1.はじめに
前回は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が生じた場合、継続企業の前提に関して経営者は評価を行い、対応策を策定する必要がある旨を記載しました。
今回は、経営者による対応策の検討について記載します。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.重要な不確実性
経営者が、貸借対照表日において、企業が将来にわたつて事業活動を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という。)に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であつて、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する注記をしなければなりません(財務諸表規則8条の27)。
監査人側も、経営者の評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを確かめなければなりません(監査基準第三 三8)。
言い方を変えると、経営者が策定した対応策によって重要な不確実性が解消できると認められれば、継続企業の前提に関する注記は不要ということです。
3.「重要な不確実性が認められる」とは
この「重要な不確実性」という用語については、はっきりとした定義が見当たらず、諸説あるものと思われますが、私自身は、「経営者が策定した対応策における、ある前提がなくなれば、その対応策が実現できなくなり、企業の継続性が成り立たなくなる状態となる状況」と考えています。
企業の継続性が成り立たなくなるとは、経営が破綻するということですが、より具体的に言うと、資金繰りがショートするということです。
すなわち、1年間資金をもたすために、企業は様々な事業計画を立てて、それに基づいて資金繰り計画を作成しますが、これらの事業計画が全て順調に進むとは限りません。というのは、事業計画における様々な対応策は、相手があることが多いためです。例えば、途中で相手と破談になるなど、相手方の決定によって計画が頓挫するリスクがあります。
言い換えると、企業が作成した資金繰表は、様々な事業計画が前提となって作成されていますが、その前提が崩れると資金がショートするような場合は、重要な不確実性が残っている状況といえると考えています。
この前提は一つとは限りません。複数あることのほうが多いでしょう。この複数の前提のうち、一つでも成り立たなくなるなれば資金がショートするというのであれば、重要な不確実性が認められる対応策であると考えています。
今回はここまでとします。続きは次回以降といたします。
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