2019年3月31日日曜日

ドラッグストア~もうすぐ業界再編?

1.最近のドラッグストアの経営成績
 平成31年3月19日の日本経済新聞に「ドラッグストア、消耗戦に 売上高増も利益減 
人件費増、爆買い鈍化が重荷」(会員専用)という見出しの記事が掲載されていました。
 会員専用の記事なので、内容の詳細は記載できないのですが、記事によると、ドラッグストアは店舗数拡大などにより売上は増加しているものの、マツモトキヨシホールディングス(以下HD)、サンドラッグ、ココカラファイン、スギHD、ウエルシアHDの大手5社のうち、18年度第3四半期にマツモトキヨシHDを除く4社が「営業減益」となった、ということです。

 ここからは私の補足ですが、少し記事の見出しや説明に「?」と思う点があります。
 見出しも含めて、記事や掲載されているグラフは、あたかも営業利益の金額が減少しているような印象をもたらす書き方なのですが、読んでみると、どうも営業利益率の減少のことを言っているようです。ちなみに、営業利益率とは売上高に対する営業利益の割合のことで営業利益÷売上高で算出されます。
 例として、ウエルシアの四半期報告書をみると、第2四半期、第3四半期ともに前期と比較すると、売上高、営業利益ともに金額は増加しています。しかしながら、営業利益率は前期と比較すると下落しています。(第二四半期は4.2%から3.9%、第3四半期は3.8%から3.4%)。

2.営業利益率下落の理由
 ということで、今回の論点は大手ドラッグストアの営業利益率の下落ということで進めていきますが、その構造は簡単にいうと、売上高は増加しているものの、特に薬剤師の数が不足しているため薬剤師の給料を含めた人件費が増加し、売上高増加の割には営業利益は伸びていない、というものです。

 売上高が増加しているのは、店舗数が増加してるためですが、この店舗数が増加している理由の一つは市場シェア拡大のためと考えられます。
 ある地域に大手が複数店を出店すると、多くの場合、その近隣には他のドラッグストアは出店しにくくなります。このようにして、その地域の住民がそのドラッグストアに流れるようにして、主要な地域を押さえていくというわけです。
 しかし、そうなると、薬剤師の数も必要となり、人件費が増加します。
 それだけではなく、営業時間の拡大も人件費増加の原因となっています。例えば、ウエルシアの場合、24時間営業を始めましたが、営業時間が長くなれば、店舗スタッフへの夜勤手当が発生しますし、アルバイトの時給単価も夜間の場合は昼間よりも高くなります。夜勤勤務の人手の確保も必要です。
 近年、ドラッグストアの営業時間は長くなる傾向にありますが、その結果、それに伴う給与手当も増加するので、売上高も増加するものの、一方で人件費も増加するため営業利益の増加率が売上高の増加率よりも低くなる傾向になります。

3.業界再編?
 他にもドラッグストアの経営成績が低下するリスク要因はあるのですが、これらを総合して、日経の記事では、成長を続けてきたドラッグストアが試練の時を迎えているという内容を記載しています。
 業界再編が終了した感じがするドラッグストアですが、今後の先行きが不透明となると、再度業界再編が起こる可能性があります。
 実は、株式会社日本M&Aセンターは、業界再編には法則があるとして、その一つに「50:70の法則」を掲げています。
 これは、上位10社のシェアが約50%に達すると、大手が中小を買収するなどの業界再編が起こり、さらに上位10社のシェアが70%に達すると、上位10社の統合が始まるというものです。そして、最終的には大手4社に集約されて、業界再編が終了するということです(「業界再編時代のM&A戦略」渡部恒郎著(幻冬舎)P37~39)。
 これは、理論や科学に基づくものではなく、経験則に基づく指標であり、シェアをどの指標で見るのかで変わってくるとは思いますが、上記の「業界再編時代のM&A戦略」(2015年9月に発刊された本ですが)は、ドラッグストアについても「ドラッグストア業界の再編は最終局面へ向かっている」と記載しています。
 現状は、まだ大手が中小ドラッグストアを吸収合併している状況が続いています。例えば、2018年1月のサンケイビズでは「ドラッグストア、首位めぐりM&A火花 成長頭打ち…安値攻勢強化」というタイトルで、大手ドラッグストアのM&Aを紹介しています。
 この50:70の法則に従えば、市場シェアを売上高で見た場合、ウエルシア、ツルハ、マツモトキヨシといった上位10社の売上高合計が業界売上高の約70%に達すると、大手同士のM&Aが起こるということになります。実際は、どのタイミングで大手同士が動くのかは予測できませんが、営業利益率が下落傾向にある状況を鑑みると、もうそろそろ業界再編が起こってもおかしくはないのかもしれません。
 一見、好調に見えるドラッグストアですが、各社、気を抜けない状況が続いているようです。