今回はキャッシュ・フロー計算書について記載します。
キャッシュ・フロー計算書の作成方法については、多くのサイトで紹介されていますので、当ブログでは作成方法について多くは触れず、主に中小企業向けに、キャッシュ・フロー計算書の有用性を記載していきたいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.キャッシュ・フロー計算の目的
キャッシュ・フロー計算書は、1会計期間のキャッシュ・インフローとキャッシュ・アウトフローを示すので、資金の流入と流出を知ることができます。
損益計算書の収益と費用は発生主義で計上されているので、収益と費用は必ずしもその期間の資金の流入と流出を表してはいません。そのため、損益計算書での損益計算のみを行っていると、資金繰りの悪化に気づかず、黒字にもかかわらず、突然資金ショートを起こすリスクもあります。これを「黒字倒産」といいます。
逆に、損益計算書では赤字であっても、キャッシュ・フローはプラスというケースもあります。
上場企業など金融商品取引法監査の適用を受ける会社では、キャッシュ・フロー計算書の作成・開示が義務付けられていますが、そうではない会社、特にいわゆる中小企業ではキャッシュ・フロー計算書を作成している会社は多くありません。
しかしながら、キャッシュ・フロー計算書は、1会計期間の資金の流入と流出を知ることができるため、非常に有用です。従って、ぜひ作成されることをおすすめします。
また、作成されるときは、月次決算とあわせて、キャッシュ・フロー計算書も月次で作成すると有用です。
3.作成のためのツール
キャッシュ・フロー計算書には、営業活動によるキャッシュ・フローの示し方として直接法と間接法がありますが、実務上、間接法を採用している会社のほうが圧倒的に多いです。理由は、間接法のほうが作成しやすいからです。
そこで、間接法で作成することを前提に、作成のためのツールを記載します。キャッシュ・フロー計算書の作成のツールとしては、実務上は精算表を使用して作成することが多いです。
精算表では、前期と当期の貸借対照表の数値の差額を、キャッシュ・フロー計算書に落とし込むような形で数値を入力していきます。この精算表では、タテの列とヨコの列に検算式が組み込まれていますが、どの列もゼロになるように入力する必要があります。入力誤りがあれば、ゼロになりませんので、誤った場合はすぐにわかることになります。
ただし、精算表は、自分で一から作成するのは非常に難しいので、Web上で公開されているテンプレートを利用するほうがよいです。「キャッシュ・フロー計算書 精算表」と検索すると、いろいろなサイトが出てきますので、使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
4.精算表の作成方法
精算表は便利なツールです。しかしながら、最初は精算表を作成するのにも時間がかかると思います。というのは、科目設定の仕方や入力の仕方については、初めての人だとわかりにくいからです。
そこで、最初は、顧問の公認会計士や税理士など、精算表を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方を知っている会計専門家に作成してもらうのがよいと思います。一回設定をしてもらえば、後は貸借対照表の数値を入力すれば、概ね完成に近づきます。
そして、最初の数回は会計専門家が作成しますが、その後は会社の経理部で自製し、チェックをしてもらうという流れになるとよいと思います。
5.精算表の見本
精算表については、日本公認会計士協会の会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」にも記載されています。
日本公認会計士協会のHPで見ることができるのですが、探しにくいと思いますので、順序を記載しておきます。
ホーム→専門情報→実務指針等公表物一覧→報告書 と進んでください。(「会計制度委員会報告」なので「報告書」のカテゴリーとなります。)
この中に、【会計制度委員会報告】の欄がありますので、委員会報告の8号の「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」をクリックすればPDFファイルがダウンロードされます。
この中の設例に精算表も紹介されています。
以下は、設例に記載されている精算表の一部を抜粋したものです。文字がぼやけていますがご了承ください。