2017年11月20日月曜日

債務超過の会社を連結子会社とした場合の問題点(1)

1.債務超過の会社の買収 
 今回は、債務超過の会社を連結子会社とした場合の論点について記載します。
 連結子会社とした会社が、連結後に業績悪化により債務超過となることはよくありますが、今回のブログは、すでに債務超過となっている会社を連結子会社とした場合を対象とします。
 ここで、債務超過の会社を買収することなどあるのか、と思われる方もいらっしゃると思いますが、実務では実際にこのようなことはあります。
 理由は様々ですが、例えば、①ターゲット企業が多数の顧客を保有している、②自社にない技術やノウハウを保有している、③シナジー効果が見込まれる、④他エリアに進出したい、⑤川上企業が川下に進出したい、といったことなどがあげられます。私の経験では、他の理由によるものもありましたが割愛します。

2.のれんの発生
 債務超過の会社を連結子会社とすると、連結財務諸表上、確実にのれんが発生します。
 のれんは、連結子会社の株式を取得した価額が、連結子会社の純資産を上回る場合に発生します。なお、「連結財務諸表に関する会計基準」24項では、「親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去にあたり、差額が生じる場合には、当該差額をのれん(又は負ののれん)とする。」としています。
 ここで、債務超過の会社の場合を考えてみると、債務超過の会社では純資産はマイナスとなります。債務超過とは貸借対照表の負債の額が資産の額を上回っている場合だからです。 
 そうなると、仮に子会社株式をゼロ円で取得したとしてものれんが発生します。

【設例】
・被買収会社の資産100、負債150、資本50、利益剰余金△100 
・子会社株式の取得価額0円(100%取得)
・資産の時価はないものとする。
・この子会社は非上場会社とする。

 連結財務諸表では、仕訳は以下のようになります。

(借方)資本金 50 (貸方)子会社株式 0
    のれん 50     利益剰余金 100

 このように、例えゼロ円で取得したとしてものれんが発生します。有償で取得すればより多くののれんが発生します。

3.のれんの評価
(1)追加償却
 このように債務超過の会社を連結すると、確実にのれんが発生するのですが、問題はその評価です。
 まず、個別財務諸表では、子会社株式の減損を検討する必要があります。上記設例では、非上場の子会社を想定していますが、時価のない株式の場合、株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合は著しく低下したと判断し、原則として子会社株式を減損します(金融商品会計基準第21項、金融商品会計に関する実務指針92項)。なお、連結財務諸表では、この子会社株式の評価損は振り戻されます。
 次に、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」32項では、

「減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額を下回った場合には、株式取得時に見込まれた超過収益力等の減少を反映するために、子会社株式の減損処理後の簿価と、連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額との差額のうち、のれん未償却額(借方)に達するまでの金額についてのれん純借方残高から控除し、連結損益計算書にのれん償却額として計上しなければならない。」

 とされています。この場合は追加償却となります。計算要件を満たした場合は適用となります。

(2)のれんの減損
 また「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」32項では、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に従ってのれんの減損を行うとされています。すなわち、減損の兆候の把握→減損損失の認識→減損損失の測定という流れになります。

4.最後に
 債務超過の会社を連結子会社にすると、個別財務諸表では(イ)子会社株式の減損、連結財務諸表では(ロ)のれんの追加償却、(ハ)のれんの減損、という論点が出てきます。
 この論点を巡って、実務では会社と監査人の攻防戦が始まります。
 この点については別の機会に記載したいと思います。

0 件のコメント: