1.はじめに
プロ野球・読売巨人軍はPwCコンサルティング合同会社とオフィシャルサプライヤー契約を締結したと、令和元年5月17日付で発表しました(「「PwCコンサルティング」とオフィシャルサプライヤー契約 革新的・先進的な来場者サービス開発へ」)。
内容は、PwCコンサルティング合同会社が「オフィシャル・デジタルトランスフォーメーション・アドバイザー」となるというものだということです。
このデジタルトランスフォーメーションですが、球団公式ページでは「「デジタルトランスフォーメーション」(通称:DX)とは、テクノロジーを活用してビジネスモデル全体を改善し、変化するビジネス環境に適応させることで、最終消費者にとってより優れた価値を提供できる状態にすることを意味します。」と記載されています。
2.デジタルトランスフォーメーションが起こすイノベーション
デジタルトランスフォーメーションは、行政庁においても、日本であらゆる分野で導入を進めるべく、様々な研究が進んでいます。
例えば、総務省の情報通信白書平成30年版では、デジタルトランスフォーメーションは段階を経て社会に浸透し、影響を及ぼすと記載されています。
同白書によれば、以下のような段階を経て社会が変革していくとされています。
①「まず、インフラ、制度、組織、生産方法など従来の社会・経済システムに、AI、IoTなどのICTが導入される。」
②「次に、社会・経済システムはそれらICTを活用できるように変革される。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生することになろう。」
③「その結果としては、例えば、製造業が製品(モノ)から収集したデータを活用した新たなサービスを展開したり、自動化技術を活用した異業種との連携や異業種への進出をしたり、シェアリングサービスが普及して、モノを所有する社会から必要な時だけ利用する社会へ移行し、産業構造そのものが大きく変化していくことが予想される。」
3.巨人は遅れている?
いま、なぜ巨人がPwCコンサルティングとデジタルトランスフォーメーションに関する契約を締結した理由は、推測ですが観客動員、ファン獲得においてITの推進が遅れているという危機感があったのではないかと思います。というのは、現在のプロ野球球団にはソフトバンク、楽天といったIT系の企業が参入していますが、これらの球団は観客動員などにおいて自社のITテクノロジーを導入して様々な工夫をしているからです。
例えば、ソフトバンクは「AIチケット」というものを発売しています。ソフトバンクホークスの公式ページの説明によれば、「過去の販売実績データに加えて、リーグ内の順位や対戦成績、試合日時、席種、席位置、チケットの売れ行きなど多様なデータから、試合ごとの需要をAI (機械学習) により予測し、需要に応じて価格が変動するチケット」ということです。
また、楽天は、今年から球場での完全キャッシュレスを始めました。公式ページの説明によれば、「チケット・グッズ・飲食等をお買い求めの際、原則として現金がご利用いただけなくなります。」ということです。
チケットレス化も進んでいます。BCN+Rというサイトの記事によれば、チケットの電子化によるチケットレスを導入しているのは、オリックス、埼玉西武、中日、阪神、福岡ソフトバンク、北海道日本ハム、横浜DeNAの7球団ということです。
しかしながら、各球団でこういった取り組みが進む中、残念ながら盟主・巨人の名前が出てきません。
なぜ、巨人がこのような取り組みを行っていないのかというと、これも推測ですが「やりたいと思っているし、やらないとまずいという意識はあるものの、導入するための人材や技術がそろっていない」からではないかと思います。
このあたりについては長くなるので、次回「変わるプロ野球のビジネスモデル」というタイトルで記載したいと思います。
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