2019年5月4日土曜日

財務諸表などの日付表示~令和元年を迎えて

1.令和元年がスタート
 平成31年4月30日をもって平成が終了し、翌日5月1日より、元号が平成から令和に変わりました。新しい元号の始まりです。
 我が国は元号を使用する国なので、元号を使用するのが原則ですが、一方で西暦も使用されています。西暦とは「キリスト生誕の年と信じられている年を紀元とする西洋の暦」(コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)でありますので、本来は我が国の暦の数え方としてはなじまないものです。しかしながら、世界の主要各国がキリスト教徒の関係で西暦を使用していることから、国際化が進んだ我が国でも元号と併記して使用されています。
 従って、元号を使用することが基本ではあるのですが、戦後の我が国では、昭和、平成、令和と3つの元号が使用されており、しかも、年の途中で元号が変わっているので、年数などを数えるときに手間取ってしまうことは否めません。

2.財務諸表などの日付表示
 元号の改廃は、有価証券報告書、計算書類等などの年度表示にも影響があります。
 非営利法人おいても、公益法人が作成する計算書類等、社会福祉法人が作成する計算関係書類の年度表示をどうすればよいのかという問題が出てきます。

 ちなみに、内閣府が各都道府県知事及び各指定都市市長宛に、平成31年4月2日付で出した「元号を改める政令等について」では、以下の申し合わせ事項が示されています。

〇改元日前までに作成した文書において、改元日以降、「平成」の表示が残っていても、有効であること
改元日以降に作成する文書には、「令和」を用いること。やむを得ず「平成」の表示が残る場合でも有効であるが、混乱を避けるため、訂正等を行うこと
〇元号を改める政令の公布日から施行日前までに作成し公にする文書には、「平成」を用いること
〇法令については、「平成」を用いて改元日以降の年を表示していても、有効であり、原則、改元のみを理由とする改正は行わないこと
〇国の予算における会計年度の名称については、原則、改元日以降は「令和元年度」とすること

3.有価証券報告書
 それでは、決算書などではどうでしょうか。
 まずは有価証券報告書です。

 この有価証券報告書については、税務研究会のコラム「有報の日付表示、あなたは和暦派?それとも西暦派?【1分で読める!「経営財務」記者コラム】」では、「有報における開示に関する規定を定めた「企業内容等の開示に関する内閣府令」の第三号様式」に触れています。

 コラムによると、「【提出日】については「平成 年 月 日」となっており、【事業年度】も同様に当該様式上は和暦で示されている。」ため、「和暦表示をしなければならないように思えるが、実務上は全て西暦表示でも問題はないという。特別な手続き等は不要で、西暦表示に統一したい企業は、任意で西暦に変更ができる。」ということです。
 さらに、同コラムでは、有価証券報告書において西暦表示を行っている企業数を調べた結果「トヨタ自動車や日立製作所、ファーストリテイリングなど、500社以上が西暦表示」であったということです。

実際、トヨタ自動車の直近の有価証券報告書の表紙を見てみると

【事業年度】2018年3月期
      (自  2017年4月1日  至  2018年3月31日)

 と記載されていました。

 従って、有価証券報告書においては元号表記でも西暦表記でもどちらでもよいということになります。

4.会社法における計算書類等
 次に、計算書類等です。計算書類等は会社法に定められたものなので、会社法に定めるすべての会社が対象となります。
 この計算書類等については、知る限り、日付表示に制限はありません。従って、元号でも西暦でも問題はありません。
 元号で表記されている会社でも、西暦を併記しているところもあります。
 
5.公益法人の計算書類等と定期提出書類
 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人では、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律において計算書類等を作成することが義務付けられています。
 こちらの計算書類等においても日付表示に制限はありません。従って、どちらでもよいということになります。なお、私が見る限りでは元号表示が多い印象です。

 しかしながら、あくまで私見ですが、公益認定を受けた一般財団法人及び一般財団法人(公益法人)では、元号で記載するほうがよいと思います。
 理由は、計算書類等は定期提出書類(事業報告等の提出書類)と一緒に提出しますが、定期提出書類は元号表示になるため、それにあわせておくほうがよいためです。

 以前、このブログで公益法人インフォメーションの電子申請がリニューアルされたことを書きましたが、エクセルで作成された新システムでは、日付表示はプルダウンとなっていて、そのリストには元号しか載っていません。ちなみに、新元号が発表される前の段階の事業計画書等の提出書類にかかるプルダウンメニューのリストには「平成」と「令和」ではなく、「平成」と「新元号」という表示で載っていました。

 従って、公益法人においては、元号表示がよいと思います。

6.社会福祉法人の計算関係書類
 社会福祉法人は、すべての法人が計算関係書類、社会福祉充実残額計算シートをWAMネットを通じて所轄庁に提出します。
 このとき提出する計算関係書類は社会福祉充実残額計算シート内で作成しますが、社会福祉充実残額計算シートでは、すでに元号表示が行われているので、すべての法人の計算関係書類は元号表示となります。

 この点は、同じ非営利法人であっても公益法人とは異なるところです。公益法人の場合は統一された書式というものはなく、各法人の自由となるからです。そのため、元号か西暦かという問題が出てきますが、社会福祉法人では所轄庁の提出書類に関しては元号で統一されているので、選択に困る点はありません。

 ただし、理事会や評議員会で使用する計算関係書類では、元号と西暦の併用表示でもよいと思います。