1.はじめに
平成31年4月1日に新しい元号が発表され、5月1日からは新しい元号に変わります。
新しい元号に変わるまでにあと約2ヶ月となりました。そのため、最近は「平成最後の・・・」というフレーズをよく耳にします。例えば、「平成最後の甲子園」、「平成最後の大相撲」といった具合です。
平成が終わるといっても、時代が変わるような感覚が現時点では全くないのですが、一つの区切りということで、平成の時代を振り返ってみたいと思います。
そこで、今回は平成の間に起こったイノベーションについて回想してみたいと思います。
2.iモードとブラックベリー
(1)初めてのアメリカ
平成といっても、西暦でいうと1989年1月8日から2019年4月30日までなので約30年間あるのですが、イノベーションという点で私が強烈に印象に残っているのは、アメリカに初めて会計監査に行った平成19年12月から現時点までの約11年間です。
初めて会計監査に行ったときは、同時にアメリカ合衆国にも初めて行ったときでもあるのですが、当時、日本とアメリカの携帯電話は現在とは全く違うものでした。
(2)iモード
平成19年ごろは日本ではスマートフォンはまだ普及しておらず、今でいう「ガラケー」が主流でした。この「ガラケー」ですが、当時は「ケータイ」という呼び方をしていました。
このケータイでは、通話ができることはもちろんですが、日本のケータイではメールやインターネットを使用することができました。今では当然のように思えますが、実は、これは画期的なことでした。
これを牽引したのがNTTドコモのiモードでした。このiモードですが、コトバンクのブリタニカ国際大百科事典の解説によると、以下のように記載されています。
「エヌ・ティ・ティ・ドコモ (NTTドコモ) が 1999年2月から開始した携帯電話のインターネット接続サービス。携帯電話を使って情報サービス提供者が提供する各種サービスをオンラインで利用することができる。電子メールの送受信をはじめ,チケット予約やタウン情報など各種情報サービスのほか,銀行振り込みなどモバイル・バンキングの利用が可能である。(中略) 契約数の増加は著しく,2000年8月には 1000万を突破。 1999年4月以降,日本移動通信 IDOや第二電電 DDI系のセルラーなどほかの事業者も同様のサービスを開始した。」
iモードによって、日本のケータイは飛躍的に便利になりました。
そして、日本人のライフスタイルは大きく変わったといっても過言ではなかったと思います。
ケータイでニュース、天気、交通案内も知ることができるようになり、場所を問わずリアルタイムで様々な情報を知ることができるようになりました。また、着信メロディ(着メロ)、デコレーションメール(デコメ)などが流行り、これを発信する会社も多数現れました。
当時、日本のケータイは、他の先進国よりも進んでいたと思います。実際、iモードは他国の通信会社に技術を供与して「世界進出」を行おうとしていました。
(3)ブラックベリー
一方、アメリカではどうだったかというと、日本のiモードのようなインターネット接続サービスは進んでおらず、ケータイは通話中心の使い方でした。
そのような中、アメリカではブラックベリー(Black Berry)というスマートフォンがありました。これはビジネスマン中心に使用されていたものでした。
ブラックベリーは、今のスマートフォンの原型のようなものです。私が見せてもらったのは黒色のもので、上3分の2ぐらいが画面で、下3分の1ぐらいにアルファベットのキーボードがついていたと記憶しています。
いまのスマートフォンは全体が画面で、文字を入力するシーンのときに下の方にキーボードが出てくるというものですが、ブラックベリーはキーボードそのものがついていました。キーボードはパソコンと同様、アルファベットが並んでいるものでした。
Webで画像検索すれば、いくつか出てくるのでご覧いただければよいかと思います。
このブラックベリーであれば、通話はもちろん、メール送受信やWeb閲覧もできました。
ちなみに、ブラックベリーをコトバンクのASCII.jpデジタル用語辞典でみてみると、以下のように記載されています。
「カナダのリサーチ・イン・モーション社が開発したスマートフォン。キーボードを搭載し、電子メール、Web閲覧、スケジュールやアドレス帳の管理、通話、インスタントメッセージ、オフィス文書の閲覧などが可能。会社メールを暗号化して安全に転送できることと、メールを即時着信するプッシュ型の電子メールを採用し、すぐに連絡が取れることから、ビジネス用のメール端末として人気が高い。日本では、NTTドコモが販売している。」
上記のように、私はアメリカに行ったとき、初めてブラックベリーを見ましたが、日本ではiモードが浸透していたため、正直なところ、私自身はものすごく画期的な製品には見えませんでした。聞く限り、機能的にはそれほど変わらないと思ったからです。もちろん、アメリカ居住者ではないため、ブラックベリーを使ったことはなく、使っている人からの話と外観だけの判断ではありますが。
しかし、私の印象とは裏腹に、アメリカやヨーロッパではブラックベリーの人気は高かったようで、市場シェアも高まっていったそうです。
3.平成を振り返って
しかしながら、iモードもブラックベリーも当時の勢いは続かず、いまでは完全な下火となってしまいました。
原因は、アップルのiPhoneとグーグルのAndroidがスマートフォン市場で圧倒的なシェアをとったからです。
私が初めてアメリカに行ったのが平成19年(2007年)12月でしたが、ウィキペディアを見てみると、iPhoneは2007年1月に、Androidは2008年にそれぞれ発売されたということです。従って、私がブラックベリーを知った時期は、ブラックベリーの終わりの始まりだったといえそうです。
このときから約10年で市場は一変しました。今の若い人はiモードといっても知らない人が多いと思います。私も、10年の間にこれほど激変するとは予測しませんでした。
当時、日本のケータイのほうがアメリカよりも進んでいたはずなのですが、今では見る影もありません。
アメリカは平成とは無関係ですが、それでも平成を振り返ってみると、強烈な印象として残っているのが、この携帯電話、スマートフォンのイノベーションです。
「時代は繰り返す」とはいいますが、このイノベーションの歴史をリアルに知っているがゆえに、次の10年後、いや5年後や3年後かもしれませんが、また人間の生活をドラスティックに一変させるイノベーションが出てくるのだろうと思っています。
未来を予測するのはなかなか難しいですが、少なくとも現在の技術は、今後間違いなく古いものになるということは間違いありません。そのため、現状に満足していると時代に取り残されます。
従って、常に、いま起こっていることは古いものなんだ、という認識を持つことが大事だと思っています。
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