今回は預金に関する内部統制について、内部統制の不備の例をあげながら、その対処法を記載します。
1.銀行印と預金通帳を同じ金庫に保管している
銀行印と預金通帳を同じ金庫に保管していると、勝手に預金を引き出されるリスクがあります。盗難にあった場合も、銀行印と預金通帳がセットになると預金を引き出されるリスクがあります。
実際に、数年前、大阪の公益法人で銀行印と預金通帳を同じ場所に保管していたため、預金を横領されたという事例がありました。
そのため、銀行印と預金通帳は別の金庫に保管する必要があります。
2.預金担当者と経理担当者が同一人物である
小口現金の時と同様、預金を扱う人と経理担当が同じ人だと、横領があっても帳簿操作されてしまい、発覚が遅れるリスクがあります。
預金を扱う人と経理を担当する人は別にする必要があります。
3.預金担当者と購買担当者や営業担当者が同一人物である
これも小口現金の時と同様です。
今回は、架空仕入について記載します。架空仕入の例ですが、例えば、備品計100万円を実際には仕入れていないのに仕入れたものとして会計処理を行います。同時に請求書、納品書などの証憑も偽造します。このようにして、実際には仕入れてはいない備品について、偽造された請求書にもとづき100万円を支払います。入金口座は自分の銀行口座とします。単純な例ですが、このようにすると、会社の預金を自分の口座にいれて横領することができます。
そのため、預金担当者と購買担当者など現場の業務を行う人は別の人にする必要があります。
4.残高証明書を預金担当者が入手している
残高証明書を預金担当者が入手すると、本物の原本を隠蔽し、残高証明書を偽造されるリスクがあります。残高証明書の偽造の例は実際にあります。特に近年はパソコンやカラー印刷の技術が発達しているので、精巧なものを作成できる傾向にあります。
これを防止するためには、残高証明書は預金担当者以外の上席が入手することが望まれます。そして、上席は入手した残高証明書に確認印を押印するようにします。このようにして残高証明書の原本を確実に入手する体制を構築する必要があります。
5.銀行勘定残高調整表を作成していない
締後入金や未呈示小切手などがあると、帳簿残高と銀行残高証明書の金額が異なってきます。このような場合、帳簿残高と銀行残高の差異原因を把握し、銀行勘定残高調整表を作成しておくことが望まれます。
銀行残高証明書を入手しているものの、帳簿残高との照合を行われていないケースもあります。差異が生じている場合、異常性の有無を確かめる必要があります。
6.定期預金証書が金庫に保管されていない
定期預金証書を持ち出されると、不正に定期預金担保を設定されるリスクがあります。
定期預金証書は金庫に保管する必要があります。
また、不定期に金庫内を実査し、定期預金証書が持ち出されていないかどうかのチェックも行う必要があります。また、銀行残高証明書の入手にあたっては担保権の有無の証明まで求めるとよいでしょう。もちろん、担保の設定には承認を経るよう、業務プロセスを確立しておく必要もあります。
7.外貨建預金の期末換算が行われていない
外貨建預金がある場合、期末に円換算する必要があります。この円換算を忘れるリスクがあります。また、使用するレートについても、担当者が適当に選択しないよう、金融機関のHPよりレート表を入手し、それに基づいて計算する必要があります。レート表には上席の印を押印することが望まれます。
その他、為替差損益を逆に計上されていたケースもありました。
2017年6月25日日曜日
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