るのは、端数処理の関係で、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の各数値の合計と費用の合計額が1円あわないときがあることです。
そのため、F(2)表を作成したあとは、計算チェックを行う必要があります。
しかしながら、これらを電卓で検算していると時間がかかるし、非常に疲れます。
そこで、おすすめの方法をご紹介します。それは、1の位の数値を足し算し、その数値と合計額の1の位の数値が一致しているかどうかをチェックするというものです。
例えば、何らかの配賦割合により、公益5,122、収益2,569、法人658という結果になったとします。一方合計額は8,350円とします。
それぞれを足すと5,122+2,569+658=8,349となり、1円不足します。
この場合、法人会計あたりで1円を調整する必要がありますが、これをすべて計算しているととても疲れます。
しかしながら、1の位のみを計算すれば、2+9+8=19となり1の位は9となります。これは合計額の8,350の1の位の0とは一致しません。そうすれば、この行は端数処理による不整合があることがすぐに分かります。
このようにしていけば、時間の節約につながるのではないかと思います。
以上、参考としていただけますと幸いです。
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