公益法人及び一般社団法人等も3月決算の法人が多く、多くは6月に社員総会や評議員会が開催されていますが、監事について、現監事の重任や新監事の選任を予定されている法人も多いかと思います。
監事はこの社員総会又は評議員会の決議によって選任されます(一般社団法人及び一般財団に関する法律(以下「一般法」)63条、197条)。重任の場合も、当然のことながら、社員総会又は評議員会の決議によって選任されます。
今回は、この監事の選任手続の留意点について記載します。
この論点は、社会福祉法人についても同様なので、一緒に記載します。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.監事の選任に関する監事の同意
上記の通り、公益法人及び一般社団法人等では、社員総会又は評議員会で、社会福祉法人では評議員会で監事が選任されます。
そのため、社員総会や評議員会を開催するときに監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出する必要がありますが、この監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出するには、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません(一般法72条①、197条、社会福祉法(以下「社福法」)43条③)。なお、社福法43条③は一般法72条を準用する旨の規定です。
これは、監事の地位の安定性を保つためです。例えば、理事が現監事を煙たがり、自分にとって都合のよい監事を選任して監事の構成を変えてしまおうとすることも想定されます。そうなると、独立的な立場で理事の職務執行の監査を行うという監事の意義が失われる恐れがあります。すなわち、理事の暴走が助長され、ガバナンスが効かなくなる恐れがあるということです。
そこで、法は監事の選任前に、現監事の同意により理事の恣意的な監事構成への介入を防ぎ、ガバナンスを保とうとしているというわけです。
従って、この監事の同意については、監事の同意書を書面でもらっておく必要があります。これは、就任承諾書とは異なりますので注意が必要です。
3.監事の同意書
この監事の同意書ですが、埼玉県久喜市の公式ホームページ内の「社会福祉法人の運営について」という社会福祉法人向けのページに、Word版でひな形が掲載されています。
この久喜市のひな形をもとに、公益社団法人・一般社団法人、公益財団法人・一般財団法人のひな形を作成してみました。
なお、久喜市のHPにも記載されているように、ひな形に記載されている内容が含まれていれば形式はどのようなものでも結構です。
(1)公益社団法人・一般社団法人の場合
なお、社会福祉法人向けにつきましては、上記久喜市のHPを御覧ください。
4.同意書を入手するタイミング
監事の同意書を入手するタイミングですが、久喜市のひな形では「同意書を得る時期は評議員会の前であればよいですが、理事会での審議をスムーズにするためにも可能であれば理事会前に事前に得ておくのも1つの方法です。理事会の場で終了後に徴しても構いません。」と記載されています。
私見では、理事会前に同意書にサインしていただき、理事会で報告するのがよいのではないかと思います。
5.社員総会、評議員会での提示
この同意書は、社員総会や評議員会で監事の選任に関する議案を提案するときに一緒に提示することになります。
6.同意を得ずに監事の選任決議を行った場合
監事の選任について、監事の同意を得ずに社員総会や評議員会で選任決議を行った場合、「社員総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」に該当しますので、社員総会又は評議員会の決議の取消し事由となります(一般法266条①一、社福法45条の12)。
仮に、決議の取消しとなった場合、遡及的に無効となります。すなわち、監事の選任決議は無効となります。従って、注意が必要です。
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