2018年7月7日土曜日

キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(2)

1.「収入・支出」と「収益・費用」の違い
 キャッシュ・フロー計算を行うにあたっては、「収入・支出」「収益・費用」の違いを知っておくことが重要です。
 一見すると「収入・支出」と「収益・費用」は何となく同じような感じがしますが、これらは異なります。例えば、前受金のように、収入(キャッシュイン・フロー)があったからといって収益になるとは限りませんし、有形固定資産の購入のように支出(キャッシュアウト・フロー)があったからといって費用になるとは限りません。
 このように、「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にはタイミングのズレが生じます。キャッシュ・フロー計算書はこのタイミングのズレを調整し、「収益・費用」を「収入・支出」の関係にする計算書です(間接法の場合)。

2.タイミングのズレが生じる理由
 「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にタイミングのズレが生じるのは、現行の会計が発生主義会計で行われているためです。
 例えば、100万円の売上があり、それを掛売上とした場合、

(借方)売掛金 100 (貸方)売上 100

 という仕訳をおこします(単位は万円)。
 これは発生主義会計による仕訳です。これが現金主義会計であれば、売上時点で100万円の収入はないので、売上の認識は行いません。

 もう一つ例を挙げると、100万円の現金払いで機械を購入した場合、

(借方)機械 100 (貸方)現金 100

 という仕訳をおこします(単位は万円)。
 現金主義会計であれば、100万円の支出があったため、機械の購入時点で100万円の費用を計上することになります。
 しかしながら、発生主義会計のもとでは、購入時点で全額を費用認識は行いません。費用は減価償却費という形で、耐用年数期間に渡って費用計上します。

 このように、現行の会計は発生主義で行われているため、「収入・支出」の認識と「収益・費用」の認識にタイミングのズレが生じます。
 ただし、これはあくまでタイミングのズレであって、収益は必ず収入に結びつきますし、費用も必ず支出に結びつきます。
 実は、企業会計原則では、第二 一Aで「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」と定めています。
 発生主義会計を行っていると、「収入・支出」の概念を忘れがちですが、「収益・費用」は「収入・支出」と結びついているということを知っておく必要があります。

3.貸借対照表と損益計算書の関係
 我が国の会計基準は、利益計算において長らく収益費用アプローチと呼ばれる方法をとってきました。その下では、貸借対照表は損益計算の連結環と呼ばれます。
 詳細は割愛しますが、この場合、貸借対照表は「収入・支出」と「収益・費用」のズレをおさめているものというイメージでよいと思います。
 例えば、売掛金は収益として認識しているものの、収入はまだありませんので「収益・未収入」となります。機械などの有形固定資産は支出したものの費用にはなっていませんので「支出・未費用」です。このあたりはシュマーレンバッハの貸借対照表論が参考になります。

4.間接法の考え方
 前回、間接法に触れましたが、間接法は当期純利益に貸借対照表項目や非資金損益などを加算減算して営業活動によるキャッシュ・フローを算定する方法です。
 間接法では、当期純利益という損益計算書項目に、売掛金の増減額や買掛金の増減額の貸借対照表項目が加算減算されるので、初めての人だと「何で当期純利益に貸借対照表科目を足したり引いたりするのか」「売掛金が増加したとき何で当期純利益から減算するのか」と思われるかもしれません。
 しかしながら、これまでみてきたように、貸借対照表は「収入・支出」と「収益・費用」のズレをおさめているものと見ることができますので、貸借対照表科目の増減を当期純利益に加算減算することで、当期純利益から営業活動によるキャッシュ・フローを算出することができます。
 例えば、売掛金が期首から期末にかけて20万円増加したとします。売掛金は「収益・未収入項目」ですから、損益計算では収益として認識しているものの、キャッシュ・フロー計算では未収入なので、収益と収入に20万円のズレが生じているということを表しています。この場合だと、収益が収入よりも20万円多いので、収益の額を収入の額にするには、収益から20万円減算することが必要です。 
 従って、間接法では、売掛金が増加した場合、当期純利益から減算するというわけです。
 以下に、利益計算とキャッシュ・フロー計算の関係を図表で記載しました。
 参考としていただけますと幸いです。



 

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