2019年4月22日月曜日

公益法人~事業報告等に係る提出書類作成における留意事項

1.はじめに
 3月決算の公益法人(公益認定を受けた一般社団法人又は一般社団法人をいいます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条ⅰ~ⅲ))は、決算書を作成した後、事業報告等に係る提出書類の作成を行うことになります。
 今回は、別紙4における別表の作成上の留意点を記載します。
 ただし、留意点については、いろいろとあるため、誤りやすい点のうち重要なものについて記載したいと思います。

2.別表A
(1)A(1)~過去に生じた剰余金の加算
 別表A(1)での留意点は、過去に収支相償を満たさなかった場合に生じた剰余金がある場合、経常収益計の2欄に加算することを忘れないようにする点です。
 この剰余金は正味財産増減計算書には出てこないので、別途、計算シートを作成して管理しておく必要があります。過去の別表A(1)をひっくり返して、その場で電卓で計算すると、誤る可能性が高くなるので、ひとまとめにしておくほうがよいと思います。

(2)A(3)~利益の繰入額は1円未満端数切り上げ
 収益事業等から生じた利益の繰入額を計算するとき、通常、1円未満の端数が生じると思います。この1円未満の端数の扱いですが、これは切り上げになります。(内閣府の手引きP32参照)
 また、ここに至るまでの計算(管理費の按分、按分後の費用の控除)では、端数には手を付けず、そのまま計算します。その結果算出された収益事業等から生じた利益に50%を乗じた数値においてのみ1円未満の端数切り上げという処理を行います。
 この点は間違いが多いところです。ここを四捨五入、切り上げといった処理をしてしまうと、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額とA(3)で計算した結果に1円の差異が生じるなど、何かと具合が悪くなります。
 従って、正味財産増減計算書内訳表の他会計振替額を計算するときは、エクセルでワークシートを作成して計算過程をしっかりと残しておくことが望まれます。

3.別表B
(1)別表B(5)での特定費用準備資金積立額・取崩額の記載忘れ
 別表B(5)は公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の費用を計算し、公益目的事業比率を計算する計算シートですが、Ⅴ、Ⅵの特定費用準備資金の当期積立額、当期取崩額の記載漏れに注意する必要があります。また、取崩額の欄はマイナス額で記載する点にも注意する必要があります。

 なお、旧システムでは、別表B(1)がシステムに組み込まれていたのに対して、B(5)はエクセルだったため、計算結果がリンクしていませんでした。しかし、新システムではB(1)、B(5)どちらもエクセルになり、計算結果もリンクするようになったので、B(5)を作成すれば、B(1)も自動的に作成されるようになりました。

4.別表C
(1)別表C(2)~財産目録と一致させる
 別表C(2)では公益目的保有財産や特定費用準備資金の帳簿価額について記載するシートですが、名称、場所・物量、並び順は財産目録と一致させる必要があります。行政庁は財産目録との一致状況を必ず見ています。言い換えると、財産目録は、別表C(2)のためにあるといってもよいでしょう。従って、財産目録もC(2)を意識して、不整合が生じないように作成する必要があります。また、財産目録には、共用割合を明記しておく必要があります。
 なお、新システムでは、資産取得資金、特定費用準備資金は様式チェックにより自動反映する方式となりました。

(2)別表C(1)~対応負債の計算は有利選択
 別表C(4)では4に「対応負債の額の計算」という欄があります。
 この対応負債の計算方法には2種類ありますが、4のタイトルの横にはカッコ書きで「(次の2つの方法のうち、いずれかを選択し、○を記載してください)」と記載されていますので、どちらか有利な方を選ぶことになります。
 この選択は、特に会計に携わっている方だと「継続適用」しないといけないのでは、と思ってしまいがちですが、これは選択となります。
 ときどき、施行規則22条7項の計算式と22条8項の計算式を入れ替えると、従前では遊休財産額の保有上限額を超過してしまっていたものが、セーフになるケースがあります。