2019年7月14日日曜日

京都に進出する地方私鉄

1.静鉄が京都にホテルをオープン

先日、京都の西洞院通(にしのとういんどおり)を歩いていたら、西洞院通錦小路下ルに「静鉄ホテルプレジオ京都四条」というホテルが建設されていました。
 「静鉄」とは静岡鉄道の略称で、もちろん文字通り静岡の鉄道会社です。
 京都と静岡は距離も離れていますし、京都で静岡の会社といっても馴染みがないので、最初は「静岡の会社が何故京都に?」と思いました。
 
西洞院通から見た静鉄ホテルプレジオ四条京都の外観です。


2.シナジー効果 

しかし、考えてみると、静鉄が自社の観光会社で京都ツアーを組んで、静岡の人に京都旅行に行っていただき、さらに静鉄ホテルに宿泊していただくことで収益を得ようという戦略も考えられるので、それを考慮すると、静鉄が京都にホテルをオープンさせることは変わったことではないと思います。静鉄ホテルプレジオはビジネスホテルという位置づけですが、ビジネスホテルであっても観光旅行にも利用できます。また、静鉄グループ内には「静鉄観光サービス株式会社」という観光会社があります。

 それと、もう一つ考えられるのは、日本では少子高齢化で人口減少が進んでいるため、自社のテリトリー以外の地域に進出して、需要を取り込もうという戦略です。
 静鉄は静岡を地盤としていますが、少子高齢化が進む中、おそらく静岡県内の活動だけでは需要が頭打ちになってくると思います。しかし、いま、京都への観光旅行はとても人気がありますので、京都にホテルをオープンさせれば、静岡県以外の地域でも収益を上げることができます。
 これは全社戦略レベルにおいて、事業領域や事業ポートフォリオをどのようにしていくか、という話になってきます。

 鉄道会社の中には、このように自社系列のホテルや観光会社を経営している会社があります。これは、自社系列の観光会社を利用する消費者に、同時に自社系列のホテルも利用していただければ、収益の相乗効果が得られるからです。
 さらに、静岡県外の人が静鉄ホテルプレジオを利用した場合、宿泊時の案内や宿泊後の案内で静岡県への観光旅行を提案することで、静鉄ホテルプレジオを利用した静岡旅行に来て頂ける可能性もあります。そのようになれば、静鉄グループの収益増加に繋がります。
 このように、複数の事業等の組み合わせによる相乗効果をシナジー効果といいます。

3.相鉄フレッサイン

地方私鉄ではなく、今は首都圏の大手私鉄という位置づけですが相鉄も「相鉄フレッサイン」というビジネスホテルを京都に開業しています。
 相鉄は相模鉄道の略称で、神奈川県を地盤とする私鉄です。私が物心ついたときは地方の準大手私鉄という位置づけでしたが、平成2年に首都圏の大手私鉄という格付けとなりました。
 ちなみに「相鉄」は「そうてつ」と読みます。京都では馴染みがない鉄道であるため、「相鉄」を読めない人は多いようです。
 
綾小路通烏丸西入にある相鉄フレッサイン。

 私が見たのは綾小路通烏丸西入ルにある相鉄フレッサインです。初めて見たのは3年ほど前です。綾小路通は四条通の一つ南の通りですが、綾小路通を歩いていたら、「相鉄」の文字が目に入ってきたため、「京都に相鉄?」と驚いた記憶があります。
 調べると、現在、相鉄グループ内には観光会社はないようです。かつて相鉄観光という観光会社があったということですが、現在は近畿日本ツーリスト神奈川となっているということです。
 従って、相鉄の場合は観光会社を使ったシナジー効果を目的としているのではなく、神奈川県以外の地域での収益増加を目的としたものといえそうです。なお、相鉄フレッサインは首都圏以外にも長野、大阪、兵庫、広島、さらには韓国にもホテルを開業しています。
 また、相鉄は5年前にホテルサンルートを買収し、ホテル事業に力を入れています。

4.まとめ

私鉄は、鉄道事業を行う地域が限られているため、鉄道事業に限っては収益の機会もその地域に限られます。特に、中小私鉄の場合は、せいぜい地盤は一つの府県にとどまります。
 しかしながら、鉄道会社は阪急から始まったといわれる多角化戦略をとる会社が多いので、このように自分のテリトリー以外の地域にホテルを開業することで、他地域で収益をあげて、グループの収益増加につなげることも可能です。
 特に、ホテルに関していえば、京都では、外国からの観光客の急増のため、今ホテルをオープンすれば、間違いなく儲かります。そのため、京都は異常とも思えるホテルの開業ラッシュです。
 静鉄や相鉄の京都でのホテル開業は、地方私鉄の一つのビジネスモデルとして参考になるかもしれません。 

2019年7月8日月曜日

「会計・監査ジャーナル」の電子版についての感想

1.はじめに
 近年のIT技術の進歩は著しいものがあります。電子書籍もその一つです。
 日本公認会計士協会も、数年前より機関紙である「会計・監査ジャーナル」について電子版も利用できるようにし、会員・準会員(日本公認会計士協会に登録をしている公認会計士や公認会計士試験合格者など)に電子版の利用を促しています。
 今回はこの電子書籍について思うことを述べたいと思います。

2.「会計・監査ジャーナル」の電子版
 日本公認会計士協会は、この「会計・監査ジャーナル」の電子版の機能向上を目的とした会員アンケートを行っていましたが、先日、そのアンケート結果が会員・準会員専用ページで公表されていました。
 会員・準会員専用なので、アンケート結果などその内容は記載することはできませんが、電子版を利用している会員・準会員(以下「会員等」)は徐々に増えてきているようです。
 しかしながら、使いやすさについては使いにくいと思っている会員等も結構いるようです。実は、正直申し上げて、私も「会計・監査ジャーナル」の電子版については使いにくいと思っている会員の一人です。
 それでは、なぜ私が使いにくいと思っているのか、電子書籍の種類に即して説明します。

3.Kindleの種類
(1)ハイライト機能などを使えるもの 
 私は、通常の電子書籍ではアマゾンのKindleを使用しています。
 このKindleによる電子書籍については、その方式について2種類あります。一つは、①「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能」(アマゾンの説明書きより)を使用できるもの、もう一つは②これらの機能がついていないもの、です。
 どちらが使いやすいかというと、まちがいなく①のほうです。

 ①の様式は、テキストデータによるものなので、普段、Webで検索するように、その本の中のある用語を検索することができます。また、読んでいて意味がわからない用語や漢字が読めない場合についても、その用語をタップすると、辞書やウィキペディアの説明が示されます。
 ハイライト機能は、気になった用語や文章にマーカーを引くように色をつけることができるものです。ハイライトした用語や文章は、一覧で見ることができます。そのため、後で読んだところを思い出して探すときに便利です。
 ブックマーク機能というものもあります。これは、気になったページに付箋を貼るような機能です。これも、ブックマークしたページを一覧で見ることができます。

 基本的には、電子書籍を利用する場合は、この方式で販売されている書籍のほうがよいです。
 アマゾンの場合は、これらの機能を使用できない場合、「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません」と記載されているので、この説明の有無を確かめる必要があります。

(2)ハイライト機能などが使えないもの
 これに対して、上記のように「文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用でき」ない電子書籍もあります。
 これは、イメージとしては、書面をスキャンしてPDF化したようなイメージです。
 PDFを利用される方はおわかりだと思いますが、このように書面をスキャンしてPDFにした場合、検索機能を使用できません。
 ハイライト機能などが使えないタイプはこれに似た電子書籍です。
 このタイプの場合、文章中心の書籍はとても使いにくいです。次に記載しますが、Kindleでこのタイプは、たいてい固定レイアウト型という、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらないタイプです。
 このタイプは、どちらかというと写真や図が多く入った書籍によく見られます。このような書籍であれば、ハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でも、使えることは使えます。私の場合、例えば「地球の歩き方」を電子書籍で購入しましたが、Kindleではハイライト機能などが使えない固定レイアウト型でした。しかしながら、「地球の歩き方」を現物で持つと荷物が多くなるし、重くなるので、電子書籍にしました。どちらかというとやむを得ないという気持ちが強かったです。

4.リフロー型と固定レイアウト型
 次に、リフロー型と固定レイアウト型について記載します。
 リフロー型とは、文字の大きさや行数などによって、ページレイアウトが変わる電子書籍です。Kindleの場合、ハイライト機能などを使える電子書籍はこちらになります。
 一方、固定レイアウト型とは、上記のように、どの大きさの画面であってもページレイアウトが変わらない方式で、画面は拡大できますが、文字自体を大きくしたり、行数を変えることはできません。

5.「会計・監査ジャーナル」電子版の場合
 そこで本題ですが、会計・監査ジャーナルの電子版はKindleではなく、名称は伏せますが、別の電子書籍アプリを使用しています。
 このアプリにおいては、会計・監査ジャーナルは固定レイアウト型になっています。すなわち、文字自体を大きくしたり、行数を変えたりすることはできず、パソコンから見ても、iPadからみてもレイアウトは変わりません。
 一方で、検索機能やハイライト機能はついています。その他ペンによる書き込み機能もついています。
 しかしながら、Kindleのようにハイライトした用語や文章をあとで一覧で見ることはできません。また辞書機能もありません。
 それと、Kindleと比べると検索スピードが遅いです。テキストデータであれば、もっと早くなるのではないかと思います。
 
6.まとめ
 私個人の感想ですが、会計・監査ジャーナル電子版は、検索機能やハイライト機能などはついているものの、使いにくいという印象です。その原因は、会計・監査ジャーナル電子版が固定レイアウト型だからだと思います。
 確かに、雑誌については固定レイアウト型が向いているといわれていますが、会計・監査ジャーナルは後々においても仕事や勉強で使用するコンテンツが多いので、いろいろと事情があるのだとは思いますが、リフロー型によるテキストデータにして、Kindleのように、保存機能やメモ機能をつけた電子書籍化がよいのではないかと個人的には思います。

2019年6月30日日曜日

公益法人information~C(2)の計算式が壊れたら

1.はじめに

 平成31年2月11日のブログ「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」で公益法人informationのシステムが新しくなったというお話をしました。(注:このときのブログで「公益法人インフォメーション」という書き方をしてしまいましたが正確な表記は「公益法人information」でした。)
 今回は、この公益法人informationで導入された新システムの留意点について記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。
(今回の内容は、一緒に業務を行っていただいた公認会計士のご協力によるものです。感謝申し上げます。)

2.C(2)の計算式が壊れたらどうすればよいのか

(1)行挿入の注意点

 「公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル」でも記載しましたが、新システムではエクセルでの作成となりました。そのため、自分のパソコン内で作成できるようになり、また、編集も行いやすくなったため、旧システムよりも便利になったと思います。
 しかしながら、注意点もあります。

 C(2)(控除対象財産を集計する表)など、いくつかのブックには行を追加するときの注意点が記載されています。
 手元に資料がないので記憶に頼りますが、行を追加するときは、①自分で行挿入をしてはならない、②1行目ではなく2行目以下の行をコピーして挿入しなければならない、という注意書きが記載されていたと思います。

 エクセルだとつい、自分で行挿入をしてしまいがちですが、これは必ず守らなければなりません。
 

(2)自分で行挿入をしてしまうとどうなるのか

 この注意書きは、もちろん理由があって記載されています。
 それでは、2行目以下をコピーしないで自分で行挿入をしてしまうとどうなるのでしょうか。
 結論を申し上げますと、この場合、1号財産や2号財産などの合計額があわなくなってしまいます。

 自分で行挿入しただけで何故合計がおかしくなるのか疑問に思われる方も多いと思います。実は、この現象が生じる理由は、1号財産や2号財産の集計表の末尾にある小計欄の計算式にあります。
 通常、エクセルでこのような簡単な表を作成したときの合計を求めるときはSUM関数を使用します。しかしながら、新システムで使用されているエクセルでは、小計欄にカーソルをあわせていただければわかるのですが、C(2)の小計欄ではSUMIF関数が使用されています。
 これが、自分で行挿入をしてしまうと合計額があわなくなる理由です。
 なお、この小計欄のセルは「保護」が行われているので、自分では計算式を触ることはできません。

(3)SUMIF関数とは

 SUM関数であれば、1行目だけ気をつければ、自分で行挿入をしても、その行が合計範囲に含まれるので、合計額の集計はもれなく行うことができます。
 しかしながら、SUMIF関数とは、マイクロソフトのページによれば「指定した条件を満たす範囲内の値を合計する」関数です。従って、指定した条件が含まれないと、その行の数字は集計されません。
 これが、自分で行挿入してしまうと合計額があわなくなる原因です。

(4)AZの列に注目

 具体的に申し上げますと、自分で行挿入してしまうと、その行に「指定した条件」が含まれなくなってしまうのです。

 私の記憶によれば、C(2)の1号財産のSUMIF関数は確か「(AZ:AZ,1,AL:AL)」だったと思います。
 SUMIF関数では、順番に「範囲」、「検索条件」、「合計範囲」が示されます。C(2)の1号財産の例でいうと、範囲がAZの列、検索条件が「1」、合計範囲がALの列ということになります。

 それでは、この検索条件の「1」とは何かというと、実はAZの列に「1」という数字が記載されていて、その数字の「1」が検索条件となっているという仕組みになっているのです。

 AZの列にカーソルをあわせると、エクセルの表では全く見えませんが、上のバーのところ(計算式などが示されるところ)に「1」と表示されます。「1」を白色にして見えなくしているのですが、まちがいなく「1」が入力されています。これがSUMIF関数の条件の正体です。

(5)合計があわなくなる理由

 そこで、合計があわなくなる理由ですが、自分で行挿入してしまうと、AZの列に「1」が入力されていない状況になってしまうからです。そのため、SUMIF関数では、その行に入力された数値を認識しないのです。
 従って、その行の数値が認識されないことから、SUMIF関数で集計した合計額があわなくなるという現象が生じてしまうというわけです。

(6)壊れた計算式を修復する方法

 それでは、誤って自分で行挿入してしまい、C(2)の計算式が壊れてしまったらどうすればよいのでしょうか。

 その解決策は、自分で行挿入してしまった行のAZの列に半角で「1」を入力することです。そうすれば、SUMIF関数がその行のALの列に入力した数値を認識してくれます。その結果、合計額もあうようになります。

 注意点は、この「1」を入力する列のセルを「結合」することです。セルを結合しないとSUMIF関数が条件を読み取ってくれません。
 

3.検算は必ず行う

 C(2)をはじめ、その他の別表においてもエクセルで集計した合計数値は、必ず電卓または算盤で検算する必要があります。
 エクセルなどのスプレッドシートは大変便利なツールですが、計算式や計算範囲に不備があると集計漏れなどの誤りが生じてしまいます。
 従って、面倒でも、必ず電卓または算盤を使って手作業で検算を行い、その集計が正しく行われているかどうかを確認する必要があります。
 今回の場合だと、C(2)の合計があわないということは、どこかの行の挿入にミスがあったということです。
 このようにして、計算合計の確認と誤りがあればエクセルの修正を行って、正しい数値を出す必要があります。

2019年6月23日日曜日

キャッシュ・フロー計算書~消費税及び地方消費税の取扱い

1.はじめに

令和元年(2019年)6月19日の日本経済新聞に「企業投資、最高の52兆円 「ため込む」より「使う」 」という見出しの記事がありました。
 これによると、日本企業は、将来の企業の成長のために積極的に投資を行っているということです。日本経済新聞の調査では、その裏付けとして「投資キャッシュ・フロー」が「3年連続で最高」となり、「趨勢的に」増加しているということです。

 この記事に出てくる「投資キャッシュ・フロー」はキャッシュ・フロー計算書の「投資活動によるキャッシュ・フロー」のことと推測されますが、この「投資活動によるキャッシュ・フロー」には機械などの設備投資、有価証券の売買、貸付金の支出・回収などを記載する区分です。
 そのため、企業は、機械などを購入した場合、キャッシュ・フロー計算書にその支出額を反映する必要がありますが、今回は、キャッシュ・フロー計算書において、機械などを購入したときの消費税及び地方消費税の取扱いに関する留意点について記載したいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.キャッシュ・フロー計算書と消費税及び地方消費税

日本公認会計士協会が作成している「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」では、36項に、キャッシュ・フロー計算書における消費税及び地方消費税(以下「消費税等」)の処理が記載されています。
 
 それによれば、「消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の「キャッシュ・フロー計算書」上の表示」として3つの方法が記載されています。

① 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等込みの金額で表示する方法
② 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等抜きの金額で表示する方法
③ 消費税等抜きの資産・負債の増加額若しくは減少額に、又は収益若しくは費用の額に、これらに関連する消費税込みの債権・債務の期中増減額を調整して、各表示区分の主要な取引ごとのキャッシュ・フローを表示する方法

 このうち、実務で多く用いられているのは③の方法ではないかと思います。
 
 なお、消費税等の取扱いについては、
「消費税等の申告による納付又は還付に係るキャッシュ・フローは、課税取引に関連付けて区分することが実務的に困難なため、「法人税等の支払額」と同様に「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に消費税等支払額(還付額)又は未払(未収)消費税等の増減額として記載する。」
 とされています。
 実務では間接法の採用が多いので、間接法を前提とすると、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に「未払消費税等の増減額」または「未収還付消費税等の増減額」といった科目で表示されます。

3.投資活動によるキャッシュ・フローにおける消費税等の取扱い

(1)「投資」と「財務」は収入・支出ベースで記載

それでは、機械設備の購入などを行ったとき、投資活動によるキャッシュ・フローでは税抜金額で表示するのか、それとも税込金額で表示するのか、さてどちらでしょうか?
 
 以下、間接法を前提として記載しますが、間接法で作成するキャッシュ・フロー計算書においても、直接法と異なるのは「営業活動によるキャッシュ・フロー」のみであって、「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」の記載は直接法と同じです。すなわち、機械設備の購入であれば、その機械設備の購入に伴って支払った支出金額が「投資活動によるキャッシュ・フロー」に記載されます。
 すなわち、収入・支出ベースで記載することになります。

(2)機械設備の購入の仕訳

一例として機械設備の購入を取り上げます。
 例えば、機械設備を購入したときの仕訳は以下のとおりです。

【設例】
 R✕2年3月に機械設備を648千円(税込)で購入した。税率は8%とする。
 会計処理は税抜方式とする。
 決算期は3月とする。なお、機械の稼働月は4月であるため、減価償却は行わないものとする。

【仕訳】(単位:千円)
(借方)機械設備   600 (貸方)現金預金 648
    仮払消費税等 48

 簿記3級レベルの知識があれば、すぐにできる仕訳ではないかと思います。
 

(3)上記2③の方法の場合どうなるのか

次に、消費税等の取扱いについて記載します。
 上記2ではキャッシュ・フロー計算書における消費税等の取扱いについて、①~③の方法を記載しましたが、実務上多く用いられていると思われる「③消費税等抜きの資産・負債の増加額若しくは減少額に、又は収益若しくは費用の額に、これらに関連する消費税込みの債権・債務の期中増減額を調整して、各表示区分の主要な取引ごとのキャッシュ・フローを表示する方法」を前提に記載します。

 この場合、上記(2)の機械の稼働は購入にかかるキャッシュ・フローは600千円なのか、それとも648千円なのか、どちらになるのでしょうか。
 間接法であっても、投資活動によるキャッシュ・フローは収入・支出ベースで記載するので、一見、現金預金の支払額648千円のような感じもします。

 ちなみに、営業キャッシュ・フローの計算において、売上債権や仕入債務の増減額は税込金額を使用しています(上記2③参照)。

 そこで、以下、極端に簡単な設例を記載します。

【設例】
①決算期は3月とする。
②R✕1年度期首時点では、現金預金1,000千円、負債0円、純資産1,000千円であった。
③R✕2年3月に機械設備を648千円(税込)で購入した。税率は8%とする。なお、機械の稼働月は4月であるため、減価償却は行わないものとする。(上記3(2)の設例と同じ)
④税率は8%とする。
⑤会計処理は税抜方式とする。
⑥その他の取引はなかったものとする。

 その他の取引はなかったものとしますので、収益、費用は0となり、当期純利益も0とします。
 機械の購入の会計処理は上記3(2)の通りです。
 その結果、期末の貸借対照表は以下の構成になります。

 資産:現金預金352千円、未収還付消費税等48、機械設備600 資産合計1,000
 負債:0円
 純資産:1,000千円
 
 ここで、間接法でキャッシュ・フロー計算書を作成すると以下のようになります。(単位:千円)

【営業活動によるキャッシュ・フロー】
当期純利益0
未収還付消費税等の増減額△48
営業活動によるキャッシュ・フロー△48
【投資活動によるキャッシュ・フロー】
有形固定資産の購入による支出?
投資活動によるキャッシュ・フロー?
現金及び現金同等物の増減額△648
現金及び現金同等物の期首残高1,000
現金及び現金同等物の期末残高352


 ?の部分には、600か648のどちらかが入ることになりますが、逆算していただければおわかりのように?には600が入ります。
 なぜかというと、消費税等の増減は、全額が営業キャッシュ・フローにおいて処理されているからです(上記2参照「「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に消費税等支払額(還付額)又は未払(未収)消費税等の増減額として記載する。」)
 そのため、投資活動によるキャッシュ・フローは税抜金額となるわけです。
 従って、税抜方式の場合、投資活動によるキャッシュ・フローも税抜の金額が記載されることがわかりました。

4.まとめ

以上のように、間接法で税抜方式の場合、投資活動によるキャッシュ・フローで消費税法の課税仕入、課税売上に該当する取引は税抜処理で処理することになります。

 このように見てみると、特に難しくないように思えるのですが、債権債務は税込金額で増減額を算出していること、投資活動によるキャッシュ・フローは収入・支出ベースで記載することを思い浮かべると、結構迷う方はおられます。

 もっとも、キャッシュ・フロー計算書は精算表で作成されている会社が多いと思います。精算表では、貸借対照表に記載される有形固定資産の金額も税抜で記載されますし、増減の金額も税抜で記載された総勘定元帳、あるいは固定資産台帳の増加額、減少額を記載しますので、特に考えなくとも機械的に作成できます。

 精算表はかなり簡単にキャッシュ・フロー計算書を作成できるため、実務上、便利ですが、時々、キャッシュ・フロー計算書の構造も考えてみると意外な発見があり面白くなるかもしれません。

2019年6月16日日曜日

ドラッグストアの商品区分別の粗利益率

1.はじめに
 前回のブログでは「ドラッグストアの売上構成比率~食品売上割合はどのぐらいあるのか?」というタイトルで、各ドラッグストアの売上構成比率を見てみました。
 今回は、各商品区分別の利益率を見てみたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.対象としたドラッグストアとその期間
 対象としたドラッグストアとその決算期は、以下の通りです。
 これは前回と同じです。
  • ウエルシアホールディングス株式会社(平成31年2月期) (以下「ウエルシア」)
  • 株式会社コスモス薬品(平成30年5月期)(以下「コスモス」)
  • 株式会社ココカラファイン(平成30年3月期)(以下「ココカラファイン」)
  • 株式会社マツモトキヨシホールディングス(平成30年3月期)(以下「マツモトキヨシ」)
  • 株式会社ツルハホールディングス(平成30年5月期)(以下「ツルハ」)
3.算出方法
 各社とも、有価証券報告書の「第2 【事業の状況】」の「3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」に記載されている「③ 仕入及び販売の実績」より、売上高と仕入実績の金額を使用しました。
 正確には、売上総利益は「売上-売上原価」という式で算出します。この売上原価は「期首棚卸高+当期仕入額-期末棚卸高」という式で算出します。すなわち、本来は期首と期末の棚卸高を考慮する必要があるのですが、「③ 仕入及び販売の実績」では、商品区分別の棚卸高が記載されていませんので、簡便的に売上高-仕入高の差額を売上総利益とみなして計算してみました。
 ここでは、売上高と仕入高の差額を「みなし粗利益」と呼び、売上高に対するみなし粗利益の率を「みなし粗利益率」と呼ぶことにします。

4.大手ドラッグストアの商品区分別の「みなし粗利益率」
(1)ウエルシア
 医薬品他のみなし粗利益は38.9%となりました。調剤は37.3%、化粧品は31.5%です。一方、食品は20.2%でした。当然のことながら、食品よりも医薬品や化粧品の利益率のほうが高いという結果が出ています。

【ウエルシア】
区分
当連結会計年度
(自 平成30年3月1日
至 平成31年2月28日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品・衛生介護品・ベビー用品・健康食品163,777100,04363,73438.9%
調剤129,81181,45448,35737.3%
化粧品136,24593,30742,93831.5%
家庭用雑貨116,65485,76930,88526.5%
食品172,971138,08434,88720.2%
その他59,68751,2958,39214.1%
合計779,148549,954229,19429.4%

(2)コスモス
 コスモスの医薬品のみなし粗利益率は34.4%、化粧品は24.0%でした。
 医薬品のみなし粗利益率は他社と比較すると低いものとなっています。医薬品もかなり値引きして販売しているのでしょうか?
 化粧品のみなし粗利益もあまり高くありません。
 全体的にみなし粗利益率は高くないという印象です。

【コスモス】

区 分
当連結会計年度
(自 平成29年6月1日
至 平成30年5月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医 薬 品85,77256,22729,54534.4%
化 粧 品57,68343,83213,85124.0%
雑 貨93,56675,23418,33219.6%
一 般 食 品313,470274,60438,86612.4%
そ の 他7,5066,66584111.2%
合計557,999456,564101,43518.2%

(3)ココカラファイン
 ココカラファインの医薬品のみなし粗利益は41.0%、化粧品は24.5%でした。
 化粧品の利益率はコスモスと同じぐらいなので、化粧品の利益率はあまり高くないという印象です。
 食品の利益率は9.0%となっており、他社と比較すると低いものとなっています。これは扱う食品の種類によって異なってくるものと推測されます。
 前回のブログで記載しましたが、ココカラファインはマツモトキヨシと同様、医薬品、化粧品の販売に力を入れ、食品の販売にはあまり力を入れていない従来型のドラッグストアなので、利益率の高い食品はあまり扱っていないのかもしれません。

【ココカラファイン】

区分
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品108,48763,96044,52741.0%
化粧品104,51078,95525,55524.5%
健康食品10,5167,0603,45632.9%
衛生品40,96530,26310,70226.1%
日用雑貨47,78239,3828,40017.6%
食品38,37034,9203,4509.0%
合計350,630254,54096,09027.4%

(4)マツモトキヨシ
 医薬品のみなし粗利益は39.9%、化粧品のみなし粗利益率は29.5%となりました。ウエルシアと近い水準です。
 
【マツモトキヨシ】
区分
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品171,532103,01068,52239.9%
化粧品217,454153,27564,17929.5%
雑貨96,51373,74422,76923.6%
食品51,93645,1636,77313.0%
合計537,437375,194162,24330.2%

(5)ツルハ
 ツルハの医薬品のみなし粗利益率は40.3%、化粧品は30.2%となりました。
 食品は「その他」に含まれますが、こちらは21.2%となっています。

【ツルハ】

区 分
当連結会計年度
(自 平成29年6月1日
至 平成30年5月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品155,67792,98562,69240.3%
化粧品122,73885,69637,04230.2%
日用雑貨178,246138,03440,21222.6%
育児用品20,84217,8083,03414.6%
その他190,279150,00640,27321.2%
合計667,784484,530183,25427.4%

5.まとめ
 当然といえば当然ですが、どのドラッグストアも医薬品と化粧品のみなし粗利益率は高いものとなっています。一方、食品のみなし粗利益率は低いものとなっています。
 しかしながら、計算してみてわかったことは、同じ商品区分でもドラッグストアによって、みなし粗利益が異なるということです。
 医薬品のみなし粗利益はコスモス以外は概ね40.0%前後となっていますが、コスモスは34.4%です。 
 化粧品はウエルシア、マツモトキヨシ、ツルハが概ね30.0%前後、コスモスとココカラファインは24%ぐらいでした。コスモスとココカラファインが低いのは、低価格戦略をとっているためなのか、あるいは扱う化粧品の種類によるものなのか、このあたりは、もっと深く調べないと結論は出ないといえます。
 雑貨は18~23%あたりでしょうか。ウエルシアだけ26.5%と高くなっています。
 食品については、ウエルシア、ツルハ(医療用具等を含む)が20%台ですが、コスモスは12.4%、ココカラファインは9.0%、マツモトキヨシは13.0%でした。ココカラファインとマツモトキヨシの利益率が低いのは、前述したように、この2社は食品売上にはそれほど力を入れていないことが影響していると推測されます。一方、コスモスは食品に関しては、明らかに低価格戦略をとっていることが背景にあります。
 今回は、「③ 仕入及び販売の実績」の数字を使用した、みなし粗利益率を算出してみましたが、財務諸表の数値に基づいた経営指標も算出して比較してみると、またいろいろなことが見えてくると思います。
 今回はここまでとします。