2018年4月24日火曜日

有形固定資産の除却について

1.概要
 使用されなくなった機械や備品などは処分を行うことになりますが、この処分について会計上は除却として処理することになります。
 今回は、除却に係る論点について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.除却に係る会計処理
(1)期中の減価償却費を計上する処理
 除却を行う場合でも、減価償却が進行中の有形固定資産であれば、原則として期首から除却時までの減価償却費を計上します。
 簿記の教科書に記載されている仕訳はこの方法です。公認会計士試験、税理士試験、簿記検定試験を受験するために勉強された方はこの方法をマスターされていると思います。
 例えば、工具器具備品を除却した場合の仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    減価償却費   ・・・
    固定資産除却損 ・・・

(2)期中の減価償却費を計上しない処理
 一方、実務上、減価償却費を計上しない会計処理を適用している会社もあります。この場合、期首帳簿価額が固定資産除却損となることになります。
 仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】(間接法の場合)
(借方)減価償却累計額 ・・・ (貸方)工具器具及び備品 ・・・
    固定資産除却損 ・・・

 結果として期中の減価償却費が固定資産除却損に含まれる形となります。
 財務諸表監査上も、この会計処理も概ね問題なしとして判断しています。ただし、継続適用することが前提です。ある年は、減価償却費を計上し、別の年は減価償却費を計上しないという処理は認められません。
  
3.除却漏れ
 有形固定資産が除却されたら、上記のように会計上にも反映することになりますが、ときどきこの除却の処理が行われていないときがあります。
 原因は、除却の情報が経理部に届いていないためです。そのため、固定資産の除却の仕訳がおこされず、固定資産台帳にも計上されたままということが生じてしまいます。
 これを防止するための一つの方法は、有形固定資産についても実査を行うことです。
 実査を行う場合は、前提として、全ての有形固定資産について、購入時に管理番号を付したシールを添付しておくことです。管理番号は固定資産台帳に付した番号がよいでしょう。そのほうが、照らし合わせやすいからです。
 また、下記4にも記載していますが、現場から除却の情報が経理部にもれなく届く組織作りも必要です。
 なお、私の経験上、支店や店舗に行くと、固定資産台帳に計上されている有形固定資産について、現場の管理者がどこにあるのかを全く把握されていなかったり、そもそも、固定資産台帳に計上されている有形固定資産そのものについて「こんなのあるのですか?」といったように、あるのかないのかも把握されていなかったりするケースがよくありました。
 従って、内部統制の一環として、現場の管理者も固定資産台帳の内容を把握する体制作りが必要です。

4.除却に係る内部統制
 除却については、確実に廃棄処分されることが必要です。廃棄予定のものを、従業員が持ち帰って、リサイクル業者に売却して、金銭を得るというリスクも想定されます。また、パソコンについては情報漏洩が発生しないように、データを確実に消去する必要があります。
 固定資産の除却については、廃棄にかかる稟議書により、廃棄の承認を得てから廃棄処理を行うという流れにする必要があります。
 また、廃棄の際は、廃棄業者によって確実に回収されたことを確かめるために、複数人で立ち会い、さらに廃棄証明を発行してもらうことが望まれます。写真を撮っておくことも有効です。
 そして、廃棄が終わったら、経理部や固定資産台帳の管理者にその旨の情報が届くよう、廃棄証明書など廃棄したことが分かる証憑一式を稟議書のコピーとともに経理部に届けるようにする体制とするとよいでしょう。