1.概要
8月も終わりに近づき、9月になろうとしています。9月になると行政庁による公益法人の立入検査が本格的に始まります。もちろん、8月に実施しているところもありますが、どちらかというと9月以降が多くなります。
公益法人の制度改革以後、ほぼすべての公益法人(公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人をいいます。以下同じ。)には立入検査が入っていますが、近年設立された公益法人やこれから公益法人を設立しようとされる方もいらっしゃると思います。特に、事業承継や相続税対策のために今後、公益法人を設立したいという方は多くいらっしゃいます。
そこで、今回は公益法人の立入検査のポイントについて記載したいと思います。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.立入検査とは何か
立入検査の根拠は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)の第27条①に求められます。
認定法27条①では「行政庁は、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、内閣府令で定めるところにより、公益法人に対し、その運営組織及び事業活動の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該公益法人の事務所に立ち入り、その運営組織及び事業活動の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」と定められています。
これを根拠に、行政庁が立入検査を行うわけです。
立入検査は、条文のとおり、公益法人の事業について適正な運営ができているかどうかを調べるために行われます。
具体的には、大きく分けて①機関運営や公益事業の実施といったガバナンス面と②内部統制を含む会計面について調べられます。
3.行政庁ごとの実施例
立入検査のスタイルは行政庁によって異なります。
私もこれまで数多くの立入検査に立ち会ってまいりました。
ここでは、私の知っている範囲で各行政庁の立入検査の実施状況を記載してみます。ただし、私の記憶違いもあるかもしれませんので、あくまで参考でお願いいたします。
(1)内閣府
日数:1日
時刻:午前11時~午後4時頃
人数:2名
内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
頻度:概ね4年に1回
特徴:内閣府はプロパー職員は少なく、大抵他の省庁から出向されている方です。
東京から出張されるので、関西あたりに来られるときは日帰りになります。
(2)京都府
日数:1日
時刻:午後1時~午後5時30分
人数:3~4名 うち1名は公認会計士
内容:ガバナンス面と会計面
頻度:概ね3年に1回
特徴:①京都府は、ガバナンス面と会計面のそれぞれについて担当者がつき、同時並行で検査を行っていきます。会計面は公認会計士が行います。時間が午後のみと短い分、役割分担を行って効率的に行うということだと思います。そのため、担当者数も多めになります。
②事前に立入検査のチェックポイントが送られてきます。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。
③事業報告等については立入検査当日は見ないことになりました。
(3)滋賀県
日数:1日
時刻:午前10時(だったと思います)~午後5時30分
人数:2名
内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
頻度:概ね3年に1回
特徴:①滋賀県は前半をガバナンス面、後半を会計面といった感じで進めていました。役割分担はなく、ガバナンス面、会計面を二人で一緒に見ていました。
②滋賀県は滋賀県公益認定等委員会のHPで、立入検査実施計画を公表し、どの年度にどの公益法人に立入検査を行うのかというスケジュールを公表しています。また、立入検査チェックシートも公表しています。これにより、どのようなことを検査されるのかを事前に知ることができます。
(4)大阪府
日数:1日
時刻:午前10時~午後5時30分
人数:3~4名 うち1名は公認会計士
内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
頻度:4年に1回
特徴:ガバナンス面と会計面についてそれぞれ担当者がつき、同時並行で行っていきます。京都府と同じスタイルですが、大阪府は終日実施します。
頻度は4年に1回となったそうです。
(5)兵庫県
日数:1日
時刻:午前9時30分~午後5時30分
人数:2名
内容:ガバナンス面と会計面(事業報告等を含む)
頻度:概ね3年に1回
特徴:事業報告等の担当者、ガバナンス面・会計面の担当者がいて、同時並行で行っていきます。
事前に準備していただきたい資料のリストが送られてきます。
日数は、どの行政庁も通常は1日です。ただし、ごくまれに2日間にわたって行われるところもあるそうです。
また、終了時刻ですが、予定よりも早い時刻に終わることもよくあります。
4.最後に
今回は、立入検査の概要面について記載しました。
公益法人であれば、立入検査は必ず実施されます。これから公益法人を設立することを考えられている方は、公益法人は設立したら終わりではなく、設立後もいろいろな規制が続くということを知っていただきますようお願いいたします。
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