2017年11月7日火曜日

法人税等の表示~公益法人

 今回は、公益法人(一般社団法人及び一般財団法人、公益社団法人及び公益財団法人を指すものとします)における法人税、住民税及び事業税(以下「法人税等」)の表示について記載します。
 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

1.法人税等の表示
 法人税等については、正味財産増減計算書では以下のように表示します。

【表1】
Ⅰ 一般正味財産増減の部
 1.経常増減の部
 (1) 経常収益
  (中略)
  経常収益計
   (2) 経常費用
      事業費
  (中略)
  管理費
  (中略)
  経常費用計
  (中略)
  当期経常増減額
2.経常外増減の部
 (1) 経常外収益
  (中略)
  経常外収益計
 (2) 経常外費用
  (中略)
  経常外費用計
  当期経常外増減額
  税引前当期一般正味財産増減額
  法人税、住民税及び事業税
  当期一般正味財産増減額
  一般正味財産期首残高
  一般正味財産期末残高
Ⅱ 指定正味財産増減の部
  (以下省略)

 法人税等については、租税公課勘定を使って経常費用として計上されている公益法人がよく見られます。
 これは、内閣府公益認定等委員会 から出された「公益法人会計基準」の運用指針(以下「運用指針」)の様式2-1では、このように記載されていないためと推測されます。
 ちなみに、運用指針・様式2-1では、以下の表示となっています。


【表2】
 (略)
  当期経常外増減額
  当期一般正味財産増減額
  一般正味財産期首残高
  一般正味財産期末残高
 (以下省略)
 
 このように様式2-1では「法人税、住民税及び事業税」が記載されていません。そのため、租税公課勘定で会計処理されているものと推測されます。
 しかしながら、法人税等は、税引前当期正味財産増減額に対応する費用として、【表1】のように表示する必要があります。

 なお、公益法人会計基準に関する実務指針(日本公認会計士協会)では、「Q56:税効果会計を適用する場合の財務諸表の表示方法について教えてください。」の回答として、「正味財産増減計算書において、一般正味財産増減の部の当期一般正味財産増減額の前に、「税引前当期一般正味財産増減額」を記載し、その下に「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を 計上し、「当期一般正味財産増減額」を表示する。」とされています。
 従って、租税公課勘定として経常費用に計上されている公益法人は、正味財産増減計算書の記載を修正する必要があります。

 ただ、市販の会計ソフトをみていると、この【表1】のフォームに対応していないものが見受けられます。その場合は、エクセルにして正味財産増減計算書を修正せざるを得ないと思います。

2.租税公課を使用した場合の問題点
 租税公課勘定を使用して、経常費用に計上すると、公益社団法人及び公益財団法人において公益目的事業比率の算定に問題が生じます。
 公益社団法人及び公益財団法人では、公益目的事業を行うことを主たる目的とする必要があるため、毎事業年度における公益目的事業比率が50%以上であることが求められます。
 具体的な計算方法は、以下の通りです。(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)15条)、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下「認定法施行規則」)13条①②より)

(イ)公益実施費用額 当該事業年度の損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る事業費の額
(ロ)収益等実施費用額 当該事業年度の損益計算書に計上すべき収益事業等に係る事業費の額
(ハ)管理運営費用額 当該事業年度の損益計算書に計上すべき管理費の額

 (イ)÷((イ)+(ロ)+(ハ))≧50%

 なお、実務上、この公益目的事業比率は事業報告等に係る提出書類における別表5で計算されます。計算上、特定費用準備資金の積立額などの項目はあるのですが、ここでは省略します。
  事業費、管理費は【表1-1】のとおり、経常費用に計上されます。
  より詳細には、正味財産増減計算書内訳表を作成して、公益目的事業、収益目的事業、管理運営に係る収益や費用を集計するのですが、こちらもここでは省略します。

【表1-1】
Ⅰ 一般正味財産増減の部
 1.経常増減の部
 (1) 経常収益
  (中略)
  経常収益計
   (2) 経常費用
      事業費
  (中略)
  管理費
  (中略)
  経常費用計
  (中略)
  当期経常増減額

 そうなると、法人税等を事業費に計上した場合と【表1】のように法人税、住民税及び事業税として計上した場合とでは、公益目的事業比率が異なってきます。
 このように、法人税等を経常費用に計上する会計処理は、財務3基準の一つである公益目的事業比率の計算を歪めることにもなります。従って、会計上、適正な処理を行う必要があります。