2019年8月25日日曜日

「梅田」が「大阪梅田」へ~変わる関西の駅名

1.阪急・阪神が梅田駅の名称を改称


 阪急電鉄と阪神電鉄は、令和元年10月1日より梅田駅の名称を「大阪梅田」駅に改称します。
 理由としては、JRは「大阪」なのに、阪急と阪神は「梅田」となっていて、ほぼ同じ場所にあるのに駅名が異なっていることから外国人観光客からは「わかりにくい」という声が上がっているため、と言われています。
 確かに、最近、関西に訪れる外国人観光客は急激に増えています。いま私が住んでいる京都も外国人を見ない日は全くないほど、外国人観光客が町中にいます。
 外国人といっても様々ですが、私の知る限り、アメリカでは"OSAKA"の知名度は高かったです。多くのアメリカ人が"TOKYO"と"OSAKA"は知っていました。
 また、おそらく、どのガイドブックにも、大阪は日本第2の都市として紹介されているでしょうから、関西に来る外国人は"OSAKA"の名前が頭に入っていると思います。
 そんな中で、阪急と阪神の駅名が「梅田」となっていると「では、阪急と阪神のOSAKA駅はどこにあるのか?」と思ってしまっても不思議ではありません。梅田駅のほかに阪急や阪神の大阪駅があるのだろうと思う人は多いと思います。

2.かつての阪急の行先案内表示


 私も小学校の時に関西に引っ越してきたので、当時は関西の事情が分からず、「梅田」という場所は大阪駅とは全く別の場所にあるのだろうと思っていました。そのため、「梅田」と「大阪」は別物という印象が強かったです。
 そんな当時、阪急のとある駅で不思議なものを見ました。
 駅のホームに設置している行先案内表示ですが、そこには行先が「大阪」と表示されていたのです。これは昭和50年代後半、西暦では1980年代の話です。「大阪梅田」ではなく「大阪」の二文字のみでした。
 「あれ? 「梅田」じゃないの?」ととても不思議に思いましたが、どうも阪急は当時から梅田=大阪という認識だったようです。
 ちなみに、阪急電車の車両の方向幕には「梅田」と表示されていました。時刻表も「梅田」でした。従って、方向幕や時刻表には「梅田」となっているのに、駅のホームの案内表示は「大阪」という別の表示がされているという二重表記が阪急沿線では行われていました。
 今思うと、阪急は駅名を「梅田」ではなく「大阪」と名乗りたかったのかなと思ってしまいます。

3.「三宮」は「神戸三宮」へ


 少し前ですが、阪急と阪神の「三宮」は「神戸三宮」に変更となりました。
 これは「三宮がどこにあるのかがわかりにくい」という声が多かったということや神戸の中心ということを示したいということだったそうです。
 一方、JRは「三ノ宮」という駅名であり、「ノ」が入りますが、読み方は「さんのみや」であり、阪急や阪神と同じです。
 そのため、大阪と梅田のように同じ場所にあって駅名が異なるというものではありません。従って、大阪と梅田と異なり、三宮は「神戸」であるということを示したいということのようです。
 三宮は神戸市役所もあり、神戸の中心地ですが、県外ではそのことを意外に知られていないようです。このあたりは、例えば、名古屋の栄のような感じでしょうか? 
 そのため、JR神戸駅が神戸の中心と思ってしまう人もいるそうです。しかしながら、実はJR神戸駅は神戸の中心ではありません。
 ちなみに、阪急の行先案内表示は昔から「三宮」でした。こちらが「神戸」とならなかったのは、相互乗り入れしている神戸高速鉄道に「高速神戸」という駅があるためです。
 

4.「河原町」は「京都河原町」へ


 阪急京都線の終点は河原町駅ですが、こちらも令和元年10月1日より「京都河原町」に変わるということです。阪急の説明では「「京都」の中心部に位置するターミナル駅であることを分かりやすくするため」ということです。
 確かに、「河原町」だと府外の人はここが京都の繁華街だということはわかりにくいと思います。
 こちらも三宮と同様、京都の中心部であることを示すための変更です。

5.目的は?


 今回は阪急の駅名の変更を取り上げましたが、では駅名を変更する理由は何でしょうか? これは最終目的は収益の増加、利益の増加のためと推測されます。
 まず、国内人口は少子化、人口減が進んでいるため、限定した地域でのみ営業を許可されている私鉄の鉄道事業は需要は頭打ちです。また、関西はJRおよび私鉄が競合する路線が多く、鉄道激戦区となっています。
 このような中、私鉄は乗客数の確保に、これまでとなく力を入れています。そうしないと、現状のままではジリ貧になることが明らかだからです。
 一方で、我が国は空前のインバウンドブームです。さらには、東京オリンピック、大阪万博と国際的イベントが控えています。この絶好機を逃すことなく、外国人旅行客を取り込みたいところです。
 このように、鉄道需要が頭打ちになっている関西私鉄としては、生き残りをかけて乗客数の確保を行いたい、そのための手段の一つとして駅名の改称を行っているものと考えられます。