2019年6月9日日曜日

ドラッグストアの売上構成比率~食品売上割合はどのぐらいあるのか?

1.はじめに
 前回の「スギHDとココカラファインが経営統合へ~両社の経営成績を比較してみると」では、後半でウェルシアとココカラファインの販売構成比率を比較してみました。
 今回は、他の大手ドラッグストアも含めた販売構成比率を比較し、各社の特徴を見てみたいと思います。

2.対象としたドラッグストアとその期間
 対象としたドラッグストアとその決算期は、以下の通りです。

  • ウエルシアホールディングス株式会社(平成31年2月期) (以下「ウエルシア」)
  • 株式会社コスモス薬品(平成30年5月期) ) (以下「コスモス」)
  • 株式会社ココカラファイン(平成30年3月期) (以下「ココカラファイン」)
  • 株式会社マツモトキヨシホールディングス(平成30年3月期) (以下「マツモトキヨシ」)
  • 株式会社ツルハホールディングス(平成30年5月期) (以下「ツルハ」)

 大手ドラッグストアとなると、スギホールディングス株式会社と株式会社サンドラッグも入りますが、前回のブログで記載したように、スギホールディングス株式会社は「調剤、物販、その他」という区分だったので対象から外しました。
 また、株式会社サンドラッグは「ドラッグストア事業」「ディスカウント事業」という区分でしたので、こちらも対象から外しました。

3.大手ドラッグストアの販売構成比率の比較
 各社とも、有価証券報告書の「第2 【事業の状況】」の「3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」に記載されている「③ 仕入及び販売の実績」のうち、販売実績について開示されているデータを一部加工して比率を出してみました。
 なお、各社の表のうち、最も構成比率が高い区分については赤ゴシックとしています。

(1)ウエルシア
 ウエルシアについては、前回のブログで見たとおり、食品売上の割合が最も高くなっています(22.2%)。食品売上割合より少し低い比率(21.0%)で医薬品・衛生介護品・ベビー用品・健康食品が続いています。


【ウエルシア】
当連結会計年度
(自 平成30年3月1日
至 平成31年2月28日)
区分金額(百万円)構成比率
医薬品・衛生介護品・ベビー用品・健康食品163,77721.0%
調剤129,81116.7%
化粧品136,24517.5%
家庭用雑貨116,65415.0%
食品172,97122.2%
その他59,6877.7%
合計779,148100.00%
(有価証券報告書を一部加工)

(2)コスモス
 コスモスは一般食品の売上構成比率が56.2%となっています。つまり、売上の半分以上が食品です。次に高いのが雑貨の16.8%となっています。
 ちなみに、同社の有価証券報告書の説明によると「一般食品」とは「加工食品・日配食品・調味料・菓子・飲料・酒」をいい、さらにこの中に記載されている「日配食品」とは「毎日消費される食品の総称であり、パン、牛乳、豆腐、納豆、卵など」ということです。
 また、健康食品やダイエット食品は「医薬品」に含まれています。
 これを見ると、コスモスは圧倒的に食品の売上構成比率が高いドラッグストアといえます。
 

【コスモス】
当連結会計年度
(自 平成29年6月1日
至 平成30年5月31日)
区 分金額(百万円)構成比率
医 薬 品85,77215.4%
化 粧 品57,68310.3%
雑 貨93,56616.8%
一 般 食 品313,47056.2%
そ の 他7,5061.3%
合 計557,999100.00%
(有価証券報告書を一部加工)

(3)ココカラファイン
 ココカラファインは、前回のブログで見たとおり、医薬品の構成比率が最も高くなっています(30.9%)。次いで、化粧品の販売構成比率が高くなっています(29.8%)。
 なお、ココカラファインは有価証券報告書に構成比率が記載されているので、数値は転載しました。

【ココカラファイン】(単位:百万円)

当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
構成比率(%)
ドラッグストア・調剤事業
医薬品108,48730.9%
一般用医薬品53,74815.3%
調剤54,73815.6%
化粧品104,51029.8%
健康食品10,5163.0%
衛生品40,96511.7%
日用雑貨47,78213.6%
食品38,37010.9%
全店計350,633100.0%
卸売37,849
小 計388,482
介護事業2,484
セグメント間消去       △2
合 計390,963
(有価証券報告書を一部加工)

(4)マツモトキヨシ
 マツモトキヨシは化粧品の売上構成比率が最も高くなっています(39.2%)。次いで、医薬品の売上構成比率が続いています(30.9%)。
 なお、有価証券報告書の「第2【事業の状況】」の中の「1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」「(3)会社の対処すべき課題」「① 新業態の開発、多店舗展開」では、「創業の原点である薬・化粧品・調剤の3つを柱に「高い専門性」「情報発信基地としての役割」「買物の楽しさ」を追求した新しいビジネスモデルの構築に取組んでまいります。」と記載されています。
 医薬品、化粧品の割合が高いのは、このような理念が背景にあるためと推測されます。


【マツモトキヨシ】
商品別
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)構成比率
小売事業
医薬品171,53230.9%
化粧品217,45439.2%
雑貨96,51317.4%
食品51,9369.4%
小計537,43796.9%
卸売事業16,9583.1%
合計554,395100.0%
(有価証券報告書を一部加工)

(5)ツルハ
 ツルハは「その他」の売上構成比率が最も高くなっています(28.3%)。
 注書きによると「その他のおもな内容は、食品・健康食品・医療用具等であります。」ということです。おそらく、この中でも食品の売上割合が最も高いと推測されますので、ツルハも食品の売上構成比率が最も高いドラッグストアといえそうです。
 次いで高いのは日用雑貨(26.5%)となっています。
 なお、ツルハも有価証券報告書に構成比率が記載されているので、数値は転載しました。


【ツルハ】
品目
当連結会計年度
(自 平成29年5月16日
至 平成30年5月15日)
金額構成比
(百万円)(%)
商品
医薬品155,67723.1
化粧品122,73818.2
日用雑貨178,24626.5
育児用品20,8423.1
その他190,27928.3
小計667,78499.2
不動産賃貸料3670.1
手数料収入6930.1
インターネット販売等4,3920.6
合計673,238100
(有価証券報告書を一部加工)


4.まとめ
 これらを見てみると、各大手ドラッグストアの方向性が見えてきます。
 ウエルシア、コスモス、ツルハは食品の売上構成比率が最も高くなっています。従って、この3社は食品の売上にかなり力を入れているドラッグストアといえます。
 ドラッグストアが食品の売上に力を入れる理由は、前回のブログで記載したとおり、食品の安売りで客を呼び寄せるためです。食品の粗利益率は低いですが、食品の安売りでやって来たお客が、ついでの買い物で、粗利益率の高い薬品や化粧品を購入してもらって利益を出すというビジネスモデルですが、ウエルシア、コスモス、ツルハはこのビジネスモデルを採用していると考えられます。
 一方、ココカラファインは医薬品、次いで化粧品、マツモトキヨシは化粧品、次いで医薬品の売上構成比率が最も高くなっています。この2社は従来型のドラッグストアといえそうです。
 
 しかし、比率を算出してみた結果、コスモスの食品の売上構成比率が56.2%とは驚きました。
 食品の売上の構成比率が高いウエルシア、コスモス、ツルハの比率を並べてみると以下の通りですが、ウエルシア、ツルハよりも圧倒的に高くなっています。
  • ウエルシア 22.2%
  • コスモス  56.2%
  • ツルハ   28.3%
 これをみても、コスモスの食品の売上への力の入れ方はかなりのものがあるといえます。

 このように、食品の販売に力を入れるドラッグストアと医薬品・化粧品の販売に力を入れるドラッグストアについては、売上構成比率を出してみるとはっきりと分かります。
 ココカラファインとマツモトキヨシは資本提携をしていますが、この2つは販売構成は似ています。そのあたりも考慮した提携かもしれません。
 今後、大手ドラッグストアの業界再編が加速していきそうですが、各社がどちらに属するドラッグストアか、という点もポイントになるかもしれません。

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