1.はじめに
病院や診療所の収益は診療報酬が基本となります。しかしながら、診療報酬は国の財政状況の悪化により、抑制傾向にあります。
診療報酬は保険から入ってくるものについては確実に入金されるため、滞留の心配はありませんが、診療報酬が下落傾向にあるということは、全体の売上が下がることにつながる可能性が高くなります。
一方、費用面については、病院や診療所の規模や種類によって異なる面はありますが、人件費、地代家賃、減価償却費といった固定費が占める割合が多くなってきます。
このような収益費用構造において利益を確保するには、やはり、一人でも多くの患者を確保して収益をあげていくことが必要になってきます。固定費は稼働率によって変動しない費用なので、収益の増大が利益の増大につながるためです。
今回は、この患者数の確保という点において、IT化によって可能となる方策を考えてみたいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.ITの活用事例
患者数の確保のためにITを活用しているかどうかは、病院や診療所によってかなり異なります。極端に言えば、ITを活用している病院・診療所とITを活用していない病院・診療所に二分化されているともいえます。
ここで、病院・診療所名は伏せますが、ある病院・診療所の例を紹介します。
この病院・診療所では、予約をホームページから行うことができます。
予約には時間予約と順番予約があります。時間予約とは、文字通り、希望する時間帯を指定して予約できるものです。例えば、午前10時から10時30分の間に予約を入れるといった具合です。
次に順番予約とは、時間帯を指定するのではなく、予約順が決まるというものです。例えば、時間予約ができるのが午後の診療は15時から18時までの間で、18時以降は順番予約のみとします。この場合、18時以降に予約を入れる場合は、ホームページから申し込んだ順に、診察の順番が決まっていきます。ホームページにアクセスして順番予約をするときに、先に1番、2番の人の診察順が決まっていれば、自分は3番というわけです。順番なので何時何分になるのかは決まっていません。
さらに、この病院・診療所では、順番予約の場合、診察の順番が近づいてきた場合、登録したメールアドレスにメールが届きます。さらに、ホームページ上でも、どの番号までの患者の診療が終了したのかがわかります。スマートフォンを使えば、手元で自分の順番がどこまで近づいてきているのかを、場所を問わずリアルタイムで把握することができます。
3.顧客満足の追求の必要性
このシステムの最大のメリットは、待合室での待ち時間を大幅に削減できることです。
病院・診療所に行ったとき、すでに多数の患者の受付が行われており、いまから1時間どころか2時間待ち、といった経験をされた方は少なくないと思います。
病院・診療所に行くときは、何かしら体調不良の場合ですから、こんなときに2時間待ちなんて大変苦痛です。
どの病院・診療所にも雑誌や新聞が置いてありますが、自分の読みたいものが置いてあるとは限らないし、体調不良のときに雑誌や新聞を1時間~2時間の間、読むのは疲れます。今の時代ならばスマートフォンがありますが、それでも体調不良のときにスマホを1~2時間見るのは疲れます。それに、最近はそうでもないようですが、医療機関内のスマートフォン禁止というところもあります。
このように、病院・診療所にたどり着いたのはよいものの、長時間待たされるのは患者にとってはうんざりです。
しかしながら、上記の予約システムならば、時間予約の場合はその時間帯に行けば、待ち時間はあるものの、長時間の待ち時間は生じません。また、順番予約の場合も、自分の順番が近づいてくるまで、例えば自宅にいるとか、会社員の場合であれば、オフィスで仕事を続ける、あるいは夜ご飯をすませる、といった時間の活用も可能です。
これは、患者の待ち時間に係るストレスを軽減するという、いわば顧客満足を達成するためのシステムともいえます。
もちろん、病院・診療所は最新の医療技術、最新の医療機器、ドクターの腕が必要です。しかしながら、こういった有形の資産において、他の病院・診療所とものすごく大きな差がなければ、ここで紹介した顧客満足を達成することができる無形の資産を持っている病院・診療所に患者は流れていきます。
別の言い方をすると、「患者は待っていて当たり前」という上目線的な発想は、もう持ってはいけないということです。
今回は、ITの活用による待ち時間の軽減というテーマを取り上げましたが、今後、病院・診療所の経営は、本業の医業だけではなく、いかに顧客満足を向上するようにするかといった、顧客(患者)視線の経営がますます必要になってきます。
このようなことは以前から言われてきたことですが、意外にも実践しているところと実践していないところがはっきり別れてしまっています。しかしながら、診療報酬が今後、ますます抑制されることははっきりしていますので、ITを最大限に活用した顧客満足達成のための経営を行うことが望まれます。
2019年2月24日日曜日
2019年2月18日月曜日
日本発のイノベーションがなかなか出てこない理由
1.はじめに
いま、NHKの朝の連続テレビ小説では「まんぷく」が放映されています。
「まんぷく」は日本のイノベーションの一つでもある「インスタントラーメン」が生まれた物語を描いています。
この「インスタントラーメン」とは安藤百福氏が発明した「チキンラーメン」です。
「まんぷく」でも描かれていますが、研究室という名の小屋で、小麦粉に味付けや添加物を入れて麺にし、お湯でもどすという実験を試行錯誤しながら何度も繰り返します。ついに、ある日、天ぷらをヒントに、麺を油であげるという製法を開発します。これにより、油であげた麺にお湯をかければ2分で食べることができるという世界初のインスタントラーメンが生まれました。
上記のように、このインスタントラーメンは日本が誇るイノベーションの一つです。
2.日本のイノベーションは少ないのか
今日のタイトルは「日本発のイノベーションがなかなか出てこない理由」としましたが、では、日本からはイノベーションが本当に少ないのかというと、必ずしもそんなことはないと思います。
昨年9月に日本公認会計士協会京滋会の研修旅行で、イノベーションを生み出す思考法の一つと言われるデザインシンキング(Design Thinking)の体験学習のため、アメリカ・カリフォルニア州のMenlo Collegeを訪れましたが、このとき担当されたBruce Paton教授は「日本はイノベーションがなかなか出てこないというが、かつて日本ではいろいろなイノベーションがあり、アメリカ人も日本のイノベーションを学んでいた。」という説明がありました。
ちなみに、そのときに配られたレジュメでは、「ウォークマン」「新幹線」「マリオブラザーズ」「ピカチュウ」の写真が掲載されていました。
実際に、かつての日本には日本発のイノベーションによる製品はいろいろなものがありました。
自動改札機もそうですし、LEDもそうです。
とはいえ、日本で開発されたものもガラパゴス化して世界には普及しないなど、世界に普及したイノベーションがあまり多くないのは事実かもしれません。
3.権威主義がイノベーションを阻害する
LEDは東北大学名誉教授の故西澤潤一教授が開発したものですが、西澤教授は、その他にもPINダイオードや光ファイバーなど数々の発明を行います。
しかしながら、その人生は苦闘の連続だったといいます。
なぜかというと、西澤教授が発明した独創的な技術が日本ではなかなか認められなかったからです。
PINダイオードを発明し、学会で発表したとき学会は「米国の誰も、そんなことはいっていないのだから、お前のいうようなことはあるはずはない。実験が間違っているのだろう」(「異才時代」竹村健一著(学研)P136より)という冷たい反応だったそうです。
しかし、その後、アメリカで西澤教授と同じ内容の論文が次々と発表されると、あわてて日本のメーカーが米国のメーカーの特許を導入しようとしたそうです。
この竹村健一氏の本では「こうしたいきさつは日本人がいかに「権威」に弱く、創造力を認めていく風土に欠けているかをよく示している。」と記載されていますが、確かに理科系の分野ではヒエラルキーが存在していて、下位の者が上位の者を追い抜こうとすることを認めない傾向があります。
また、西澤教授がある実験で定説と異なる結果が得られたとき、所員に新しい理論としてまとめるよう指示したとき、その所員は「本にはこのように書いてあります。だから、この実験は間違いではないか」(同著P138より)と言ったそうです。
これも権威主義の弊害といえます。「本に書いてあるから」としてしまっては、それ以上の発展は望めません。本の内容を信じてしまっていることが問題と言えます。もしかしたら本の内容が間違っているかもしれません。本に書かれたことはあくまで過去の情報です。過去情報なのですから、それに依存してしまっては未来情報は開拓できないといえるでしょう。
この点で、デザインシンキングではニーズを探るとき、アンケートやインタビューは行わないそうです。なぜかというと、アンケートやインタビューから得られた回答は「常識的」な回答しか得られないからです。つまり大多数の人間が考えていることは過去情報といえます。過去情報から全く新しい未来情報は生まれにくいのです。
そこで、デザインシンキングでは「観察」を重視します。人間の行動を観察して潜在的ニーズを発見するというわけです。なぜかというと、人間の行動が人間の欲求を表しているからです。
このように、イノベーションを起こすには、権威主義からの脱却がひとつのカギになると思います。
いま、NHKの朝の連続テレビ小説では「まんぷく」が放映されています。
「まんぷく」は日本のイノベーションの一つでもある「インスタントラーメン」が生まれた物語を描いています。
この「インスタントラーメン」とは安藤百福氏が発明した「チキンラーメン」です。
「まんぷく」でも描かれていますが、研究室という名の小屋で、小麦粉に味付けや添加物を入れて麺にし、お湯でもどすという実験を試行錯誤しながら何度も繰り返します。ついに、ある日、天ぷらをヒントに、麺を油であげるという製法を開発します。これにより、油であげた麺にお湯をかければ2分で食べることができるという世界初のインスタントラーメンが生まれました。
上記のように、このインスタントラーメンは日本が誇るイノベーションの一つです。
2.日本のイノベーションは少ないのか
今日のタイトルは「日本発のイノベーションがなかなか出てこない理由」としましたが、では、日本からはイノベーションが本当に少ないのかというと、必ずしもそんなことはないと思います。
昨年9月に日本公認会計士協会京滋会の研修旅行で、イノベーションを生み出す思考法の一つと言われるデザインシンキング(Design Thinking)の体験学習のため、アメリカ・カリフォルニア州のMenlo Collegeを訪れましたが、このとき担当されたBruce Paton教授は「日本はイノベーションがなかなか出てこないというが、かつて日本ではいろいろなイノベーションがあり、アメリカ人も日本のイノベーションを学んでいた。」という説明がありました。
ちなみに、そのときに配られたレジュメでは、「ウォークマン」「新幹線」「マリオブラザーズ」「ピカチュウ」の写真が掲載されていました。
実際に、かつての日本には日本発のイノベーションによる製品はいろいろなものがありました。
自動改札機もそうですし、LEDもそうです。
とはいえ、日本で開発されたものもガラパゴス化して世界には普及しないなど、世界に普及したイノベーションがあまり多くないのは事実かもしれません。
3.権威主義がイノベーションを阻害する
LEDは東北大学名誉教授の故西澤潤一教授が開発したものですが、西澤教授は、その他にもPINダイオードや光ファイバーなど数々の発明を行います。
しかしながら、その人生は苦闘の連続だったといいます。
なぜかというと、西澤教授が発明した独創的な技術が日本ではなかなか認められなかったからです。
PINダイオードを発明し、学会で発表したとき学会は「米国の誰も、そんなことはいっていないのだから、お前のいうようなことはあるはずはない。実験が間違っているのだろう」(「異才時代」竹村健一著(学研)P136より)という冷たい反応だったそうです。
しかし、その後、アメリカで西澤教授と同じ内容の論文が次々と発表されると、あわてて日本のメーカーが米国のメーカーの特許を導入しようとしたそうです。
この竹村健一氏の本では「こうしたいきさつは日本人がいかに「権威」に弱く、創造力を認めていく風土に欠けているかをよく示している。」と記載されていますが、確かに理科系の分野ではヒエラルキーが存在していて、下位の者が上位の者を追い抜こうとすることを認めない傾向があります。
また、西澤教授がある実験で定説と異なる結果が得られたとき、所員に新しい理論としてまとめるよう指示したとき、その所員は「本にはこのように書いてあります。だから、この実験は間違いではないか」(同著P138より)と言ったそうです。
これも権威主義の弊害といえます。「本に書いてあるから」としてしまっては、それ以上の発展は望めません。本の内容を信じてしまっていることが問題と言えます。もしかしたら本の内容が間違っているかもしれません。本に書かれたことはあくまで過去の情報です。過去情報なのですから、それに依存してしまっては未来情報は開拓できないといえるでしょう。
この点で、デザインシンキングではニーズを探るとき、アンケートやインタビューは行わないそうです。なぜかというと、アンケートやインタビューから得られた回答は「常識的」な回答しか得られないからです。つまり大多数の人間が考えていることは過去情報といえます。過去情報から全く新しい未来情報は生まれにくいのです。
そこで、デザインシンキングでは「観察」を重視します。人間の行動を観察して潜在的ニーズを発見するというわけです。なぜかというと、人間の行動が人間の欲求を表しているからです。
このように、イノベーションを起こすには、権威主義からの脱却がひとつのカギになると思います。
2019年2月11日月曜日
公益法人インフォメーション~電子申請システムリニューアル
1.概要
少し前になりますが、公益法人informationの電子申請システムが新しくなりました。
以前のシステムは、何かと使いづらい面がありました。この点は、内閣府や行政庁も認識されていたようで、ある行政庁の説明会では「現状の公益法人インフォメーションは使いにくいので、新しいシステムに移行します。」という説明をしていたという話を公益法人関係者から聞いたことがあります。
実際、私も、ある行政庁関係者とこんな会話がありました。
「今の公益法人インフォメーションはいかがですか?」
「う~ん・・・」
「ですよね・・・ いろいろと使いづらい点があり申し訳ございません。」
2.どのように使いづらかったのか
(1)保存が面倒
では、どのように使いづらかったのかかというと、まず、とにかく注意しないと保存ができなかったという点です。
実際に公益法人インフォメーションを使用された方はよくご記憶だと思いますが、まず各別紙、別表の作成を行ったときは、右下の「登録」ボタンとクリックする必要があります。
普通の感覚では「登録」ボタンを押せば登録されて保存されたものと思うのですが、実はそれだけでは不十分で、その後に出てくる別紙や別表の一覧が出てくる画面の下の方にある「一時保存」というボタンをクリックする必要がありました。
この2段階の操作を行って初めて、作成した別紙、別表が公益法人インフォメーションに保存されます。
もちろん、手順を踏めば問題はないのですが、結構多くの人がトラップに陥って、せっかく作成した別表、別紙を保存できず、また一から作成するという悲劇を起こしてしまいました。
なぜかというと、旧システムではパソコンを一定時間使用しないままだと、画面がクラッシュしてしまったからです。結構この時間が短くて、私の記憶だと5分位だったと思います。
そうなると、登録ボタンはクリックしたものの、一時保存をクリックしていていなかったために、パソコンをしばらく動かさなかったことから画面がクラッシュし、時間をかけて作成した別表、別紙が保存されなかったという、泣くに泣けない悲劇が起こってしまったというわけです。
(2)「自動計算」の仕組みがまちまち
別紙、別表はいろいろと数値を入力するとことがありますが、自分でクリックしないと計算結果が反映されないところもあれば、勝手に自動計算されるところもありました。このあたりがまちまちなので、計算ボタンのクリックを忘れてしまう人もよくいました。
私の記憶では、別紙1の収支相償の欄で計算ボタンのクリックし忘れが多かった印象があります。ただ、これは旧システムの表記が紛らわしかったからだと思います。旧システムの手引きが削除されてしまったため、記憶に頼るしかないのですが、あたかも自動的に別表A(1)の計算結果が反映されるような表記だったと記憶しています。
かと思えば、別紙1の遊休財産の計算結果や別表H(1)の計算結果は自動的に反映されていました。
このように、画面によって、どれがボタンをクリックしないといけないのか、自動計算されるのかが分かりづらく、ミスが生じるということもありました。
(3)その他
その他では、行の追加や削除に時間がかかり使いづらかったという記憶があります。
役員名簿や社員総会・評議員会・理事会の議事内容を記載する欄がありますが、このあたりでは、行を追加したり削除することが多くなります。このとき、エクセルのようにサクサクと行かないので、時間がかかります。
また、別表B(5)や別表F(1)(2)のように一部がエクセルになっているという謎の構造もありました。それだったらこれらもシステムにして、計算結果が自動反映されるようにすれば時間の短縮になるのに、と思ったこともあります。
3.新システムはエクセルで作成
このような旧システムでしたが、新システムではエクセルで作成するという形式に変わりました。
まだ、電子申請は行ったことはありませんが、まずエクセル一式が入った圧縮ファイルをダウンロードするところから始まります。
このエクセルについては、事業報告等の提出の場合は「流用」ができます。このあたりは旧システムと同様です。しかしながら、事業計画等や届け出については流用はありませんでした。もっとも、流用しなくても大きな問題はない書類ではあります。
なお、たまたまだったのかはわかりませんが、私がダウンロードしたときは妙に時間がかかりました。従って、早めにダウンロードしておくほうがよいかと思います。
エクセルには計算式が組み込まれていますので、必要なところは自動計算されます。このあたりは旧システムよりも使いやくすくなったという印象です。
また、エクセルなので行の追加や削除も行いやすくなりました。
さらに、エクセルなので、旧システムのように画面がクラッシュして保存されないということもありません。エクセルの保存ボタンをクリックすればよいので使いやすくなりました。
このエクセルを新システムにアップロードして提出するという流れです。
ただし、旧システムと異なる点もあります。
新システムでは、提出する前に「様式チェック」というものがあります。これをクリアしないと申請できません。
これは形式的なチェックなので、数値の誤りまではチェックされません。
試しに、この様式チェックを使ってみましたが、こちらも妙に時間がかかりました。このあたりは今後改善されるではないかと思いますが、今年の電子申請は早めに行うほうがよいと思います。
少し前になりますが、公益法人informationの電子申請システムが新しくなりました。
以前のシステムは、何かと使いづらい面がありました。この点は、内閣府や行政庁も認識されていたようで、ある行政庁の説明会では「現状の公益法人インフォメーションは使いにくいので、新しいシステムに移行します。」という説明をしていたという話を公益法人関係者から聞いたことがあります。
実際、私も、ある行政庁関係者とこんな会話がありました。
「今の公益法人インフォメーションはいかがですか?」
「う~ん・・・」
「ですよね・・・ いろいろと使いづらい点があり申し訳ございません。」
2.どのように使いづらかったのか
(1)保存が面倒
では、どのように使いづらかったのかかというと、まず、とにかく注意しないと保存ができなかったという点です。
実際に公益法人インフォメーションを使用された方はよくご記憶だと思いますが、まず各別紙、別表の作成を行ったときは、右下の「登録」ボタンとクリックする必要があります。
普通の感覚では「登録」ボタンを押せば登録されて保存されたものと思うのですが、実はそれだけでは不十分で、その後に出てくる別紙や別表の一覧が出てくる画面の下の方にある「一時保存」というボタンをクリックする必要がありました。
この2段階の操作を行って初めて、作成した別紙、別表が公益法人インフォメーションに保存されます。
もちろん、手順を踏めば問題はないのですが、結構多くの人がトラップに陥って、せっかく作成した別表、別紙を保存できず、また一から作成するという悲劇を起こしてしまいました。
なぜかというと、旧システムではパソコンを一定時間使用しないままだと、画面がクラッシュしてしまったからです。結構この時間が短くて、私の記憶だと5分位だったと思います。
そうなると、登録ボタンはクリックしたものの、一時保存をクリックしていていなかったために、パソコンをしばらく動かさなかったことから画面がクラッシュし、時間をかけて作成した別表、別紙が保存されなかったという、泣くに泣けない悲劇が起こってしまったというわけです。
(2)「自動計算」の仕組みがまちまち
別紙、別表はいろいろと数値を入力するとことがありますが、自分でクリックしないと計算結果が反映されないところもあれば、勝手に自動計算されるところもありました。このあたりがまちまちなので、計算ボタンのクリックを忘れてしまう人もよくいました。
私の記憶では、別紙1の収支相償の欄で計算ボタンのクリックし忘れが多かった印象があります。ただ、これは旧システムの表記が紛らわしかったからだと思います。旧システムの手引きが削除されてしまったため、記憶に頼るしかないのですが、あたかも自動的に別表A(1)の計算結果が反映されるような表記だったと記憶しています。
かと思えば、別紙1の遊休財産の計算結果や別表H(1)の計算結果は自動的に反映されていました。
このように、画面によって、どれがボタンをクリックしないといけないのか、自動計算されるのかが分かりづらく、ミスが生じるということもありました。
(3)その他
その他では、行の追加や削除に時間がかかり使いづらかったという記憶があります。
役員名簿や社員総会・評議員会・理事会の議事内容を記載する欄がありますが、このあたりでは、行を追加したり削除することが多くなります。このとき、エクセルのようにサクサクと行かないので、時間がかかります。
また、別表B(5)や別表F(1)(2)のように一部がエクセルになっているという謎の構造もありました。それだったらこれらもシステムにして、計算結果が自動反映されるようにすれば時間の短縮になるのに、と思ったこともあります。
3.新システムはエクセルで作成
このような旧システムでしたが、新システムではエクセルで作成するという形式に変わりました。
まだ、電子申請は行ったことはありませんが、まずエクセル一式が入った圧縮ファイルをダウンロードするところから始まります。
このエクセルについては、事業報告等の提出の場合は「流用」ができます。このあたりは旧システムと同様です。しかしながら、事業計画等や届け出については流用はありませんでした。もっとも、流用しなくても大きな問題はない書類ではあります。
なお、たまたまだったのかはわかりませんが、私がダウンロードしたときは妙に時間がかかりました。従って、早めにダウンロードしておくほうがよいかと思います。
エクセルには計算式が組み込まれていますので、必要なところは自動計算されます。このあたりは旧システムよりも使いやくすくなったという印象です。
また、エクセルなので行の追加や削除も行いやすくなりました。
さらに、エクセルなので、旧システムのように画面がクラッシュして保存されないということもありません。エクセルの保存ボタンをクリックすればよいので使いやすくなりました。
このエクセルを新システムにアップロードして提出するという流れです。
ただし、旧システムと異なる点もあります。
新システムでは、提出する前に「様式チェック」というものがあります。これをクリアしないと申請できません。
これは形式的なチェックなので、数値の誤りまではチェックされません。
試しに、この様式チェックを使ってみましたが、こちらも妙に時間がかかりました。このあたりは今後改善されるではないかと思いますが、今年の電子申請は早めに行うほうがよいと思います。
2019年2月3日日曜日
日EU・EPA発効~その効果とビジネスへの影響
1.はじめに
2019年2月1日付で日EU・EPAが発効されました。(注:マスコミなどでは「日欧EPA」と呼んでいますが、政府、各省庁は「日EU経済連携協定(日EU・EPA協定)」と呼んでいます。ここでは「日EU・EPA」と記載することにします。)
これにより、日本とEUとの間で巨大な自由貿易圏が誕生しました。日本からの輸出、日本からの輸入についても関税が引き下げられ、最終的にはゼロとなります。一部品目については、発効日の2019年2月1日付で即時撤廃、すなわち関税がゼロとなりました。
2.そもそもEPAとは何か
2018年12月30日にはTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)が発効され、こちらもアジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏が誕生しました。
ここで、EPAやTPPと、自由貿易圏を巡っていろいろな用語が出てきます。自由貿易圏についての言葉であるということはわかりますが、どのような違いがあるのでしょうか?
自由貿易の促進については、もともと1995年に発足したWTO(World Trade Organization 世界貿易機関)が発端です。このWTOにより自由貿易を発展させていこうという動きが始まりました。しかしながら、原則として、現在加盟している全164の加盟国及び地域のすべての同意が必要であるため、先進国と発展途上国との対立もあり、全会一致は困難なものとなりました。
そこで、2国間で協定を締結する動きが出てきました。2国間であれば、WTOよりも交渉などを進めやすいからです。このようにしてできたのがFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)です。このFTAは「特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定」です(外務省HPより)。
このFTAは、関税などの削減・撤廃を目的としてものですが、こういった貿易面のみならず、「貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定」(外務省HPより)がEPA(Economic Partnership Agreement 経済連携協定)です。簡単に言ってしまえば、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービス、種々の規制といった面についても自由化していこうというものといえます。
さらに、2国間の協定から、さらに範囲を広げて地域で協定を締結しようという流れも出てきました。このようにすれば、各国とそれぞれに協定を締結するよりも、一度に複数の国と協定を締結できるので効率的です。そのような中で誕生したのがTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)です。
今回の日EU・EPAも、日本とEUの間での協定ですが、地域間での協定といえます。
(参考:経済産業省「【60秒解説】TPP、EPA、FTA・・・何が違う?」)
3.日EU・EPAとTPPの参加国
(1)日EU・EPA
日EU・EPAは、日本とEUの協定となりますので、EU加盟国が参加国となります。
日本・ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・ドイツ・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・フランス・クロアチア・イタリア・キプロス・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・英国
(2)TPP
TPPの参加国は日本を含めて11カ国です。そのため「TPP11(イレブン)」という呼び方をすることもあります。
日本・オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム
TPPは米国が不参加を表明したことにより先行きが危ぶまれましたが、日本の安倍首相のリーダーシップによりTPPの実現に至りました。そのため、他国は日本にとても感謝をしているということです。
4.ビジネスへの影響
今回の日EU・EPAでは、輸入ワインの関税が即時撤廃となり、小売業では値下げセールが行われるなど、輸入品に注目が集まっています。しかしながら、上記のように、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービスといった面でも自由化が進められていきます。
ちなみに、FTAやEPAについては、日本はすでに多数の国と締結しています。外務省のHPによると、2018年8月現在で
シンガポール,メキシコ,マレーシア,チリ,タイ,インドネシア,ブルネイ,ASEAN全体,フィリピン,スイス,ベトナム,インド,ペルー,オーストラリア,モンゴルが発行済で、これにEUが加わりましたので、16カ国及び地域と発行済ということになります。
このEPAはヒトやサービス面の自由化も促していると書きましたが、現在、我が国ではインドネシア、ベトナム、フィリピンとのEPAにより介護人材の受け入れが進んでいます。このように、少子化が進む我が国において、ヒトの移動も行われています。ちなみに技能実習生制度はEPAとは異なる制度です。
このように、貿易面だけでなく、さまざまな分野においてEPAの効果が徐々に出てきますので、どのような自由化が進んでいるのかを常にチェックすることが必要です。
2019年2月1日付で日EU・EPAが発効されました。(注:マスコミなどでは「日欧EPA」と呼んでいますが、政府、各省庁は「日EU経済連携協定(日EU・EPA協定)」と呼んでいます。ここでは「日EU・EPA」と記載することにします。)
これにより、日本とEUとの間で巨大な自由貿易圏が誕生しました。日本からの輸出、日本からの輸入についても関税が引き下げられ、最終的にはゼロとなります。一部品目については、発効日の2019年2月1日付で即時撤廃、すなわち関税がゼロとなりました。
2.そもそもEPAとは何か
2018年12月30日にはTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)が発効され、こちらもアジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏が誕生しました。
ここで、EPAやTPPと、自由貿易圏を巡っていろいろな用語が出てきます。自由貿易圏についての言葉であるということはわかりますが、どのような違いがあるのでしょうか?
自由貿易の促進については、もともと1995年に発足したWTO(World Trade Organization 世界貿易機関)が発端です。このWTOにより自由貿易を発展させていこうという動きが始まりました。しかしながら、原則として、現在加盟している全164の加盟国及び地域のすべての同意が必要であるため、先進国と発展途上国との対立もあり、全会一致は困難なものとなりました。
そこで、2国間で協定を締結する動きが出てきました。2国間であれば、WTOよりも交渉などを進めやすいからです。このようにしてできたのがFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)です。このFTAは「特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定」です(外務省HPより)。
このFTAは、関税などの削減・撤廃を目的としてものですが、こういった貿易面のみならず、「貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定」(外務省HPより)がEPA(Economic Partnership Agreement 経済連携協定)です。簡単に言ってしまえば、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービス、種々の規制といった面についても自由化していこうというものといえます。
さらに、2国間の協定から、さらに範囲を広げて地域で協定を締結しようという流れも出てきました。このようにすれば、各国とそれぞれに協定を締結するよりも、一度に複数の国と協定を締結できるので効率的です。そのような中で誕生したのがTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)です。
今回の日EU・EPAも、日本とEUの間での協定ですが、地域間での協定といえます。
(参考:経済産業省「【60秒解説】TPP、EPA、FTA・・・何が違う?」)
3.日EU・EPAとTPPの参加国
(1)日EU・EPA
日EU・EPAは、日本とEUの協定となりますので、EU加盟国が参加国となります。
日本・ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・ドイツ・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・フランス・クロアチア・イタリア・キプロス・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・英国
(2)TPP
TPPの参加国は日本を含めて11カ国です。そのため「TPP11(イレブン)」という呼び方をすることもあります。
日本・オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム
TPPは米国が不参加を表明したことにより先行きが危ぶまれましたが、日本の安倍首相のリーダーシップによりTPPの実現に至りました。そのため、他国は日本にとても感謝をしているということです。
4.ビジネスへの影響
今回の日EU・EPAでは、輸入ワインの関税が即時撤廃となり、小売業では値下げセールが行われるなど、輸入品に注目が集まっています。しかしながら、上記のように、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービスといった面でも自由化が進められていきます。
ちなみに、FTAやEPAについては、日本はすでに多数の国と締結しています。外務省のHPによると、2018年8月現在で
シンガポール,メキシコ,マレーシア,チリ,タイ,インドネシア,ブルネイ,ASEAN全体,フィリピン,スイス,ベトナム,インド,ペルー,オーストラリア,モンゴルが発行済で、これにEUが加わりましたので、16カ国及び地域と発行済ということになります。
このEPAはヒトやサービス面の自由化も促していると書きましたが、現在、我が国ではインドネシア、ベトナム、フィリピンとのEPAにより介護人材の受け入れが進んでいます。このように、少子化が進む我が国において、ヒトの移動も行われています。ちなみに技能実習生制度はEPAとは異なる制度です。
このように、貿易面だけでなく、さまざまな分野においてEPAの効果が徐々に出てきますので、どのような自由化が進んでいるのかを常にチェックすることが必要です。
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多くの公益法人では、名称は多少異なりますが「事務局長」という地位の職員が存在します。また、社会福祉法人では、同じく「事務局長」のほか、「施設長」という地位の職員が存在します。 今回は、このようなポストに就任されている職員の選任及び解任に係る留意点について記載します。 な...
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1.はじめに 令和元年(2019年)6月19日の日本経済新聞に 「企業投資、最高の52兆円 「ため込む」より「使う」 」 という見出しの記事がありました。 これによると、日本企業は、将来の企業の成長のために積極的に投資を行っているということです。日本経済新聞の調査では、そ...
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1.はじめに 債権は貸倒見積高の算定にあたっては ①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債権等 に区分されます(金融商品会計基準27項) では、これらの債権は貸借対照表ではどの区分に表示すればよいのかというと、この点については制度上、明記がありません。 そこで、今回...
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医療法においても、機関運営に関する規定が整備され、一般社団法人や一般財団法人の規定とほぼ同様の規定となりました。 今回は、医療法人における借入についての留意点を記載します。この点は、一般社団法人や一般財団法人(公益認定を受けた公益社団法人、公益財団法人を含む)や社会福祉法人...