1.はじめに
前回、建設仮勘定を使用する場面では、会計処理の誤りが多く見られる、という話をしました。
今回は、その誤りの発生を防止するための対策をご紹介したいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.費用処理してしまう誤りへの対策案
(1)概要
よく見られるのは、建設に係る支出を、本来は建設仮勘定で処理すべきところを、費用処理してしまう誤りです。これは、社会福祉法人など非営利法人でよく見られます。
原因の一つとしては、建物の建設は頻繁に行われるわけではないので、経理担当者が建設仮勘定による処理に慣れていないことがあげられます。
本来であれば、内部統制のデザインの一つとして、例えば、経理担当者は日商簿記2級以上の資格を有する者にする、各種研修会の受講を義務付ける、経理雑誌の購読を行う、といったことも必要です。しかしながら、多くの公益法人、社会福祉法人、医療法人といった非営利法人では、まだそこまでの体制が整っていないのが現状です。
もちろん、経理担当者がそれなりの知識を有していても、誤りやすい分野でもあります。
そこで、この誤りを防止するための対策案をあげてみます。
(2)支出の範囲の把握
まず、あらかじめ建設に係る支出の範囲と見積額を把握することがあげられます。
建設を行うためには、設計から始まりますが、建設計画に基づいて設計から工事完了までに至るすべての作業と見積額を一覧にして把握します。
そして、この一覧をもとに支払予定表を作成し、前もって支払時期や支払予定額を把握します。期中において、その時点の建設仮勘定の額と支払予定額を比較して大きな差異がないかどうかをチェックしていけば、建設仮勘定への集計漏れは防ぐことができます。
監査において、よく見られたのは設計や測量など工事に入る前に発生する支出を費用処理する誤りでした。また、工事業者への前払金も建設仮勘定で処理しますが、時々この前払金も費用処理してしまう誤りも見られました。
しかしながら、このようにすれば、建設仮勘定にすべきところを費用処理する誤りも防止できるでしょう。
(3)上長のチェック
次に必要なのは、やはりというか上長のチェックです。
振替伝票のチェックのときに、上長は建設に係る支出が建設仮勘定で会計処理されているかどうかをチェックすることが必要です。
また、上に記載したように、建設仮勘定の額と支払予定額を比較して、建設仮勘定への計上漏れがないかどうかも上長が確かめる必要があります。
3.建設仮勘定の振替
建設仮勘定は、当該建物等が完成した時点で建設仮勘定に振り返る必要がありますが、この振替を失念していたり、タイミングを誤ったりするというミスも時々見受けられます。
建設仮勘定の振替を忘れてしまうと、減価償却の開始が遅れる可能性ができます。そうなると、費用の計上漏れが発生してしまいます。
通常は建物が完成したら、ほぼ同時期に稼働するでしょうから、その月から減価償却を開始します。
このあたりの対策となると、支払予定表に、工事が完了して建物等が完成したら本勘定に振り替えるということを明記しておいて、常に意識しておくということが一つの手段として考えられます。
2018年11月3日土曜日
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