2019年6月16日日曜日

ドラッグストアの商品区分別の粗利益率

1.はじめに
 前回のブログでは「ドラッグストアの売上構成比率~食品売上割合はどのぐらいあるのか?」というタイトルで、各ドラッグストアの売上構成比率を見てみました。
 今回は、各商品区分別の利益率を見てみたいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.対象としたドラッグストアとその期間
 対象としたドラッグストアとその決算期は、以下の通りです。
 これは前回と同じです。
  • ウエルシアホールディングス株式会社(平成31年2月期) (以下「ウエルシア」)
  • 株式会社コスモス薬品(平成30年5月期)(以下「コスモス」)
  • 株式会社ココカラファイン(平成30年3月期)(以下「ココカラファイン」)
  • 株式会社マツモトキヨシホールディングス(平成30年3月期)(以下「マツモトキヨシ」)
  • 株式会社ツルハホールディングス(平成30年5月期)(以下「ツルハ」)
3.算出方法
 各社とも、有価証券報告書の「第2 【事業の状況】」の「3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」に記載されている「③ 仕入及び販売の実績」より、売上高と仕入実績の金額を使用しました。
 正確には、売上総利益「売上-売上原価」という式で算出します。この売上原価は「期首棚卸高+当期仕入額-期末棚卸高」という式で算出します。すなわち、本来は期首と期末の棚卸高を考慮する必要があるのですが、「③ 仕入及び販売の実績」では、商品区分別の棚卸高が記載されていませんので、簡便的に売上高-仕入高の差額を売上総利益とみなして計算してみました。
 ここでは、売上高と仕入高の差額を「みなし粗利益」と呼び、売上高に対するみなし粗利益の率を「みなし粗利益率」と呼ぶことにします。

4.大手ドラッグストアの商品区分別の「みなし粗利益率」
(1)ウエルシア
 医薬品他のみなし粗利益は38.9%となりました。調剤は37.3%、化粧品は31.5%です。一方、食品は20.2%でした。当然のことながら、食品よりも医薬品や化粧品の利益率のほうが高いという結果が出ています。

【ウエルシア】
区分
当連結会計年度
(自 平成30年3月1日
至 平成31年2月28日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品・衛生介護品・ベビー用品・健康食品163,777100,04363,73438.9%
調剤129,81181,45448,35737.3%
化粧品136,24593,30742,93831.5%
家庭用雑貨116,65485,76930,88526.5%
食品172,971138,08434,88720.2%
その他59,68751,2958,39214.1%
合計779,148549,954229,19429.4%

(2)コスモス
 コスモスの医薬品のみなし粗利益率は34.4%、化粧品は24.0%でした。
 医薬品のみなし粗利益率は他社と比較すると低いものとなっています。医薬品もかなり値引きして販売しているのでしょうか?
 化粧品のみなし粗利益もあまり高くありません。
 全体的にみなし粗利益率は高くないという印象です。

【コスモス】

区 分
当連結会計年度
(自 平成29年6月1日
至 平成30年5月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医 薬 品85,77256,22729,54534.4%
化 粧 品57,68343,83213,85124.0%
雑 貨93,56675,23418,33219.6%
一 般 食 品313,470274,60438,86612.4%
そ の 他7,5066,66584111.2%
合計557,999456,564101,43518.2%

(3)ココカラファイン
 ココカラファインの医薬品のみなし粗利益は41.0%、化粧品は24.5%でした。
 化粧品の利益率はコスモスと同じぐらいなので、化粧品の利益率はあまり高くないという印象です。
 食品の利益率は9.0%となっており、他社と比較すると低いものとなっています。これは扱う食品の種類によって異なってくるものと推測されます。
 前回のブログで記載しましたが、ココカラファインはマツモトキヨシと同様、医薬品、化粧品の販売に力を入れ、食品の販売にはあまり力を入れていない従来型のドラッグストアなので、利益率の高い食品はあまり扱っていないのかもしれません。

【ココカラファイン】

区分
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品108,48763,96044,52741.0%
化粧品104,51078,95525,55524.5%
健康食品10,5167,0603,45632.9%
衛生品40,96530,26310,70226.1%
日用雑貨47,78239,3828,40017.6%
食品38,37034,9203,4509.0%
合計350,630254,54096,09027.4%

(4)マツモトキヨシ
 医薬品のみなし粗利益は39.9%、化粧品のみなし粗利益率は29.5%となりました。ウエルシアと近い水準です。
 
【マツモトキヨシ】
区分
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品171,532103,01068,52239.9%
化粧品217,454153,27564,17929.5%
雑貨96,51373,74422,76923.6%
食品51,93645,1636,77313.0%
合計537,437375,194162,24330.2%

(5)ツルハ
 ツルハの医薬品のみなし粗利益率は40.3%、化粧品は30.2%となりました。
 食品は「その他」に含まれますが、こちらは21.2%となっています。

【ツルハ】

区 分
当連結会計年度
(自 平成29年6月1日
至 平成30年5月31日)
金額(百万円)
みなし粗利益
みなし粗利益率
売上高仕入高
医薬品155,67792,98562,69240.3%
化粧品122,73885,69637,04230.2%
日用雑貨178,246138,03440,21222.6%
育児用品20,84217,8083,03414.6%
その他190,279150,00640,27321.2%
合計667,784484,530183,25427.4%

5.まとめ
 当然といえば当然ですが、どのドラッグストアも医薬品と化粧品のみなし粗利益率は高いものとなっています。一方、食品のみなし粗利益率は低いものとなっています。
 しかしながら、計算してみてわかったことは、同じ商品区分でもドラッグストアによって、みなし粗利益が異なるということです。
 医薬品のみなし粗利益はコスモス以外は概ね40.0%前後となっていますが、コスモスは34.4%です。 
 化粧品はウエルシア、マツモトキヨシ、ツルハが概ね30.0%前後、コスモスとココカラファインは24%ぐらいでした。コスモスとココカラファインが低いのは、低価格戦略をとっているためなのか、あるいは扱う化粧品の種類によるものなのか、このあたりは、もっと深く調べないと結論は出ないといえます。
 雑貨は18~23%あたりでしょうか。ウエルシアだけ26.5%と高くなっています。
 食品については、ウエルシア、ツルハ(医療用具等を含む)が20%台ですが、コスモスは12.4%、ココカラファインは9.0%、マツモトキヨシは13.0%でした。ココカラファインとマツモトキヨシの利益率が低いのは、前述したように、この2社は食品売上にはそれほど力を入れていないことが影響していると推測されます。一方、コスモスは食品に関しては、明らかに低価格戦略をとっていることが背景にあります。
 今回は、「③ 仕入及び販売の実績」の数字を使用した、みなし粗利益率を算出してみましたが、財務諸表の数値に基づいた経営指標も算出して比較してみると、またいろいろなことが見えてくると思います。
 今回はここまでとします。

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