企業は、将来にわたって事業を継続することを前提としています。これを継続企業の前提といいます。企業が作成する財務諸表も、この継続企業の前提に基づいて作成されます。
しかしながら、場合によっては、企業の継続性が危うくなる状況も出てくることもあります。これを、会計や監査の用語では「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」といいます。
今回は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合において、企業がとるべき行動を監査人の視点から解説いたします。具体的には、事業計画と資金繰表の作成です。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.経営者の評価
最初に、経営者の評価について簡単に記載します。
まず、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。そして、経営者は、このような事象又は状況に対して対応策をとる必要があります。
監査人は、経営者がこのような評価を行っているかどうか、またこのような評価についてその妥当性を検討します。
【表1】
3.重要な疑義を生じさせる事象又は状況
上記の通り、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、経営者はこれを識別する必要があります。
これについては、監査基準委員会報告書(以下「監基報」)570「継続企業」のA1に例が列挙されています。
A1では、「財務関係」、「営業関係」、「その他」の3つに分かれています。
もうひとつ、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」(以下「74号」)の4では、「財務指標関係」、「財務活動関係」、「営業活動関係」、「その他」の4つに分かれています。
これらは、例示列挙なので、これらが全てというわけではありません。
実務で、よく判断基準として採用されるのは、おおむね2期連続で営業損失を計上した場合です。これは、74号で例示されている「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス」が根拠となっていると思われます。
4.対応策の策定
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合、これを解消し、又は改善するための対応策を策定することになります。
経営者の評価期間は、少なくとも期末日の翌日から12ヶ月間です。これはどういうことかというと、少なくとも期末日の翌日から1年間、企業が存続できるかどうかを評価する必要があるということです。もっとくだけた言い方をすると、企業が1年もつかどうかを評価してほしいということです。
このとき、実務上は、対応策しては事業計画と資金繰表を提示していただき、それを監査人が評価します。
特に、資金繰表は大変重要です。企業が期末日の翌月から1年間もつかどうかということは、資金繰りが1年間もつかどうかということになるからです。
当然、資金繰表は月別のものを作成することになります。企業には季節的変動もあるので、閑散期に資金が枯渇するという可能性も考えられるからです。また、売掛金や買掛金の締日・払日、手形の期間なども緻密に反映する必要があります。そうしないと、資金の出と入が適切に反映できないため、実現可能性の高い資金繰表を作成できないからです。
監査人は、このあたりの精緻さもチェックします。
今回はここまでとします。続きは次回以降といたします。