2019年2月3日日曜日

日EU・EPA発効~その効果とビジネスへの影響

1.はじめに
 2019年2月1日付で日EU・EPAが発効されました。(注:マスコミなどでは「日欧EPA」と呼んでいますが、政府、各省庁は「日EU経済連携協定(日EU・EPA協定)」と呼んでいます。ここでは「日EU・EPA」と記載することにします。)
 これにより、日本とEUとの間で巨大な自由貿易圏が誕生しました。日本からの輸出、日本からの輸入についても関税が引き下げられ、最終的にはゼロとなります。一部品目については、発効日の2019年2月1日付で即時撤廃、すなわち関税がゼロとなりました。

2.そもそもEPAとは何か
 2018年12月30日にはTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)が発効され、こちらもアジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏が誕生しました。
 ここで、EPAやTPPと、自由貿易圏を巡っていろいろな用語が出てきます。自由貿易圏についての言葉であるということはわかりますが、どのような違いがあるのでしょうか?

 自由貿易の促進については、もともと1995年に発足したWTO(World Trade Organization 世界貿易機関)が発端です。このWTOにより自由貿易を発展させていこうという動きが始まりました。しかしながら、原則として、現在加盟している全164の加盟国及び地域のすべての同意が必要であるため、先進国と発展途上国との対立もあり、全会一致は困難なものとなりました。

 そこで、2国間で協定を締結する動きが出てきました。2国間であれば、WTOよりも交渉などを進めやすいからです。このようにしてできたのがFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)です。このFTAは「特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定」です(外務省HPより)。

 このFTAは、関税などの削減・撤廃を目的としてものですが、こういった貿易面のみならず、「貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定」外務省HPより)がEPA(Economic Partnership Agreement 経済連携協定)です。簡単に言ってしまえば、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービス、種々の規制といった面についても自由化していこうというものといえます。

 さらに、2国間の協定から、さらに範囲を広げて地域で協定を締結しようという流れも出てきました。このようにすれば、各国とそれぞれに協定を締結するよりも、一度に複数の国と協定を締結できるので効率的です。そのような中で誕生したのがTPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋パートナーシップ)です。
 今回の日EU・EPAも、日本とEUの間での協定ですが、地域間での協定といえます。
(参考:経済産業省「【60秒解説】TPP、EPA、FTA・・・何が違う?」

3.日EU・EPAとTPPの参加国
(1)日EU・EPA
 日EU・EPAは、日本とEUの協定となりますので、EU加盟国が参加国となります。
 
 日本・ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・ドイツ・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・フランス・クロアチア・イタリア・キプロス・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・英国

(2)TPP
 TPPの参加国は日本を含めて11カ国です。そのため「TPP11(イレブン)」という呼び方をすることもあります。
 
 日本・オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム

 TPPは米国が不参加を表明したことにより先行きが危ぶまれましたが、日本の安倍首相のリーダーシップによりTPPの実現に至りました。そのため、他国は日本にとても感謝をしているということです。

4.ビジネスへの影響
 今回の日EU・EPAでは、輸入ワインの関税が即時撤廃となり、小売業では値下げセールが行われるなど、輸入品に注目が集まっています。しかしながら、上記のように、EPAは貿易のみならず、ヒトやサービスといった面でも自由化が進められていきます。
 ちなみに、FTAやEPAについては、日本はすでに多数の国と締結しています。外務省のHPによると、2018年8月現在で

 シンガポール,メキシコ,マレーシア,チリ,タイ,インドネシア,ブルネイ,ASEAN全体,フィリピン,スイス,ベトナム,インド,ペルー,オーストラリア,モンゴルが発行済で、これにEUが加わりましたので、16カ国及び地域と発行済ということになります。

 このEPAはヒトやサービス面の自由化も促していると書きましたが、現在、我が国ではインドネシア、ベトナム、フィリピンとのEPAにより介護人材の受け入れが進んでいます。このように、少子化が進む我が国において、ヒトの移動も行われています。ちなみに技能実習生制度はEPAとは異なる制度です。
 
 このように、貿易面だけでなく、さまざまな分野においてEPAの効果が徐々に出てきますので、どのような自由化が進んでいるのかを常にチェックすることが必要です。