2018年4月30日月曜日

事業計画と資金繰表~継続企業の前提(1)

1.継続企業の前提
 企業は、将来にわたって事業を継続することを前提としています。これを継続企業の前提といいます。企業が作成する財務諸表も、この継続企業の前提に基づいて作成されます。
 しかしながら、場合によっては、企業の継続性が危うくなる状況も出てくることもあります。これを、会計や監査の用語では「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」といいます。
 今回は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合において、企業がとるべき行動を監査人の視点から解説いたします。具体的には、事業計画と資金繰表の作成です。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.経営者の評価
 最初に、経営者の評価について簡単に記載します。
 まず、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。そして、経営者は、このような事象又は状況に対して対応策をとる必要があります。
 監査人は、経営者がこのような評価を行っているかどうか、またこのような評価についてその妥当性を検討します。

【表1】

3.重要な疑義を生じさせる事象又は状況
 上記の通り、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。
 これについては、監査基準委員会報告書(以下「監基報」)570「継続企業」のA1に例が列挙されています。
 A1では、「財務関係」、「営業関係」、「その他」の3つに分かれています。
 もうひとつ、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」(以下「74号」)の4では、「財務指標関係」、「財務活動関係」、「営業活動関係」、「その他」の4つに分かれています。
 これらは、例示列挙なので、これらが全てというわけではありません。
 実務で、よく判断基準として採用されるのは、おおむね2期連続で営業損失を計上した場合です。これは、74号で例示されている「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス」が根拠となっていると思われます。

4.対応策の策定
 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合、これを解消し、又は改善するための対応策を策定することになります。
 経営者の評価期間は、少なくとも期末日の翌日から12ヶ月間です。これはどういうことかというと、少なくとも期末日の翌日から1年間、企業が存続できるかどうかを評価する必要があるということです。もっとくだけた言い方をすると、企業が1年もつかどうかを評価してほしいということです。 
 このとき、実務上は、対応策しては事業計画と資金繰表を提示していただき、それを監査人が評価します。
 特に、資金繰表は大変重要です。企業が期末日の翌月から1年間もつかどうかということは、資金繰りが1年間もつかどうかということになるからです。
 当然、資金繰表は月別のものを作成することになります。企業には季節的変動もあるので、閑散期に資金が枯渇するという可能性も考えられるからです。また、売掛金や買掛金の締日・払日、手形の期間なども緻密に反映する必要があります。そうしないと、資金の出と入が適切に反映できないため、実現可能性の高い資金繰表を作成できないからです。
 監査人は、このあたりの精緻さもチェックします。

 今回はここまでとします。続きは次回以降といたします。

2018年4月24日火曜日

有形固定資産の除却について

1.概要
 使用されなくなった機械や備品などは処分を行うことになりますが、この処分について会計上は除却として処理することになります。
 今回は、除却に係る論点について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.除却に係る会計処理
(1)期中の減価償却費を計上する処理
 除却を行う場合でも、減価償却が進行中の有形固定資産であれば、原則として期首から除却時までの減価償却費を計上します。
 簿記の教科書に記載されている仕訳はこの方法です。公認会計士試験、税理士試験、簿記検定試験を受験するために勉強された方はこの方法をマスターされていると思います。
 例えば、工具器具備品を除却した場合の仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    減価償却費   ・・・
    固定資産除却損 ・・・

(2)期中の減価償却費を計上しない処理
 一方、実務上、減価償却費を計上しない会計処理を適用している会社もあります。この場合、期首帳簿価額が固定資産除却損となることになります。
 仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    固定資産除却損 ・・・

 結果として期中の減価償却費が固定資産除却損に含まれる形となります。
 財務諸表監査上も、この会計処理も概ね問題なしとして判断しています。ただし、継続適用することが前提です。ある年は、減価償却費を計上し、別の年は減価償却費を計上しないという処理は認められません。
  
3.除却漏れ
 有形固定資産が除却されたら、上記のように会計上にも反映することになりますが、ときどきこの除却の処理が行われていないときがあります。
 原因は、除却の情報が経理部に届いていないためです。そのため、固定資産の除却の仕訳がおこされず、固定資産台帳にも計上されたままということが生じてしまいます。
 これを防止するための一つの方法は、有形固定資産についても実査を行うことです。
 実査を行う場合は、前提として、全ての有形固定資産について、購入時に管理番号を付したシールを添付しておくことです。管理番号は固定資産台帳に付した番号がよいでしょう。そのほうが、照らし合わせやすいからです。
 また、下記4にも記載していますが、現場から除却の情報が経理部にもれなく届く組織作りも必要です。
 なお、私の経験上、支店や店舗に行くと、固定資産台帳に計上されている有形固定資産について、現場の管理者がどこにあるのかを全く把握されていなかったり、そもそも、固定資産台帳に計上されている有形固定資産そのものについて「こんなのあるのですか?」といったように、あるのかないのかも把握されていなかったりするケースがよくありました。
 従って、内部統制の一環として、現場の管理者も固定資産台帳の内容を把握する体制作りが必要です。

4.除却に係る内部統制
 除却については、確実に廃棄処分されることが必要です。廃棄予定のものを、従業員が持ち帰って、リサイクル業者に売却して、金銭を得るというリスクも想定されます。また、パソコンについては情報漏洩が発生しないように、データを確実に消去する必要があります。
 固定資産の除却については、廃棄にかかる稟議書により、廃棄の承認を得てから廃棄処理を行うという流れにする必要があります。
 また、廃棄の際は、廃棄業者によって確実に回収されたことを確かめるために、複数人で立ち会い、さらに廃棄証明を発行してもらうことが望まれます。写真を撮っておくことも有効です。
 そして、廃棄が終わったら、経理部や固定資産台帳の管理者にその旨の情報が届くよう、廃棄証明書など廃棄したことが分かる証憑一式を稟議書のコピーとともに経理部に届けるようにする体制とするとよいでしょう。

2018年4月15日日曜日

定時評議員会招集に関する留意点~社会福祉法人

1.概要
 4月も半ばになりましたが、決算承認理事会や定時評議員会のスケジュールは既に決定されておられるかと思います。
 今回は、定時評議員会の招集に関する留意点を簡潔に記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.理事会の決議
 社会福祉法(以下「法」)45条の9①では「定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」とされており、社会福祉法人においても新制度開始以後6月に開催する法人が多いと思います。
 この定時評議員会を招集するには、理事会評議員会の日時及び場所、議題、議案決議することが必要となります(法45条の9⑩、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)181①)。これは決議事項となりますのでご留意ください。

3.招集通知方法
 評議員会を招集するには、理事は、評議員会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければなりません(法45条の9⑩、一般法182条①)。なお、一定の手続により電磁的方法により通知を発することもできます(法45条の9⑩、一般法182条②)。
 口頭での招集は認められませんのでご留意ください。この点は理事会と異なります。
 なお、書面で招集通知を発する法人が多いと思いますが、このときの招集通知の控えは、法人でも保存しておくことが望まれます。というのは、公益法人の立入検査のときに、本当に書面で通知を発したかどうかの確認が行われたことがあったからです。社会福祉法人の指導監査でも同様にチェックされる可能性がありますので、書面で通知を発したことを立証できるようにしておくとよいと思います。

4.計算書類等の提供
 理事は、定時評議員会の招集の通知に際して、評議員に対し、理事会の承認を受けた計算書類及び事業報告並びに監査報告を提供しなければなりません(法45条の29)。
 また、会計監査人設置社会福祉法人の場合は、会計監査報告も必要です(法45条の29かっこ書き)。
 つまり、招集通知に計算書類等を添付し、一緒に郵送するということです。これは、評議員が評議員会で決算の承認決議を行うにあたり、事前に準備を行う機会を与える必要があるためです。
 この点は、失念しやすいのでご注意ください。公益法人においても失念が多い事例として内閣府から紹介されています。
 なお、この計算書類等についても、上記の通り、招集通知と一緒に提供したことを立証できるようにしておくことが望まれます。

5.修正事項が生じた場合
 社会福祉法施行規則2条の38③では「理事は、計算書類又は事業報告の内容とすべき事項について、定時評議員会の招集通知を発出した日から定時評議員会の前日までの間に修正をすべき事情が生じた場合における修正後の事項を評議員に周知させる方法を当該招集通知と併せて通知することができる。」と規定されています。
 すなわち、計算書類、事業報告といった書類に誤植や誤字脱字があった場合に、定時評議員会の前日までに訂正分あるいは正誤表を通知することができるというものです。
 

平安監査法人バリューアップセミナーWeb申込みについて

【お知らせ】
 平成30年6月6日(水)に開催される平安監査法人バリューアップセミナーのWeb申込みのコーナーが開設されました。
 Web申込みのコーナーはこちらです。
 なお、FAXによる申込みも可能です。

 よろしくお願いいたします。
 

2018年4月8日日曜日

人事異動があった場合の対処法~公益法人

1.人事異動があった場合
 地方公共団体では3月下旬に人事異動の内示がでますが、公益法人に出向する人もいれば、出向が終わって戻る人もいます。また、人事異動により役職が変わり、充て職で就任していた理事をやめることになる人も出てきます。
 もちろん、地方公共団体のみならず、いろいろな団体から充て職で理事についている人も同様です。
 理事のみならず、事務局長など、いわゆる重要な使用人に該当する人も人事異動となるケースが出てきます。
 今回は、このような人事異動があった場合の論点について、公益法人の場合について記載します。ただし、この論点は社会福祉法人についても同様です。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.充て職の理事の場合
(1)充て職とは
 まず、最初に、充て職とは、ある団体の会長や地方公共団体のある役職の人といった特定の地位についている人を、別の法人や団体などの特定の地位に就かせることをいいます。
 充て職は、外郭団体系の公益法人や社会福祉法人などでよく見られます。
 例えば、ある県の外郭団体である公益財団法人の理事長は、その県の知事が就任することになっている、といった具合です。
 このような充て職で公益法人などの理事についている場合、その所属している法人・団体・地方公共団体で人事異動があった場合に、いくつかの問題が出てきます。

(2)新理事の選任方法
 人事異動で理事が変更となった場合、新しく充て職で理事に就任予定となる人の扱いが問題となります。
 この場合、新しく充て職でやってくる人は、自動的に理事になるのかというと、それは不可です。後釜の人は、自動的に理事にはなりません。理事になるには、社員総会又は評議員会での選任決議が必要です(一般社団法人及び一般財団に関する法律(以下「一般法」)63条①、177条)。
 もちろん、社員総会又は評議員会を開催するには、その前に理事会を開催し、社員総会又は評議員会の招集の決定を行う必要があります(一般法38条、181条)。
 そのため、後釜の人を理事に就任してもらうには、理事会、社員総会又は評議員会の決議が必要となりますが、人事異動がどうなるのかは3月下旬にならないとはっきりしないですし、時間や費用もかかるので、3月下旬や4月に入ってからの理事会や社員総会又は評議員会の開催は難しいのが現実です。
 従って、後釜の人は、5月あるいは6月に開催される定時評議員会で理事に選任されるまで待っていただくことが現実的ではないかと思います。
 もっとも、例えば、財団法人で人数が少ない小規模な法人では、決議の省略による方法で選任するという方法もあります。

(3)定数を下回った場合
 (2)のケースは、前任の理事が辞任しても定数を下回らない場合を想定しましたが、前任の理事が辞任したため、法律や定款で定めた定数の下限を下回ってしまう場合もある可能性も想定されます。
 そうなると、早く後任の人を理事にする必要があります。
 なお、理事の数が定数を下回った場合、法令上は、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するとされています(一般法75①、177条)。ただし、その選任の手続をすることを怠ったときは、原則として過料に処するとされています(一般法342条柱書、同条13号)。
 とはいえ、このような事態にならないように、例えば、次のような対策が考えられます。

(イ)仮に、地方公共団体の充て職の人が全員異動となっても、定数を下回らないような定数を定めておく。
(ロ)同業者団体など、団体系の人については、いつ辞任するのかを早めに報告していただく(本人は、その団体の任期はあらかじめわかっているはずなので。)
(ハ)定数は法令上の下限3名に定めておき、同時に理事数に余裕をもたせる

3.事務局長など重要な使用人の場合
 出向元の人事により、事務局長や事業部の部長が異動となることもあります。
 通常の職員であれば、単なる人事異動ですが、事務局長や事業部長となると、以前、「事務局長や施設長などの選任及び解任」で触れたように「重要な使用人」に該当すると考えられます。
 この重要な使用人の選任及び解任」の場合は、理事会の決議が必要となってきます(90④、177条)。
 社員総会や評議員会での選任決議は必要ないので、理事会の決議のみとなります。そのため、時間や手数はかかりますが、この場合、理事会の決議は必要です。
 ただし、困るのは、地方公共団体の人が、人事異動で公益法人の事務局長など重要な使用人になるケースです。この場合、上述のように、3月下旬にならないと誰が来るのかがわからないのが現状です。
 しかも、外郭団体系の公益法人の場合、建前では重要な使用人は理事会決議で決定するはずですが、実際には地方公共団体において決められてしまっています。
 この場合、考えられる方法としては3月下旬に内示が出たら、後釜の人に履歴書、職務経歴書を提出していただき、3月中に決議の省略により理事会を行い、これにより重要な使用人を決定するというものがあります。実質的には追認のような形になりますが、やむを得ないと思います。 

2018年4月5日木曜日

平安監査法人バリューアップセミナー開催のお知らせ

【お知らせ】
 平成30年6月6日(水)に、平安監査法人バリューアップセミナーを開催することになりましたのでお知らせいたします。先日4月の開催とお知らせしましたが変更となりました。ご了承ください。

 会場は、京都のヒロセビル1階(京都市中京区烏丸通二条下ル秋野々町529番地)です。地下鉄烏丸御池駅より北へ約5分です。マンガミュージアムより少し北側です。
 13時より受付開始です。

 私は第1部で「従業員不正を防止するために構築すべき内部統制」を担当します。
 第2部は「2018年税制改正後の事業承継成功のシナリオ」です。こちらは事業承継についてです。

 当日のセミナーでは、実際に起った不正事例をあげながら、その不正が起こった原因とそれを防止するための内部統制について具体的にお話したいと思います。
 
 皆様のご参加をお待ちしております。
 よろしくお願いいたします。



2018年4月3日火曜日

一般債権に係る貸倒実績率の算定

1.一般債権の貸倒見積高の算定
 金融商品会計基準(以下「基準」)27項では、貸倒見積高の算定にあたって、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債権等、の3つに区分しています
 このうち、一般債権とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいいます(基準27項)。
 この一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する、とされています(基準28項)。
 今回は、この「貸倒実績率等」とされているうちの「貸倒実績率」の算定方法について、留意点を記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.貸倒実績率法
 貸倒実績率は、ある期における債権残高を分母とし、翌期以降における貸倒損失額を分子として算定する、とされています(金融商品会計に関する実務指針(以下「実務指針」)110項)。
 すなわち、「翌期以降における貸倒損失額÷ある期における債権残高」となります。
 このように算定した貸倒実績率を債権金額に乗じ、貸倒見積高を算定します。
 
3.個別引当による貸倒引当金繰入額
 この分子の貸倒損失額の範囲ですが、まず実際に貸倒れた債権にかかる損失額が入ります。これは文字通りなので問題はないと思います。
 しかし、この分母の翌期以降における貸倒損失額に、貸倒懸念債権や破産更生債権等に係る個別貸倒引当金繰入額を含めて計算するのかどうかという問題があります。
 この点について、金融商品会計に関するQ&A(日本公認会計士協会会計制度委員会 以下「Q&A」)では、Q41で「貸倒実績率の算定において、分子の貸倒損失額に、個別引当による貸倒引当金繰入額を含めてもよいでしょうか。」というQが出ています。
 これについて、このQ&Aでは、まず、このような貸倒引当金繰入額は見積もりである以上、まだ損失として実現していないことなどの理由から実務指針上では、貸倒実績率の算定上分子に含めるかどうか明確ではない、としながらも、

「しかし、専門家による評価など十分に精度の高い担保及び保証の回収見込額に基づいて引き当てられているものや、損失として早々に実現する可能性が高いものについては、これを貸倒実績率の分子に含めて算定することは差し支えなく、また、それが実態をより反映することになるものと考えられます。

 という回答を記載しています。
 このQは「含めてよいか」という質問なので、一定のものについては「含めても差し支えはない」という回答になっています。

4.個別引当による貸倒引当金繰入額は含めなければならないのか
 気になるのは、それでは一定の個別引当による貸倒引当金繰入額は分子に含めなければならないのかどうか、という点です。
 この点については、上述のように「含めなければならない」とは記載していません。
 しかしながら、「それが実態をより反映することになるものと考えられます。」と記載されていることから、「含めなければならない」と記載はされていないものの、「含めることが望まれる」というニュアンスに読み取れます。
 では、実務上はどうかというと、私の経験上、そもそも、このQ&Aの存在を知っている会社は多くはないという印象です。そのため、会社の計算で、個別引当による貸倒引当金繰入額を分子の貸倒損失額に入れている会社は多くはないです。
 一方、財務諸表監査を行う経験豊富な公認会計士は、このQ&AのQ41を根拠に、分子の貸倒損失額に、この個別引当による貸倒引当金繰入額を入れる必要があるという主張をしてきます。
 その結果、会社側も概ね「確かにそうだ」ということで、最終的には、監査サイドの主張を受け入れ、分子の貸倒損失額に個別引当による貸倒引当金繰入額を含めて、貸倒実績額を計算するという流れになることが多いようです。
 だからというわけではありませんが、結論としては、一定の個別引当による貸倒引当金繰入額は、実態を適切に反映するために、分子の貸倒損失額に含める必要がある、というのが妥当ではないかと思います。