2018年4月8日日曜日

人事異動があった場合の対処法~公益法人

1.人事異動があった場合
 地方公共団体では3月下旬に人事異動の内示がでますが、公益法人に出向する人もいれば、出向が終わって戻る人もいます。また、人事異動により役職が変わり、充て職で就任していた理事をやめることになる人も出てきます。
 もちろん、地方公共団体のみならず、いろいろな団体から充て職で理事についている人も同様です。
 理事のみならず、事務局長など、いわゆる重要な使用人に該当する人も人事異動となるケースが出てきます。
 今回は、このような人事異動があった場合の論点について、公益法人の場合について記載します。ただし、この論点は社会福祉法人についても同様です。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.充て職の理事の場合
(1)充て職とは
 まず、最初に、充て職とは、ある団体の会長や地方公共団体のある役職の人といった特定の地位についている人を、別の法人や団体などの特定の地位に就かせることをいいます。
 充て職は、外郭団体系の公益法人や社会福祉法人などでよく見られます。
 例えば、ある県の外郭団体である公益財団法人の理事長は、その県の知事が就任することになっている、といった具合です。
 このような充て職で公益法人などの理事についている場合、その所属している法人・団体・地方公共団体で人事異動があった場合に、いくつかの問題が出てきます。

(2)新理事の選任方法
 人事異動で理事が変更となった場合、新しく充て職で理事に就任予定となる人の扱いが問題となります。
 この場合、新しく充て職でやってくる人は、自動的に理事になるのかというと、それは不可です。後釜の人は、自動的に理事にはなりません。理事になるには、社員総会又は評議員会での選任決議が必要です(一般社団法人及び一般財団に関する法律(以下「一般法」)63条①、177条)。
 もちろん、社員総会又は評議員会を開催するには、その前に理事会を開催し、社員総会又は評議員会の招集の決定を行う必要があります(一般法38条、181条)。
 そのため、後釜の人を理事に就任してもらうには、理事会、社員総会又は評議員会の決議が必要となりますが、人事異動がどうなるのかは3月下旬にならないとはっきりしないですし、時間や費用もかかるので、3月下旬や4月に入ってからの理事会や社員総会又は評議員会の開催は難しいのが現実です。
 従って、後釜の人は、5月あるいは6月に開催される定時評議員会で理事に選任されるまで待っていただくことが現実的ではないかと思います。
 もっとも、例えば、財団法人で人数が少ない小規模な法人では、決議の省略による方法で選任するという方法もあります。

(3)定数を下回った場合
 (2)のケースは、前任の理事が辞任しても定数を下回らない場合を想定しましたが、前任の理事が辞任したため、法律や定款で定めた定数の下限を下回ってしまう場合もある可能性も想定されます。
 そうなると、早く後任の人を理事にする必要があります。
 なお、理事の数が定数を下回った場合、法令上は、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するとされています(一般法75①、177条)。ただし、その選任の手続をすることを怠ったときは、原則として過料に処するとされています(一般法342条柱書、同条13号)。
 とはいえ、このような事態にならないように、例えば、次のような対策が考えられます。

(イ)仮に、地方公共団体の充て職の人が全員異動となっても、定数を下回らないような定数を定めておく。
(ロ)同業者団体など、団体系の人については、いつ辞任するのかを早めに報告していただく(本人は、その団体の任期はあらかじめわかっているはずなので。)
(ハ)定数は法令上の下限3名に定めておき、同時に理事数に余裕をもたせる

3.事務局長など重要な使用人の場合
 出向元の人事により、事務局長や事業部の部長が異動となることもあります。
 通常の職員であれば、単なる人事異動ですが、事務局長や事業部長となると、以前、「事務局長や施設長などの選任及び解任」で触れたように「重要な使用人」に該当すると考えられます。
 この重要な使用人の選任及び解任」の場合は、理事会の決議が必要となってきます(90④、177条)。
 社員総会や評議員会での選任決議は必要ないので、理事会の決議のみとなります。そのため、時間や手数はかかりますが、この場合、理事会の決議は必要です。
 ただし、困るのは、地方公共団体の人が、人事異動で公益法人の事務局長など重要な使用人になるケースです。この場合、上述のように、3月下旬にならないと誰が来るのかがわからないのが現状です。
 しかも、外郭団体系の公益法人の場合、建前では重要な使用人は理事会決議で決定するはずですが、実際には地方公共団体において決められてしまっています。
 この場合、考えられる方法としては3月下旬に内示が出たら、後釜の人に履歴書、職務経歴書を提出していただき、3月中に決議の省略により理事会を行い、これにより重要な使用人を決定するというものがあります。実質的には追認のような形になりますが、やむを得ないと思います。