事業者とは個人事業者および法人をいいますので(法2条①四)、公益法人であっても資産の譲渡等を行う場合は納税義務者となります。
今回は、公益法人における消費税の留意点について記載します。なお、公益法人とは公益社団・財団法人、一般社団・財団法人を指すこととします。
1.不課税取引と非課税取引
(1)課税の要件
これは公益法人に限らず、他の法人でも共通するのですが、非課税取引と不課税取引の区分が曖昧となっていることがよく見られます。
まず、消費税の課税対象ですが、これは国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等となります。そのため、課税要件は①国内取引、②事業者が事業として行う、③対価を得て行う、④資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供、の4つとなります。この4つをすべて満たした取引が消費税の課税対象となります。
(2)不課税取引
言い換えると、この4要件のうち1つでも満たさない取引は、課税要件を満たさないので消費税は課税されません。このような取引を不課税取引といいます。
公益法人では収益において、以下の不課税取引がよく見られます。
(イ)受取補助金
(ロ)受取寄付金
(ハ)受取会費
(ニ)受託金
これらは、対価として支払われるものではないので、③の要件を満たしません。従って、課税の要件を満たしませんので、不課税取引となります。
(3)非課税取引
これに対して、非課税取引とは、上記の課税の要件4つを満たすものの、消費として課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課さない取引をいいます。
例えば、土地の譲渡及び貸付けは、消費という性質という面で課税対象になじまないので原則として非課税取引となっています。
また、社会保険医療の給付、介護保険サービスの提供に係る取引、社会福祉法に定める第1種社会福祉事業、第2種社会福祉事業などに係る社会福祉サービスの提供といった取引は社会政策的配慮から消費税を課さないこととしています。
公益法人においては、非課税取引として特徴的なものはありませんが、以下の取引に注意する必要があります。
(イ)受取利息
(ロ)投資有価証券の売却
(ロ)の投資有価証券の売却は、どちらかというと財団法人で発生しやすい取引です。
2.不課税取引と非課税取引を分ける理由
不課税取引も非課税取引も消費税が課されないのだから、どちらも一緒ではないか、区分する必要があるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、この区分は重要です。なぜかというと、課税売上割合に影響が出てくるからです。
課税売上割合は、分子を課税期間中の課税売上高、分母を課税期間中の総売上高として計算します(どちらも税抜)。
分母の総売上高は国内の資産の譲渡等の対価の額の合計額となります。また、分子の課税売上高とは、国内の課税資産の譲渡等の対価の額の合計額となります。
一見、同じように見えますが、分子には非課税売上が含まれないのに対して、分母には非課税売上が含まれるという違いがあります。
一方、不課税取引はどうかというと、不課税取引は分母にも分子にも入りません。
そのため、不課税取引と非課税取引を区分しておかないと、不課税取引にもかかわらず、課税売上割合の計算の分母や分子に混入してしまい、適正な課税売上割合を計算できなくなってしまいます。従って、この課税売上割合を適正に計算できないと、課税仕入に係る消費税額も適切に計算できなくなるため、結果として納付税額が正しく計算できなくなってしまうことになります。
このように、消費税の納付税額を適正に計算するために、不課税取引と非課税取引の区分は特に売上の面で重要となります。
続きは次回以降といたします。