今回は、財務諸表監査の監査手続の一つである「確認」(Confirmation)について記載します。
平成29年度から一定規模の社会福祉法人は法定監査の対象となりました。当該社会福祉法人のほとんどは「確認」という監査手続を受けたことはないと推測されます。そこで、今回のブログでは「確認」の意義や目的を簡単に記載いたします。
1.意義
確認とは「紙媒体、電子媒体又はその他の媒体により、監査人が確認の相手先である第三
者(確認回答者)から文書による回答を直接入手する監査手続」をいいます(監査基準委員会報告書(以下「監基報」と称す。)505 5(1))
確認では、赤ゴシックの文書による回答を直接入手するという点が重要です。
また、この定義には記載されていませんが、監査人が当該文書を相手先に発送する、という点も重要です。
目的は、確認に係る文書の発送から回収に至るまで、当該文書を被監査会社の支配下に置かないためです。
これにより、強い証明力を持つ監査証拠を得ることができます。
なお、確認の文書は被監査会社、すなわち、監査を受ける側が作成します。
期末監査時は、監査人が監査意見を出して決算が確定するまでの残り時間が限られていますので、早期に決算を締めることが重要となります。
2.対象となる勘定科目など
(1)残高に対する確認
確認の主な対象は、預金、証券取引、受取手形、売掛金、貸付金、未収金、支払手形、買掛金、未払金、借入金、リース、外部保管の棚卸資産などです。他の科目でも必要と認めた場合は確認を行います。
これらは主に残高についての立証が目的なので「残高確認」といい、略して「残確」と呼ばれたりもします。
残高以外にも、例えば、金融機関に対する確認では、担保情報、デリバティブ取引の情報なども得ることができます。
大昔の話ですが、当時は預金について確認を行うことが監査基準に明確に定められていなかったこともあり、預金について確認を行わなかった結果、定期預金を担保に簿外で借入が行われていたことを看過してしまったことがあったそうです。このようなこともあったことから、金融機関に対する確認は必須です。
(2)法律事務所に対する確認
顧問契約を締結している法律事務所や弁護士に対しても確認を発送します。現在係争中の事案などの有無を回答していただき、重要な後発事象、重要な偶発債務として注記すべきものの有無を把握するためです。
なお、法律事務所に対する確認書には、期末時点で未払となっている弁護士報酬も記載していただきます。この回答によりカットオフエラーが見つかるときもよくあります。
また、顧問契約の締結の有無にかかわらず、スポットで法律事務所や弁護士に相談している場合も、確認を発送します。
(3)取引に対する確認
取引に対する確認を行うこともあります。これは「取引確認」という呼び方をすることもあります。
取引と言っても様々ですが、ソフトウェアの販売取引については取引確認を行うことが結構あるのではないかと思います。ソフトウェアは無形物なので、モノの動きが把握しにくく、また循環取引の恐れもあるので、ソフトウェアの販売の事実や内容について、相手先から回答を得るわけです。
余談ですが、かつて、某大手監査法人が、取引先の取引先に対して確認を行おうとしたところ、IT系の被監査会社から解任されたということがありました。解任理由は「信頼関係を損なった」という内容だったと思います。
推測ですが、現場の監査チームは循環取引の疑いがあると見たのだと思います。
もちろん、ソフトウェアに限らず、モノの売上などについても必要と認めた場合は取引確認を行うことがあります。
3.最後に
確認については、他にも多くの論点があるのですが、長くなるので別の機会に記載いたします。
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