2018年3月25日日曜日

監事選任における留意点~公益法人及び一般社団法人等、社会福祉法人

1.監事の選任
 公益法人及び一般社団法人等も3月決算の法人が多く、多くは6月に社員総会や評議員会が開催されていますが、監事について、現監事の重任や新監事の選任を予定されている法人も多いかと思います。
 監事はこの社員総会又は評議員会の決議によって選任されます(一般社団法人及び一般財団に関する法律(以下「一般法」)63条、197条)。重任の場合も、当然のことながら、社員総会又は評議員会の決議によって選任されます。
 今回は、この監事の選任手続の留意点について記載します。
 この論点は、社会福祉法人についても同様なので、一緒に記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.監事の選任に関する監事の同意
 上記の通り、公益法人及び一般社団法人等では、社員総会又は評議員会で、社会福祉法人では評議員会で監事が選任されます。
 そのため、社員総会や評議員会を開催するときに監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出する必要がありますが、この監事の選任に関する議案を社員総会や評議員会に提出するには、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません(一般法72条①、197条、社会福祉法(以下「社福法」)43条③)。なお、社福法43条③は一般法72条を準用する旨の規定です。
 これは、監事の地位の安定性を保つためです。例えば、理事が現監事を煙たがり、自分にとって都合のよい監事を選任して監事の構成を変えてしまおうとすることも想定されます。そうなると、独立的な立場で理事の職務執行の監査を行うという監事の意義が失われる恐れがあります。すなわち、理事の暴走が助長され、ガバナンスが効かなくなる恐れがあるということです。
 そこで、法は監事の選任前に、現監事の同意により理事の恣意的な監事構成への介入を防ぎ、ガバナンスを保とうとしているというわけです。
 従って、この監事の同意については、監事の同意書を書面でもらっておく必要があります。これは、就任承諾書とは異なりますので注意が必要です。

3.監事の同意書
 この監事の同意書ですが、埼玉県久喜市の公式ホームページ内の「社会福祉法人の運営について」という社会福祉法人向けのページに、Word版でひな形が掲載されています。
 この久喜市のひな形をもとに、公益社団法人・一般社団法人、公益財団法人・一般財団法人のひな形を作成してみました。
 なお、久喜市のHPにも記載されているように、ひな形に記載されている内容が含まれていれば形式はどのようなものでも結構です。

(1)公益社団法人・一般社団法人の場合


(2)公益財団法人・一般財団法人の場合
    


 なお、社会福祉法人向けにつきましては、上記久喜市のHPを御覧ください。

4.同意書を入手するタイミング
 監事の同意書を入手するタイミングですが、久喜市のひな形では「同意書を得る時期は評議員会の前であればよいですが、理事会での審議をスムーズにするためにも可能であれば理事会前に事前に得ておくのも1つの方法です。理事会の場で終了後に徴しても構いません。」と記載されています。
 私見では、理事会前に同意書にサインしていただき、理事会で報告するのがよいのではないかと思います。

5.社員総会、評議員会での提示
 この同意書は、社員総会や評議員会で監事の選任に関する議案を提案するときに一緒に提示することになります。
 
6.同意を得ずに監事の選任決議を行った場合
 監事の選任について、監事の同意を得ずに社員総会や評議員会で選任決議を行った場合、「社員総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」に該当しますので、社員総会又は評議員会の決議の取消し事由となります(一般法266条①一、社福法45条の12)。
 仮に、決議の取消しとなった場合、遡及的に無効となります。すなわち、監事の選任決議は無効となります。従って、注意が必要です。

2018年3月17日土曜日

公益法人の特徴(2)~行政庁から人事異動される方へ

1.一般法人と公益法人の関係
(1)公益法人と一般社団法人等との関係
 公益法人には公益社団法人と公益財団法人の2種類があります。一方で、一般社団法人と一般財団法人という社団法人と財団法人もあります。
 4種類あるので、これらがどのように異なるのかが、最初はわかりにくいかもしれません。
 まず、これらの関係ですが、まず一般社団法人と一般財団法人という法人があり、そのうち公益認定を受けたものが公益社団法人、公益財団法人という関係にあります。 
 これらの関係を表にしたものが【表1】です。

     
【表1】

(2)条文での記載内容
 上記の関係について、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下「認定法」)では以下のように記載しています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 公益社団法人 第四条の認定を受けた一般社団法人をいう。
二 公益財団法人 第四条の認定を受けた一般財団法人をいう。
三 公益法人 公益社団法人又は公益財団法人をいう。

(公益認定)
第四条 公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。

 言ってみれば、一般社団法人と一般財団法人という大きなくくりがあり、その中に公益認定を受けた公益社団法人と公益財団法人がある、という位置づけになります。


2.適用される法令
(1)法律、政令、府省令
 公益法人の運営においては、まず以下の法律が適用されます。

①一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
②公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律

 なお、上記①②に加えて③「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」をあわせて「公益三法」と呼ばれることもあります。ただし、③は公益法人の制度改正において移行法人について定めたものなので、公益法人では使用しません。

 さらに、上記①②の法律の下に政令と府省令があります。政令は「施行令」、府省令は「施行規則」という呼び方をします。 

(2)公益法人と法令の適用関係
 上記1では「一般社団法人と一般財団法人という法人があり、そのうち公益認定を受けたものが公益社団法人、公益財団法人という関係」という関係性を述べました。
 そうなると、公益法人において、上記①②の適用関係も明らかとなります。すなわち、まず公益法人においても「①一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が適用されます。まず、これが基本的な位置づけとなります。
 次に、一般社団法人及び一般財団法人では①のみとなりますが、公益法人では②も適用されます。
 ①では、法律名もそうですし、条文においても「一般社団法人」、「一般財団法人」という言葉が出てくるので、公益社団法人や公益財団法人に適用される法律ではないのではないか、と思ってしまうかもしれません。
 しかしながら、上記1でみたように、公益法人も、まずは一般社団法人又は一般財団法人であるという関係にありますから、上記①が適用されるというわけです。
 なお、法令については、公益法人インフォメーションの「公益法人制度関係法令とガイドライン」というページに、適用される法令の一覧が記載されています。



2018年3月11日日曜日

公益法人の特徴~行政庁から人事異動される方へ

1.行政庁の人事異動
 すでに3月になりましたが、行政庁では3月末になると人事異動が発令され、公益法人(公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人)に異動となる方もいらっしゃると思います。
 しかしながら、公益法人は、特に会計面での仕組がわかりにくいので、慣れるのに時間がかかることが多いようです。
 そこで、少し早いですが、公益法人の特徴を簡単に記載します。

2.財務三基準
(1)財務三基準とは
 公益法人の最も大きな特徴は、いわゆる「財務三基準」です。
 すなわち、(イ)収支相償(しゅうしそうしょう)、(ロ)公益目的事業比率、(ハ)遊休財産、の3つについて一定の基準をクリアしなければならないというものです。
 これらは、財務会計の数字をベースに計算します。「ベースに」というのは、財務会計の中では財務三基準の計算はできないということです。言い換えると、財務会計とは別の世界で計算するということです。

(2)別表との対応関係
 これを具体的にいうと、公益法人は毎事業年度の経過後3ヶ月以内に事業報告等に係る提出書類を行政庁に提出しなければならないのですが(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)22条①)、この中に別紙4という書類があり、さらにその中に別表AからHまでの書類があります。この別表A~Cにおいて、財務三基準を計算します。
 財務三基準と別表の対応関係は次のとおりです。

 収支相償の計算→別表A
 公益目的事業比率→別表B
 遊休財産の計算→別表C

(3)財務三基準の意義
 以下では、財務三基準のそれぞれについて簡単に記載します。
(イ)収支相償
 公益法人は「その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない。」とされています(認定法14条)。
 簡単に言うと、公益目的事業では赤字にしなければならないということです。
 「会計上、公益目的事業会計で赤字にすればよいのだから簡単ではないか」と思われるかもしれませんが、計算が複雑な面もあり、なかなかややこしい面があります。
 実は、この話をすると長くなるので、今回はここまでにいたします。

(ロ)公益目的事業比率
 公益法人は「毎事業年度における公益目的事業比率が百分の五十以上となるように公益目的事業を行わなければならない。」とされています(認定法15条)。
 公益法人であるにも関わらず、収益事業の比重が高いとなってしまうと、その目的が達成されません。そのため、簡単に言うと、公益実施費用額が公益実施費用額、収益等実施費用額及び管理運営費用額の合計の50%を超えるようにしなければならないというものです。こちらの「費用」も会計上の費用と必ずしも一致はしないので注意が必要です。

(ハ)遊休財産
 「公益法人の毎事業年度の末日における遊休財産額は、公益法人が当該事業年度に行った公益目的事業と同一の内容及び規模の公益目的事業を翌事業年度においても引き続き行うために必要な額として、当該事業年度における公益目的事業の実施に要した費用の額を基礎として内閣府令で定めるところにより算定した額を超えてはならない」とされています(認定法16条)。
 この趣旨は、公益法人は遊休財産、すなわち、自由に使える財産をため込んではならないというものです。保有している財産は、極力、公益目的事業、収益事業等、管理運営目的のために使用してください、ということです。

3.最後に
 今回は、財務三基準について非常に簡単に記載いたしました。
 2回目は、機関運営について記載したいと思います。

【参考】
 大阪府から「財務三基準等計算確認シート」が公表されています。



2018年3月5日月曜日

実査の留意点(1)

1.概要
 3月に入りましたが、日本の多くの会社は3月決算が多いので、3月末日が決算日となります。また、公益法人も3月決算の法人が多く見られます。公益法人は外郭団体系の法人も多く、地方自治体の予算との関係があるためです。社会福祉法人は、法令で3月決算と決まっています(社会福祉法45条の23②)。従って、全ての社会福祉法人は3月決算となります。医療法人も3月決算の法人が多く見られます。
 このような3月決算の会社等のうち、法令で公認会計士又は監査法人の監査を受けなければいけない会社等や任意で公認会計士又は監査法人の監査を受けている会社等は、3月末日あたりに公認会計士又は監査法人による実査が行われます。
 このうち、社会福祉法人で会計監査を受けている法人は、今回が初めての実査となります。
 そこで、今回は実査について、留意点を記載します。なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.実査の対象
(1)無形固定資産は実査の対象とはならないのか
 実査の対象は、絶対的に決まっているものではありませんが、通常、現金、預金通帳、証書、有価証券、手形、切手、印紙、有形固定資産などです。
 無形固定資産については、姿かたちがないので実査の対象とされていないことが多く、そのため実査を行っていない公認会計士や試験合格者がよく見られますが、無形固定資産についても、方法を工夫すれば、種目によっては実在性の立証は可能です。
 例えば、固定資産台帳に載っているソフトウェアについて、業務の担当者の席に赴いて、パソコンを開いていただき、そのソフトウェアを稼働していただきます。そうすることで、そのソフトウェアが実在しているかどうかを確かめることはできます。もちろん、担当者には、そのソフトウェアの使用状況を質問します。
 大抵の場合は、実在性に問題はないのですが、ときどき、業務の担当者が経理担当者に「こんなソフトウェアありましたっけ?」と言っているときもあります。
 よくあるのは、最初の頃は使用していたものの、購入後、しばらくして他社からより性能のよいソフトウェアが発売されたため、そちらに乗り換えたというケースです。そのため、以前のソフトウェアが使用されずに忘れ去られているというものです。
 また、上の方の判断で業務用ソフトウェアを購入したのはよいのですが、現場ではそのソフトウェアに関心がなく、使用しないでそのままほったらかしにしている、というケースもあります。
 その他、購入したのはよいですが、実務に使用してみると使い勝手が悪いので、すぐに他のソフトウェアに切り替えたというケースもあります。

(2)ソフトウェアの評価の妥当性
 そうなると、評価の妥当性の問題が出てきます。
 ソフトウェアは通常5年で償却するので、帳簿価額がゼロ円になるのは早いのですが、ソフトウェアの進展は日進月歩です。新しいソフトウェアが発売されると、償却期間中でも、上記のように新しいソフトウェアに乗り換えるケースは珍しくありません。
 この場合、以前のソフトウェアは遊休資産と考えられます。昔は、このようなソフトウェアについては個別に評価減を行う実務がよく見られました。現在の制度会計では、固定資産の評価は減損会計基準に従いますので、使用していないソフトウェアは遊休資産とみて、(イ)重要なものについては、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として取り扱い、(ロ)重要性の乏しいものは、これまでの使用状況等に鑑みて、資産グループに含めて取り扱う、とすることが妥当と考えられます(私見です)。

3.アサーション
 このように、実査は「実物検査」の略とも言われるように、実在性の立証を目的とするものですが、同時に、評価の妥当性の判断を行うときもあります。監査を行う公認会計士等は監査手続を機械的に行わず、現場の状況を見て適宜判断することが必要です。 

2018年2月27日火曜日

架空取引に係る内部統制

1.はじめに
 2月に入って、東証1部上場企業2社で役員と従業員の不正事例がありました。
 社名は伏せますが、東証の業種区分では1社はサービス業(以下A社)、もう1社は電気機器に分類される会社(以下B社)です。
 もちろん、内部のことはわかりませんので、あくまで外からの視点であり、推測の部分があることをお断りしておきます。また、本稿は私見であることにご留意ください。

2.両社の不正事例
 A社はサービス業ですが、A社のIRによると、出版事業部担当の取締役が取引先と結託し、A社に対して架空請求や水増し請求を行い、キックバックや不適切な利益供与を受けている疑いが強まったということです。これは内部通報により発覚したということです。
 一方、B社は、報道によると、工場で経理を担当していた従業員が勤務していた工場や事業所で、支払いに必要な書類を偽造し、自分で開設した架空口座に送金していたということです。こちらも、工場の同僚が不自然な取り引きに気付き、不正が発覚したということです。

3.架空取引による不正
 物品の購入や経費の支払いにおいて、実際に行っていない取引を、証憑類の偽造などにより、あたかも取引を行ったように装い、会社の現金預金を引き出し、自分の口座に入金するという手口は、昔から行われている典型的な不正の手口です。架空仕入、架空請求などいろいろな呼び方がありますが、本稿では架空取引と称します。
 以前、私が担当した弊社のセミナーで、「社会福祉法人が構築すべき内部統制」というタイトルで、社会福祉法人の不正事例を紹介したことがあります。架空取引による着服もいくつか紹介しましたが、発注から支払いまでを一人で行っているケースが多く見られました。
 発注から支払いを一人で行うと、不正の発生の可能性が非常に高くなります。そのため、購買取引についての内部統制の整備・運用が必要となります。

4.購買取引に係る内部統制
 購買取引に係る不正を防止するための内部統制のポイントを簡単に書くと次のとおりです。
 ①発注者と発注担当者は別の人にする
 ②納品時の検収担当者は発注者とは別の人にする。
 ③支払いの担当者は、発注者や検収担当者とは別の人にする。
 ④支払い担当者は、発注書、納品書、請求書を照合する。

 他にも内部統制のポイントはありますが、とりあえず上記をまず記載します。この中でも②は重要といえます。発注担当者が検収も行ってしまうと、架空仕入や横流しなども可能となってしまうからです。
 例えば、商品100個を注文したということにして、架空の発注を行い、さらに偽の納品書を作成して100個納品されたということにします。納品書には納品を確認した旨の検収印も押印します。そして、さらに偽の請求書を発行し、発注書、納品書、請求書を支払い担当に回します。支払い担当者は、発注に基づいて正しく納品されたと思ってしまい、請求書に基づいて、架空口座に入金してしまう、というわけです。
   ただし、不正の場合、かなり巧妙な手口があるので、A社とB社の事例も外から見るだけでは、何とも言えません。また、サービス提供の場合、サービスを受けたかどうかの確認が難しいケースもあります。
 さらに、内部統制は複数の担当者の共謀によって有効に機能しなくなるという弱点もあります。すなわち、絶対的なものではないということです。
 そのため、A社、B社も購買取引にかかる内部統制は存在していたのだとは思いますが、もしかしたら不備があったのかもしれませんし、内部統制の弱点が出てしまったのかもしれません。

5.内部通報制度
 今回のケースは、A社のケースは内部通報制度により発覚し、B社の場合は、工場の同僚が不自然な取引に気づき、社内調査が行われて発覚したということです。
 内部通報制度は内部統制の一つです。構築した内部統制を巧妙にくぐり抜けるケースもありますが、内部通報制度により内部統制の弱点を補えることもあります。
 最近は、社会福祉法人や公益法人を見ることが多いのですが、内部通報制度を設けられていない法人が多く見られます。内部通報制度は、内部統制を強化する仕組みといえますので、内部通報制度を設けることが期待されます。
 方法としては、例えば、顧問契約をしている法律事務所にホットラインを設けるという方法が考えられます。このようにすれば、従業員が安心して通報できるからです。会社内部の人間に通報する仕組みだと握りつぶされる恐れがありますし、従業員も消極的になりますので、外部に情報提供できる仕組みのほうがよいと考えられます。特に従業員数の少ない組織では外部窓口は有効と考えられます。

2018年2月18日日曜日

敷金の論点

1.概要
 今回は、敷金に関する会計上の論点を記載します。
 敷金は、特に大きなリスクはない科目ですが、一部に注意すべき論点があります。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.敷引きと消費税
 関西地方でよく見られる商習慣として、「敷引き」(しきびき)というものがあります。これは賃貸契約を行ったとき、敷金のうち貸主に対して一部金額は返還しないということを契約により定めるものです。
 この場合、消費税の課税関係については、敷引き部分は権利の設定の対価となるため、資産の譲渡等の対価として課税の対象となります(消費税法基本通達5-4-3)。この処理については、失念されているケースがよく見られますので注意が必要です。
 なお、敷引きの会計処理ですが、会計基準で一定の処理が定まっていないため、会計慣行によることになります。よく見られるのは、税務上、敷引きは法人税法上の繰延資産に該当するため、長期前払費用として計上し、原則5年(賃貸契約期間が5年未満の場合は契約期間)で償却するというものです。私見では、会計上もこのような償却処理でよいと考えられますが、償却期間は、もし賃貸契約期間が5年以上の場合は、賃貸契約期間が妥当と考えられます。 

【設例1】
・期首に敷金10,000を支払った。
・敷金のうち2,000は敷引きとして家主に返還しない契約となっている。
・賃貸契約は5年である。
・当社は消費税等の納税義務者である。
・税抜処理を行っている。

【仕訳例】
①敷金の支払時
(借方)敷    金 8,000    (貸方)現金預金 10,000
    長期前払費用 1,852
    仮払消費税等  148

②期末時
(借方)長期前払費用償却 370  (貸方)長期前払費用 370


3.資産除去債務
(1)会計処理
 制度会計上は、「建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合」があります(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 9項)。
 ただし、「当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる」(同適用指針 9項)。
 すなわち、原則は敷金についても、一定の要件を満たす場合、資産除去債務を計上する必要がありますが、容認処理として、敷金の回収不能部分を見積もって、その金額を一定期間において償却処理することができるというものです。

【設例2】
・期首に敷金10,000を支払った。
・敷金のうち2,000は原状回復費用に充てられるため返還が見込めないと認められたことから、当社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間(5 年)で費用配分する。
・資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上を行わない方法による。

【仕訳例】
①敷金の支払時
(借方)敷金 10,000 (貸方)現金預金 10,000

②期末時
(借方)費用(敷金の償却) 400 (貸方)敷金 400

(2)償却期間
 敷金に関する資産除去債務に係る論点の一つに、償却期間があります。
 同適用指針では27項において、「当期の負担に属する金額は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間など合理的な償却期間に基づいて算定することが適当と考えられる。 」と記載されています。これはあくまで例示なので、合理的な償却期間であれば問題はありません。言い換えると、根拠のない非合理な償却期間は認められないということです。
 設定する場合は、例えば、過去の入居期間の実績を集計し「過去はこのような平均期間であり、今回も平均期間である◯年の入居を予定している。従って、償却期間は◯年とする。」といったように、根拠を文書化しておく必要があります。

(3)原状回復費用の見積り
 原状回復費用の見積りについては、私の経験上、業者に見積り額の算出を依頼すれば金額を算出してくれるところが多かったと記憶しています。そのため、業者に見積り依頼をしてみるとよいと思います。可能な限り客観性をもたせることが重要です。

(4)消費税の課税関係
 資産除去債務に係る敷金の償却の場合、回収が最終的に見込めないと認められる部分の金額については消費税の課税の対象とはならないと考えられます。
 消費税の課税の対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等ですが、回収が最終的に見込めない部分の金額は、あくまでも見積もりであるため、対価性がないといえるからです。敷引きの場合は、賃貸借契約において、一定金額は返還しないと定められているため、対価性が認められます。しかし、資産除去債務に係る敷金の場合は単なる将来の見積であり、反対給付として対価を受け取る取引とはいえないからです。

2018年2月11日日曜日

「社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A」の追加・修正(1)

1.概要
  少し前になりますが、平成30年1月23日付で「社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A(vol.3)」が厚生労働省社会・援護局福祉基盤課より事務連絡として公表されました。タイトルのとおり、社会福祉充実計画の承認に関するQ&Aの追加・修正版となります。
 追加・修正されたところは赤字及び下線で記載されているため、わかりやくすくなっています。
 なお、追加・修正Q&Aは平成30年度から適用するということになっています。社会福祉法人は全て3月決算なので、「平成30年度から」ということは平成30年4月1日からということになります。社会福祉充実残額の算定や充実計画の策定は期末日後に行われるので、平成30年4月1日以後に行われる社会福祉充実残額の算定等からこの追加・修正Q&Aも適用されるものと解されます。
 今回は、追加・修正Q&Aからいくつかピックアップして内容を見てみたいと思います。

2.主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例
(1)追加・修正後のQ&A
 問37において主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例について、追加・修正が行われています。
 この論点は、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)の最終校正日後に出たものであったため、本には載せることができなかった論点です。この論点については、当ブログの第1回「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」P69について」に記載しています。
 まず、Q&Aを引用してみます。

問37 「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」については、「再取得に必要な財産」と「必要な運転資金」の合計額が法人全体の年間事業活動支出を下回る場合は、施設・事業所の経営の有無に関わらず、これに該当する全ての法人がその適用を受けられるものと考えて良いのか。【事務処理基準3の(7)関係】

(答)
1.貴見のとおり取り扱って差し支えない。

 赤文字の部分が追加・修正された部分となりますので、vol.2版ではこの部分がなかったということです。
 内容としては変わっているところはなく、適用要件をより明確にしたというものです。

(2)当初の経営協の見解
 この論点は、上述の当ブログ第1回に記載したとおり、当初、全国社会福祉法人経営者協議会(以下「経営協」)は機関紙である「経営協情報」で、「「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等」とあることから、特例計算の対象となるのは社会福祉協議会、共同募金会、助成等を主たる事業とする法人が想定され、これら以外の通常の社会福祉法人は特例計算の対象とならないと考えられる」としていました。
 ちなみに、経営協という組織は、社会福祉法人に携わった方であればご存知だと思いますが、諸団体の中でも別格の有力団体です。そのため、経営協の意見は、実質的に厚生労働省の意見といっても過言ではないと思います。従って、私も経営協の意見を著書に記載したわけです。

(3)vol.2の見解
 しかしながら、原稿締切後の平成29年2月13日付でQ&A vol.2が発出され、上記問37の赤字下線部分を除いたものが掲載されました。
 ただ、当ブログ第1回にも記載しましたが、当初、私は平成28年12月の案から計算要件が変更となったため、その確認のためのQ&Aなのかと思いました。
 おそらく、vol.2では、私のような捉え方をした方も多かったと推測されますので、今回のvol.3で適用要件を明確にしたものと思われます。
 従って、社会福祉協議会、共同募金会、助成等を主たる事業とする法人以外の通常の社会福祉法人であっても、計算要件を満たせば「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」を適用できることになりました。
 余談ですが、この結果、特例の名称では「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等」が対象となっているにもかかわらず、「施設・事業所の経営の有無に関わらず、これに該当する全ての法人がその適用を受けられる」ということになってしまいました。

3.特例計算の選択の自由
(1)概要
 この特例計算ですが、特例計算の適用要件を満たした場合であっても、必ず特例計算によらなければならないわけではなく、原則の計算方法によってもかまいません。
 今回、vol.3では、新たに問38が設けられ、その点が明確になりました。

問38 「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」の要件に該当する場合であっても、法人の判断として特例の適用を受けないことは可能か。【事務処理基準3の(7)関係】

(答)
1.貴見のとおり取り扱って差し支えない。

 実は、平成29年度版の社会福祉充実残額算定シートでは、特例計算の計算要件である「再取得に必要な財産」と「必要な運転資金」の合計額が法人全体の年間事業活動支出を下回った場合、自動的に特例計算によって計算される計算式が組まれていました。
 しかしながら、特例計算だと社会福祉充実残額が出てしまうが、原則計算だと社会福祉充実がマイナスとなり、発生しないというケースもあります。このような場合、原則計算を選択するほうが社会福祉法人にとって有利となります。すなわち、有利選択ができるということです。
 今回の問38はこの点を確認したものです。

(2)社会福祉充実残額算定シートの改善
 上記の通り、平成29年度版の算定シートでは、計算要件を満たすと自動的に特例計算で計算されてしまっていましたが、30年1月時点で発出された平成30年度版の社会福祉充実残額算定シート(案)[Excel版]では、その点が改善されました。
 具体的には、「6.「社会福祉充実残額」」の欄で、「計算の特例適用 ※「5.計算の特例」の適用有無を変更する場合、以下のセルから選択すること。」という説明書が設けられ、F77のセルに「適用する」「適用しない」の選択欄が設けられました。これによって、算定シート上でも、特例計算を適用するか、原則計算を適用するかの選択を行えるようになりました。
 従って、平成30年度からは、エクセルの計算式を自分で組み直すことなく、選択ボタンで選択することにより、どちらも自動計算されることになったので、便利になりました。

2018年2月4日日曜日

決算期における機関運営の留意点~社会福祉法人

1.概要
 2月に入りましたが、社会福祉法人では決算承認のための理事会や定時評議員会のスケジュールを組まれているところもあるかと思います。法人の中にはすでにスケジュールが決定されているところもあります。
 今回は、これまでのブログでも既出の論点ではありますが、決算期のスケジュールの留意点を記載いたします。

2.決算承認理事会と定時評議員会の間隔
 決算承認理事会と定時評議員会の間は中2週間(14日間)以上あける必要があります。これは、計算書類等は定時評議員会の2週間前の日から5年間、主たる事務所に備え置かなければならないとされているからです(社会福祉法(以下「法」)45条の32①)。
 これは、評議員が定時評議員会で計算書類等を審議するにあたって、計算書類等を事前に確認する期間を与えるためです。
 そのため、中14日間以上の期間をあける必要があるのですが、これを14日後としてしまう誤りが非常に多く見られます。中14日とは決算承認理事会と定時評議員会の間が丸々14日ということです。すなわち、備置きの日の翌日から定時評議員会の日までが14日ということです。
 従って、この誤りをおかさないようにするためには、+15日(以上)とおさえておくとよいと思います。
 例えば、6月7日に決算承認理事会を開催する場合は、定時評議員会の日は7日+15日=22日以降となります。
 なお、このことから決算承認理事会は6月15日までに開催しておく必要があります。16日以後だと6月30日を越えてしまうからです。

3.定時評議員会の招集
(1)理事会の決議
 評議員会を招集するためには、評議員会の日時及び場所、目的などを理事会で決議する必要があります(法45条の9⑩、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」181条①)。
 その上で、理事が評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければなりません(法45条の9⑩、一般法182条①)。

(2)計算書類等の添付
 定時評議員会では、評議員会に書面で招集通知を発するとき、理事会の承認を受けた計算書類等を添付する必要があります(法45条の29)。
 招集通知に計算書類等を添付していなければ、法令違反となりますので十分注意する必要があります。

4.評議員会議事録
 評議員会を開催した後は、評議員会議事録を作成することになりますが、この議事録には議事録の作成に係る職務を行った者の氏名の記載が必要です(社会福祉法施行規則(以下「施行規則」)2条の15③七)。
 この記載は失念しやすいので注意が必要です。よくある誤りは議事録署名人と混同してしまう誤りです。議事録署名人とは別に議事録作成者の氏名を記載する必要があります。
 なお、この議事録作成者については法令上の制限はありませんので、事務職員であっても問題はありません。
 もちろん、この評議員会議事録の作成者の氏名の記載は、定時評議員会、臨時評議員会のどちらの議事録でも同じです。事業計画書及び収支予算書について評議員会の決議が必要な法人は3月に臨時評議員会を開催することになりますので、この機会に記載いたします。
 最後に、この論点については、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)のP115にも記載例とあわせて記載しています。

2018年1月28日日曜日

減損の兆候とその判断過程~減損会計

1.減損会計の目的
 減損会計の目的は、簡単にいうと、事業用の固定資産の収益性が低下した場合、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させるため、といえます。すなわち、取得原価基準のもとで帳簿価額を臨時的に減額させる会計処理であり、時価評価ではないことに注意する必要があります。
 今回は、減損会計の適用の要否の検討を行う作業のうち、減損の兆候とその判断過程について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.減損会計の適用の要否の検討
 減損会計は、グルーピングされていることを前提として、次の順序に従って、それぞれの資産又は資産グループについて、その適用の要否を検討します。

 ①減損の兆候の有無の判定
 ②減損損失の認識
 ③減損損失の測定

 減損会計は上記の通り、まず①減損の兆候の有無を判定することから始めます。この①の段階で減損の兆候がなければ、②以降には進みません。すなわち、減損会計の適用はありません。
 この減損の兆候の有無の判定は、決算期はもちろん、各四半期においても行う必要があります(中間決算適用の会社は中間期)。
 減損会計が導入された頃は、四半期決算においても上記①~③のステップを踏む必要があることが認識されていない企業も見られました。そのため、四半期レビューにおいて「減損会計の適用の要否を検討した資料をご提示ください。」と依頼すると、「減損は前期に行いましたよ。何でまた減損を行わないといけないのですか。」といった回答が結構ありました。
 もちろん、これはクライアント側の認識誤りです。減損会計を適用することになるかどうかは上記①から順番に判定していかないとわかりません。上述の通り、①または②の段階で要件に当てはまらなければ、③には進みません。すなわち、減損会計の適用はありません。
 そのため、手続として、まず①減損の兆候の有無の判定を四半期においても必ず行う必要があります。前期において減損会計を適用した場合であっても、当期の第1四半期で、さらに減損会計の適用となる場合もあるかもしれません。
 なお、「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」14項では、
「四半期会計期間における減損の兆候の把握にあたっては、使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて 留意することとする。」
 とされています。
 会計基準には適用要件がありますので、適用要件にあてはまるのかどうかを順番に検討していく必要があります。
 
3.減損の兆候
(1)意義と趣旨
 減損の兆候とは、減損が生じている可能性を示す事象をいいます(固定資産の減損に係る会計基準(以下「基準」四2(1))。
 基準では、減損の兆候がある場合に、資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行うこととしていますが、これは、対象資産すべてについてこのような判定を行うことが、実務上、過大な負担となるおそれがあることを考慮したためとされています(基準四2(1))。

(2)減損の兆候の例  
 それでは、どのような事象が減損の兆候となるのかという点ですが、これについては企業会計基準委員会による「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「適用指針」)12項から17項に例示が掲載されています。
 
 (イ)営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
 (ロ)使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
 (ハ)経営環境の著しい悪化の場合
 (ニ)市場価格の著しい下落の場合
 (ホ)共用資産の減損の兆候
 (ヘ)のれんの減損の兆候
 
 このうち、(ホ)と(ヘ)は共用資産ないしのれんを含むより大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行うことから、まずはそれぞれの資産又は資産グループについては、(イ)~(ニ)について検討を行っていくことになります。
 まとめると、各資産又は資産グループについて、主に(イ)~(ニ)について判定し、共用資産やのれんがある場合は、それらを含むより大きな単位で判定するという順序となります。
 ただし、上述の通り、これらは例示なので、減損の兆候については他の事象も考えられます(適用指針76項参照)。また、必ずしも画一的に数値化できるものではないことから、状況に応じ個々の企業において判断することが必要である旨も適用指針77項において示されています。
 従って、(イ)~(ヘ)を主な判断基準として、総合的・実質的に判断していくことが必要です。

(3)総合的な判断
 このように、減損の兆候は総合的・実質的に判断していくことになりますが、これは各資産又は資産グループについて(イ)~(ニ)についてどれかに当てはまっていなければ減損の兆候はなし、と判断するのではなく、(イ)~(ニ)などをすべて勘案して判断していくことになるということです。
 減損の兆候については、特に(イ)の「営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合」について重点的に考慮されることが多いのではないかと思います。この部分は数値基準により判断がしやすいからです。しかしながら、この要件に当てはまっていなくても、例えば、その資産又は資産グループを構成する事業を近い将来に売却するという意思決定が行われていれば(ロ)に該当しますので、減損の兆候はあるものと判断されることになります。

(4)判定資料の作成
 最後に、減損の兆候の有無の判定を行った場合は、その判断過程を文書化して客観的に分かるようにしておく必要があります。
 方法としては、いろいろと考えられますが、例えば、フローチャートのような形にして、適用指針12項から17項に当てはまるかどうかを順番に判断していくという方法も考えられます。

2018年1月23日火曜日

事業計画書等の提出に係る留意点~公益法人

1.概要
 我が国の公益法人(公益認定を受けた公益社団法人又は公益財団法人をいいます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条①②③)は3月決算の法人が多いですが、3月決算の公益法人は翌事業年度の開始の日の前日である3月末日までに事業計画書等を行政庁に提出しなければいけません(認定法22条①)。
 今回は、事業計画書等の提出についての留意事項を記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.提出書類
 提出書類としては、まず、①事業計画書、②収支予算書、③資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類(認定法21条①、22条①、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下「認定法施行規則」)27条)が必要です。
 また、①~③の書類について④理事会等の承認を受けたことを証する書類(議事録(写し))も提出します。

3.提出書類に係る留意点
(1)事業計画書
 事業計画書については、その事業年度に実施予定の事業を具体的に記載します。事業計画書については特に大きな留意点はないですが、公益認定を受けていない事業を新規事業として記載しないようにする点には注意する必要があるでしょう。従って、新規事業が、現在、公益認定を受けている公益事業の範疇であるかどうかを確かめる必要があります。

(2)収支予算書
 収支予算書については、2点留意事項があります。
 ①損益計算ベースによること
 法令上では「収支予算書」となっており、名称に「収支」とついていますが、発生主義に基づいた損益計算ベースで計算した予算書である必要があります。
 この点については、旧制度から携わっておられる方からよくご質問を受けますが、上述の通り、この予算書は収支ベースではありません。従って、減価償却費や退職給付引当金繰入額といった発生主義による会計数値も予算の額として反映させる必要があります。
 ②内訳書も提出すること
 また、この収支予算書については、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計に区分された内訳書も提出する必要があります。
 法令では、「収支予算書」としか書かれていませんが、内訳書も忘れずに提出することに注意が必要です。

(3)資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類
 「資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類」については、公益法人インフォメーションから提出する場合には、当該書類も直接入力の書類としてセットになっていますので、提出自体を失念することはないと思います。(作成されていないと、送信時にエラーメッセージが出たと思います。)
 しかしながら、この書類に関する留意点は、理事会等での決議にあります。すなわち、この資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類についても、その内容を審議し、理事会等において承認を得る必要があるということです。そのため、理事会等においては、公益法人インフォメーションに掲載されている様式を作成のうえ資料として配付し、議案として掲げて、理事会等の決議を経る必要があります。

(4)理事会等の議事録(写し)
 ①事業計画書、②収支予算書、③資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類は理事会の決議により承認を得ることになります(社員総会又は評議員会の承認を受ける法人もあります。)
 行政庁には、この理事会の議事録(写し)も提出します。社員総会又は評議員会の承認を受けた場合はその社員総会議事録又は評議員会議事録も必要となります。
 この理事会等の議事録ですが、例えば、理事会について、議事録には出席した理事及び監事が署名又は記名押印するとしている場合(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)95条③)、理事及び監事の人数が多いと、議事録への署名又は記名押印が期末日までに間に合わないケースがあります。実際に、理事が数十人いる公益法人も珍しくありません。議事録の署名又は記名押印については容認の方法もあるのですが(定款で定めることにより、代表理事と出席した監事による署名又は記名押印とする方法)、各理事が自分の目で議事録を確かめたいという法人もあり、原則の方法を採用している法人も結構存在します。
 このように議事録の署名又は記名押印について、提出期限までに間に合わない場合は、理事及び監事の署名又は記名押印を行っていない仮の状態でいったん行政庁に提出してください。そうすれば、期限内の提出となります。
 ときどき、理事及び監事全員の署名又は記名押印を待って、期限後に事業計画書等を提出されている法人がありますが、これだと法令違反になります。上述のとおり、公益法人は毎事業年度開始の日の前日までに行政庁に提出しなければならない、とされているからです(認定法22条①)。
 特に、公益法人インフォメーションでは、理事会等の議事録が添付されていないとエラーとなり送信できませんので、理事及び監事の署名又は記名押印が間に合っていない場合は、いったん、署名又は記名押印が行われていない議事録を添付して提出を完了させてください。
 そして、理事及び監事の署名又は記名押印が終了したら、行政庁に連絡をして補正の依頼を行ってください。この補正により、署名又は記名押印済みの議事録に差し替えて、事業計画書等の提出を行えば完了です。
 なお、この補正は、行政庁によって対応は異なります。公益法人インフォメーションから補正提出するという正式なケースもあれば、「こちら(行政庁)で差し替えておきますのでメールで送ってください」というケースもあります。いずれにしろ、行政庁側もこの点は状況を理解されていますので、くれぐれも法令違反とならないようご注意ください。

4.備置きおよび閲覧 
 ①事業計画書、②収支予算書、③資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類については、その事業年度開始の日の前日までに主たる事務所に、また、その写しを従たる事務所に備え置かなければならず(認定法21条①)、さらに、閲覧の請求に応じなければなりません(認定法21条⑤)。
 このうち③については失念しやすいので注意が必要です。上記3(3)で、資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類を作成する必要性を記載したのはこのためでもあります。従って、必ず、公益法人インフォメーションに掲載されている様式で当該書類を作成して備置きをするようにしてください。

2018年1月13日土曜日

自己の職務の執行状況の報告~社会福祉法人

1.概要
 全ての社会福祉法人は、3月頃には事業計画及び予算を審議し、承認するための理事会が開催される予定になっていることと思います。
 この理事会は例年通りではないかと思いますが、特に、理事会の開催を年2回としている社会福祉法人では、この理事会で「職務の執行状況の報告」を行っておく必要があるので留意が必要です。今回は、理事の職務の執行状況の報告について実務上の留意点を記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.制度の内容
 (1)報告を行う理事
 この職務の執行状況の報告ですが、報告を行うのは以下の理事です(社会福祉法(以下「法」45条の16②)。

 (イ)理事長
 (ロ)理事長以外の理事であって、理事会の決議によって社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの(業務執行理事)
 
  この報告を行う趣旨は、理事会による理事長および業務執行理事に対する職務の執行の監督を機能させるためです(法45条の13②二)。すなわち、理事会が理事長および業務執行理事の職務執行についてその適法性や妥当性を判断するためには、彼らの職務の執行状況の内容を知ることが必要であることから、彼らにその内容を報告させているということです。
 なお、理事会の場で報告する人ですが、実際に実務を担当している事務局長や経理担当者といった現場の職員でないと詳細な報告が難しいケースもあると思います。このような場合は、理事長や業務執行理事が出席していることを前提として、理事長等の監督のもとで実務担当職員が報告させるという方式でも、趣旨は逸脱しないのではないかと思います(私見です)。ただし、理事長等はその内容を把握し、他の理事からの質問には回答できるようにしておく必要はあると思います。
 とはいえ、理事長や業務執行理事本人が発言するのが最もよいことであるのは間違いありません。
 
 (2)報告の頻度
 原則は3ヶ月に1回以上です(法45条の16③本文)。
 ただし、定款で毎会計年度に4月を超える間隔で2回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、年2回でも可です(法45条の16③ただし書)。この容認規定で運営されている社会福祉法人は、6月頃の決算承認理事会と3月の事業計画及び予算承認理事会で報告を行われるところが多いと思います。
 なお、よく頂くご質問で「3月と6月では、4ヶ月超の間隔があいていないのではないか」というものがありますが、この間隔は事業年度でカウントしますので問題はありません。すなわち、6月から始めて4ヶ月超をカウントしますので、例えば、現在の進行年度でいえば、平成29年6月と平成30年3月は4ヶ月を超えることになります。
 もちろん、6月と3月でなくとも、それ以外の月で開催した理事会で自己の職務の状況の報告を行っても問題はありません。
  
 3.自己の職務の執行状況とは
 「自己の職務の執行状況」の内容ですが、よく頂くご質問として「具体的に何を報告すればよいのかわからない。どのようなことを報告すればよいのか。」といったものがあります。回答としては、極端に言えば、理事の業務執行に関わることであれば何でもよい、ということになります。
 そこで、具体例を示します。

・決算見込
・月次決算や四半期決算の状況
・事業報告
・所轄庁による指導監査の指摘事項
・各事業部門の活動報告
・重要性の高い契約の顛末
・重要性の高い行政庁への届出事項や承認事項
・過去の理事会決議事項につきその経過内容

 4.議事録への記載
 自己の職務の執行状況の報告が行われた場合は、議事録に記載しておく必要があります。議事録に記載しておかないと、自己の職務の執行状況の報告が行われたかどうかが不明となるからです。
 この記載は法令上求められていませんが、指導監査のときにチェックされると思いますので忘れないようにする必要があります。なお、理事会議事録の法定の記載内容は社会福祉法施行規則2条の17③に記載されています。
 
 5.職務執行状況報告書
 京都市の参考様式集の中には「職務執行状況報告書」というものが入っていました。
 職務執行状況報告書は法令上で作成が求められている書面ではありませんが、上記4と同様の趣旨でも受けたものと推定されます。
 所轄庁のうち、このような報告書が参考様式として示されているところであれば、この報告書を作成しておくほうがよいと思います。
 なお、私見ですが、この報告書を作成した場合でも自己の職務の執行状況の報告について、議事録への記載は必要といえます。議事録には、発言内容を漏れなく記載することが必要ですし、また、職務の執行状況の報告について質疑応答もありえますので、その内容も記録しておく必要があるからです。

 6.決議の省略では不可
 最後に、この自己の職務の執行状況の報告は、実際に開催された理事会において行う必要があります。
 決議の省略による方法(いわゆる「みなし決議」)で行うことはできませんので留意する必要があります。