2018年9月1日土曜日

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と資金繰り(1)

1.概要
 今回は、近年、経営指標としても注目されているキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle 以下「CCC」)について記載します。
 CCCとは、簡単に言うと資金を投下してから資金が回収されるまでの期間をいいます。このCCCの数値が小さければ、資金効率がよいということになります。
 
2.CCCの仕組み
(1)計算式と図
 計算式は以下のとおりです。

 CCC=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

 計算式だけだとわかりにくいので、図で示してみます。

【図1】

 この場合の仕入は掛仕入、売上は掛売上を前提としています。
 上図から分かる通り、CCCは掛仕入の代金を支払ってから売掛金の回収が完了するまでの期間です。資金の投下のために出ていったお金が、成果として入ってくるまでの期間ともいえるでしょう。
 これからも分かる通り、この期間が短ければ短いほどよいことになります。逆に、長いということは、お金が入ってくるまでの期間が長いということですから、資金繰りが苦しくなります。
 そのため、CCCが長くならないようにするとともに、CCCを短くしていくことが資金繰りのためには重要です。

(2)資金繰りの重要性
 以前、「事業計画と資金繰表~継続企業の前提(2)」では「企業の継続性が成り立たなくなるとは、経営が破綻するということですが、より具体的に言うと、資金繰りがショートするということです。」と述べました。企業の存続は資金繰りにかかっています。そのため、資金繰りの管理は非常に重要です。
 しかしながら、現実には資金繰りの管理がうまく行かず、破綻するケースも見られます。特に、損益計算上では黒字なのに、資金繰りがショートする「黒字倒産」のケースも見受けられます。これは「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(1)」「キャッシュ・フロー計算書作成の必要性(2)」で述べたように、発生主義会計のもとでは「収益・費用」と「収入・支出」にタイミングのズレがあることから、発生主義会計の損益計算書のみを見ていると、キャッシュ・フローが盲点になってしまうからです。
 従って、キャッシュ・フロー計算書を作成し、キャッシュ・フローを管理する必要があるというわけです。
 ただし、キャッシュ・フロー計算書は結果を示したものに過ぎず、ここからキャッシュ・フローを改善するにはどのような手段をとればよいのかということになると、キャッシュ・フロー計算書のみでは苦しいものがあります。
 しかしながら、今回のCCCは資金繰りの指標を示すものなので、CCCを計算してCCCを短くする方策をとり、資金繰りを管理することで、資金繰り及びキャッシュ・フローの改善につながります。

3.公認会計士試験より
 最後に、平成30年度の公認会計士試験にもCCCの問題が出ていましたので紹介します。
 ちなみに、なぜ知っているのかというと、身近に受験生がいるので公認会計士試験については気になっているためです。なお、試験問題は金融庁の公認会計士・監査審査会のこちらのページで見ることができます。
 CCCが出ていたのは会計学(午前)の問題です。(会計学(午前)は管理会計論です。)
 そこで、会計学(午前)の第2問問題1の一部を引用してみます。ぼやけていますがご容赦ください。
 
(平成30年公認会計士試験論文式試験会計学(午前)の問題より)

 問2では、20☓1年と20☓2年のCCCが問われています。
 「ク」の欄は簡単に求めることができます。
  CCC=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間 ですから、

 62+58-51=69日 となります。
 
 なお、この会計学(午前)第2問問題1は、見たところとても時間がかかるのでまともに手をつけてはいけない問題です。その中で「ク」だけは単独でできる問題でした。
 
 ちなみに、以前にもCCCの問題は管理会計論で問われています。

4.最後に
 CCCは以前より管理会計の世界で紹介されていたものですが、近年CCCを重視する企業も増えています。
 中小企業などではキャッシュ・フロー計算書やCCCを取り入れられていないところが多く見られますが、資金繰りの管理・改善のためにぜひ、導入していただきたいと思います。