2018年12月3日月曜日

大手電機メーカー元部長の不正発注

1.事件のあらまし
 平成30年11月27日なので少し前の話ですが、大手電機メーカーの開発部門の元部長が架空発注により4億4千万円を着服したとして逮捕されたというニュースがありました。
 もともと、平成29年に社内調査で不正が発覚し、元部長は懲戒解雇されていましたが、警視庁が捜査し逮捕に至ったものです。

 具体的な手口は、会社のページによると、この元部長が「取引先の当時取締役の協力を得て」、約8年間、「正規の取引を装って、試作品等の不正発注を繰り返し」たということです。これにより、元部長は「代金を自らに還流させ私的に流用した」ということです。
 会社のページでは「不正発注」と記載されており、マスコミでは「架空発注」と記載されています。こちらでは真実を知ることはできませんが、今回は「架空発注」ということで進めたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.架空取引を防止するための内部統制
 以前、「架空取引に係る内部統制」というタイトルで架空取引を防止するための内部統制を説明しました。
 このときも、同様に架空取引による事件が発生していました。
 大手電機メーカーなので、内部統制のデザイン(仕組み)はできていたのだと思いますが、このような架空取引の発生はよく発生します。ニュースにならない不正も世の中にはかなりあるのかもしれません。

 架空取引や水増し取引を防止するためには、

 ①発注者と発注担当者は別の人にする
 ②納品時の検収担当者は発注者とは別の人にする。
 ③支払いの担当者は、発注者や検収担当者とは別の人にする。
 ④支払い担当者は、発注書、納品書、請求書を照合する。
 
 という内部統制の仕組みを構築することが効果的ですが、大手電機メーカーであれば、このような仕組みは設けていると思います。
 今回、特徴的なのは「試供品等」を発注したという点です。色々なケースがあると思いますが、試供品となると、おそらく複数の会社の試供品を購入して、比較検討するでしょうから、相見積もりは行っていないと思います。そうなると、取引先が設定した価額で購入することになります。とはいえ、これはしょうがないと思います。
 
 ただ、それでも検収を発注依頼者とは別の人にして納品書に押印し、支払担当者は発注書、納品書、請求書を照合すれば、8年間という長期間の架空発注などの不正は防止できるのでは、と思うのですが、残念ながらそうはなりませんでした。
 今回は、開発部門ということのようなので、開発部門の中の内部統制に不備があったのかもしれません。

 架空取引の場合、相手先の協力があることが多く、実際、今回も取引先の取締役の協力があったということですが、考えられる可能性としては、このようなものかもしれません。

①取引先の取締役が、架空の納品書を元部長宛に送る。
②その納品書に元部長が、検収担当者の検収印を不正に使用し、押印する。
③開発部門から、発注書と納品書が支払担当者に送られる。
④取引先の取締役が架空の請求書を会社に送る。
⑤支払担当者は、照合するものの不正に気づかずに支払をしてしまう。

 仮に、上記の場合だと、検収印を不正に使用させないことが重要です。
 実際に、従業員の個人の印鑑が無断で使用され、不正に利用されたというケースがあります。従って、印鑑の管理は非常に重要です。
 
 他にももっと巧妙な手段もあるのだと思いますが、今回はここまでとします。



 
 


0 件のコメント: