2018年2月11日日曜日

「社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A」の追加・修正(1)

1.概要
  少し前になりますが、平成30年1月23日付で「社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A(vol.3)」が厚生労働省社会・援護局福祉基盤課より事務連絡として公表されました。タイトルのとおり、社会福祉充実計画の承認に関するQ&Aの追加・修正版となります。
 追加・修正されたところは赤字及び下線で記載されているため、わかりやくすくなっています。
 なお、追加・修正Q&Aは平成30年度から適用するということになっています。社会福祉法人は全て3月決算なので、「平成30年度から」ということは平成30年4月1日からということになります。社会福祉充実残額の算定や充実計画の策定は期末日後に行われるので、平成30年4月1日以後に行われる社会福祉充実残額の算定等からこの追加・修正Q&Aも適用されるものと解されます。
 今回は、追加・修正Q&Aからいくつかピックアップして内容を見てみたいと思います。

2.主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例
(1)追加・修正後のQ&A
 問37において主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例について、追加・修正が行われています。
 この論点は、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)の最終校正日後に出たものであったため、本には載せることができなかった論点です。この論点については、当ブログの第1回「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」P69について」に記載しています。
 まず、Q&Aを引用してみます。

問37 「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」については、「再取得に必要な財産」と「必要な運転資金」の合計額が法人全体の年間事業活動支出を下回る場合は、施設・事業所の経営の有無に関わらず、これに該当する全ての法人がその適用を受けられるものと考えて良いのか。【事務処理基準3の(7)関係】

(答)
1.貴見のとおり取り扱って差し支えない。

 赤文字の部分が追加・修正された部分となりますので、vol.2版ではこの部分がなかったということです。
 内容としては変わっているところはなく、適用要件をより明確にしたというものです。

(2)当初の経営協の見解
 この論点は、上述の当ブログ第1回に記載したとおり、当初、全国社会福祉法人経営者協議会(以下「経営協」)は機関紙である「経営協情報」で、「「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等」とあることから、特例計算の対象となるのは社会福祉協議会、共同募金会、助成等を主たる事業とする法人が想定され、これら以外の通常の社会福祉法人は特例計算の対象とならないと考えられる」としていました。
 ちなみに、経営協という組織は、社会福祉法人に携わった方であればご存知だと思いますが、諸団体の中でも別格の有力団体です。そのため、経営協の意見は、実質的に厚生労働省の意見といっても過言ではないと思います。従って、私も経営協の意見を著書に記載したわけです。

(3)vol.2の見解
 しかしながら、原稿締切後の平成29年2月13日付でQ&A vol.2が発出され、上記問37の赤字下線部分を除いたものが掲載されました。
 ただ、当ブログ第1回にも記載しましたが、当初、私は平成28年12月の案から計算要件が変更となったため、その確認のためのQ&Aなのかと思いました。
 おそらく、vol.2では、私のような捉え方をした方も多かったと推測されますので、今回のvol.3で適用要件を明確にしたものと思われます。
 従って、社会福祉協議会、共同募金会、助成等を主たる事業とする法人以外の通常の社会福祉法人であっても、計算要件を満たせば「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」を適用できることになりました。
 余談ですが、この結果、特例の名称では「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等」が対象となっているにもかかわらず、「施設・事業所の経営の有無に関わらず、これに該当する全ての法人がその適用を受けられる」ということになってしまいました。

3.特例計算の選択の自由
(1)概要
 この特例計算ですが、特例計算の適用要件を満たした場合であっても、必ず特例計算によらなければならないわけではなく、原則の計算方法によってもかまいません。
 今回、vol.3では、新たに問38が設けられ、その点が明確になりました。

問38 「主として施設・事業所の経営を目的としていない法人等の特例」の要件に該当する場合であっても、法人の判断として特例の適用を受けないことは可能か。【事務処理基準3の(7)関係】

(答)
1.貴見のとおり取り扱って差し支えない。

 実は、平成29年度版の社会福祉充実残額算定シートでは、特例計算の計算要件である「再取得に必要な財産」と「必要な運転資金」の合計額が法人全体の年間事業活動支出を下回った場合、自動的に特例計算によって計算される計算式が組まれていました。
 しかしながら、特例計算だと社会福祉充実残額が出てしまうが、原則計算だと社会福祉充実がマイナスとなり、発生しないというケースもあります。このような場合、原則計算を選択するほうが社会福祉法人にとって有利となります。すなわち、有利選択ができるということです。
 今回の問38はこの点を確認したものです。

(2)社会福祉充実残額算定シートの改善
 上記の通り、平成29年度版の算定シートでは、計算要件を満たすと自動的に特例計算で計算されてしまっていましたが、30年1月時点で発出された平成30年度版の社会福祉充実残額算定シート(案)[Excel版]では、その点が改善されました。
 具体的には、「6.「社会福祉充実残額」」の欄で、「計算の特例適用 ※「5.計算の特例」の適用有無を変更する場合、以下のセルから選択すること。」という説明書が設けられ、F77のセルに「適用する」「適用しない」の選択欄が設けられました。これによって、算定シート上でも、特例計算を適用するか、原則計算を適用するかの選択を行えるようになりました。
 従って、平成30年度からは、エクセルの計算式を自分で組み直すことなく、選択ボタンで選択することにより、どちらも自動計算されることになったので、便利になりました。