2018年10月29日月曜日

建設仮勘定の留意点(1)

1.建設仮勘定とは
 建設仮勘定とは、必ずしも決まった定義があるわけではありませんが、建設が完成するまでに行った支出を仮勘定として集計した勘定科目といえます。イメージとしては、建設に関する支出を建物等が完成するまでプールしておく勘定といった感じです。
 ちなみに、英語では Construction in Progress といい、頭文字をとってCIPということもあります。

2.よくある問題点
 社会福祉法人では新しい介護施設などの建設、医療法人では新病棟の建設といったように、社会福祉法人や医療法人では建設に関する支出が比較的よく出てきます。
 しかしながら、個々の社会福祉法人や医療法人においては、毎年新施設や新病棟を建設するわけではないので、経理担当者にとっては建設仮勘定はあまり馴染みがない科目といえます。そのため、会計処理の誤りがよく見られます。
 会計処理の誤りには、金額が小さいものもあれば、大きいものもあります。建設仮勘定の会計処理を誤ると、どちらかというと金額が大きい誤りにつながることが多くなるので注意が必要です。
 
 以下、よく見られる会計上の問題点を記載します。

① 建設中の施設等にかかる支出は建設仮勘定で会計処理すべきところ、費用勘定で処理していた。
② 建設仮勘定を建物勘定に振り替えることを失念していた。
③ 建設仮勘定の建物勘定への振り替えのタイミングを誤った。
 
3.費用勘定で処理した場合の問題点
 建設に係る支出は、建物等が完成するまで建設仮勘定に計上する必要があります。
 しかしながら、これらを費用処理すると、建物が完成して建物勘定に振り替えたときに、建物の取得価額が本来の金額よりも少なくなってしまいます。
 その結果、減価償却費も本来の金額よりも小さくなってしまいます。
 これは、費用配分の誤りであり、適正な期間損益計算を阻害することになります。

4.建物勘定への振り替えの失念やタイミングを誤った場合の問題点
 建設仮勘定は建物が完成すると建物勘定に振り返る必要がありますが、これを失念したりタイミングを誤ったりすると、減価償却費の計上のスタートがズレる可能性が出てきます。「可能性」といったのは、減価償却の開始の時期は、建物が事業の用に供されたときから始めるためです。そのため、建物が完成したからといってすぐに可動するとは限らないためです。
 この場合も、本来計上されるべき費用が計上されないことになるので、適正な期間損益計算が行われないことになります。

5.不正リスク
 最後に、建設仮勘定は、建設に関係がない支出を建設仮勘定に計上することで、費用を減少させ、利益を増大させるという不正が行われるリスクもあります。
 このように、建設仮勘定は危険性が高い科目といえます。
 従って、施設や病棟などの建設が行われる期間においては、建設仮勘定の取扱については注意する必要があります。
 「建設仮勘定の留意点(2)」では、上記のような誤りを防ぐための内部統制について説明したいと思います。





2018年10月21日日曜日

消費税軽減税率制度のポイント(2)

1.コンビニのイートインコーナーは消滅する?
 先日、コンビニエンスストア業界が店内での飲食禁止を条件に、酒類を除く全ての飲食料品を軽減税率の対象とするということで財務省と調整しているというマスコミ報道がありました。この報道の発信源がどこで、また、どのような意図で報道されたのかは不明ですが、いったん、この報道を前提に記載します。

 「消費税軽減税率制度のポイント(1)」にも記載しましたが、店内飲食の場合は標準税率10%が適用され、テイクアウトのような持ち帰り販売の場合は軽減税率8%が適用となります。
 コンビニエンスストアのイートインコーナーは、店内飲食(食事の提供)に該当しますので、イートインコーナーで飲食することを前提に販売すれば、飲食料品であっても標準税率10%が適用されることになります。

 今回の報道が真実だとすれば、このようなコンビニエンスストア内での店内飲食は、平成31年10月1日以後は行うことができなくなるということになります。

2.抜け穴がある?
 産経新聞の平成30年10月3日付の記事「コンビニ業界が全食品を軽減税率対象で調整 消費増税で イートインは「休憩施設」」では、タイトル通りイートインコーナーを休息施設と位置づけるとしていますが、記事の中に

「購入した飲食料品がトレーに載せられて座席に運ばれたり、返却が必要な食器に盛られて提供されたりすると、外食と判断される。このため、そうしたサービスはできないようにして、全ての飲食料品を持ち帰りができる状態で販売するよう徹底する。コンビニ業界は、こうした施策で、取り扱う飲食料品は持ち帰りと定義でき、客がイートインで飲食したとしても税率は8%になるとみている。
 
 という記載があります。
 しかし、「店内飲食禁止」としているのであれば、客がイートインで飲食することはできないはずです。見て見ぬふりをするということでしょうか。もし、そうであれば、記事にもあるように、外食業界からは強い批判が出るのは必至です。
 このあたりは、産経新聞が誰からどのような取材をしたのかが不明なのでなんとも言えませんが、いずれにしろ、抜け穴がないように調整をする必要があります。
 
3.店内飲食と持ち帰り販売の判定方法
(1)判定時は課税資産の譲渡等を行う時
 このように、店内飲食は標準税率、持ち帰り販売は軽減税率がそれぞれ適用ということになるので、この両方を行っている飲食店等は販売時のレジ打ちが大変となることが予想されます。
 上記1.のコンビニエンスストア業界の話も、レジ打ちの対策という目的もあるようです。
 
 この店内飲食と持ち帰り販売の判定は、「消費税軽減税率制度のポイント(1)」でも記載したように事業者が課税資産の譲渡等を行う時に判定することになります。

(2)具体的な判定方法
 それでは、その判定は具体的にはどのようにすればよいのかという問題がありますが、「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」(以下「軽減通達」)の11では、例示として顧客に意思確認を行うことが示されています。

 以下、軽減通達の該当条文を引用します。

(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
11 事業者が行う飲食料品の提供等に係る課税資産の譲渡等が、食事の提供(改正法附則第34条第1項第1号イ《31年軽減対象資産の譲渡等に係る税率等に関する経過措置》に規定する「食事の提供」をいう。以下この項において同じ。)に該当し標準税率の適用対象となるのか、又は持ち帰りのための容器に入れ、若しくは包装を施して行う飲食料品の譲渡に該当し軽減税率の適用対象となるのかは、当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。

 「適宜の方法」とされていますので、例えば、レジスペースで店員が「お持ち帰りですか、それとも店内で召し上がりますか?」と顧客にたずねるというものがあげられます。これは、ファーストフードなどでは、よく行われている方法です。
 
(3)張り紙も可
 もちろん、「適宜の方法」でよいので、これ以外の方法によっても可能です。
 先月、日本公認会計士協会京滋会で行われた研修では、大阪国税局課税第2課の担当者より、この判定方法としては、上記のほか、張り紙を掲示して申し出てもらう、という方法も考えられるという説明がありました。
 例えば、原則として持ち帰り販売とし、張り紙で「店内で飲食を希望される方は申し出てください。」と記載しておくという方法があります。その逆でもよいでしょう。

 その他にも、持ち帰りか店内飲食かを選択できるボタンをつけた端末をレジに置いて、顧客にボタンを押していただく、というのもよいかと思います。このような端末は見たことはありませんが、そのうちできるのではないかと個人的には予測しています。

2018年10月14日日曜日

経営難の病院を乗っ取る手口(1)

1.医療法人のハコ化
 最近、産経新聞に平成30年10月9日付で「「医療・福祉」の倒産最多 経営難、暴力団つけ込む 年間見込み」という記事が掲載されました。
 
 まず、記事の冒頭部分を引用します。

「医療⾏為などの診療報酬を主要な収⼊源とする「医療・福祉事業」の1〜8⽉の倒産件数が前年同期⽐40件増の196件に上り、年間件数が過去最多を更新する⾒込みであることが9⽇、⺠間信⽤調査会社「東京商⼯リサーチ」(東京)の調査で分かった。病院・医院の倒産に加え、⾝売りも続発。経営難につけ込んだ暴⼒団やブローカーらが、医療機関の診療報酬請求権を売買するなど暗躍している。

 赤文字ゴシックは私によるものですが、経営難に陥った医療法人等に対して、反社会的勢力がつけ込んでいることが記載されています。この記事では、その後、その乗っ取りの手口が具体的に記載されています。

2.資金繰りの悪化が招くハコ企業への転落
 以前、このブログでは「経営者による内部統制の無効化とハコ企業」というタイトルでブログを記載しました。
 このブログでは、資金繰りが悪化したときは内部統制の無効化が発生しやすくなり、その結果、「ハコ企業」に陥りやすくなることから、資金繰りは絶対に悪化させないようにする必要がある、という趣旨の文章を記載しました。
 資金繰りが悪化した上場企業の中には、この過程を通じてハコ企業になってしまったところも少なくないのですが、この点は医療法人、社会福祉法人、公益法人も注意する必要があるということも記載しました。理由は、こういった非営利法人は内部統制が脆弱であるためです。例えば、理事会や監事などのガバナンスも弱いため、外部の人間に簡単につけ込まれやすい傾向があるためです。

3.経営悪化の原因
 医療法人などの医療・福祉関係事業者の一部が経営難に陥り、資金繰りが悪化している理由はいろいろとありますが、記事にも記載されているように国家財政の悪化によって、診療報酬が抑制傾向にあることが原因の一つです。
 診療報酬は、公定価格なので自分で価格を決定することができません。一方で我が国の財政は悪化していますから保険による診療報酬の支払は極力少なくしたいところです。そのため、同じ医療業務を行っても、売上が段々と少なくなり、コスト削減に失敗してしまうと資金繰りが苦しくなっていくという図式です。
 このように、資金繰りが悪化すると、経営を続けていくことが苦しくなります。そうなると、冒頭に記載したように、資金の援助をちらつかせる外部の人間につけ込まれ、内部統制の無効化が次々と発生し、ハコ企業に陥ることになります。

4.診療報酬請求権の売却
 乗っ取りと利益を得る手口についても産経新聞の記事に記載されています。
 要約すると、

①理事長の権限が強いワンマン経営の病院に、トップの信頼を得て経営中枢に入り込む
②診療報酬請求権を売却して運転資金を工面するという提案を承諾させ、実際に金融機関に診療報酬請求権を売却する
③さらに金融機関からその診療報酬請求権を入手する
④ブローカーに診療報酬請求権を高値で売却する

 ということです。

 なお、この診療報酬請求権の売却ですが、これ自体は問題はありません。いわゆるファクタリングです。健全な法人でも、資金繰りをよくするためファクタリングを行っているところもあります。

 ファクタリングの会計処理は概ね以下のとおりです。

【仕訳例】
(1)売掛金1,000を金融機関に譲渡する

 (借方)未収金 1,000 (貸方)売掛金 1,000

(2)金融機関から950の入金があった。

 (借方)現金預金 950 (貸方)未収金 1,000
     支払手数料 50

 なお、支払手数料は非課税取引となりますので課税仕入にしないように注意する必要があります。

 今回はここまでとします。
 次回は診療報酬請求権が売却される背景について説明します。

2018年10月8日月曜日

消費税軽減税率制度のポイント(1)

1.軽減税率制度の概要
 消費税及び地方消費税(以下「消費税等」)の税率は、平成31年10月1日より8%から10%に引き上げられる予定です。
 この一方で、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」は消費税の軽減税率制度が適用され、これらに係る消費税率は8%となります。ただし、現行(消費税率6.3%、地方消費税率1.7%)とは異なり、軽減税率のもとでは同じ8%でも消費税率は6.24%、地方消費税率は1.76%となります。

2.軽減税率制度の対象となる人
 軽減税率制度は、一見すると飲食料品の売上や仕入を行う、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、売店、飲食業といった業者のみが対象となるように思えますが、このような業者のみならず、その対象はもっと幅広いものとなります。
 例えば、課税事業者で、飲食料品の売上がない場合でも、飲食料品の仕入がある場合は軽減税率制度の対象となります。どのような場合かというと、例としては会議のときに、会議費としてお茶やお菓子を購入する場合です。また、交際費として取引先へのお菓子などの食料品をお土産として購入する場合も該当します。福利厚生費として、従業員のためにおやつや飲み物を購入する場合も該当します。
 従って、軽減税率の対象は、非常に幅広いものとなり、かなり多くの事業者が対象となると想定されるので注意が必要です。

3.テイクアウトと店内飲食
 テイクアウトの場合は、飲食料品の販売となるため軽減税率の対象となります。一方、店内飲食の場合は標準税率(10%)が適用されます。
 この点について、先日、「コンビニに行ったとき、家で食べるつもりで弁当を買ったが、店を出るとき気が変わって、イートインで弁当を食べたときはどうなるのか?」という質問がありました。この類の質問・疑問は多くの人が持っているのではないかと思います。
 この場合は、軽減税率の対象となり、標準税率の適用は一切ありません。
 なぜかというと、軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が課税資産の譲渡等を行う時で行うことになるためです。
 具体的には、この場合、弁当を販売する時点で軽減税率か標準税率の適用かが決まるということになります。家で食べるつもりということで販売すれば、この時点で軽減税率の適用が決定されます。
 従って、一度決まった税率は、その後変わることは絶対にありません。

2018年9月29日土曜日

平成30年度民間社会福祉施設長研修会で使用したレジュメについて

 平成30年8月7日にキャンパスプラザ京都で開催された「平成30年度民間社会福祉施設長研修会」で使用した資料が京都府の平成30年度民間社会福祉施設長研修会 会議資料というページに掲載されています。

 私のレジュメは「資料3」として掲載されています。
 京都府による指導監査の重点ポイントが記載された資料も掲載されています。

 「社会福祉法人会計でのチェックポイント」というタイトルですが、内容は内部統制です。もともと京都府がこのタイトルを「仮題」として設定されていたのですが、そのまま使用しました。 

 参考としていただけますと幸いです。 


2018年9月12日水曜日

社会福祉法人向けセミナー~Web申込みについて


 平成30年10月に開催する社会福祉法人向けのセミナーですが、Web申込みもできます。
  
 Web申込みのページはこちらです。

 皆様のご参加をお待ちしています。



2018年9月9日日曜日

公益財団法人を設立するときの注意点(1)

1.はじめに 
 公益財団法人(公益認定を受けた一般財団法人をいいます。(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)2条Ⅱ)は、個人が寄附した場合でも一定の要件を満たせば、譲渡所得税について非課税になるなど税法上のメリットがあるため、近年、富裕層を中心に公益財団法人を設立したいというニーズが非常に高まっています。
 確かに、公益財団法人は個人、法人にとって税法上のメリットがありますが、公益法人は個人や法人が節税を行うために設けられた制度ではありませんので、あくまで、公益の増進のために行うという意思をもって設立することが必要です。
 今回は、この公益財団法人を設立するにあたっての注意点を記載していきます。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.税法上のメリットの例
(1)譲渡所得税の非課税
 個人が土地や有価証券といった財産を法人に寄附(法人に対する贈与又は遺贈のほか、法人を設立するための財産の提供)を行った場合、原則として、その時における価額に相当する金額(時価)により、これらの資産の譲渡があつたものとみなされることから、資産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されることになります(所得税法59条①Ⅰ)。
 しかしながら、これらの財産を公益法人等に寄附した場合に、その寄附が一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、譲渡所得税については非課税となります。すなわち、税金は課せられません(租税特別措置法40条)。

(2)相続税の非課税
 個人が相続財産を公益法人に寄附した場合、原則として、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象とはならず、非課税となります。すなわち税金は課せられません(租税特別措置法70条)。

3.親族規制
(1)ファミリー経営は不可
 公益法人には、このような税法上のメリットがあるため、相続税対策や事業承継対策として公益財団法人を設立したいという富裕層は非常に多くなってきています。
 しかしながら、公益財団法人はあくまで公益の増進を目的とする法人なので、この目的を第一にして設立を行う必要があります。すなわち、税法上のメリットを得るために設立する法人ではありませんから、自分の好きなように運営できるものではないということを知っておく必要があります。

(2)親族規制の内容
 公益法人は上記の通り、公益の増進を目的として運営される法人なので、特定の一族による支配運営が行われると、その一族の私利私欲のために公益財産が悪用される恐れがあります。
 そこで、公益法人では親族規制を設けています。
 具体的には、まず、各理事について、当該理事及びその配偶者又は三親等内の親族(これらの者に準ずるものとして当該理事と政令で定める特別の関係がある者を含む。)である理事の合計数が理事の総数の3分の1を超えないものであるというものです。これは監事についても、同様です(認定法5条Ⅹ)。
 評議員については、法令上は親族規制は設けられていませんが、上記の譲渡所得税の非課税の特例の適用を受けるためには、評議員についても親族規制を設ける必要があります(租税特別措置法40条)。

(3)許容範囲はどこまでか
 親族規制は、3分の1規定とも言われることがありますが、「3分の1を超えない」ということが要件となっていますので、3分の1まではOKということになります。
 具体例では、理事が6人いる場合、2人までは配偶者や三親等内の親族等であっても問題はないということなります。

(4)三親等内の親族とは
 三親等内の親族は本人及び配偶者の曽祖父・曾祖母や叔父・叔母を含みます。従って、範囲は広いものとなります。ただし、従兄弟姉妹(いとこ)は四親等なので、範囲外となります。
 参考資料として社会福祉法人向けのものですが、兵庫県が親族関係図を公表していますので、ご参照ください。

(5)特別の関係がある者
 特別の関係がある者とは以下のとおりです(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令4条)。
 以下をご覧になってもわかるように、範囲は広いものとなります。
 自分の会社の使用人(従業員)を理事にはめ込んで、ワンマン経営を行おうということも不可です。

一 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
二 当該理事の使用人
三 前二号に掲げる者以外の者であって、当該理事から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの
四 前二号に掲げる者の配偶者
五 第一号から第三号までに掲げる者の三親等内の親族であって、これらの者と生計を一にするもの

4.最後に
 このように、公益法人になるためには、まず親族の3分の1規定をクリアする必要があります。すなわち、自分のファミリーや自社の従業員とは全く関係のない外部の人を評議員、理事、監事にする必要があるということです。
 ポイントとしては、せっかく作った公益法人が悪意のある人間に乗っ取られることがないよう、信頼のおける人に就任していただくことです。
 従って、人選には時間をかける必要があります。
 公益法人はファミリーのみで構成することはできませんから、すぐには人は集まりません。結局、一朝一夕では公益法人は設立できないということをおさえておく必要があります。
 なお、注意点は他にもまだまだありますので続きを次回以降、記載していきたいと思います。
 

2018年9月1日土曜日

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と資金繰り(1)

1.概要
 今回は、近年、経営指標としても注目されているキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle 以下「CCC」)について記載します。
 CCCとは、簡単に言うと資金を投下してから資金が回収されるまでの期間をいいます。このCCCの数値が小さければ、資金効率がよいということになります。
 
2.CCCの仕組み
(1)計算式と図
 計算式は以下のとおりです。

 CCC=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

 計算式だけだとわかりにくいので、図で示してみます。

【図1】

 この場合の仕入は掛仕入、売上は掛売上を前提としています。
 上図から分かる通り、CCCは掛仕入の代金を支払ってから売掛金の回収が完了するまでの期間です。資金の投下のために出ていったお金が、成果として入ってくるまでの期間ともいえるでしょう。
 これからも分かる通り、この期間が短ければ短いほどよいことになります。逆に、長いということは、お金が入ってくるまでの期間が長いということですから、資金繰りが苦しくなります。
 そのため、CCCが長くならないようにするとともに、CCCを短くしていくことが資金繰りのためには重要です。

(2)資金繰りの重要性
 以前、「事業計画と資金繰表~継続企業の前提(2)」では「企業の継続性が成り立たなくなるとは、経営が破綻するということですが、より具体的に言うと、資金繰りがショートするということです。」と述べました。企業の存続は資金繰りにかかっています。そのため、資金繰りの管理は非常に重要です。
 しかしながら、現実には資金繰りの管理がうまく行かず、破綻するケースも見られます。特に、損益計算上では黒字なのに、資金繰りがショートする「黒字倒産」のケースも見受けられます。これは「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(1)」「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(2)」で述べたように、発生主義会計のもとでは「収益・費用」と「収入・支出」にタイミングのズレがあることから、発生主義会計の損益計算書のみを見ていると、キャッシュ・フローが盲点になってしまうからです。
 従って、キャッシュ・フロー計算書を作成し、キャッシュ・フローを管理する必要があるというわけです。
 ただし、キャッシュ・フロー計算書は結果を示したものに過ぎず、ここからキャッシュ・フローを改善するにはどのような手段をとればよいのかということになると、キャッシュ・フロー計算書のみでは苦しいものがあります。
 しかしながら、今回のCCCは資金繰りの指標を示すものなので、CCCを計算してCCCを短くする方策をとり、資金繰りを管理することで、資金繰り及びキャッシュ・フローの改善につながります。

3.公認会計士試験より
 最後に、平成30年度の公認会計士試験にもCCCの問題が出ていましたので紹介します。
 ちなみに、なぜ知っているのかというと、身近に受験生がいるので公認会計士試験については気になっているためです。なお、試験問題は金融庁の公認会計士・監査審査会のこちらのページで見ることができます。
 CCCが出ていたのは会計学(午前)の問題です。(会計学(午前)は管理会計論です。)
 そこで、会計学(午前)の第2問問題1の一部を引用してみます。ぼやけていますがご容赦ください。
 
(平成30年公認会計士試験論文式試験会計学(午前)の問題より)

 問2では、20☓1年と20☓2年のCCCが問われています。
 「ク」の欄は簡単に求めることができます。
  CCC=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間 ですから、

 62+58-51=69日 となります。
 
 なお、この会計学(午前)第2問問題1は、見たところとても時間がかかるのでまともに手をつけてはいけない問題です。その中で「ク」だけは単独でできる問題でした。
 
 ちなみに、以前にもCCCの問題は管理会計論で問われています。

4.最後に
 CCCは以前より管理会計の世界で紹介されていたものですが、近年CCCを重視する企業も増えています。
 中小企業などではキャッシュ・フロー計算書やCCCを取り入れられていないところが多く見られますが、資金繰りの管理・改善のためにぜひ、導入していただきたいと思います。


2018年8月29日水曜日

社会福祉法人向けセミナー開催のお知らせ

 平成30年10月に社会福祉法人向けセミナーを開催することになりました。
 テーマは、会計監査でよく問題となる主要論点の解説です。

 会場は以下の3会場です。セミナー開始時刻はいずれも14時00分です。

 10月4日(木)   ハートピア京都
 10月9日(火)   阪急グランドビル
 10月11日(木) 神戸国際会館

 現在、平安監査法人HPへのアップロードを準備中ですが、先行して以下のページを印刷していただき、FAXでお申し込みいただいても結構です。
 FAX番号は 075-256-1231 です。

 今回はどの会場も席数数が少なくなっていますので、ぜひお早めにお申し込みください。
 
 皆様のご来場をお待ちしております。
 
 

2018年8月26日日曜日

公益法人の立入検査のポイント(1)

1.概要
 8月も終わりに近づき、9月になろうとしています。9月になると行政庁による公益法人の立入検査が本格的に始まります。もちろん、8月に実施しているところもありますが、どちらかというと9月以降が多くなります。
 公益法人の制度改革以後、ほぼすべての公益法人(公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人をいいます。以下同じ。)には立入検査が入っていますが、近年設立された公益法人やこれから公益法人を設立しようとされる方もいらっしゃると思います。特に、事業承継や相続税対策のために今後、公益法人を設立したいという方は多くいらっしゃいます。
 そこで、今回は公益法人の立入検査のポイントについて記載したいと思います。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.立入検査とは何か
 立入検査の根拠は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)の第27条①に求められます。
 認定法27条①では「行政庁は、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、内閣府令で定めるところにより、公益法人に対し、その運営組織及び事業活動の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該公益法人の事務所に立ち入り、その運営組織及び事業活動の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」と定められています。
 これを根拠に、行政庁が立入検査を行うわけです。
 立入検査は、条文のとおり、公益法人の事業について適正な運営ができているかどうかを調べるために行われます。
 具体的には、大きく分けて①機関運営や公益事業の実施といったガバナンス面と②内部統制を含む会計面について調べられます。

3.行政庁ごとの実施例
 立入検査のスタイルは行政庁によって異なります。
 私もこれまで数多くの立入検査に立ち会ってまいりました。
 ここでは、私の知っている範囲で各行政庁の立入検査の実施状況を記載してみます。ただし、私の記憶違いもあるかもしれませんので、あくまで参考でお願いいたします。

(1)内閣府
 日数:1日
 時刻:午前11時~午後4時頃
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね4年に1回
 特徴:内閣府はプロパー職員は少なく、大抵他の省庁から出向されている方です。
東京から出張されるので、関西あたりに来られるときは日帰りになります。

(2)京都府
 日数:1日
 時刻:午後1時~午後5時30分
 人数:3~4名 うち1名は公認会計士
 内容:ガバナンス面と会計面
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:①京都府は、ガバナンス面と会計面のそれぞれについて担当者がつき、同時並行で検査を行っていきます。会計面は公認会計士が行います。時間が午後のみと短い分、役割分担を行って効率的に行うということだと思います。そのため、担当者数も多めになります。
②事前に立入検査のチェックポイントが送られてきます。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。
③事業報告等については立入検査当日は見ないことになりました。

(3)滋賀県
 日数:1日
 時刻:午前10時(だったと思います)~午後5時30分
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:①滋賀県は前半をガバナンス面、後半を会計面といった感じで進めていました。役割分担はなく、ガバナンス面、会計面を二人で一緒に見ていました。
 ②滋賀県は滋賀県公益認定等委員会のHPで、立入検査実施計画を公表し、どの年度にどの公益法人に立入検査を行うのかというスケジュールを公表しています。また、立入検査チェックシートも公表しています。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。

(4)大阪府
 日数:1日
 時刻:午前10時~午後5時30分
 人数:3~4名 うち1名は公認会計士
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:4年に1回
 特徴:ガバナンス面と会計面についてそれぞれ担当者がつき、同時並行で行っていきます。京都府と同じスタイルですが、大阪府は終日実施します。
 頻度は4年に1回となったそうです。

(5)兵庫県
 日数:1日
 時刻:午前9時30分~午後5時30分
 人数:2名
 内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
 頻度:概ね3年に1回
 特徴:事業報告等の担当者、ガバナンス面・会計面の担当者がいて、同時並行で行っていきます。
 事前に準備していただきたい資料のリストが送られてきます。

 日数は、どの行政庁も通常は1日です。ただし、ごくまれに2日間にわたって行われるところもあるそうです。
 また、終了時刻ですが、予定よりも早い時刻に終わることもよくあります。

4.最後に
 今回は、立入検査の概要面について記載しました。
 公益法人であれば、立入検査は必ず実施されます。これから公益法人を設立することを考えられている方は、公益法人は設立したら終わりではなく、設立後もいろいろな規制が続くということを知っていただきますようお願いいたします。

2018年8月18日土曜日

組織化の理論と実務(4)

1.概要
 今回は組織化を行うための手段として伝統的組織論に基づく管理原則を紹介したいと思います。
 この管理原則は、集団を組織として機能させるためには、押さえておくべき基本原則です。組織化が行われていない、あるいは組織化が不十分な会社等はこの管理原則に不備が見られることが非常に多いです。

 管理原則にはいろいろなものがありますが、ここでは数回にわたって(1)命令一元化の原則、(2)専門化の原則、(3)スパン・オブ・コントロール、(4)権限責任一致の原則、(5)階層化の原則、(6)権限委譲の原則、をあげてみたいと思います。

2.命令一元化の原則
(1)意義
 命令一元化の原則とは、部下は直属の上司一名から命令や指示を受けるべきであるとする原則です。

 なぜかというと、部下が複数の上司から命令や指示を受けると、部下が混乱するからです。具体例を上げると、二人の上席からそれぞれ期限のある仕事をふられると、ふられた部下としては、2つも同時に期限のある仕事を進めることは困難となりどうすればよいのか困ってしまいます。
 また、A部長とB部長とで主張が異なるというケースもあります。そうなると部下はどちらの方針で行動すればよいのかわからなくなってしまいます。

 このように、複数の上司から命令や指示を受けると、部下が混乱してしまい業務を効率的に行うことが困難となってしまいます。これは、結果として組織全体の業務効率が落ちることにつながります。
 従って、部下は直属の1名の上司から命令・指示を受ける体制とすることを原則とする必要があります。

 なお、命令一元化の原則は絶対的なものではなく、ファンクショナル組織やマトリックス組織のように、複数の上司により命令・指示が出るという組織もあります。

(2)命令一元化の原則確立の方法
 組織化がうまく行っていない会社等ではこの命令一元化の原則が取り入れられていないケースが多く見れらます。これは階層化の原則や権限委譲の原則にもつながるのですが、職務権限規程に基づいた指揮命令系統が確立されていないことが原因です。
 そのため、例えば、スタッフが課長から指示を受けて行ったことが、翌日部長にひっくり返されて、また仕事を一からやり直さなければならないといった理不尽なことが起きてしまいます。

 命令一元化の原則を確立するには、職務権限規程と組織図をしっかりと作り、指揮命令系統を具体的に定めるとともに、上の人間や他の部署の人間が権限を無視して口出しをしないという組織風土を醸成することも必要です。

 そのためには、トップの役割が重要となります。このような組織風土は、役員や従業員任せではなかなか形成されません。役員や従業員の多くは、現状を変えることに抵抗があるためです。そのため、トップは現状の組織風土を破壊する意気込みでドラスティックに改革を行う必要があります。
 
3.専門化の原則
(1)意義と効果
 専門化の原則とは、業務を細分化し、その細分化した業務について専門的に行うこととする原則です。

 専門化については、業務プロセスを細分化し、ひとつひとつの作業を単純化することから始まります。これは「組織化の理論と実務(3)」で触れた業務の標準化につながります。このように標準化された各業務を特定の人間が行うことが専門化となります。
 具体例をあげると、営業であれば営業を、経理であれば経理を、法務であれば法務を、といったように会社の業務を細分化してそれぞれの業務について専門的に業務を行うということです。

 このように、特定の業務を専門的に行うと、経験値が高まり業務のスピードが高まります。また、長い期間、専門的に行うため、その業務に対する深度も増します。その結果、組織全体として業務の効率化が進みます。

(2)中小企業における問題点
 一見すると、専門化の原則は当然のように思われるかもしれませんが、この専門化の原則が取り入れられていない会社等は実は多く見られます。特にいわゆる中小企業では、その傾向が強く見られます。

 例えば、管理部という部署があり、その下に総務課、経理課といった課を組織上は設けているのですが、実際は経理課の職員が総務の業務も行っていたり、管理部長が営業も行っていたり、というケースが見られます。

 これは中小企業では人が少ないことが原因なのですが、一方で、トップの意識に問題があることが原因と思われるケースも多く見られます。すなわち、トップが「管理系の人間は売上に貢献していないのだから、そんなに人を置く必要はない。」と考え、管理系の業務の人員を極端に少なくしているケースがあるのです。そのため、管理系の人員が不足し、経理の人が総務も行うということが起こってしまうわけです。

 これでは、専門化が実現できません。例えば、経理の人は経理の仕事のみを行うことで、スキルが向上し業務スピードも上がってきます。しかし、経理の人が総務の仕事も行うようだと、経理業務のスピードが上がらないどころか、大量の業務をこなさなければならず、業務効率が下がってしまいます。これは結果的に会社全体の業務効率が落ちる結果となります。

 確かに、ホワイトカラーの人員と人件費が必要以上に多いと、間接部門の肥大化となり、会社全体の収益性は落ちます。バブル崩壊後の日本企業では、直接に収益を生み出さない間接部門が肥大化していたところが多かったため、リストラクチャリング(事業の再構築)を進めていきました。
 しかしながら、管理業務の人員が少なすぎると、上記のように、逆に業務の効率性が落ち、収益性も落ちてしまいます。

 従って、専門化の原則を進めるために必要な最低限の人員は揃えて、専門化を促進し、会社全体の業務効率を上げていく必要があります。